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キャバリア・スラップスティック  作者: シベリウスP
トオクニアール王国編
72/153

Tournament72 A harpies hunting:part3(強欲者を狩ろう!その3)

一刻も早くマジツエー帝国に渡ることにしたジンたち『騎士団」一行。

しかしジンを大賢人から追われたマークスマンや自律的魔人形のガイアが狙う。

『キャバスラ』前半のクライマックスが近付く。

【主な登場人物紹介】


■ドッカーノ村騎士団

♤ジン・ライム 17歳 ドッカーノ村騎士団の団長。典型的『鈍感系思わせぶり主人公』だったが、旅が彼を成長させている。いろんな人から好かれる『伝説の英雄』候補。


♤ワイン・レッド 17歳 ジンの幼馴染みでエルフ族。結構チャラい。槍を使うがそれなりの腕。お金と女性が大好きな『やるときはやる男』


♡シェリー・シュガー 17歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子だが報われない『負けフラグヒロイン』


♡ラム・レーズン 18歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』


♡ウォーラ・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造った自律的魔人形エランドール。ジンの魔力マナで再起動し、彼に献身的に仕える『メイドなヒロイン』


♡チャチャ・フォーク 13歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。村では髪と目の色のせいで疎外されていた。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。


♡ジンジャー・エイル 20歳 他の騎士団に所属していたが、ある事件でジンにほれ込んで移籍してきた不思議な女性。闇の魔術に優れた『ダークホースヒロイン』


■トナーリマーチ騎士団『ドラゴン・シン』

♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン 20歳 アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、双剣の腕も確かだが女好き。


♤ウォッカ・イエスタデイ 20歳 ド・ヴァンのギルド副官。オーガの一族出身の無口で生真面目な好漢。戦闘が三度の飯より好き。オーガの戦士長、スピリタスの息子。


♡マディラ・トゥデイ 19歳 ド・ヴァンのギルド事務長。金髪碧眼で美男子のような見た目の女の子。生真面目だが考えることはエグい。狙撃魔杖の2丁遣い。


♡ソルティ・ドッグ 20歳 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。黒髪と黒い瞳がエキゾチックな感じを醸し出している。調査・探索が得意。


♤テキーラ・トゥモロウ 年齢不詳 謎の組織から身分を隠して『ドラゴン・シン』に入団した謎の男。いつもマントに身を包み、ペストマスクをつけている。


   ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★


 僕たち『騎士団』は、ド・ヴァンさんたちと話し合い、なるべく早くホッカノ大陸に渡ることにした。

『賢者会議』を追われたマークスマンや、自律的魔人形エランドールのガイアさんなどが僕のことを狙っていることは判っていたが、『組織ウニタルム』の動きが活発になってきたのがはっきりしたので、いつ奴らが僕に直接攻撃を仕掛けて来てもおかしくなかったからだ。


「そうか、できるならずっとこの城で余の相談に乗ってほしかったが、『伝説の英雄』たるそなたの行動を縛るわけにもいかないな。アルトルツェルンまで護衛を出そうか?」


 僕がトオクニアール国王のロネット・マペット陛下に対し、マジツエー帝国に行く旨を告げた時、陛下は寂しそうな顔をして言われた。僕が置かれた立場を考慮し、せめてマークスマンやガイアからの攻撃時には加勢をしたいということだろう。


 僕は断ろうか迷った。このお城に迎えられて以来、外出が不自由だったことを除けば、何一つ文句の言いようがないほど歓待されていたからだ。これ以上、国王陛下の好意に甘えてはいられないような気がした。


 それと同時に、マークスマンやガイアさんという魔導士や魔戦士との戦いに、王国の兵士たちを巻き込むのも避けたかった。彼らは今後、もし『魔王の降臨』が現実となった時、この国の人々を守らねばならない。その貴重な戦力を削いではいけないとも思った。


 僕が黙っていると、隣にいるワインが返事をした。


「ありがたい仰せです。しかし、この国に対し何の貢献もしていないボクたちが、そのような栄誉を受けるわけにも参りません。お気持ちだけ受け取らせてください」


 その後も、陛下は僕たちのことを心配して、どうしても護衛を付けると言われたので、ワインの提案で僕たちの行動を隠すため、陽動作戦を展開してもらうことにした。


「直接そなたたちを護衛できればよかったのだが、そなたたちの役に立つのであれば喜んでやらせていただくぞ。余は君たちの武運を祈っている」


 ロネット陛下は豪快に笑って、僕たちを送り出してくれた。


「さて、これでホッカノ大陸に行くだけだ。ところでジン、キミはどうやってホッカノ大陸に渡るつもりだい?」


 フィーゲルベルク城を出て街中に入った時、ワインが僕に訊いてくる。僕はいくつか考えていたことを口にした。


「普通なら船で渡るんだろうけど、そう簡単に船便が見つかるかな? 現在、トオクニアール王国とマジツエー帝国は休戦中だけれど係争状態なのは確かだし、客船なんて就航していないんじゃないかな?」


「だからって『転移魔法陣』なんてやーよ? 数十キロを転移しただけで気分が悪くなるのに、ホッカノ大陸まで転移なんてしたら途中で死んじゃいそう」


 金髪ポニー・テールのシェリーが言うと、


「確かにそれは御免蒙りたい。ってか、そんなに遠距離まで移動できるものなのか?」


 燃えるような赤い髪を大きな三つ編みにしたラムさんが、怖気をふるって言う。


 ワインは苦笑しながら、


「いや、さすがのボクでもホッカノ大陸までボクたちをすっ飛ばすことはできないし、やろうとも思わない。何か別の方法を考えないといけないかな」


 そう言う。話を聞いていたウォーラさんが残念そうに


「うう、こんなことならド・ヴァンさまや『ドラゴン・シン』の皆様とご一緒すればよかったですね、ご主人様?」


 困った顔で僕に言う。


「仕方ないさ。ド・ヴァンさんには、今までだってずいぶんとお世話になっているんだ。ホッカノ大陸に行くことくらい、自分たちで何とかしなきゃ」


 僕も思案に余ってはいたが、強がりでも何か言わないとカッコが付かない……そんな気持ちでいたところ、ジンジャーさんがワインに何か耳打ちしているのが見えた。


「……うん、ボクも最終手段はそれしかないかなって思ってましたよ」


 ワインが微笑んで答えると、ジンジャーさんも笑って、


「じゃ、善は急げね。団長さんへの説明はお願いしますね?」


 と言って、その場から姿を消した。


「ワイン、ジンジャーさんはどこに行ったんだ?」


 僕が訊くと、ワインはニヤリとしてはぐらかした。


「まあ、おいおい話すよ。今はホッカノ大陸に行く方法を協議しようじゃないか」



 ジンたちが雑踏の中に紛れてしまうと、物陰から白い髪をした少女が現れた。歩いていくジンたちを見つめる瞳は緋色であり、黒いメイド服を着込んでいる。


「やっと見つけた。今度こそジン・ライムやウォーラを倒し、旦那様の仇を取る」


 少女はそうつぶやくと、自分の魔力探知装置の限界ギリギリにジンたちを捉え、後をつけ始める。


(ウォーラの探知装置の限界はどのくらいだったか……高解度モードならそんなに遠くまでは探知できないはず)


 少女はそう考えながら、ジンたちを追跡していたが、


「誰っ!?」


 物凄い殺気を感じた少女が後ろに跳び下がると、


 ボンッ!


 少女が歩いていたらそこに居たであろう場所に、黒い炎が燃え立った。


 やがて、炎で舞い上げられた砂塵が晴れると、そこに黒い髪に黒い瞳をした女性が、両手に魔力を集めて立っていた。


「あなたがガイア・ララね? ウォーラの姉っていう」


 女性が言うと、ガイアは虚空から槍を取り出して構える。槍と身体を青い魔力が覆っていた。


「何者? ジン・ライムの仲間?」


 ガイアが鋭い声で訊くと、女性はクスリと笑い、


「そうね。そしてあなたの仲間でもあったわ。わたしはアクア・ラングの元配下、キュラソー・クロウ。今はジンジャー・エイルと名乗っているの」


 そう自己紹介した。


「……キュラソー・クロウ……聞いたことがある。超一流のアサシンだったが、任務に失敗してアクア様から処断されたと。そんなキュラソーがなぜ、ジン・ライムの側にいる?」


 ぶわっ!


 魔力を迸らせるガイアに、ジンジャーは静かに声をかける。


「魔力がもったいないわよ? わたしは今、あなたと戦うつもりはサラサラないから、魔力を鎮めなさいな。ただでさえあなたの魔力は残り少ないはずよ?」


 ガイアはジンジャーから少しも殺気が感じられないので、魔力を鎮めて問いかける。


「我の問いに答えてもらおう。なぜ、ジン・ライムの側にいる? 隙を見て倒すためか?」


「……わたしはジン団長暗殺に失敗し、団長さんから命を助けられた。それを知ったアクアは、わたしを処断しようとした……この流れで、わたしが団長さんを殺すために側にいると思う?」


「なるほど、汝の意見と立場は把握した。しかし汝も旦那様に仕えていたのなら、ジン・ライムを倒すために動くべきではないか?」


 不思議そうに言うガイアに、ジンジャーはちらりと怒りをのぞかせて答えた。


「団長さんは自分の命を狙ったわたしを、『正しく生きろ』と言って殺さなかった。命に対する生来的な優しさがあるのよ。

 そんな団長さんを手にかけるなんて、一度でも考えていた自分が恥ずかしいわ。

 あなただって感情があるんでしょう? 妹さんと共に自分のために生きてみたら?」


 しかし、ジンジャーの言葉はガイアに届かなかったようだ。彼女は薄ら笑いを浮かべて、


「やはり人間とは我と相容れない心の動きをするものだな。我はエランドール。旦那様から魔力マナをいただいたからには、旦那様の命令は絶対。旦那様はもういないが、命令が取り消されない限り、我はジン・ライムを倒すべき」


 そう言うと、再び槍を構える。


「見た目はウォーラさんとそっくりなのに、感情の動きはぜんぜん違うのね。あなたがウォーラに勝てなかったのも解る気がするわ」


 ジンジャーは、哀しい目をしてガイアを見ながら言う。


「それを言うなっ!」


 激昂したガイアが突き掛かって来るのをかわしながら、


(エランドール、魔力を与えた者に絶対の忠誠を誓う戦闘人形……自分の意志や感情も持ち合わせているはずなのに、その選択は『主人』とする人物に縛られ続けている……それが、ジン団長によって運命を変えることができたわたしとの違いかしらね)


 そう思ったジンジャーは、ここでガイアと戦うのを避ける気になった。ジンやウォーラとガイアが出会った時、ガイアが変わることを期待したのかもしれない。


「悪いけど、わたしは団長さんからの命令で先を急ぐの。勝負は次に会った時まで持ち越しよ」


 ジンジャーはそう言うと、激昂して何かを叫ぶガイアには目もくれず、転移魔法陣を発動してどこかに消えた。



「……あなたがウォーラに勝てなかったのも解る気がするわ」


 その言葉を投げかけられて、ガイアは一瞬にして感情を爆発させる。


「それを言うなっ!」

 ぶうんっ!


 ガイアは、魔力を噴出させながら渾身の突きを放つが、それはジンジャーに軽くかわされる。


「……ジンジャー・エイル、我を馬鹿にしてただで済むと思うな。次会った時は、ウォーラともどもあの世に送ってやる」


 ガイアは歯ぎしりしながらジンジャーが消えた空間を睨みつけていたが、不意に魔力の噴出を止め、がくりと膝をつく。


(いかん、ヤツの口車に乗って魔力を使い過ぎた。せっかくジン・ライムを見つけたのに、このままでは旦那様の仇も取れずにスクラップになる。それは避けたい)


 自分に魔力マナを与えてくれたアクア・ラングのため……それだけのためにジンを見つける旅を続けてきたガイアである。彼女は槍を杖にしてやっとのことで立ち上がると、よろよろと木立の中へと歩を進め、人目につかない所まで来ると大きな木の幹にもたれかかって座った。


「……マナ充填率23パーセントまで低下。省力モードに切り替え。マナの増幅充填開始」


 ガイアは機械的な声でそうつぶやくと、目を閉じて力を抜いた。


 ガイアは、『クオリアス理論』の信奉者である鬼才、アイザック・テモフモフ博士が11番目に製作したエランドールである。正式な型番はPTD11、コードネーム『お姉さま』といい、同じくPTD12『妹ちゃん』たるウォーラとは準姉妹機であった。


 テモフモフは彼女たちを造るに当たり、それまでの属性の持つ『特長重視』から『人間らしさ重視』へと方向性を変えた。そのため、ガイアは内部まで人間に似せて諸機器を配置するのにこだわり、ウォーラはその改良版として完成した。いわばこの2機はテモフモフの最高傑作ともいえるエランドールだったのだ。


 そのウォーラになくてガイアにある数少ない機能、それはマナの自己生成・充填機能だった。ガイアが造られた時、マナをそのまま使って各機構を制御する装置が開発されたばかりだったため、テモフモフはそれを取り入れず、代わりにマナを電気信号に変える方式を採用していた。


 ガイアにはその電気信号をマナに戻していったん蓄積する装置が取り付けられていたため、少量ずつではあるがマナを自己生成することができたのだ。


(マナ充填率が50パーセントまで回復するまで、ここでゆっくりしていた方がいい。何にせよ、ジンジャーという女に会ったせいで今までにないほど充填率が下がった。30パーセントを切るなんて、我としたことが失敗だった)


 ガイアは苦い思いで唇をかみしめると、充填速度を上げるため強制スリープモードに入った。


 そしてガイアが目覚めたのは、日がとっぷりと暮れてからだった。彼女は緋色の瞳を輝かせて立ち上がると、


「うむ、充填率58パーセント。これならジン・ライムたちと出会っても問題ない」


 そうつぶやくと、夜の闇に紛れるように森の中へと入って行った。


   ★ ★ ★ ★ ★


 ヒーロイ大陸の最高峰、ユグドラシル山の中腹に建つ神殿のような建物の中庭で、初老の男がどう見ても13・4歳の少女と話をしている。


「そりゃあ団長くんと大賢人ライトのどっちを先に狙うかは君が決めることだけど、ボクは大賢人ライトを先に狙うことをお勧めするなあ。

 だって大賢人を倒さないと、君は両大陸で自由な行動ができないだろう? それに団長くんの行方ははっきりしていない。トオクニアール王国のあちこちから『ジン・ライムがいるとの話を聞いた』って報告が上がっているんだ。


 今、特定作業を行っているけど、恐らくロネット・マペットが協力しているんだろう、組織的に団長くんの行方を隠しているみたいだよ。

 それに比べて、大賢人はまだアルクニー公国から動いていない。それに大賢人がいなくなれば、後はまだ君と比べてひよっこしかいなくなる。団長くんを援護する勢力を削ぐこともできるじゃないかな? どう思う、マークスマン?」


 少女がにこやかにそう言うと、マークスマンは苦り切った顔で答える。


「ウェンディ様が言われることは解りますが、ライトの周りにはしっかりとした護衛が付いている。それでなくとも土の眷属がわしを見張っていた。そう簡単に手が出せないだろうな。わしがここに居ることが奴らにばれていないことだけでも僥倖だ」


 それを聞いて、ウェンディはニコニコして答える。


「そりゃあボクがいるからね? 風の精霊王を舐めてもらっちゃ困るよ。君の魔力を隠すくらいはお手の物さ。何なら『賢者会議』の執務場所に着くまで、ボクが君の魔力を透明にしてあげてもいいんだよ? 君にやる気さえあればね?」


 ウェンディがそう言った時、フードが付いた黒いマントに身を包んだ人物が現れて口を挟んできた。


「ウェンディ様の申し出は好都合。マークスマン、この際ライトを倒すべき。『賢者会議』側も君が逃げ回っていると思って油断している」


 その少女の背丈はウェンディとあまり違いはなかった。しかし、その身体から漏れ出る魔力は、決してその少女が並みの魔術師ではないことを物語っている。


(ふうん、カトル枢機卿の筆頭と言われるヴィンテルか。彼女が直々にここに来たってことは、『盟主様』もかなり焦っているってことだな)


 ウェンディはそう思うと同時に、


(やはり、カトル枢機卿は侮れない相手だ。それにヴィンテルは頭もいいみたいだな。マークスマンの最後の利用価値を、団長くんか大賢人ライトとの交換に見出したってことか)


 ヴィンテルの狙いを見破っていた。


(だとしたら、ここはどうしてもマークスマンには大賢人を狙ってもらわなきゃ)


 ウェンディはそう決心すると、ヴィンテルの提案に熱心に賛成した。


「マークスマン、ボクはヴィンテル殿の考えに従ったらいいと思うな。君が大賢人の執務室のドアの前に立つまで、ボクが君を隠してあげるから」


 ヴィンテルは油断のならない目でウェンディを見つめると、クスリと笑った。フードに隠れて見えないが、薄いが艶めかしい唇を歪めたヴィンテルは、とても禍々しく見えた。


 それだからこそウェンディは、


(やべ、ボクが考えていることを読んでいる!?)


 と心の中で焦ったが、


「四神にそこまでさせてはあたしの立つ瀬がない。あたしがマークスマンを送り届ける。ウェンディ様は途中まであたしたちを隠してくれればいい」


 ヴィンテルがそう言ったので、ほっと胸を撫でおろしたウェンディだった。


「分かった、そうさせてもらうよ。で、いつ出発する?」


 ウェンディが訊くと、ヴィンテルは有無を言わさぬように、


「今、出る。マークスマン、もちろん、準備はできているよね?」


 フードを少し上げて、黒い瞳でマークスマンを射すくめるように見て言う。マークスマンはその迫力に押されて、ただうなずいた。


 マークスマンの首肯を見たヴィンテルは、またフードを下ろしてウェンディに向き直り頼んできた。


「では、あたしたちをトナーリマーチに送ってほしい」


「分かった。君たちの武運を祈るよ」


 ウェンディは笑顔で『風の翼(ヴィンドフリューゲル)』で二人を包むと、望みの場所に転移させたが、その顔からは笑みが消えていた。ヴィンテルの最後の言葉が気にかかったからだ。


『気まぐれ風神の祈りは当てにならん』


(気まぐれ風神……こりゃボクも、少し自分の安全を気にかけていた方がいいかもね)


 そう思ったウェンディは、すぐにウェルムを呼んだ。



 ウェルム・ラクリマエ……『真実の涙』と名乗るこの男は、『盟主様』が率いる『組織ウニタルム』の中核として、長年動いてきた一人だ。


 彼はカトル枢機卿たちが『盟主様』のもとに集うまで、ただ一人で『組織』を運営し、盛り立ててきた男だった。ウェンディとひょんなことで知り合い、『組織』に迎え入れたのも彼なら、同じく初期からの仲間、イーグル・アルバトロスやバーディー・パー、それにテキーラ・トゥモロウと共に『ウェンディの四天王』と呼ばれていた。『組織』が彼の名をもって呼ばれることがままあるのも無理からぬことだったのだ。


「ウェンディ様、どうかされましたか?」


 ウェルムはウェンディの前に立つと、開口一番そう訊いた。彼はマークスマンがここに訪ねてきたことや、それ以降カトル枢機卿たちがしばしばウェンディを訪れていたことを知っていた。


「ウェルム、君がボクを『組織』に誘った時、何て言ったか覚えているかい?」


 少しの沈黙の後ウェンディが訊くと、ウェルムはうなずいて答えた。


「はい。摂理は世界が存在するための根本的なルール。それが調律しなければ歪みを生じるのは、摂理そのものに欠陥があるのではないか? と言いましたね、覚えています」


「君は『変わらないものは何もない。それが摂理ならば、摂理そのものも変わっていいはずだ』と言った。そして『盟主様』は不変の摂理を立て、世界を平穏で静謐なものにしたいと願っている……ボクをそう言って『組織』に誘ったよね?」


 椅子に座ったままウェンディが、その頃を懐かしむように言う。ウェルムは黙ってそれを聞いていた。


「……ボクはね、ちょうどその頃、摂理についていろいろ考えることがあったんだ。古い親友のこととかを思い出してね?

 だから君が言った言葉は非常に魅力的に思えたし、『盟主様』に期待するところも大きかった。きっと君が言ったように、平穏で静謐な世界ってものが実現するんだろうってね」


 言葉を切ったウェンディは、少し間を開ける。そこでウェルムは、自分が現状をどう思っているのかを訊かれているのだと悟った。


「私は初めのころは『盟主様』と親しく話をさせていただいていましたので、その当時の『盟主様』の思いは存じ上げているつもりです。

 しかし現状を見ると、その当時のことを忘れてしまわれたのか、カトル枢機卿たちの考えに染まってしまわれたのか……とにかく、ここ10年くらいの『組織ウニタルム』は、もうあの頃のそれじゃないと感じています」


 ぽつり、ぽつりと話すウェルムの顔には、やるせなさが滲んでいる。そんなウェルムに、ウェンディは驚くべきことを告げた。


「ねえウェルム、もしも『盟主様』が実は『運命の背反者(エピメイア)』だったって言ったら、君はどう思う?」


「……『盟主様』が、エピメイアだったということですか? ウェンディ様、それは確証があって仰っているんでしょうか?」


 あからさまに動揺したウェルムに、ウェンディは遠くを見る目で答えた。


「いや、ボクも確証なんてない。でも、『組織』がここ数年、行ってきたことを見ていると、納得できる部分もある。君はそう思わないかい?」


 ウェンディにそう問われて、ウェルムにも思い当たる部分があったのか、彼は憮然とした面持ちで立ち尽くした。



 一方その頃、トナーリマーチに姿を現したマークスマンとヴィンテルは、南方に見えるカーミガイル山を眺めていた。


 普通の人には見えないが、さすがに大賢人と四方賢者が常駐する場所であるため、多くの魔導士や魔戦士が守っているだけでなく、山全体が大賢人の魔力によって要塞のように防御を固められているのが分かる。


「ふん、土の眷属たちはわしがいなくなって安心したかと思ったら、まだライトの護衛を続けていたとはな。エレクラは心底わしのことが嫌いらしい」


 忌々し気につぶやくマークスマンに、ヴィンテルは屈託のない笑顔で言った。


「だからこそ、そなたが切り込んで来ようとは相手も想像だにしていないはず。逆にチャンスだと思わないか?」


「まあ、奇襲が成功したらライトを討ち取る可能性は高い。しかし、あれだけの防御や監視をどうやって潜り抜ける?」


 自信なさげにマークスマンが問う。最初はあれだけ闘志をむき出しにしていた彼だったが、実際に『賢者会議』の所在地で改めてその堅固さを目の当たりにして、自身がぐらついてきたようだった。


 ヴィンテルはそんなマークスマンを軽蔑の目で見て、


「突っ込むのが怖ければおびき出せばいい、あたしがやろうか? それともジン・ライムを狙うか? その場合、あたしはそなたを助けたりはしない」


 そう、突っ放すように言う。


 マークスマンは迷った。突っ込むことを選択した場合、奇襲の成功が大賢人ライトを討ち取れるかどうかのカギを握る。しかもできるだけ速やかに勝負をつけなければ、すぐに四方賢者が加勢してくるだろう。1対5で戦うことになった場合、マークスマンの勝利の可能性はかなり低くなる。


 かと言って、誘き出すのは不確定要素が高くなる。守護している魔戦士や魔導士が大挙して押し寄せてくるだろうし、土の眷属も黙ってはいないだろう。さらに言うと、大賢人自らが出てくるとも限らないのだ。


 それを考えると、ヴィンテルの助けが無くなっても、ジンを狙うのがこの場合の正解に思えた。相手にも周囲を守る仲間がいるだろうが、しょせんは小僧たちだ……この時のマークスマンは、完全にジンたちを見くびっていた。


「……今回はジン・ライムを狙うことにしよう」


 熟慮の末、マークスマンがそう言うと、ヴィンテルはあからさまに失望した顔をした。


 それが癇に障ったマークスマンは、


「ジン・ライムを狙うのには十分合理的な理由がある。彼は『繋ぐ者』だ。彼がいなくなれば、『魔王の降臨』を止めるものはいなくなる。たとえライトだろうと、その流れを止めることはできないだろう。そうすればヴィンテル殿たちの『盟主様』も行動がしやすくなるのではないか?」


 そう力説する。


 しかしヴィンテルは、


「ジンの力を削ぐには『賢者会議』の弱体化が前提。あたしはそなたに期待したが、そなたは自分の運命も見切れぬものだったとはな。好きにするといい」


 そう、怒ったような声で言うと姿を消した。


(わしがわしの運命を見切れぬだと? わしはこれでもスリングの後を受けて20年も大賢人を務めてきた男だぞ。魔族のこせがれに負けるわけなどない!)


 マークスマンは、ヴィンテルが消えた空間を憤懣やるかたない様子で睨んでいたが、不意に自分に向けて近寄ってくる存在に気付いた彼は、


「ふん、ヴィンテルの目晦ましが外れたから、身の程を知らぬ奴らが近寄ってきているな。

 いちいち相手をするのも面倒だ。わしは雑魚に構っているほど暇ではないんでな」


 そうつぶやくと、転移魔法陣を発動した。



 マークスマンが移動した先は、トオクニアール王国でも有数の港町、ルツェルンだった。


 彼はジンがホッカノ大陸に渡ることを見越し、海への玄関口ともいえるこの都市でジンを待ち受けることにしたのだ。


 彼は、自分を付け狙う魔術師たちの目を晦ませるため、自慢のあごひげを短く刈り揃え、服もそれまでの貴人が着るローブを捨てて誰もが着るような物に着替えた。


 さらに魔力を隠し、郊外に掘っ立て小屋を建ててそこを拠点とすることにした。


「……こんな暮らしは、魔物を求めて世界を旅していた若い頃以来だな。追われる立場でなければ、こんな暮らしもまた一興だ」


 小屋の前で焚火をしながら、マークスマンは独り言を言う。暗闇の中、マークスマンの瞳にはゆらゆらと揺れる炎が映っていた。


「ジン・ライムはロネット国王から甚く気に入られたと聞く。とすれば、国王は彼を自慢の船でホッカノ大陸へと送り出すに違いない。ジンはきっとこの町に姿を現す」


 マークスマンはそう言うと星空を見つめ、過ぎた若い日々を思い出すのだった。


 マークスマン……本名チェスター・リーは、アルクニー公国のヘンジャーという町に生まれた。もともとリー家はライム一族やリング一族と同様、魔力が強い家系であり、何人もの魔法博士や賢者を世に送り出してきた。


 数代前の先祖であるガストン・リーは、チェスターと同じマークスマンを名乗り、大賢人にも選ばれたほどの人物だった。


 しかし、彼の妻がクロウ一族につながる家系だったことを暴露され、世を騒がせた責任を取る形で大賢人を退いてから、リー一族は不遇な立場となってしまった。それ以降、どれほど力があっても、どれほど世のために力を尽くしても、一族から大賢人や四方賢者はおろか、魔法博士すら任命されなくなってしまったのだ。


 そんな中、人一倍強力な魔力を持って生まれついたチェスターは、後の大賢人シャープに見出され、エウルア・ライムと共に魔術師としての修行を開始した。


 師や一族の期待を一身に背負ったチェスターは、だんだんと頭角を現し、エウルアと共にシャープの両腕と言われるまでに成長した。そしてシャープが大賢人になった時、彼はエウルアと一緒に『賢者会議』に仕える身となった。


 ただし、ここでチェスターが失望したのは、同じ『賢者会議』で仕事をするといっても、エウルアは四方賢者スリングとして迎えられたのに、彼の場合は監察担当魔法博士として一段低い位置での採用だったことだ。


(確かにスリングはライム一族でも天才を謳われた魔術師だが、俺だってリー一族でも右に出るものはないくらいの術者だぞ)


 鬱屈したマークスマンは、大賢人シャープの許しを得て両大陸を巡る旅に出た。それがシャープの深慮によることだとは気付かないまま。


   ★ ★ ★ ★ ★


 僕たち『騎士団』は、トオクニアール国王ロネット様の協力で、心配したマークスマンの襲撃も受けず順調に旅を続けていた。


「ジン、バトラーからの報告だが、やはりホッカノ大陸に渡るには非常の手段が必要みたいだよ」


 王都フィーゲルベルクを離れて2日目、王国の東に位置するオッペルへと続く街道沿いに宿を取った僕たちは、海への玄関ともいえるルツェルンの船会社を調べてくれたワインから、あまり芳しくない報告を受けた。


「僕たちをホッカノ大陸に渡してくれる便を持つ会社はなかったってことだね?」


 僕はそう訊いたが、それは最初から想定内だ。


 そもそもトオクニアール王国とマジツエー帝国は中央群島の帰属を巡って長らく係争状態にあった。大賢人スリング様の裁定で領土問題には大まかな決着が付いたが、局地的にはまだ紛争が続いている。


 そんな中で貿易ならともかく、旅客を運ぶ船便が定時運航されているはずもない。ワインが調べたのは貿易船による渡航……いわゆる密航の可能性だった。


 ワインは肩をすくめて答える。


「参ったよ。マジツエー帝国は今でも移民を受け入れている。当然、渡航手段はあるはずなんだが、現在トオクニアール王国の出入国管理は特にマジツエー帝国向けの船便に対してやたらと厳しいみたいなんだ。


 バトラーの手腕をもってしても、ボクたちを乗せていいって会社はなかったそうだから、かなりの締め付けがあるんだろうね」


「でも、ド・ヴァンさんたちは無事にマジツエー帝国に旅立ったのよね? その方法は使えないの?」


 シェリーが訊くと、ラムさんが首を振った。


「ド・ヴァン殿はトオクニアール王国領の東端、アロハ群島までの船便を使ったんだ。そこから『ドラゴン・シン』ホッカノ支部が持つ船でマジツエー帝国に向かうらしい。

 何にせよ、ド・ヴァン殿や『ドラゴン・シン』に有り余るほど財力があるからできることだ。私たちには到底真似はできないさ」


「でもそれじゃ、いつまで経ってもマジツエー帝国に行けないよ。ワインお兄ちゃん、何とかならない?」


 チャチャちゃんがすがるような眼をして言うと、ワインは難しい表情で考え込んだ。


「まあ、策がないこともない。だからジンジャーさんに出かけてもらっているんだ。とりあえず彼女が帰ってくるのを待つことにしようか」


 ワインがそう言うと、メロン・ソーダさんが済まなさそうに言う。


「わたくしの魔力が元どおりになりさえすれば、皆さんを新大陸に運ぶことなど簡単なのですが。回復にはもうしばらく時間がかかるみたいです」


 ちなみにメロンさんは、うちの最年少団員である13歳のチャチャちゃんより幼く見えるが、元は木々の精霊王だった方だ。何でも数千年前にはアルケー・クロウと『摂理と世界の成り立ち』を研究していたらしい。


 彼女なら『魔族の祖』と言われるアルケーのことや魔族のことをいろいろと知っているはずだが、当時のことを訊いても差し障りがないことしか口にしてはくれなかった。


 僕だって5千年前の世界で経験したことの中には、思い出したくもないことはある。きっとメロンさんもそうだと思ったから、それ以上深く詮索することはしなかった。


「ご主人様、この際、四神の皆様のお力をお借りするわけにはいかないのでしょうか?」


 群青色のメイド服を着た銀髪の美少女、ウォーラさんが訊いてくる。


 彼女はどこから見ても普通の人間にしか見えないが、実は魔力マナを動力源とする機械だ。自律的魔人形エランドールと言われる彼女は、『組織』の手によって製作されたが、ある事情で僕がマナを与えたため、僕をご主人様として奉ってくれている。


 感情も持ち、人間のように自分の行動は自分で決定することができるうえ、さまざまな機器を搭載しているので、そんじょそこらの魔導士や魔戦士では彼女には刃が立たないだろう。


 僕は、ウォーラさんの琥珀色した瞳を見て答える。


「うん、最後の手段としてそれも検討しているよ。ただ問題は、ウェンディが神出鬼没だってことかな」


 それを聞いて、メロンさんがぱあっと顔を輝かせた。


「ウェンディには仲良くしてもらいました。そういうことであれば、わたくしがウェンディと話をつけましょう」


「一通り意見や考えは出たようだね? じゃ、ジンジャーさんの報告次第で、メロンさんにウェンディと連絡を取ってもらうってことでいいかな?」


 僕が言うと、その場の全員がうなずいた。



 オッペル街道はトオクニアール王国でも主要な街道だが、夜間の山中は非常に暗い。特に新月の夜には一寸先も見えない漆黒の闇となる。


 その闇をものともせず、すたすたと歩く旅人がいた。旅人と言っても、黒いメイド服に身を包んだ銀髪の女性である。女性が夜間、山中を歩くのは危険この上ないのだが、彼女は何も気にせずにひたすら先を急いでいた。


 彼女の名はガイア・ララ。ジンの側にいるウォーラの準姉妹機で、正式型番PTD11、コードネームは『お姉さま』というエランドールだった。


「この魔力は確かに魔族のもの。ジン・ライムの魔力に違いない。今度は逃がさんぞ」


 彼女はそうつぶやきながら、20マイル(この世界で約37キロ)もの暗黒の山中をわずか30分で踏破し、宿屋が立ち並ぶ街道まで下りてきた。


 同じくジンを狙うマークスマンはジンの行き先をマジツエー帝国と予想し、渡航のために最大の港町であるルツェルンを目指すと読んで先回りしていたが、彼女は


(マジツエー帝国とトオクニアール王国は係争中で、貿易以外の渡航は凍結されている。ジン・ライムがマジツエー帝国に行くためには、密航かその他の方法しかない。


 ド・ヴァンのようにアロハ群島まで行っても、それ以降の当てはないだろう。とすると、出入国の審査が厳しいルツェルンからではなく、別の場所から船に乗る可能性が高い)


 そう予想し、一応ルツェルンにも行くことができるオッペル街道沿いを捜索していたのである。


 彼女は碧眼を細め、空間に残る魔力の筋を見逃さないように注意しながら、ゆっくりと深夜の町を歩いていく。月もなく、星明りすらない闇の中で、ただ彼女だけが動いていた。


 やがて彼女は、一軒の宿屋の前で立ち止まった。


「ここに居る。この魔力の波動は、確かにジン・ライムのものだ」


 ガイアはそうつぶやくと、すぐに斬り込むべきか考える。寝込みを襲うのは奇襲の最たるものだ。たとえジンがどれほどの魔戦士だったとしても、先手を取ったという心理的優位に立つことができる。


 しかし、ジンほどの騎士である。動揺はほんの一瞬だろう。その一瞬の隙を突くことが出来なければ、彼のほかに『見えない戦士』ラムや『智謀の策士』ワイン、そしてウォーラが立ちはだかることになる。


「……となると、現状のマナ充填率では心もとない。せめて70パーセントまで充填しなければ。これが我の最後の戦いならば、悔いのないように準備が必要だな」


 彼女はそうつぶやくと、街道沿いに音もなく東に向けて走り出した。


 走りながら彼女は、周囲の地形や植生、そしてルツェルンとの位置関係を計算し、やがてルツェルンへの分かれ道となっている場所まで来ると、街道を見下ろせる場所に生えた草むらの中に腰かけて、省力モードに入った。


(今、充填率は52パーセント。6時間後にジン・ライムがここを通りかかるとして、急速充填すればマナ充填率は90パーセントに近くなる。明日、ジンの墓をここに建てて、旦那様の無念を晴らす!)



 次の日の朝、僕たちは早朝から僕の部屋に集まった。昨夜遅く、と言っても払暁に近い頃、ジンジャーさんが帰って来たのだ。


 ジンジャーさんはかなり急いで来たのだろう、顔には疲れの色が浮かんでいたが、黒曜石のような瞳がキラキラと輝いていたので、僕は彼女がワインから頼まれた使いに成功したのだなと思った。ただ、それがどんな使いだったのかは想像もつかないけれど。


「お疲れ様でしたね、ジンジャーさん。疲れているところ悪いけれど、報告してくれないかい? あ、ウォーラさん、済まないが彼女にココアか何かを出してもらえると助かるよ」


 ワインが言うと、ウォーラさんは僕の方に顔を向ける。僕は微笑んでうなずき、


「悪いけれどお願いするよ。ジンジャーさんの分だけでいい」


 そう言うと、ウォーラさんも笑って、


「かしこまりました。ジンジャーさん、しばらくお待ちくださいね?」


 そう言って自分の部屋に行き、ほどなくしてほかほかと湯気を立てるカップを持って戻って来た。


「疲れた時には甘いものが一番です。まだ少し熱いですので気を付けてくださいね」


 ウォーラさんが長机の上にカップを置くと、ジンジャーさんは


「ありがとう。元気が出るわ」


 そう言って両手でカップを包み込むようにして、ふうふうと息を吹きかけた後、どろりとした甘い液体を少し口に含んだ。


「……とっても甘くておいしいわ。ご褒美としては十分よ」


 ジンジャーさんはウォーラさんに笑いかけると、微笑のまま僕とワインに言った。


「団長さん、わたしたちをホッカノ大陸まで送ってくれる人たちを見つけてきました」


 それを聞いて、僕は信じられない気持ちだった。どんな船会社も頑として僕たちを運ぶことを拒否していたのに、いったいその奇特な人たちは誰なんだろう?


 僕の表情を読んだのだろう、ジンジャーさんはもう一口ココアを飲むと、すっかり人心地が付いた表情で補足した。


「金と心意気次第でどんな荷物もどんな所へだって運んでくれる人たちがいます。わたしが話をつけて来たのは、カイ・ゾックという運び屋です。

 出航は5日後、ミーネハウゼンから出発します。船の名前は『アノマロカリス号』です。もちろん、わたしたち全員の乗船を許可してくれました」


「運び屋か。そんな仕事しょうばいがあることは聞いていたが、実際に会ったことはなかった。ワイン、君はそのカイ・ゾックとかいう男と知り合いなのか?」


 ラムさんが訊くと、ワインは葡萄酒色の髪を形のいい手でかき上げながら、


「ノンノン。ボクも会ったことはあるが、どちらかというと父上の知り合いだよ。何でもホッカノ大陸に商用で行く際は、彼に護衛を頼んでいるみたいだからね。そのことを思い出したのさ」


 ラムさんに流し目をキメて言うワインだった。


「まあ、何にせよこれでマジツエー帝国に行けるわね。こんな時はほんっと、ワインって役に立つわよね」


 シェリーがにこやかにそう言い、僕たちは早速ミーネハウゼンに向けて出発する準備を始めた。


   ★ ★ ★ ★ ★


 僕たちがミーネハウゼンに向けて宿屋を発った時、朝日が山の向こうから顔を出したところだった。


「今日もいい天気になりそうね。変な事件に巻き込まれることさえなければ、旅って本当にいいわよね」


 シェリーは今日も元気いっぱいだ。彼女はお天気がいいとご機嫌も良くなる質で、朝ごはんが美味しかったらさらにテンションが跳ね上がる。今日はその条件が全部そろっていたので、ウキウキしているようだった。


 チャチャちゃんも、そんなシェリーにつられて楽しそうに歩いている。シェリー大好きっ子の彼女は、いつもシェリーにまとわりついているけれど、楽しいときは話も弾むらしく、朗らかな笑い声が聞こえてくる。


 ラムさんはいつもどおり、落ち着いた態度で歩を進めている。彼女は戦士として育てられ、そんな立ち居ぶるまいが身についているのか、シェリーと違って外的条件や自身の心の動きで機嫌が変わるってことはあまりない。すごくストイックなのだ。


 それはワインやジンジャーさん、そしてメロンさんも同様だった。


 けれど、一人だけ浮かぬ顔をしていたのがウォーラさんだった。彼女は酷く真剣な顔をして、僕たちが宿を出た瞬間から辺りをしきりに気にしていたのだ。


「どうしたんだい、ウォーラさん。何か気になることでも?」


 ウォーラさんはエランドールだ。彼女は索敵や戦闘に特化した性能が与えられていて、かなり遠くから敵の魔力や生体反応を判別できる。僕たちが彼女の働きで奇襲を避けたことも一度や二度のことではない。


 案の定、彼女は心配そうな顔を僕に向けて言った。


「はい。実は昨夜から不穏な魔力を感じているのです。かなり速いペースで山道を突破してきて、4点(午前2時)頃には私たちの宿周辺をゆっくりと移動していました。


 その後、急に東に向けて走り去ったんです。きっと、ご主人様の居場所を特定したので、この後の道で奇襲を仕掛けようとしているに違いありません」


 その言葉に、ラムさんが反応した。


「そいつがジン様のことを狙っていて、場所を特定したなら、なぜその時に斬り込んで来なかったのかな? 昨夜は私たちも疲れていて、襲われたらちょっとマズい状況になっていたと思うぞ?」


「確かに、わたしもワイン殿の使いを終えた安心からか、ぐっすり寝入ってしまいましたからね。シェリーさんやチャチャさんは即応できたかもしれませんが」


 ジンジャーさんが言うと、シェリーも頭を掻きながら、


「えへ♡ 実はアタシもチャチャちゃんに誘われてカードゲームしていたから、ウォーラが言う時間にはぐっすりと寝ちゃってたかな? ごめん、ジン、油断しちゃって」


「だ、団長さん、あたしが誘って付き合わせてしまったんです! 本当にごめんなさい。だからシェリーお姉さまを怒らないであげて!」


 チャチャちゃんと一緒に謝る。


「いや、別に謝るほどのことじゃない。それよりウォーラさん、君のその素振りでは、その相手に心当たりがあるんだろう? ひょっとして『お姉さま』かい?」


 僕が訊くと、全員がウォーラさんを見る。彼女は注目を浴びてちょっとどぎまぎしているようだったが、すぐにうなずいて言った。


「はい。魔力は感じましたが生体反応がありませんでした。それに私が関知した魔力の属性は『水』。山中の行動速度と言い、十中八九あれはガイアだと思います」


「それがガイアさんだったとして、なぜ彼女はその時にジンを襲わなかったのだろう?

 ウォーラさんの前で悪いが、彼女はジンさえ討ち取れれば、他にどれだけ迷惑が掛かろうが一顧だにしないと思っていたんだが」


 ワインが問うと、ウォーラさんは少し考えた後、


「……恐らく、マナが足りなかったのではないでしょうか? ガイアには私と違ってマナの生成装置が内蔵されています。それで、ご主人様を待ち伏せると同時にマナの充填のためにいったん襲撃を見送ったのだと思います」


 確かに、ガイアさんが主人たるアクア・ラングを失ってからもう二月ほどが経つ。ガイアさんのマナクリスタルの容量は判らないが、ウォーラさんならとっくにマナ切れになっているころだ。それなのにまだ活動していられるのが不思議だったが、マナを自前で生成できるのなら納得がいく。


 僕がそう変なところを感心していると、ワインが訊いてくる。


「ウォーラさんの見立てが正しいだろうね。でないと昨夜襲撃を見送ったことの説明が付かない。となると、この先のどこかでガイアさんと出会うことになる。彼女と会うということは否応なく戦闘が始まることを意味しているが、ジンはどうする?」


「どうするって?」


 僕が訊き返すと、ワインは肩をすくめて言い直した。


「やれやれ、この状況で冗談でもそんなことが言えるなんて、やっぱりキミは大物だよ。

 ボクたちはマジツエー帝国に向かっている。あちらではド・ヴァン君も待っている。正直、こんな面倒ごとに関わっている時間が惜しいんだ。


 だから道を変えてガイアさんに肩透かしを食らわせるって方法が一番だと思うよ? 彼女は『組織ウニタルム』の援助なしで動いているから、ホッカノ大陸までは追っては来られないし」


 ワインが言うことは一理ある。ガイアさんは『組織』の一人として動いていたとはいっても、現在は誰の指揮下にも入っていない。ただ、主人であるアクアの仇を取るためだけに僕を狙っているのだ。


 そんな彼女を倒しても『組織』は何の痛痒も感じないだろうし、彼女から得られる情報だってたかが知れている。いわゆる『労多くして益少なし』ってやつだ。


 だが僕は、どうしてもウォーラさんとガイアさんを仲直りさせてあげたかった。ガイアさんが僕たちと一緒に行動してくれるなら、ウォーラさんにとっても最高だろう……そう思い続けていたのだ。そのチャンスが巡ってきた今、それを見過ごすことは僕にとって難しかった。


「いや、ガイアさんが近くにいるなら願ってもない展開だ。このまま進もう」


 僕がそう言うと、ワインとウォーラさんが反対する。特にウォーラさんは、顔色を青くして僕に取りすがり、


「ご主人様、ご主人様が私のことを思ってくださるのはありがたいのですが、私はご主人様や仲間たちに、私のことで危ない目にあってほしくはありません。

 ワインさまの言うとおり、ここでガイアを置き去りにすれば、いずれはマナ切れで動けなくなるのは判っています。どうかガイアを避けて、ホッカノ大陸に参りましょう!」


 そう言ってくる。ワインを見ると、彼も黙ってうなずいている。


 僕はシェリーたち残りの団員の顔を見た。シェリーとラムさんは今までの経緯を知っているから、何とも言い難い表情をしていたが、ジンジャーさんは


「一度、ガイアには会いました。確かに侮れない敵です。しかし、エランドールとしての宿命に囚われているのなら、ここでそれを解き放ってあげることも大切なのではないでしょうか?」


 そう言うし、メロンさんも


「すべては運命です。ここで逃げても、邂逅する運命ならいつかどこかで出会います。

 同じ出会うなら、団長さんに有利な状況での出会いの方がいいのではないですか?」


 そう言ってくれた。


 シェリーとラムさんは、僕が心を決めた顔をしているのを見て、諦めたようにため息とともに言った。


「はあ……ジンのことだから、ガイアと戦うって言うと思っていたわ。言い出したら聞かないことは解ってるから、せめて一人で何とかしようなんて思わないでね?」


「その約束ができないなら、私たちは剣にものを言わせても団長をホッカノ大陸に引きずって行きます」


 僕は改めてみんなを見て言った。


「僕のわがままに付き合わせて済まない。でも僕は、ヒーロイ大陸でのことはヒーロイ大陸で決着をつけたいんだ」



 ガイアが目覚めたのは、太陽が東の山の端から指一本分離れた頃だった。


「……マナ充填率89パーセント。我の最後の戦いに相応しい働きができそうだ」


 ガイアはそうつぶやくと同時に、生体反応探知装置と魔力探知装置を起動させる。すぐに彼女の制御装置と戦闘補助システムにジンたちの存在が映った。


「……戦闘隊形……ウォーラも我の存在には気付いていたか」


 そうつぶやくが、その声には若干当惑の色が混ざっていた。


「……団員が二人増えている。一人はこの前会ったジンジャーとかいう女だが、後の一人は何者だ? ひどく静かで温かい波動だが、恐ろしいほど平坦だ」


 途端にガイアは、今まで感じたことのない感情に包まれた。怒りとも、焦りとも違う、それでいて悲しみに似た感情を持て余しそうになったガイアは、ゆっくりと立ち上がり、


「我はジン・ライムを倒す。それ以外何も考える必要はない」


 そう言うと、街道の真ん中へと歩いて行った。


 ガイアの動きは、ウォーラさんも掴んでいた。


(探知装置の魔力を隠しもしない……ガイアはこの戦いにすべてを賭けているのですね。それなら私も全力で戦わないと!)


 ウォーラさんが思わず魔力を噴き出しそうになるのを見て、僕はわざとのんびりした声で訊いた。


「ウォーラさん、君のマナ充填率はどのくらい?」


 突然訊かれてウォーラさんはびっくりしたようだったが、すぐに答える。


「え!? え、えーと、今充填率は72パーセントですけど」


「満タンにしておかなくて大丈夫?」


 僕の言葉に、ウォーラさんはちょっと考えたが、顔を赤くして答える。


「え? それは満タンの方が心配はございませんが、往来でマナクリスタルを脱着するのも気恥ずかしくて……」


 まあ、ウォーラさんの動力源であるマナクリスタルは、ちょっと特殊な部位にある。何も知らない人がその装着場面に出くわしたら、間違いなく僕はHEN〇AI認定されるだろう。


 でも僕は、ウォーラさんの股間に手を突っ込むようなヒワイな真似をしなくてもマナチャージができることに気が付いていた。まあ、その方法も恥ずかしいっちゃ恥ずかしいが、少なくともマナクリスタルを外すより簡便で、ウォーラさんの動きを止めなくて済む。


「分かった。ウォーラさんが安心するなら、マナを補充しておこう」


 僕が言うと、ウォーラさんだけでなくラムさんやシェリーまでびっくりして僕を見た。


「な、な、何言ってんのよジン。こんな往来のど真ん中でウォーラによがり声をあげさせるつもり!? アンタって見られていたらコーフンするタイプなの?」


「やだ、団長さんってばHE〇TAIですか?」


 シェリーとチャチャちゃんがそう言うのを、ウォーラさんが真っ赤になりながら、


「いえ、よがり声って。誤解されるような言い回しは避けてください」


 必死にシェリーたちに抗議している。


「待て、今までジン様がウォーラのマナクリスタルを交換している場面に何度か出くわしたが、なぜかウォーラは一度だって変な声を上げたことはないぞ?

 それにガイアが側にいる状況で、ジン様がウォーラを無防備な状態にするはずはない。ジン様、どうやってマナを補充するつもりですか?」


 さすがはラムさんだ、彼女自身も思うところはあるだろうが、冷静に物事を判断してシェリーたちを鎮めてくれた。そのタイミングで僕はウォーラさんに言った。


「シェリー、ウォーラさん、心配しなくていい。君たちが思っているほど破廉恥な方法じゃないし、そんなに時間もかからない。二人とも、ちょっとこっちに来てくれ」



 ウォーラさんへのマナ補充も終わり、僕たちはミーネハウゼンへの道をまた歩き始める。


「しかし、よく造ってあるわね。まさかおへそからマナを補充するなんて」


 シェリーが言うと、当のウォーラさんも感に堪えないように、


「すごいですご主人様。よく気付かれましたね? おかげでマナ補充のたびに恥ずかしい思いをしなくて済みます」


 そう言ってキラキラした目で僕を見る。


「いや、エランドールにおへそがあるのはどうしてだろうって考えたんだ。単にテモフモフ博士がこだわったという考えもあるけれど、赤ちゃんってお母さんのお腹の中では母体とへその緒で繋がってるじゃないか? それでもしかしてって思ったんだ」


 僕が言うと、ワインが


「何にせよ、これでウォーラさんの弱点と思われていた部分がカバーできるんだ。お手柄だよジン。それはそうと、そろそろ戦闘準備をしたほうがいい。お出ましだ」


 前方を睨みながら槍の鞘を外す。


 僕たちも、ワインの言葉で一斉に前を向く。いる、まだ数百ヤード先ではあるが、ぽつりと立つ黒い影が見えた。その影は青く澄んだ魔力を放ち、ゆっくりとこちらに近付いて来ている。


「……間違いありません、ガイアです」


 ウォーラさんがそう言いながら背中の大剣をゆっくりと抜き放つ。と同時に、シェリーとチャチャちゃんは狙撃のために隊列を離れ、ジンジャーさんはガイアの意表を突くために隠形した。


「団長、まずは私とウォーラで掛かります。ワイン、団長を頼むぞ!」


 赤い髪は帯電して風もないのにゆらゆらと揺れ、身体の周りには放電が光っていたラムさんは、長剣を構えるとウォーラさんと共にガイアへと肉薄する。


「性懲りもなくまた現れましたね。ご主人様には指一本触れさせません!」


 身体中を黄金色の魔力で覆ったウォーラさんが、大剣を振り上げながら言うと、


「おとなしく投降しろ!」


 ラムさんがウォーラさんを上回るスピードでガイアに迫りながら言った。


 ガイアは突っかかって来る二人を冷めた瞳で眺めながら、薄笑いを浮かべてつぶやく。


「我が願いを邪魔する者は、たとえ誰であろうと許さない。『鳳仙花』!」

 ズドドンッ!


 ガイアは突っ込んで来るラムとウォーラに向かって、おびただしい魔弾を放つ。


「くそっ!」

 シャキーンッ!


「ムダですっ!」

 ズバンッ!


 二人が飛んでくる魔弾を切り払った瞬間、


 ドグァーンッ!


 物凄い爆炎が二人を包み込んだ。ガイアの魔弾はただの魔弾ではない、命中すればその場で水蒸気爆発を起こすものだった。


「ラムさん! ウォーラさんっ!」


 僕が『払暁の神剣』を構えて走り出そうとしたとき、


「ジン、動揺するな。来るぞ!」


 ワインの叫び声が響く。それと同時に、僕の目の前で渦巻く火焔と砂塵が少し乱れた。


「はっ!」

 チィィンッ!


 火焔と砂塵の目晦ましを突き破ってガイアが突進してきた。信じられないほどの動きだったが、ワインの警告のおかげで間一髪、『払暁の神剣』はガイアの槍を弾いた。


「ふん、仲間をやられて動揺しているかと思ったが、さすがだな」


 ガイアは碧眼を細めて僕を睨むと、槍を回して叩きつけるように飛び掛かってくる。


 ぶうんっ!

「だっ!」


 僕は槍の下をかいくぐり、『払暁の神剣』を横に払う。しかしガイアはそれを予期していたのか、後ろへと跳びながら魔法を撃ってきた。


「もらったぞ!『向日葵』!」

「『大地の護り(ラントケッセル)』!」

 ドグァアアーンッ!


 ガイアが放った魔法は、僕を包み込んで急速に押し潰すような動きを見せた。しかし僕のシールドが間一髪間に合い、凄まじい爆風が辺りの空間を震わせた。


 やがて、水蒸気の靄が晴れた時、ガイアは感心したような顔で僕を見て言う。


「ふむ、我の『向日葵』がこうも完璧に阻止されたのは初めてだ。まさにそなたは旦那様が畢生の敵と仰ったとおりの相手だな」


「お褒めにあずかって光栄だけれど……」


 僕はわざとゆっくりとした口調で、


「初撃を外したのは失敗だったな。これで貴様は袋のネズミだ、観念しろ」


 そう言うと、ガイアはサッと周囲を見回し、薄く笑って答えた。


「ウォーラも、『見えない戦士』も無事だったか。まあいい、こうなることも最初から想定内だ。遠慮なくかかって来るがいい」


「ああ。言われなくてもそのつもりだよ」


「ご主人様に仇なす者は、私が許しません!」


 ラムさんとウォーラさんもガイアの包囲網に加わって言う。ガイアはその言葉を聞いて呵々大笑し、


「我の最後の戦いは、思ったより楽しいものになりそうだ。では、最後まで我にとことん付き合ってもらおう」


 水色の魔力を燃え立たせ、魔力の乗った槍で僕に突き掛かって来た。


「ジン・ライム、我が主たるアクア・ラング様の苦しみを味わうがいい!」


   (強欲者を狩ろう! その3へ続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

いよいよガイア、そしてマークスマンにまつわる戦いが火ぶたを切りました。この二人との戦いは、5千年前の戦いと共にジンの運命を暗示するものになる予定です。『マジツエー帝国編』までの物語は、戦いの連続になりそうですが、単調にならないように頑張ります。

では、次回もお楽しみに。

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