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Tournament39 Load of the Void hunting:part4(魔境の主を狩ろう!その4)

ジンの加勢に向かったワインやド・ヴァンたちは、途中の罠に苦戦する。

そのころジンはついに精霊王たちとの戦いに突入していた。

マジツエー帝国で動きがある中、ジンと精霊王との決戦はどうなるのか?

【主な登場人物紹介】


■ドッカーノ村騎士団

♤ジン・ライム 17歳 ドッカーノ村騎士団の団長。ケンカにはめっぽう弱く、女性に好感を持たれやすいが、女心は分からない典型的『鈍感系思わせぶり主人公』

♤ワイン・レッド 17歳 ジンの幼馴染みでエルフ族。結構チャラい。槍を使うがそれなりの腕。お金と女性が大好きな『やるときはやる男』

♡シェリー・シュガー 17歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子だが報われない『負けフラグヒロイン』

♡ラム・レーズン 18歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』

♡ウォーラ・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造った自律的魔人形エランドール。ジンの魔力マナで再起動し、彼に献身的に仕える『メイドなヒロイン』

♡チャチャ・フォーク 13歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。村では髪と目の色のせいで疎外されていた。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。

♡ジンジャー・エイル 20歳 他の騎士団に所属していたが、ある事件でジンにほれ込んで移籍してきた不思議な女性。闇の魔術に優れた『ダークホースヒロイン』


■トナーリマーチ騎士団『ドラゴン・シン』

♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン 20歳 アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、双剣の腕も確かだが女好き。

♤ウォッカ・イエスタデイ 20歳 ド・ヴァンのギルド副官。オーガの一族出身である。無口で生真面目。戦闘が三度の飯より好き。オーガの戦士長、スピリタスの息子。

♡マディラ・トゥデイ 19歳 ド・ヴァンのギルド事務長。金髪碧眼で美男子のような見た目の女の子。生真面目だが考えることはエグい。狙撃魔杖の2丁遣い。

♡ソルティ・ドッグ 20歳 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。黒髪と黒い瞳がエキゾチックな感じを醸し出している。調査・探索が得意。

♤テキーラ・トゥモロウ 年齢不詳 謎の組織から身分を隠して『ドラゴン・シン』に入団した謎の男。いつもマントに身を包み、ペストマスクをつけている。


   ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★


 セレーネさんは、ふうとため息を一つつき、残念そうな声でこう話してくれた。


「『正しい者が正しい』、それがジン様の信念だとしたら、あなたの歩む道は茨の道になるでしょうね。行為者が誰であるかで物事の善悪が容易くひっくり返る世の中ですもの。

ジン様、あなたの信念には反するかもしれませんが、セレーネからも一つ、言葉をお送りいたします。以前、風の精霊王ウェンディ様とお話しした時、彼女はこうおっしゃっていました。『正しいことが正解とは限らないよ』と」


 それを聞いて、僕は黙ってうなずたが、実は


(ウェンディって、風の精霊王だったのか!? あんな不真面目そうな奴なのに?)


 そのことにびっくりしていたのだ。


 僕の沈黙をなんて思ったのかは知らないけれど、セレーネさんはまた真面目な顔に戻って、


「では、少しここでお待ちください。セレーネはアクアにジン様の到着を知らせてきます。アクアの弱点をお忘れなく。ご武運をお祈り申し上げますね」


 そう言って、地下室の方へと歩いて行った。


(アクアって奴とは初対面だが、僕は絶対に負けられない)


 僕はそんな決意を胸に、『払暁の神剣』の鞘をゆっくりと撫でた。



「思ったより時間がかかったな。ジン・クロウはどこにいる?」


 セレーネが『宝物庫』に入ると、アクアが不機嫌そうに声をかけてきた。


 セレーネはにっこりと笑うと、アクアの傍らに控えたブラウに、


「ジン・クロウはもうそこまで来ています。フェン様に到着を伝えると言って待たせてありますが、もう案内して構いませんか?」


 そう訊くと、ブラウはチラッとアクアの顔を見て、アクアのうなずきを確認して答えた。


「アクア様はお待ちかねのようです。すぐに連れてきてください」

「了解しました」


 セレーネがうなずいて立ち去ろうとした時、ブラウはそれを留めて念を押すように訊く。


「ちょっと……ジン・クロウは一人ですか?」


 セレーネは振り返ると笑顔で答えた。


「はい。途中までは別の騎士団からの護衛がついていましたが、ヴォルフガング・ガイウス・フォン・ローゼンバッハ・ヨハン・ダヴィデ・フォン・ヘーゼルブルク19号と20号の手で排除しています」


「ふん、フェンの大時代的な言い回しが敵に付け入る隙を与えたようだが、排除できたのならいい。お前たちエランドールもなかなか優秀じゃないか」


 アクアはご満悦な表情で笑ったが、その笑顔はセレーネの次の言葉で凍り付いた。


「そうでもございません。19号も20号もジン・クロウに倒されてしまいましたから」


「倒された?……ふふ、面白い。ジン・クロウという男、フェンが一度手合わせして逃げ帰ったと聞いたが、存外戦い甲斐のある奴かもしれないな」


 アクアは青い瞳を不気味に輝かせてそうつぶやいたが、すぐにブラウに言った。


「それほどの騎士だ、迎えも出さないのは失礼だろうな。ブラウ、お前はセレーネとともにジン・クロウを出迎えてやれ」


 それを聞いてセレーネは


(ちょっとマズイわね。ブラウが一緒に来たら、ジン様にこれ以上のアドバイスをしてあげられなくなる。でもアクアの側から離れることを嫌うブラウの事だから、ひょっとしたら命令を拒否するかも……)


 そう期待したが、


「分かりました」


 ブラウは聞き分け良くそう言うと、


「ではセレーネ殿、ジン・クロウ殿の所へご案内を」


 セレーネに向き直ってそう言った。セレーネの心の中を見透かすような冷たく青い瞳だった。



 地隙の地下道から『宝物庫』を目指していたワインとラムは、真っ暗な中、松明の光を頼りに進んでいた。


「真っ暗な割にはコウモリも巣を作っていないな。何か不思議な気がする」


 ラムがつぶやくように言うと、その言葉は地下道の壁に反射して思ったより響いた。


「まあ、出入口がああだからね? いかにコウモリだって毒ガスがたゆたうマイホームなんて欲しくはないだろうさ」


 ワインがのんきな声で言うが、次の瞬間、彼はさらに声を落として、ほとんどラムの耳元でささやくように


「これから先は声を出さない方がいい。でないとすぐに感づかれる。ラムさんも気付いていると思うが、凄い魔力の持ち主みたいだからね。魔力は隠せるかい?」


 そう訊くと、ラムは首を振って、


「先天的な魔力は隠せるが、魔法石マナストーンに封入された魔力を隠すのは難しいな。仕方ない」


 そうつぶやくと、ごそごそと胸元から魔法石を取り出し、腰のダンプポーチに入れるとポーチの口をしっかりと締め付ける。


「このポーチは母上から頂いたもので、魔力を外に通さない。火の魔力は使えなくなるが、相手に見つかって元も子もなくすよりはいいだろう」


「まあ、それはそうだね。取り出すのは簡単かい?」


 ワインが同意しながら訊くと、ラムはうなずいて答える。


「ああ、こう言うことは何度かあったから、何度も経験している。2秒もあれば属性転換は可能だ」


「それは良かった。では、これから先は本当にシャレにならないくらいの危険が待っている。お互いベストを尽くそうじゃないか」


 ワインはそう言ってニコリとすると、『宝物庫』に向けて再び歩き始めた。


(ヤバいな、これは『強力』なんて次元じゃないぞ。アクアって奴はいったい何者なんだ)


 ワインは、全身に静電気がたまっているような気持ち悪さと圧迫感を感じてそう思う。その時、ラムがつと立ち止まり、愕然とした顔でつぶやいた。


「そうか……水の精霊王か……」


 それを聞いて、ワインも雷に打たれたように全身を震わせた。


「ラムさん、今なんて?」


 壁に声が響くにも構わずワインが訊くと、ラムもまた声を抑えることなく言った。


「アクア・ラング……どこかで聞いたことがある名だと思っていたんだが、今思い出したんだ。私たちが向かっている先に待っているのは、水の精霊王アクアだ!」



 一方、城の入口から地下を目指すド・ヴァンたちも、シェリーの案内で比較的スムーズに進んでいた。


「誰が罠を仕掛けたのかは知らないが、けっこう執念深くてサイコな奴だな。しかも空間把握力に長けている。でないとこんなに芸術的にトラップを仕掛けることなんてできないと思うよ」


 ド・ヴァンは、ほんの5分歩いただけで、人間心理を突いた罠の仕掛け場所、安全なコースの複雑さを理解してそう言った。


「そうですな。地下に行くのに一旦4階まで上るなど、どんなひねくれた奴が仕掛けた罠かと思います」


 ウォッカも周囲を警戒しながらド・ヴァンの意見に同意する。


「それにしてもシェリーさん、こんな複雑なルートをたった一回歩いただけでよく覚えることが出来ましたね? 私は感心してしまいます」


 ウォーラが言うと、シェリーはたいして大きくない胸を張って言う。


「ふふん、ひょっとして敵に見つかって追い出されることもあるかと思って必死に覚えたんだ。ルートを覚えていれば、ほとぼりが冷めたときジンの所に行けるじゃん?」


 二人の話を微笑んで聞いていたド・ヴァンは、笑いながらシェリーに問いかける。


「さすがは団長くんの幼馴染だ。ボクにも君のような献身的な団員がいるから分かるんだが、団長くんは君をたいそう大事にしているんじゃないか?」


 するとシェリーは、少しはにかんで


「え?……ま、まあそうですね。アタシは大事にされているとは思います。ただジンは、なんて言うか、その……」


 口ごもるシェリーの横から、ウォーラがさらりと言う。


「ご主人様は『鈍感系思わせぶり主人公』ですから、シェリーさんもラムさんもご主人様の一挙手一投足に一喜一憂しているのです」


「こ、こらっ、ウォーラ。それは言わない約束じゃない? それにジンの態度に一喜一憂してるのはアンタも同じじゃない!?」


 顔を赤くして言うシェリーに、ウォーラもまた顔を真っ赤にして言い返す。


「あーっ! シェリーさんこそ、それを言っちゃいけないのです。私はエランドールですから、ご主人様のお役に立てれば幸せで、決してご主人様からあーんなことやこーんなことをしていただきたいなんてふしだらなことは考えてもいないのです!」


 いつものウォーラに似合わず慌てる彼女を見て、シェリーの中のブラックな部分が突如として目覚めた。


 シェリーはニコニコしながらウォーラに訊く。


「ふーん、エランドールって窮屈ね? で、ジンがアンタを抱きしめたらどう思う?」


「え!? そ、それは嬉しい……です」


 頬を染めて答えるウォーラを見て、シェリーはにぱあっと小悪魔的な笑いを浮かべ、続けて訊く。


「じゃ、ジンがアンタにキスしたらどう思う?」


 ウォーラは耳たぶまで真っ赤にし、頬を両手で包み込んで答える。


「も、もちろんシアワセです」


「じゃあ、ジンがアンタのマナクリスタルの代わりに、自分の……」


「ストップですシェリーさん! シェリーさんも私も清純派として読者の皆さんに認知されていますから、そんなキワドイことを言ってはいけません!」


 シェリーの言葉の先を読んだウォーラは、間一髪でシェリーの口を押さえることに成功したが、続いて恥ずかしそうに身体をくねらせながら言い放った。


「それにご主人様の、すごく、大きいです。私のには入らないと思います」


「こらっ! アタシを止めておきながら自分で問題発言ぶちかますなんてどういう了見よ!? それにどうしてアンタがジンの……その、おっきいこと知ってるのよ!?」


 シェリーが聞き捨てならないといった感じでウォーラに突っ込みを入れる。それにウォーラがさも当然と言ったように答えた。


「私はエランドールです。ご主人様のことはすべて把握しておく必要がございます。観察していれば、自ずと分かるものです」


「はあ!? それってもうストーカーじゃん! ジンのどんなとこ見てんのよ!?」


「もちろん、ご主人様の練習や装備の手入れの時にデータを取得したのです」


 そんなことを話しているうちに、一行は地下への階段にたどり着いた。


「お二人さん、ボクは君たちが他愛のない話をしながらも、一度もトラップに引っ掛からなかったことに驚いているよ。

さて、ここから先は恐らく地獄だ。ボクとウォッカはソルティの件もあるから連中にご挨拶に行かなきゃならないが、君たちの覚悟をもう一度確認しておきたい」


 まだエキサイトして話の続きに興じていたシェリーとウォーラは、突然ド・ヴァンから声をかけられてハッとこちら側に戻って来た。


 キョトンとしている二人に、ド・ヴァンは爽やかに笑って、


「大変興味深い話を聞かせていただいたよ。特にエランドールは四六時中主人のことを気にかけているとは正直驚きだった。

それに、団長くんのグローブやブーツはちょっと大きめにこしらえてあるのかと思っていたが、実際、身長に比して彼の手や足は大き目なんだね? ちょっとした疑問が解けて満足だよ」


 そう言った。


「なに? さっきの話ってジンの手足のこと?」


 シェリーが訊くと、ウォーラは涼しい顔でうなずいた。


「そうですよ? それ以外のどこだと思われたのですか? ご覧のとおり私のグローブとブーツには予備のマナクリスタルがはめ込んでありますし」


「だったら最初っからそう言ってよ!? 変な想像しちゃったじゃない!」


 赤面してそう言うシェリーに、ウォーラは謝りつつ、


「失礼いたしました。シェリーさん、それより今はご主人様をお助けすることが先決です。ド・ヴァン様、私たちの覚悟は決まっております。どうか同行をお許しいただけますよう、お願い申し上げます」


 そうド・ヴァンに言うと、シェリーも慌ててうなずいて言った。


「そ、そうよ。アタシたちはジンのためならどこだって行く! ド・ヴァンさん、今さら覚悟なんて確認する必要はないわ」


 真剣な二人の表情を見て、ド・ヴァンは薄い笑みをたたえながらうなずいた。


「いつもながら、団長くんには嫉妬してしまうな。ボク同様いい団員を持ったものだ。

ではシェリーさん、君には後方援護をお願いしたい。そしてウォーラさんはウォッカとともに先を進んでもらおうか」


   ★ ★ ★ ★ ★


 賢者マーリンは古い巻物を丁寧にテーブルの上で広げる。


「これは?」


 バーディーは巻物に目を奪われた。外装はかなり古びていたが、中身は思ったほど擦れても汚れてもおらず、特に目をひいたのが極彩色で描かれた挿絵だった。


「ナイフ・イクサガスキーが発見したものさ。彼はこれを『摂理の調律者(プロノイア)の予言書』と呼んで解読を試みたようだったが、手に余ってドン・ペリーに譲り渡した。

ここには、生命発生の謎と意識や世界について詳しく書かれている。6百年も昔の誰かがこの真理に到達し、それを後世に伝えるためこれを書き残したと考えると、僕じゃなくてもその神髄に触れてみたくなるんじゃないかな?」


 マーリンはそう言って笑う。彼に隠し事ができないように、彼自身にも何かを隠すという考えは浮かばないようだった。


 バーディーは改めて巻物を見る。書かれている文字は彼女が知っているどんな文字とも違っていたし、せっかく極彩色で描かれた挿絵も、非常に精緻な筆致ではあったが何が描かれているのか想像することすら困難だった。


「……これ、マーリン様が解読されたのですか?」


 バーディーが尊敬の眼差しと共に訊くと、マーリンは首を振って答えた。


「これはドン・ペリーが解読したんだ。おかげで彼はホッカノ大陸の開拓という大事業をナイフ・イクサガスキーに譲り、自らはこの書籍に書いてあることの検証に生涯を捧げることになった。もともとドン・ペリーには錬金術師が似合っていたのかもしれないけれど」


「マーリン様、この巻物にそれほどの真理が書かれているのであれば、余り他人には見せない方がいいのでは? 盗まれでもしたら大変ですよ?」


 バーディーは自身がマーリンの秘密を探りにきたことも忘れてそう言うと、マーリンは優しい目でバーディーを見ながら笑って言った。


「ははは、心配してくれてありがたいけれど、読めもしないものを盗って行っても仕方ないじゃないかな。君だって僕の話を聞かなかったら、この巻物には余り興味をそそられなかったんじゃないかい?」


「えっと、それはその……」


 困ってしどろもどろになるバーディーに、マーリンはズバリと訊いた。


「君がここに来たのは、僕自身の秘密を探るためじゃないかな?

もっと具体的に言えば、僕は何者で何を調べているのか、僕が錬金術を使ってたどり着いた生命や世界の秘密についての報告を、君を遣わしたウェンディは欲しがっているんじゃないかな?」


 バーディーは、自分を見つめるマーリンの碧眼が無機質な翠に染まるのを見て、何故だか死を覚悟した。


 しかし、マーリンは薄笑いとともにバーディーの瞳を真っすぐ見つめて言った。


「ウェンディが欲しがっていることは、別に秘密でもなんでもない。誰だって知りたいし、それを手にする機会があれば悪魔にだって魂を売る者もいる。

君は『組織ウニタルム』に所属していると言ったね? けれど君には世界の秘密を考察する錬金術の方が似合っている気がするよ。

僕が立てた仮説でいいなら、さっき言った生命や世界の秘密について報告書を書いてあげよう。君はそれをウェンディに提出すればいい」


「えっ!? でもそれはマーリン様の研究成果でしょう? それを簡単に他人に譲るなんて……」


 バーディーがびっくりして言うと、マーリンは瞳の色を元の高い空の色に戻し、


「僕の研究は純粋に知的好奇心から行っているもので、その結果得られた知識や知見は良いにしろ悪いにしろみんなが共有すべきものだと思っているんだ。

ウェンディが四神の一柱であるにしろないにしろ、君という人物を使わせてまで希求している知識なら、同じ学究の徒として知識を提供することに躊躇はしないさ」


 そう言って微笑んだ。そして茫然とするバーディーに、


「ただ、僕もいくつか確認しておきたいことがある。これは僕の研究成果との交換条件だと思ってもらってもいいが……」


 そう言うと、バーディーは頷いて答えた。


「何でしょう? あたしが知っていて、話すことが許されていることなら、何なりとお答えいたしますが」


 するとマーリンは


「聞きたいことは三つある。一つは『組織』はどんな世界を目指しているのか、という事だ。僕は『組織』の噂は早くから聞いていたが、その活動については別に否定も肯定もしていない。しかし、君たちがどこを目指しているのかは知っておく必要がある」


 そう訊くと、バーディーの瞳をじっとのぞきこんだ。


「……あ、あたしも詳しくは知らないんですが、自律的魔人形エランドールを使って世界の改革を目指していると聞いています」


「その『改革』によってもたらされる社会とは、どんなものなのかな?」


 バーディーの答えに満足しなかったのか、マーリンが鋭く斬り込んでくる。


「そ、それは、あたしも具体的行動についてはエランドールが一定数揃ったところでウェンディ様から指示を受けることになっていましたので、よく分かりません」


「一定数? 君はウェンディからどのくらいのエランドールを仲間にせよと指示を受けていたのかな?」


「だいたい5百ほどのエランドールを準備しろと言われていました。最終的には5万ほどのエランドールを指揮することになるだろうと……」


 しどろもどろに答えるバーディーだったが、マーリンは答えを聞いて形のいいあごを指でつまみ、


「最初は5百……最終的に5万か……」


 そうつぶやいてしばらく何かを考えている風だった。


 やがてマーリンは顔を上げると、


「次の質問だ。『組織』には君の上長たるウェンディのような立場にある人物は何人いて、その名を教えてほしい」


 そう訊くと、今度はバーディーはすらすらと答えた。


「ヒーロイ大陸の統括がウェンディ様で、ホッカノ大陸の統括がフェン・レイ様、そして中央群島の統括がアクア・ラング様です。

ほかにウェンディ様は全体統括もされていらっしゃるので、ヒーロイ大陸統括の補助としてウェルム・ラクリマエがいます」


「ふむ、ウェンディにフェン、そしてアクアか……」


 少し険しい表情でつぶやくマーリンだった。


「最後の質問だ。彼ら統括役の上に『盟主様』という存在がいると聞いているが、『盟主様』とは何者だ?」


 マーリンが訊くと、バーディーは当惑したような顔をした。


「え、ええと、その質問ばかりはあたしも答えられません」


「ウェンディから止められているのかい?」


「いいえ、あたしは『盟主様』と会ったこともないどころか、ウェンディ様ですら実際に話をしたこともないそうです。ですから、『盟主様』がどんなお方なのか、どこにいらっしゃるのか、まったく分かりません」


 マーリンに真剣な目を向けて言うバーディーだった。


 マーリンは頷くと、


「……よく分かったよ。バーディーさん、最後に聞かせてほしい。君は何を期待して『組織』に加わったんだい?」


 静かにそう訊いた。


「……それは……」


 何を思い出しているのか、顔を伏せて唇をかんでいるバーディーをしばらく見つめていたマーリンは、ため息のような声で言う。


「……君の夢といったものが、君のつらい過去に根ざしているのなら、僕は話すことを無理強いはしないよ。ただ、考えてほしいのは、君の夢がちゃんと君に幸せな将来をもたらしてくれるかということだ。

夢とは遺恨や憎しみに根ざすものではなく、喜びとともにあるものだからね?」


 それを聞いて、バーディーはハッとした顔でマーリンの顔を見ると、哀しそうな顔でうなずいて


「……そうですね。『夢は喜びとともにあるべき』なんて、きれいごとだと思っている自分がいることを認めますが、マーリン様の言葉をよく考えてみます」


 そう言うと、マーリンは碧眼に力を込めて強い口調でバーディーに言った。


「僕が言っているのはきれいごとじゃないよ。その証拠に、君が幼かった時のことを思い出してごらん。

何か辛い過去があったんだろうけれど、君はそれに負けずにここまで成長してきたじゃないか。なぜ、それが出来たんだい?

そりゃあ、『見返してやりたい』とか憎悪や遺恨の感情もあったかも知れない。けれど、人間って奴は負の感情だけでは前に進めないんだ。君にもきっと、自分の未来に対する肯定的な憧憬があったはずだよ? それを思い出してごらん」


「肯定的な……憧れ……」


 マーリンの言葉を聞いたバーディーは、そうつぶやきながら遠くを見る目をした。



 それは、もう20年も前のことになる。

 当時は、春先から天候が不順で、季節外れの霜がやっと芽吹いたばかりの作物の芽を枯らしたり、長雨によってせっかく成長した作物の根を腐らせたりと、例年になく農園の経営に逆風が吹いていた。


『……だめだ、このままじゃ出荷分どころか自分たちが食べる分すら収穫が望めなくなる』


 農園を視察してきた父は、げっそりとした顔でコートを脱ぐ。母はそれを受け取りながら、深刻な顔で父に言った。


『ザールルの町では、去年から続く異常気象は魔王の降臨の前触れだという噂が広がっているわ。『賢者会議』でも両大陸の状況を見極めに大賢人スリング様が使者を派遣されているらしいし。それが本当だったら、私やこの子はどうしたらいいのかしら、シルコ?』


『バニラ、まちの噂は気にするな。農園にしても、明日はみんなで排水設備を改良する予定だから、この長雨でも少しはマシになるかもしれない』


 心配そうな母に父はそう言うと、母に続いて父を迎えに出ていたあたしに笑顔を向けて言う。


『ミント、お前は何も心配することはない。長い人生では、自分の思いどおりにならないことは何度もあるが、できる限りのことを一生懸命にやれば、いつかはその努力は実を結ぶ。お前はお母さんの力になってあげてくれ』


 父はそう言うとあたしの頭をくるっと撫でて、すっかりびしょぬれになった上着を着替えると、新しいコートを羽織り、


『ゲインさんの話では、ウーリ湖はもう満水らしい。放水もあり得るからみんなでウーリ川の堤防を見張ることにしている。ちょっと行ってくるから、後は頼んだぞ、バニラ』


 父はそう言って降りしきる雨の中、家を出て行き、そして再び戻ってくることはなかった。堤防の決壊に巻き込まれたのだ。

 ……次の朝、運良く助かった人からそのことを聞いても、あたしも母もすぐには信じられなかった。けれど母と共にウーリ川の様子を見に行って、事実を受け入れざるを得なかった。


 皮肉にも、昨日までの長雨が嘘のように空は晴れ上がり、久しぶりの太陽があたたかな光を投げかけていた。しかしあたしたちの目の前に広がる光景は、日の光さえ暗く思わせるものだった。


 堤防は決壊し、濁流は平地をどこまでも湖のようにしてしまっていた。そこにあったであろう家や畑を容赦なく飲み込み、押し流したまま。


『あなた……シルコ……』


 呆然とくずおれる母の背中にしがみつき、あたしはただ、眼下に広がる泥の湖がキラキラお日様を反射するのを、睨みつけるように見ていた。



「夢……?」


 バーディーはマーリンから貸し与えられた小屋の中で目を覚ました。青白い月の光がまだから差し込んでいる。影がそんなに長くないので、まだ真夜中過ぎと思われた。


(ガキの頃の夢をみるなんて久しぶりだね……でもせっかく夢に見るなら、もっと楽しかったころの夢を見たいよ)


 そう思うバーディーが首を振った時、


『君にもきっと、自分の未来に対する肯定的な憧憬があったはずだよ? それを思い出してごらん』


 マーリンの声が聞こえる気がした。


(ふんっ、母もあの後無理がたたって死んじまい、孤児になっちまったあたしに、前向きな夢なんてものがあるわきゃないじゃないか……)


 バーディーは思ったが、不思議とその考えは口をついて出ることはなかった。そしてバーディーは、自分の中で怒りや諦めといった感情ではなく悲しみや焦りといったものがたゆたっていることに気付いて、再び深い思考の淵に身を沈めていった。


「……なるほど、君の中ではいまだに喪失感が渦を巻いているのか。けれどバーディー、夢や希望はどんなに困難な時でも君の心の中にある。ただ、さまざまな感情が邪魔してそれを見つけ出せないだけだ。この里でゆっくりと自分の生きる意味を再発見するといい」


 深い瞑想から目覚めたマーリンは、窓の外で凍えたように光っている月を見つめながらそう言って微笑んだ。どこか無機質な笑いだった。


   ★ ★ ★ ★ ★


 僕が目をつぶって立っていると、向こうの方からかなり強力な魔力が近づいてきた。一つは紛れもなくセレーネさんのものだが、もう一つは『宝物庫』からあふれて来る魔力とも違っていた。


「わざわざ僕を出迎えてくれるとは、君の主人のアクア・ラングって人は思ったより礼儀正しいんだな」


 僕が目を開けて、セレーネさんと共に歩いて来る白髪碧眼の女性に話しかけると、彼女は瞳に険悪は光を湛えて答えた。少年のような見た目、能面のような白い顔に良く似合う、冷たく感情を感じさせない声だった。


「さすがはマイティ・クロウの息子。『宝物庫』にいるのがフェン・レイ様ではないとよく見抜けたわね?」


「フェンとは一度手合わせしている。いま『宝物庫』にいる奴の魔力は、彼女の魔力とははっきり違うからね。僕はアルクニー公国ドッカーノ村騎士団の団長、ジン・ライム。手紙の指示どおり一人で来たぞ」


 僕が『払暁の神剣』の鞘に手をかけて名乗ると、相手の女性はうなずいて、


「確かに……私はブラウ・ヴェッサー。我が主人たるアクア様があなたをお待ちよ。ここから先は私が主人のもとまでご案内するわね」


 そう言うと、セレーネさんに会釈する。


「後は私たちの役割。フェン様にご協力を感謝いたしますとお伝えしてくださらない?」


「分かりました。あなたと、あなたのご主人様のご健闘を祈ります」


 セレーネさんがそう言って踵を返すのを見届けたブラウは、


「ではジン・クロウ様、どうぞこちらへ」


 そう言ってゆっくりと歩き始めた。


(セレーネさんもそうだったが、こいつもなかなか強力な魔力を持っているな。さすがに精霊王の側に仕える魔法使いはただ者じゃない奴らばかりだ)


 僕は、こちらに背を向けたブラウにまったくスキがないことを感じ取りそう思う。そう言えば最初に手合わせしたノルト・ヴィンドにしても、次に戦ったフレイム・ロートにしても尋常な強さじゃなかった。


 さらに相手にはウォーラさんの姉のガイアさん……PTD11、コードネーム『お姉さま』もいたんだった。やべえ、こいつだけでなくガイアさんや他の配下がいたら、僕が勝つのは困難を極めるだろう。


(けれど、絶対に負けられない。『負けない戦い』をしながらアクアたちの隙を突くしかない。人質を取り返すのを優先させるべきか、アクアたちを倒すことを優先すべきかは、『宝物庫』の様子次第だ)


 僕はそう心に決めると、『払暁の神剣』と剣帯がしっかりつながっていることを無意識に確かめた。


 やがて僕らは『宝物庫』の入口に到着した。ブラウはチラッと僕を振り返り、


「着いたわ。戦士の作法にのっとり、私が呼ぶまで部屋には入らないでね?」


 そう言うとゆっくりと部屋の中央にいる青年の方へと歩いて行く。


 部屋はだいたい50フィート(約15メートル)四方で、高さは10フィートほどあった。ただし、壁に松明は灯されていたが、その数は部屋をまんべんなく照らすほどのものではなく、奥に何かが積まれてはいるがそれが何かまではここからは判別できなかった。


(おかしい、人質はどこにいるんだ?)


 僕は視界の中に人質であるオキロ・マクラスキーの姿が見えないことをいぶかしく思った。こんな時はこれ見よがしに『人質がどうなってもいいのか!?』なんてふうに利用するもんじゃないのか?


「お待たせしたわね。部屋の中央に進んでちょうだい」


 ブラウの声に促されて、僕は『宝物庫』へと足を踏み入れ、中央で待っているアクアを目指してゆっくりと歩き出した。こんな場合、相手が人間ならいきなり飛び掛かるって手もあるが、今回は精霊王が相手ではあるし、僕を注視しているし、距離も少し遠い。


 だから僕は逆にゆっくりとアクアに近づいたのだ。一つはその時間でアクアをよく観察したかったのもある。


 アクアは身長170センチ程度。水色の髪にアクアマリンのような瞳を持っていた。

 青い詰襟の服を着ているが、袖口からはひらひらとしたシャツの袖がキザったらしくはみ出している。見た目は美青年だがその顔には人を人とも思わない傲慢さが見て取れた。


 僕たちの距離が10ヤードほどになった時、突然アクアは


「そこで止まりたまえ!」


 甲高く、高圧的に命じて来た。やはり見た目どおり酷薄そうな声だった。


 僕が立ち止まると、アクアは僕を見下すような顔で


「オレが水の精霊王アクア・ラングだ。お前はオレとは初対面だろうが、オレはお前のことをよく知っている。会うのが楽しみだったよ」


 薄い唇を歪めて言うさまは、『精霊王』の響きからは程遠い冷酷さを漂わせていた。


「精霊王と親しく話ができるなんて光栄です。ところで僕を呼びだすために拉致したオキロ・マクラスキーはどこに? 姿が見えないようですが」


 わざとうやうやしく僕が訊くと、アクアは青い瞳に明らかな殺気を込めて答える。その殺気は、こんなに離れているのに僕に冷や汗を流させるのに十分な迫力を持っていた。


「ふむ、お前のような奴を『慇懃無礼』と言うのだ。ブラウ、しばらくこいつの相手をしてやれ」

「承知いたしました」


 アクアが命令すると、打てば響くようにブラウが前に出てきて僕に言う。


「あなたはアクア様のご機嫌を損ねたようよ? 精霊王に対する不敬ということで、本来ならお手討ちになされても良いんだけど、慈悲深いアクア様は私との御前試合に勝てば不問にするとのこと。せいぜい頑張ってアクア様を楽しませてちょうだい」


 そう言うと、いきなり剣を抜き打ってきた。



「始まったみたいだな」


 『宝物庫』から南に2百ヤードも離れてはいない場所で、ワインが呻くようにつぶやく。


「ジン様と戦っているのがアクアでないことが救いだな。しかしそうなるとアクアの隙を突いてジン様に近づくことはムリゲーに近いか……ワイン、どうする?」


 腕を組んでラムが問いかけると、ワインは年に数度するかしないかというほどの真剣な顔で一心に何かを考えていた。


(アクアの波動はこれでも平常運転ってところだろう。それでもボクらが少しでも魔力をもらせば奴はボクたちを感知するはずだ。かと言って魔力を完全に閉じた状態で奴に近づくなどイチかバチかもいいとこだ。何かいい方法はないのか?)


「ワイン、ワイン、聞いているのか?」


 やや大き目のラムの声で、ワインは思考を中断した。


「あ、ああ、何だいラムさん?」


 少しびっくり顔でワインが訊く。


 ここは最前線で、相手は精霊王とその眷属。魔力はもちろんちょっとした場のゆらぎや物音で自分たちの存在は敵の知るところとなる。隠密性が最も大事だと知り抜いているはずのラムがあえて声を大きくしたことを意外に感じたのだ。


「このままここにいてもらちが開かない。思い切って魔力を閉じたまま奴らに近づこう」


 ラムが緋色の瞳で真っ直ぐワインを見て言う。それは『策』というより『賭け』であることは十分に承知したうえで、敢えて賭けに出ることを決意した表情だった。


「……魔力を隠しているからってアクアに気取られないって保証はない。それに言うまでもないが魔力を閉じている間は戦闘力や防御力はガタ落ちだ。途中でアクアの配下に出会う確率も高い。それでもラムさんはイチかバチかやってみたいと言うんだね?」


「ああ、私だけで近づこう。君はここから状況を見ていて、危なくなったら私を転移魔法陣で転移させてくれてもいい。上手く行ったら最悪でもジン様の退却路は確保できる」


 勢い込んでいうラムの言葉を、眩しそうな顔で聞いていたワインは、


「分かった、やってみようか。ただしボクも同伴させてもらうよ。そして途中でアクアに気が付かれたり、アクアの配下に出会ったりした時はそこからジンのところに跳ぶ。

行き当たりばったりだが、案外こんなハチャメチャな方が相手の意表を突けるかもしれないな」


 そう言って笑った。



 シェリーを先頭に堂々と正門から乗り込んだオー・ド・ヴィー・ド・ヴァンたちは、何事もなく地下室までは到達した。もちろん、もうそこにはジンもセレーネもいない。


「予想はしていたが、団長くんたちは既に移動してしまったようだね。

ここから『ド・クサイの秘宝』がある部屋まで隠し通路があるはずだ、ウォッカ、それを探そう」


 ド・ヴァンが碧眼を細めて周囲を見回す。ウォッカをはじめシェリーやウォーラも、ゆっくりと地下室の壁を凝視し始めた。


「こちらです!」


 真っ先に通路を見つけたのは、やはりウォーラだった。彼女は自律的魔人形エランドールという機械で、魔力マナをエネルギーとしている。


 どこからどう見ても少女にしか見えないが、索敵や戦闘に特化して作られたため、こういった場面では誰よりも役に立った。


「えーいッ!」

 バガン! ガラガラ……。


 ウォーラが大剣を一振りすると、地下室の壁はあっさりと崩れ落ち、そこにぽっかりと地下道が口を開けている。


「さすがだよウォーラさん。では、いよいよ『組織』の連中とご対面ってことになるかな。みんな、これまで以上に気を付けて進もう」


 ド・ヴァンはそう言うと、ウォッカとともに地下道へ足を踏み入れた。


「団長、途中で奴らの妨害がありませんかね?」


 ウォッカは大剣を肩に担いだ姿勢で訊くが、ド・ヴァンは首を振り、


「奴さんたちにそのつもりがあれば、さっきの部屋で迎撃も出来たはずだし、戦術上はそれが安牌だ。それをしなかったということは、その必要を認めなかったかそれが出来なかったかのどちらかだ」


「つまりは俺たちを安く見たか、俺たちの存在を失念していたか、敵の数が思ったより少ないかのいずれかってことですかね?」


 ウォッカが言うと、ド・ヴァンは前を見ながら、


「最後の想像だが、シェリーさんの話ではさっきの部屋でエランドール3体が迎撃してきて、うち2体は団長くんが行動不能にしている。ソルティの報告から執事型のエランドールは少なくとも21体はあるようだが、あの場に来ていたのは2体だけだ。

一方でメイド型エランドールは1体しか確認できていないが、こちらも量産されていると考えた方が無難だな。

フェン・レイがどれほどの遣い手かは未知数だが、護衛もつけずにいるってことはないだろう。執事型が2体いたように、メイド型も2体いると考えたがいい」


 そう考えを口にする。ウォッカがド・ヴァンの見立てを聞いて、


「では、メイド型を退かせたのは、戦力の集中のためでしょうね」


 そう言ったとき、前方の暗闇から声がした。


「いいえ、『宝物庫』にいるのはフェン・レイ様ではなく、水の精霊王アクアとその部下ブラウです。二人とも恐ろしいほどの遣い手、一刻も早い救援をお願い致します」


   ★ ★ ★ ★ ★


 ホッカノ大陸に領土を保有しているのは今のところマジツエー帝国ただ一国だが、大陸全土が帝国領というわけではない。


 ホッカノ大陸は冒険者ドン・ペリー『提督』によって発見されてから560年の間、最初は移民たちの手で、マジツエー帝国建国後は国の主要な施策として探検と植民が行われてきた。それでも帝国は大陸の南西部を領土としているに過ぎず、広大な未探検領域……帝国の人々が『暗黒領域』と呼ぶ大地が広がっており、そこには魔物や怪物が生息していたのである。


 そんなマジツエー帝国の北部に、アルカディア・イム・オルフェという町がある。ここは辺境に近いが、今まで妖魔や魑魅魍魎などに襲われたことが一度もないという恵まれたところだった。


 町は中心となる市街地をもとに発展したのではなく、20に近い集落が点在するもので、北にあるギュンター山脈の中腹から麓にかけて、放牧のための牧場や畑が広がる平和そのものの風景だった。


「エレーナ、元気だしてよ。君が団長くんのことを心配しているのは分かるけど、『賢者会議』に動きがあるまでこっちから下手に動かない方がいい。

少なくとも()()()()が何か仕掛けてるみたいだから、彼の帰りを待った方がいいよ」


 牧草地を見下ろす位置に建てられた山小屋がある。その小屋の前でテーブルを挟んで二人の女性が話をしている。


 一人はエレーナと呼ばれた金髪碧眼の女性で20代半ばほど。ライトグリーンのワンピースの上から深い森を思わせる色のマントを羽織り、同じ色のつばが広い帽子を手に持っている。


 その女性に、さっきから自重することを真剣な顔で説いているのは、どう見ても13・4歳の少女だった。彼女は黒髪を長く伸ばし、白いシャツに革の半ズボン、素足にブーツといういでたちで、翠のマントを首に巻いていた。


 少女は、エレーナが遠く西の空を見つめているのを見て、一つため息をつく。エレーナの意識はヒーロイ大陸に飛んでいるのだろう。


(今のところ、エレーナの中にある『風の宝玉の欠片』に動きはない。けれどエレーナだって元四方賢者の一人、魔力の強さは一級品だし、先を見る能力も持っている。じいさんが戻ってくるまで、彼女から目を離さない方がいいな)


 少女はそう考えると、エレーナの斜め前に席を占める。近くにいれば何かあったとき対処がしやすいからだ。


「まったくじいさんってば、今度はどこで何を企んでいるのかな? おかげでボクはワインを飲み放題だから文句を言う筋合いじゃないけど」


 少女はそう言いながらワインのコルク栓を抜く。少女はキョロキョロと周囲を見回し、誰もいないことを確認すると大胆にもワインをラッパ飲みする。


「ごくごく……ぷっはーっ! 一度やってみたかったんだよねー、ラッパ飲みってやつ。お行儀よく香りがどうのーとか渋みがどうのーとか味わいながら飲むのもいいけど、やっぱこっちの方が手っ取り早くっていいな」


 少女が再びビンに口をつけたとき、目の端にエレーナの身体がゆっくりと揺れるのが見えた。少女はビンにコルクで栓をすると、


「エレーナ、ボクだよ、ウェンディだ。聞こえているかい?」


 静かな声でエレーナに問いかけるとエレーナはゆっくりとうなずいた。


「君がトランス状態に入ってからもう3時間が過ぎている。そろそろ戻って来ないと精神的にも身体的にも限界だよ?」


 ウェンディの声を聞いて、エレーナは一瞬眉をひそめたが、すぐにふうーっという長いため息をつきながら目を開けた。そして目を開けるとすぐに


「うっ!?」


 ぐらりとめまいに襲われ、テーブルに突っ伏してしまう。


「大丈夫かい? まったく君も無茶するよ、団長くんの居場所をここから突き止めようなんて。魔法使いしか思いつかないことじゃあるけど、実際それをやっちゃう人は初めて見たよ」


 ウェンディは呆れたように言うと、コルク栓を抜いて木のカップに中身を注ぎ、


「気付けのワインだよ。それで団長くんの居場所は判明したのかい?」


 エレーナに差し出すと、エレーナはそれを受け取って一口含んだ。たった一口だが、青白かったエレーナの頬に赤みが差す。


「……ジンくんがリンゴーク公国から領地を与えられたとは聞いていたけど、肝心の場所を聞き忘れていたわ。

とりあえずジンくんたちが歩いた経路をしらみつぶしに調べて、やっと『ショーロ』って村だってことが判ったときに時間切れよ」


 やっとのことでそう言ったエレーナは、カップに残ったワインを半分ほど飲むと、


「ありがとうウェンディ。少し休んだらショーロに飛んでみるわ。そこでジンくんの消息がつかめたら、そのまま転移するつもりよ」


 西の空を見つめてつぶやくように言うエレーナだった。


 ウェンディはカップにワインを注ぎながら、


「無駄って分かってるけれど、一応提案するね? じいさんの帰りを待ってみない?

このところじいさんの動きを見ていると、なんだか非常にマズいことが起こっているみたいなんだよね。確証はないけれど、それは団長くんや君の未来に大きな影響を与えそうな気がするんだ」


 そう言うとエレーナの目を真っ直ぐ見つめて続けた。


「アクア・ラングやフェン・レイがちょこまかと動き回っているのも知っている。彼らは団長くんを狙っているけれど、それ以上に何かしらの野心を胸に秘めているのも確かだ。

アクアもフェンも頭が良いから、相手の本音をお互い承知しているはずさ。だからボクはちょっとしたことで協力関係が解消されると睨んでいるし、もしそれを仕掛けるならフェンだとも思っている」


 それを聞いて、エレーナがウェンディに質問しようと口を開いた時、


「私もウェンディの観察に同意する」


 そう言いながら、小屋から身長180センチを超え、白髪でアンバーの瞳を持つ青年が出てきた。



 小屋から出てきた青年は実直と真面目を絵に描いたようで、黒の詰襟の上下の下からは白いシャツを着込んでいる。見た目は27・8歳だが、不思議で老成した雰囲気が感じられ、それが彼を年齢不詳にしている。


「やあ、じいさん。今度はちょっと長かったね? 故郷で何かあったのかい?」


 ウェンディが笑顔で訊くが、青年はそれに構わずエレーナをアンバーの瞳で見て、


「エレーナ嬢、まだ君がここから出て行くのを認めるわけにないけないな」


 そう、静かだが断固とした声で言う。


「ヴィクトールさん、『賢者会議』から指名手配されている私を匿っていただいていることは深く感謝していますが、だからと言ってあなたに私の自由を制約する権利はないんじゃないかしら? どういった権能であなたが私の行動に認可を与えていらっしゃるのか、お訊きしてもよいかしら?」


 エレーナにしては珍しく、少し棘を含んだ声だった。それはジンのことを心配する余りのことだったが、エレーナ自身、待つということに疲れて来たからなのかもしれない。


「ふむ、私が君をここに引き留める権能、か……」


 ヴィクトールは、面食らったように目を瞬かせたが、細いあごを形のいい指でつまむようにしてしばらく考えていた。


 やがて顔を上げると、ヴィクトールは


「そうだな、私がいくら今後の流れをある程度見越しているとはいえ、それで私が君の自由を制約する権利を得たわけではない。この点は確かにエレーナ嬢の言うとおりだ、私の言い方が良くなかったようだ」


 そうあっさりと非がある部分を認めた。そして拍子抜けしているエレーナに、静かな声で問いかける。


「ただ、私は自分の責務として、エレーナ嬢に今後起こりうることをお知らせしたうえで、対応策を提示させてもらう必要がある。さもないと大賢人スリングの願いが虚しくなるからだ。エレーナ嬢、話を聞いてもらえるだろうか?」


 ヴィクトールの声は春の暖かな日だまりのように、エレーナの心から不安や焦り、恐怖といったものを融かして行く。毎度のことだがエレーナは、彼の声を聞くと素直になる自分に対しておかしさを感じていた。


 今度もまたヴィクトールの声を聞くと不満や心配が消え、彼の言葉に耳を傾けようという気持ちが勝った。


「分かりました。とても大事な話みたいですね?」


 エレーナがうなずくと、ヴィクトールもまたうなずいて、


「ヒーロイ大陸で『組織』の実行部隊責任者であるアクアは、ジン・クロウを本気で討ち取るつもりだな。ひょっとしたらすでにジン・クロウと彼は戦闘状態に陥っているかもしれない」


 いきなりそう言った。


「何ですって!? じゃ、私はいよいよここでのんびりしているわけにはいかないじゃない。ヴィクトールさん、約束だからお話は最後までお聞きしますが、その後私はすぐにジンくんの所に行きますのでご了承ください」


 気色ばむエレーナに、ヴィクトールはあくまで落ち着いた声で


「慌てる必要はない。そこにいる呑兵衛娘と違って、フェンもアクアも精霊王となって日が浅く、ともすれば世界の平穏を守り、摂理に反するものを排除するという役割をないがしろにする場面が多々見受けられた。

ジン・クロウは魔族の血を享けてはいるが、彼が今まで見せた行動は摂理に基づいたものばかりだ。アクアがジン・クロウを襲えば、恐らく摂理の調律者(プロノイア)はアクアを精霊王のままにはしておかないはずだ」


 そう、驚くべきことを言った。


(なっ!? いつも思うけれど、ヴィクトールさんって何者?)


 余りのことに言葉を失ったエレーナに、ヴィクトールは


「もうすぐ土の眷属が『賢者会議』に対して詰問状を突きつける。各国の国主たちにも同じ文面のものが送られるはずだ。『賢者会議』の立場をどう説明するかで大賢人マークスマンの野望も推測しやすくなるし、国主たちがどれだけ『賢者会議』と密接な関係にあるかもあぶりだせる」


 そう言うと、ウェンディが口を挟んだ。


「じいさんは意外に思うかもしれないけれど、ボクは国主のうちでもマジツエー帝国の皇帝は『賢者会議』糾弾の立場に立つだろうと見ているよ」


「ほう、奇遇だな。私もそう観ている。だからエレーナ嬢はマジツエー帝国(ここ)から動かない方がいいんだ」


 薄笑いを浮かべて言うヴィクトールの横顔を見ながら、エレーナは彼がなぜ自分をマジツエー帝国から出さなかったのか、おぼろげながら推察できた。


(精霊覇王エレクラ様はいずれ『賢者会議』と決裂する。けれどそれはプロノイア様も承知のことで、摂理の名のもとに各国の国主に踏絵を踏ませるつもりなんだわ。

その時、十中八九マジツエー帝国皇帝は『賢者会議』糾弾の立場を取るはずだから、私はここにいて事態の推移を見守っておくほうが得策、そういうことね)


 エレーナがそう考えた時、その思考を読んだかのようにヴィクトールは言った。


「そのとおりだ。それに『魔王降臨』の『約束の地』はホッカノ大陸からの方が近い。ジン・クロウは彼が好むと好まざるとに関わらず、マジツエー帝国に足を踏み入れる必要があるのだ。その時までにエレーナ嬢、君がやっておかねばならないことがいくつかある。

それもまた、私が君をここに匿っている理由の一つだ。納得していただけただろうか?」


「一つ訊いていいかしら?」


「私が精霊覇王ではないか、などという益体もない質問以外なら、内容によっては答えられるものもあるだろう」


 ヴィクトールの言葉に、エレーナは苦笑しながら


「いやあね、その件についてはいくら質問したって無駄だって判っているわ。

私が訊きたいのは、ヴィクトールさんの言う『賢者会議』糾弾っていつ頃始まるのかしらってことよ?」


 そう笑いながら言ったが、その笑いはヴィクトールの答えで凍りついた。


「アクアがジン・クロウに討ち取られたら、エレクラが動くだろう」


   ★ ★ ★ ★ ★


「ふむ、お前のような奴を『慇懃無礼』と言うのだ。ブラウ、しばらくこいつの相手をしてやれ」

「承知いたしました」


 アクアが命令すると、打てば響くようにブラウが前に出てきて僕に言う。


「あなたはアクア様のご機嫌を損ねたようよ? 精霊王に対する不敬ということで、本来ならお手討ちになされても良いんだけど、慈悲深いアクア様は私との御前試合に勝てば不問にするとのこと。せいぜい頑張ってアクア様を楽しませてちょうだい」


 そう言うと、いきなり剣を抜き打ってきた。


大地の護り(ラントケッセル)!」

 ガイン!


 僕はシールドを張りつつ『払暁の神剣』を抜いて、ブラウの斬撃を受け止める。ブラウの剣は少し短いようだったが、刀身は水にぬれたように薄い膜がかかっている。


「ふう~ん、あなたの剣は守りの剣なのね」


 ブラウが青い目を光らせる。エランドールのような無機質で感情のない瞳に、僕はゾッとした。


「ステージ1、セクト2b・大地の弾幕(ラントカーペット)!」

E=mc^2(チカラノヒミツ)!」

「なっ!?」


 僕は『大地の弾幕』を剣を交差させたまま放った。至近距離からの魔弾は容赦なくブラウをハチの巣にできたはずだった。


 しかし、僕の魔弾はブラウの魔力の前に、一瞬の光を放って消滅した。音すらしない完全な消滅……というより魔力の強制的な拡散みたいだった。


「……厄介な術式を使うんだな」


 僕が剣を押しつけながら言うと、ブラウはニコリと笑う。その笑みが余りに邪気がなさ過ぎて、小憎らしささえ覚える僕だった。


「あら、さすがはワイン・レッドが団長として奉っているだけあるわね。でも、相手の魔力の質を見極めるだけじゃダメよ?」


 ブラウの言葉と共に、彼女が持っている剣を包んでいる青い魔力が増大する。どうやら彼女の剣は法器としても使うことができるようだった。


「これをかわせるかしら? e^(iπ)+1=0(イノチノヒミツ)!」

「くっ!」


 ブラウの魔法が発動してほんの瞬きするほどの間に、僕はブラウを足で蹴り飛ばし、『払暁の神剣』で僕の周りを囲い込もうとした空間の揺らぎを斬り裂いて、彼女と20ヤードほど間合いを開けた。


 あの術式は僕の『逃走不可能パープルプリズン』や『崩壊不可避デスキューブ』と同じ匂いがした。あのまま捕まっていたらそこで勝負はついていたし、僕は二度とシェリーやワインたちと会うことができなくなっていただろう。


 現に僕の上っ張りは、その端っこがブラウの規定空間に捕まったらしい。空間との境界の形に切り取られていた。


 ブラウは身体の横に剣を浮かせたまま、僕に気のない拍手をして言う。


「戦闘経験は決して多くはないようだけれど、魔力への本能的な対応能力と戦闘カンは一流だわ。さすがは『魔族の貴公子』って言われるだけあるわね」


 そして再び剣を手にして、


「ご褒美に私のとっておきの術式を教えてあげる。あちらを御覧なさい」


 そう言うとパチンと左手を鳴らす。


「! 貴様ッ!」


 僕はブラウが顔を向けた方を見てカッと頭に血が上った。そこには人質となっていたオキロ・マクラスキーが水球に閉じ込められて、絶望の眼差しでこちらを見ていたからだ。


「あ、助けに来てくれたのか?」


 オキロは僕を見つけるとパッと顔を輝かせ、恥も外聞もないように水球にへばりついて叫びだした。


「頼む! 早くここから出してくれ! 俺はこんな死に方は嫌だ!」


 僕はふつふつと胸の奥で何かが沸き立つような感覚を覚えながら、ブラウを睨みつけた。


「彼は人質だぞ? いったい何をする気だ?」


 するとブラウはころころと笑いながら、


「何って、さっき言ったじゃない。私のとっておきを見せてあげるって」


 剣をゆっくりと水球の方に向ける。


「止めろ、止めてくれ! 俺が何をしたって言うんだ!」


 オキロは恐怖で顔を歪ませてブラウに叫ぶが、剣先が彼の方を向くと。今度は僕に向かって叫んだ。


「あんた、騎士だろ!? 早くそいつをやっつけてくれ!」

「ブラウ、止めろ!」


 オキロの叫びと僕の言葉をガン無視して、ブラウは驚くほど白い顔の眉一つ動かさずに魔法を発動した。


「うるさいわね、塵と消えなさい。-0(キノウノオワリ)!」

「うっ!?」


 僕は目を疑った。別にブラウの剣が動いたわけでも、彼女から何か魔力が迸ったわけではないのに、水球の中のオキロは影も形もなくなったのだ。『煙のように消える』というが、煙や光といったものはまったく出なかった。文字どおり『消えた』のだ。


「オキロに何をした? 彼をどこにやった?」


 僕が訊くと、ブラウはこともなげに笑って答えた。


「どこにもやっていないわよ? だって彼はチリになったんですもの」


「チリに?」


「そう、すべての原子核が動きを止めたから、物質として結合するエネルギーを失い、素粒子にまで分解されたのよ」


 ブラウは得意そうに胸を反らして言うと、僕に笑いかけて


「私の持っている術式はこの三つよ。物質のエネルギーを操作する『E=mc^2(チカラノヒミツ)』、規定空間のエネルギー値をランダムに変換する『e^(iπ)+1=0(イノチノヒミツ)』そして物質のエネルギーを一時的にゼロにする『-0(キノウノオワリ)』……どう、これを聞いても私と戦いたい? 今の段階で投降してくれたら、私がアクア様に命乞いしてあげるわ」


 その人を見下した表情と、自分がやったことに恬として恥じない様子を見て、僕の中で何かが弾けた。


(ジン、ご大層な奴だな。相手が四神とその眷属だからって遠慮しなくていい。ステージ5まで開放してやる。瞬殺しろ)


 ジンの頭の中にそんな声が響く。ジンは緋色の瞳を真っ直ぐブラウに向けると、片方の頬で笑って言い放った。


「面白い、貴様こそ我の掟に従い、慈悲を乞うたらどうだ」


(Tournament39 魔境の主を狩ろう! その5に続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は大事なことなので敢て賢者マーリンやエレーナたちの話も差し込みました。

次回はいよいよ本エピソードの最終話、アクアとの決戦です。

お楽しみに。

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