悲しき再会 親しきなかにも礼儀あり
大学生のチャラいとかは別世界だと知る。
市松模様かチェックのネル。クソ重たい教科書類と肌見離せない萌が梱包され同時に入るほどの黒いリュック。しかも授業終わりにはそれが倍に膨らんで帰宅する仕様。中学の時から交換もないほど使い込まれたベルトは大概長いので曲げて折り込んでいる。
全員メガネの同じようなちょっと猫背。
「というわけで、機械科に編入し直した」
「ざけんな」
と、カスタムメイドで空けたピアスがもげるほどスナップが効いた拳が来た。
なぜ、女の方が怒るのかわからない。
でていく姿に「すげえな、おい」っていう羨望のまなざしの変態が店内に沢山いたのはチラ見した。
そして振られたというわけで。
耳に氷当てながら焼酎を飲んでいるのだ。
実のところ、酒は弱い。
カルアミルクという不気味な酒を飲んで以来、仕込まれたカクテルにも恐怖を感じる体になっていた。
それでも、おでんと惣菜の陳列が豊富な店は好きだった。
「こういう店も実は嫌いなの」
去り際の彼女はものの数分後、知らない女として入店してきた。外でうかがうのもイラついたのだろう、『追ってこないほど落ち込む様子を見たいがための策略』女としてのプライドは分からない。
チラ見がえげつないほど喉の奥の声が引く。
「まあ、庶民的で何か懐かしい感じのお店ですね。素敵」
女ってものは、相手が変われば自分も変わる。
「すげえな、すげえ才能」その声が向こうに聞こえたのかもしれないが酒の回りで突っ伏してしまった。
「センパイ~、センパイじゃないですか」
学校からものすごく距離をおいたアパートに住んでいる。
なのに、変に違和感があったのだ。
周りに男が多いってことに。
「ぼくね~、今そこの警察学校で勉強しているのですよ」
よく喋るのに、自分はあーとか、うーとかしか言えなかった。
そして気がついたときに「お目のせいで第一志望落ちたんだ」と、心にもないことを喋り続ける病人になっていた。誰かに当てつけたいそれだけの。
なのにそいつは体が大きいばかりか、包容力もあった。
「ごめんなさい、あのときぼくはぼくばかりがから回っていてひとのことを見てはいなかったんです。ごめんなさい、こんなに傷ついて」
出来たての横にいる彼女が呆然としている。
「あ、きみ、もう帰っていいよ。ぼくはこれからセンパイの介抱しなくちゃいけないから」
「だから! そういうところだぞ。治さないといけないのは、まずお前だ! 」
と、まあ、彼女が自分の彼女に戻ろうとしたことを拒否してまたしても痛い拳がめり込んだことも血反吐をこらえてこの大きなクソ後輩に肩を借りるという結果になっていた。
「センパイ? おじいちゃんになったの? 背が縮んでいる」
「お前が背が高くんなったんだ」
「センパイ、ぼくは寮なんで、泊まってはいけないけれどいつでも連絡をしてくださいね」
「……」
アドレスを交換とかその頭が出ては来ないのだ。
「守衛さんは24時間体勢で門にいますけど、すごくいい人なのです。取り次いでくれるかもしれません」
「まず、無理だろうが」
「あ、でもセンパイの家にはぼくがいけますよ」
「黙って歩け」
命令すると素直さが出てくる。
「お前、ああいう女好きなのか? 」
「どんな人も好きですよ。ぼく、童貞ですから」
「うるせえ! 」