スープのレシピ。
彼の女嫌いを治すためなんだ。
そう割り切ると笑顔をふりまくのも苦にはならない。
出来るだけ明るく、自然体でいよう。
そんなふうに切り替えて。
「うまい!」
一口飲んで、顔をあげるジークハルト。
驚いたような、そんな表情で。
「お口にあったならよかったです」
そう小首を傾げる。
ふたくち、みくちとスプーンを運び、至福の表情にかわっていく彼。
「今までに食べたことのない味だ。これってもしかして……」
そうこちらを覗きこむようにみあげるジークハルトの瞳が、まるでほんとうに子供のように。
好奇心に満ちた、そんな瞳にも見えて。
「わたくしがお作りしました。ああちゃんと料理長の許可も得ていますしお手伝いもしていただきましたから。メニューのレシピはわたくしが以前の職場で学んだものなのですけど……」
そう、素直に答える。隠すことでもないし、もう料理長だってリクエストさえあれば同じものをお出しできるだろう。特に特別なレシピというわけでもないし、味付けだって変わったことをしたわけじゃない。そもそもベースのスープの素は料理長の秘伝のものを使っているわけで。
「喉ごしが心地よくてうまかったよ。ありがとう」
そうこちらに、はにかむような笑顔を見せるジークハルト。
なんだかいつもと違うそんな反応に調子がくるう。
それでも、やっぱり素直にお礼をくれると嬉しくなって。
「リクエストがあればいつでもまたおつくりしますね」
そう笑顔で応えることができた。
♢ ♢ ♢
それからの数日。
ジークの態度はずっとこんな調子だった。
エーリカのいうことに文句を言わないだけではなく、じっと見つめると頬を赤らめたりする。
あの時は病気で気弱になったせい? なんて考えたけれどどうやら違う。
これはもしかして、看病していた時、気がついていたのだろうか?
あの薄目を開けているように見えたのは気のせいじゃなかったのだろうか?
それでも、エリカがエーリカだとわかったわけでもない様子。
普通にメイドと思っているんだろう。それはそれでいいんだけれれどと思いながら、すこしだけ罪悪感を感じて。
そろそろちゃんとお話ししてみよう。そんな風に思い始めていたある日の事。
「なあ、エリカ。もしよかったらマーヤが帰ってきてからもこのまま私のメイドでいてくれないか?」
夕食の給仕の最中、ジークがそう切り出した。




