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あなたがそうおっしゃったのに。  作者: 友坂 悠


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【ジークSide】4 愛してる。

 床に落ちた涙が滲みを作っていく。

 あの、笑顔で明るいエリカの姿はどこにもなく。

 あの、俺に対しても屈託なく応じてくれていたエリカは、全部演技だったのだろうか。

 本当はずっと、ここを出て行きたかったというのだろうか。


 それでも。

 じゃぁ何で今こうして泣いているんだ?

 もし、エリカが少しでもここでの暮らし、俺との暮らしを心地よく思ってくれていたのだったら……。





 親父が右手を伸ばしてエリカの肩に置いた。

 ビクッと身体を震わせるエリカ。


「悪かったね。エーリカさん。君がそんなふうに思い詰めているなんて、気がついてもあげられなくて」


 その親父の言葉に被せるように、おれも思いを絞り出す。


「エーリカ、ごめん。全部聞いたよ。俺が悪かった。君の顔もわからないままだったなんて、本当に情けない。ごめん」


 はっとして顔を上げる彼女。

 ありえないものをみたような、そんな表情で、


「ジーク、さま?」


 と、云った。


 もうどんな顔をしたらいいのかわからくなって。

 たぶん、かなり情け無い顔をしていたんだろうな。


 そんな俺をみて、泣き笑いのように表情が崩れるエリカ。


「ジーク様が謝ることなんかありません。わたくしがメイドと偽ってお世話していたのですから」


 そう、声が聞こえた。


 ああ、ここだ。ここしかない。

 思いのたけを伝えようと、少し早口になる。


「だけどね、君を好きだっていうのはほんとなんだ。信じてくれないか?」


「だって、貴方が好きだったのはメイドのエリカでしょう?」


「意地悪を言わないでよ。俺が好きになったのは君なんだよ。君のその笑顔に惹かれたんだから」



 エリカがクスッと、笑みをこぼす。


 俺の顔も、ちょっと苦笑いみたいに崩れて。


 彼女はちょっと悪戯っぽく微笑み、


「離婚届、返してもらってもいいですか?」


 そんなふうに云った。


「いや、あれはもう燃やしちゃったよ。っていうか、離婚だなんて嫌だ。お願いだ。やり直させてくれないか?」



 真剣な表情で見つめる俺に。目をしっかりとあわせて心の奥底まで見据えるように。



「わたくしを愛してくださいますか?」


 そう云う彼女に。


「もちろん。愛してるよ、ううん、ずっと君を愛するよ。神に誓って」


 そう答えた。


 エーリカは思いっきりの笑顔を返してくれ。



「なら、もう少しだけあなたのメイドでいていいでしょうか? 本当の妻になれる自信はまだないのですけど、今まで通りのメイドからなら。お願いします」


 と、そう云った。

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