女嫌いを治すため。
ジーク様の女嫌いを治すため。
頭の中でその言葉がぐるぐると回る。
そうなのだ。侯爵様が望んでいるのはそういう事なのだ。
と、そう言葉として実感できたエーリカ。
そうだ。それが自分がここにいるための役割。
エーリカが妻として好かれるためじゃ無い。
そう、自分の心の奥に言い含める。
彼に嫌われているのはしょうがない、当たり前の事なのに。
何を期待してしまたんだろう。侯爵家の皆が良い人ばっかりなおかげでなんとなく今の生活が心地よく感じてしまい、このままずっとこんな生活が続くのだと勘違いをしてしまっていた。
そんなのは違う。
そんなのはダメ。
そんなの、今のメイド作戦がバレたらよけいに嫌われるに決まっている。
この間もそう考えたはずだったのに。と、そう自省して。
ランベルト子爵の話を聞き何故か落ち込んでしまっていた心を落ち着ける。
すっかり時間が経ってしまった。
運んでいたのが温かいスープではなしに冷製スープだったことを思い出して、安堵する。
もともと、何時にお召し上がり頂けるかわからなかったから、敢えて冷製スープにしたのだった。
冷めたスープよりも、最初から冷たい喉ごしを味わっていただけるそんな冷やしたカボチャのスープ。
お熱があるときにはきっとそちらの方が美味しくいただいてもらえる。そう思ったから。
気持ちを整えてお部屋をノックする。
「若様、朝食をおもちいたしました」
そう声をかけ、扉を開けようとしたときだった。
「ああ、エリカ。ありがとう」
お部屋の中からそんなジークの声がした。
(ジーク様が声をかけてくれた?)
(ううん、きっと身体が弱っていらっしゃるから弱気になってらっしゃるのかも)
そんなふうに、信じられない思いを隠して扉を開ける。
「おはようございます若様。今朝はカボチャの冷製スープですよ。精がつきますからいっぱい召し上がってくださいね」
明るめの声でそう云いながベッドの脇までワゴンをつける。
これならベッドに腰掛けるだけでお食事ができるから。
横になっていたジークが身体を起こすのを支えながら、ベッドに座るのを手伝って。
身体に触れた感じだとほんとう熱は下がっている様子。
枕元には水差しとお薬が置いてある。
(ランベルト子爵様はお食事の後でこれを飲ませるようと仰っていたっけ)
そう頭のすみにおいておいて、ジークの目の前、ワゴンの上に朝食を並べ整えていく。
「どうぞお召し上がりくださいませ。美味しいですよ」
そう満面の笑みで勧めると、ジーク、一瞬恥ずかしそうな表情をみせて「いただきます」と声にしスプーンを手に取った。




