醜聞。
ざわっと周囲から声が漏れる。
白銀の王子様とお姫様。
よく似た髪色の二人が並んでいるとそんな幻想的な雰囲気にも見える。
「本日は皆、よく集まってくれた。この二人に代わって礼を云う。色々あったが今日は二人の門出を祝ってほしい。よろしく頼む」
よく通る声でウイリアムス国王陛下がそうおっしゃられるのを聴き、エーリカは少し不思議に思った。
「あらあら、奥様の侯爵令嬢って、ついこの間まで第三王子レムレス様と婚約していらっしゃらなかった?」
「それね。春に派手に婚約破棄されたみたいよ。その後レムレス様が事件を起こして廃嫡になったからうやむやになったみたいですけど」
「スタンフォード侯爵家は今一番勢いのあるお家ですものね、王家としても手放したくはなかった、ということかしら?」
「そうよね、お母様は稀代の大聖女様でいらっしゃるし、スタンフォード侯爵家と言ったら国内一の財力を誇っていらっやいますからね。きっとかなりの額を王家に寄進なさったんじゃないかしら?」
「ふふ、やーね。お金で王子妃を買ったのかしら?」
「皆様、さすがにあからさまにそういうことを言うと、怖いわよ? どこでだれが聞いていらっしゃるかわからないもの」
「そうよね、ナリス殿下ったら先日もロッテンマイヤー男爵家をお取りつぶしになさったのですって」
「怖い怖い」
「触らぬなんとかに祟りなしですわ」
「そうね、ここまでにしておきましょうか」
そんな醜聞が聞こえてくる。
驚いて振り返るけれど、もう誰がなにを言っていたのかもわからない。
どちらにしても、エーリカにはここにいるご婦人方がどこの誰なのかもほとんどわからなかったのだけれど。
手をつながれているからか、ジークハルトが硬直しているのがわかる。
身体に変に力が入っている?
(怒っていらっしゃる? のかしら)
そう思い、ジークの顔を覗き込むエーリカ。
「だから、だから女は嫌なんだ。自分の地位のためなら婚約者を乗り換えることも平気でするなんて。俺は、あのスタンフォード侯爵令嬢みたいなのは好きになれん」
そう、小声ではあったけれど。
そう、吐き出すのが聞こえた。




