センパイとぼく
中学の時に、初恋だと思っていたのがクラブのセンパイだったので、3年生の最終投稿日に初めて告白しようと頑張りすぎた。
花束とか持っているからかなりビビられたし。
鼻声と裏声で喉の奥が痺れるぐらいヒリヒリしていた。
何よりめちゃくちゃ寒いのに顔が火が出るぐらい熱かったのを今でも覚えている。
センパイは、最後まで告白を聞いてくれた。
ぼくは最後には泣いていたので、収まるまで待ってくれる余裕も持っていた。
だって、その日、数十年ぶりの寒波らしかったのを後で知ったほど、目も開けられないのにぼくとセンパイはガン見しあっていたから。
花束はシオシオになっていた。
「花は嬉しい」
そう言って持ちやすいように花の茎を半分に折っていた。でも捨てないで持って帰ってくれた。
後で花束買うの恥ずかしくてと思い出したときに「だから一番無難に仏花かよ」そりゃ、花屋の婆も「ええ子じゃねえ」と言うだろうと思い出してもんどり打ってしまった。
「センパイが好きです。センパイにずっとついていきます」
も、告白というとあれだが、「ありがとな。お前……死ぬ気で頑張ればそこそこいいところ行けるんじゃねえの」との返事だった。
肩透かしのまま帰るのが嫌だったのでなんとかすがりつきたい。いや、抱きつきたいというか証拠がほしかったんだと思う。
「キスしてください! 」
は、新雪の雪に体が埋まった。
殴られると思ったら、足払いされていたのだ。
ぼんやりと頬をつたう涙が冷たくなっていく様子を肌で感じるのが面白くてずっと曇天の空を見ていた。
「さっさと帰れ。バカが」
センパイが体を起こしてくれた。
腰が垂直の時におでこに柔らかいものが当たった気がする。
「お前の勇気に、これで勘弁してやる」
クソ熱い珈琲缶を投げつけられて出血を貰いつつ握ったぼくと去っていくセンパイの後ろ姿。
最後の思い出。
べこべこの珈琲缶は今も大事に持っている。