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キャバリア・スラップスティック  作者: シベリウスP
摂理の黄昏編
169/170

Tournament169 Universe hunting:4(世界を狩ろう!その4:VS水火の四神)

『深淵の魔力』が目覚め、『破壊者』となったジンは、プロノイアへの伝言を託されるが、その内容は世界の終焉を意味するものだった。

伝言を阻止するために動き出した四神。まずは水の精霊王マーレ、火の精霊王アリスがジンの前に立ちふさがった。

【前回のあらすじ】


エピメイアはマロンの究極魔法で奥義を封じられるも、マロンとアルケーを倒し、時空魔法でマーリンやシェリーの命まで奪った。

しかし、『深淵の魔力』が覚醒したジンによって、その命を絶たれる。エピメイアの死は、そのまま摂理の崩壊を呼び込む可能性がある中、ジンが『摂理の破壊者』となる可能性が高まった。


   ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★


「ジン・ライムに時間停止の魔法が効かなかった!? それは確かか!?」


 精霊王たちが集う『神の宮殿(パンテオン)』で、精霊覇王エレクラの声が響いた。沈着冷静で滅多なことでは驚きの表情を見せないエレクラだが、この時ばかりは驚き……というより焦りの表情をしていた。


「はい。エピメイアが使った『振動の終息(トキヨトマレ)』も、『右回りの拷問(ナガレテユケ)』も、ジン・ライムには何ら影響を及ぼしませんでした。

 それに、ジン・ライムの姿が、その……」


 言いよどむ執事姿の男性……火の精霊王アリスの筆頭精霊フェンリスに、エレクラは厳しい視線を当てて訊く。


「ジン・ライムの姿がどうした!? まさか魔王形態を取っているのか!?」


「エレクラ様、落ち着いてください。そう興奮されてはフェンリスが話せません」


 一緒にいた水の精霊王マーレが、見かねて声をかける。


「うむ、そうだな。私としたことが少し焦ってしまった。それで、ジン・ライムの様子はどうなんだ?」


 少し落ち着きを取り戻したエレクラが再び問うと、フェンリスは一つ息をして、


「はい、エレクラ様がおっしゃるとおり、魔王形態を取っています。ただ、その後については、アリスお嬢様から急ぎの使いを命じられましたので不明です」


 そう答えた。


 エレクラは何も言わず、ただ腕を組んで目を閉じる。眉間のしわが深くなっていた。


「あの、エレクラ様……」


 おずおずとマーレが尋ねる。


「……ジン・ライムさまが魔王形態を取っているとは、一体どういうことなのでしょう?」


 エレクラはそれを聞くと、目を開けてマーレを見る。アンバーの瞳にかつてないほどの気迫と悲しみが籠っているのを見て、マーレは思わず少し後ずさった。


「……ジン・ライム、というより『伝説の英雄』とは、本来は『摂理の黄昏』を止める人間のことだ。『摂理の黄昏』は、人間の心が摂理から離れ、種族間に不信や亀裂が生まれた時に起こる。

 それを修復し、すべての生き物たちが依って立つ場所を確認することで、摂理は皆に受け入れられ、世界は再び回り始める」


 エレクラの言葉に、マーレはうなずく。彼女の先々代の精霊王、アクエリアス・レナウンもそう精霊たちに伝え、そう予言も残している。当時、次席精霊だったマーレがそれを知らないはずはなかった。

 だが、エレクラの次の言葉が、マーレを凍り付かせた。


「そんな立場から言うと、『伝説の英雄』とは魔王に敵対する存在ではない。ただ、魔王の降臨が『摂理の黄昏』を引き起こす契機きっかけになりえるため、歴代の『伝説の英雄』たちは『魔王の降臨』の度にそれを阻止してきただけだ。


 だから、『伝説の英雄』自身が、何らかの出来事によって魔王となってしまってもおかしくはない。今まで『伝説の英雄』の闇落ちといった事態が起こらなかっただけだ」


「では、ジン・ライムさまは魔王になってしまったと?……そう言った場合、わたしたちはどうすればいいのでしょう?」


 震える声でマーレが訊く。彼女としては、好ましく思っているジンと正面切って戦う場面など想像したくもなかったはずだ。


 だが、エレクラは冷たい声でフェンリスに訊く。


「フェンリス、ジン・ライムはエピメイアを封印するものと思っていたが、倒してしまったと言ったな?」


「はい。逆に『倒せてしまった』ということで、お嬢様も現状がかなり緊迫していると判断されたようです」


 フェンリスの答えを聞いて、エレクラは非情な決断を下した。


「エピメイアはあんな野望を持ってはいたが、曲がりなりにも『摂理の二柱』の一人だった神だ。彼女がいなくなることによって摂理のバランスが崩れている可能性がある。


 もし、ジン・ライムがこのまま『摂理の破壊者』になるようだったら、我々は彼を摂理に還す必要がある。マーレ、君はすぐにアリスのもとに至り、ともにジン・ライムを監視してくれ。

 そしてジンが『摂理の破壊者』として動き始めたら、いかなる手段を取ってもそれを阻止しろ」


 マーレは何か言いかけたが、すぐに口を閉じる。そして真っ青な顔でエレクラに訊いた。


「……承知いたしました。ですが1点、確認させてください。

 ジン・ライムが魔王形態から戻っていた場合、わたしたちは彼と敵対しなくてもいいのですよね?」


 だがエレクラの答えは、マーレを絶望させるに十分だった。


「ジン・ライムは闇落ちした英雄だ。基本的に彼を討伐するつもりで向かってくれ。

 マーレ、あまり期待はするな。期待が大きいと、絶望も深いぞ。我々が敗れることがあっては、世界は終わりを迎えるんだ」


 そしてエレクラは、マーレとフェンリスが去った後、ぽつりとつぶやいた。


「彼の才能は惜しいが、私の魔法は許可を取り消さねばなるまい。ウェンディにも、彼女が認めた魔法の許可を取り消すように伝えておかねばな」



「この鎖……どこから……」


 ジンが呼び出した鎖で完全に自由を奪われたエピメイアは、畢生の魔力を込めて鎖を断ち切ろうとするが、鎖はびくともしない。かえってエピメイアの身体をきつく締め上げ始める。


 ゴゴ、ジャランッ、ボリッ……

「ぐっ……」


 苦痛に顔を歪めるエピメイアは、最後の望みを祈りに賭けた。


「『虚空ヌル』、『虚空』、あなたのしもべが被造物たる魔族に命を絶たれようとしています。『摂理の二柱』の欠損は摂理の停止。助けたまえ……」


 だが、エピメイアの耳に届いたのは、信じられない言葉だった。


『摂理は変革を欲している、停止という変革を。汝エピメイアよ、己が夢見し摂理の破壊を、摂理に同化して感じるがよい』


「え?……」


 エピメイアは絶望のまなざしをジンに向ける。そこには黒い翼を生やし、頭にねじくれた2本の角を生やしたジンが、緋色の瞳を冷たく輝かせて笑っていた。


「……分かったか?『虚空』はお前も含めて、()()()()()()()()()()()()()()()そうだ。『魔族の貴公子』たる俺が、この世界に生まれたのも、そういう宿命だったんだろうな。

 いつかの約束どおり、『ここに墓を立ててやる』」


 ジンはそう言うと、


 ドスッ!

「ぐおっ!」


 群青に輝く魔力に包まれた魔剣パラグラムをエピメイアの胸に差し込み、冷たい声で言った。


「崩れ去れ、虚空の中に。『深淵の励起(エクスプロージョン)』!」

「ぐぐぐ……まさか、お前は単なる『伝説の英雄』ではなく……真正の『摂理の破壊者』だったとは……」


 胸に突き立った魔剣パラグラム……それだけで致命傷を負っていたエピメイアは、流れ込んで来る魔力が自身の魔力を必要以上に活性化し、暴れまわるのを感じながら、やっとそれだけを言った。


「……摂理の終わりとは、始まりなんだよ」

 ズドゥム!


 ジンの言葉が終わった時、エピメイアの身体は湿った響きを上げて爆散し、チリとなって拡散して行った。


が送りし摂理の最後の一片よ。は『摂理の調律者(プロノイア)』がいる場所に行く能力を得た。プロノイアに伝えよ、『虚空ヌル』は『書き換え』を望むと』


 その声は、50ヤードほど離れた場所でジンを監視していたアリスの耳にも届いた。


(……今の声は何? そしていったい誰? プロノイア様のことを呼び捨てにして、『摂理の書き換えを望む』ですって!? それって、『この世界を終わらせろ』ってことよね?)


 アリスは混乱する頭で、一体何が起こっているのかを必死で理解しようと試みた。

 だが、考えの整理が付かないうちに、ジンが行動を起こした。


「……プロノイアに伝えるといいのか」


 ジンは魔剣を鞘に納めると、ゆっくりとアリスの方に歩いて来る。


(やばっ! 今見つかったら、ジン様と戦闘になっちゃう可能性が高いわ。隠れないと)


 アリスはわたわたして身を隠せる場所を探したが、ジンが彼女に気が付く方が早かった。


「そこに居るのは誰だ?」

(うぇっ! 見つかっちった!)


 アリスはびくりと身を震わせたが、ジンの声が落ち着いていたのと、とげとげしい雰囲気がなかったことで少し安心して、ゆっくりと姿を現す。


「ひ、久しぶりね、ジン・ライム様。ア、アリスよ、火の精霊王の……」


 アリスの姿を見て、ジンは緋色の瞳を持つ目を彼女に当てて言った。


「精霊王アリス・ヴェルファイア……今の声を聞いていたのか?」


「……え、ええ。それで、ジン様に訊きたいこと……ひっ!?」


 アリスは、ジンの身体から群青色の魔力が噴き出すのを見て、思わず小さく叫んだ。


「な、何、ジン様? まさかワタクシと戦うなんて言いませんわよね? この並行宇宙の管理者フェン・アリステス・アリスタティア・デ・ラ・マルシェレイ、あなたとだけは争いたくありません」


 するとジンは黒い翼を広げながら言った。


「そうか。では、俺の行く手を阻むな。手を出さないのなら、俺からは四神には手を出さない。『自らの摂理に従え。摂理の外にあるものは、摂理を尊重せねばならぬ』……その『掟』を破るつもりはないからな」



 プロノイア……人は彼女を『摂理の調律者』と呼ぶ。


 『虚空ヌル』が世界を創るとき、まず世界の在り方を規定する摂理を打ち立てた。その時に生まれた原初の神がプロノイア、その双子の妹がエピメイアである。


 プロノイアは、『虚空ヌル』に代わり摂理の運行を監視し、その緩急を調律して摂理を維持する役目を与えられた。


 そしてエピメイアは、摂理の下に様々な生命の運命を与え、摂理に背く存在を姉と共に排除する役目を与えられていた。


 プロノイアとエピメイア、『摂理の二柱』と言われたこの2神において、最大の、そして決定的に違う役割がある。それは、プロノイアには『世界の摂理を書き換える』能力があるということだ。


 正確にはプロノイアが書き換えるのではない。書き換えるのはあくまで『虚空ヌル』である。だが、『虚空ヌル』は自らの制約により、自ら決定した摂理を書き換えることはできない。


 そのため、プロノイアは現状の摂理を止め、世界の根本にあるものを白紙にして『虚空ヌル』の書き換えができるようにする……いわば世界を滅ぼす能力を与えられていた。ただし、この能力の行使に当たっては『虚空ヌル』の命令か許可を必要とした。


 だが、『世界の終焉』と同義のその魔法を使うに当たって『虚空ヌル』にその許可を得たとしても、実際にそれを行使するかどうかの判断や、行使するタイミングについては、『虚空』の命令ではない場合に限りプロノイアに任されていた。


 そのプロノイアは、自身の『異界』で難しい顔をしていた。


 その見た目は、12・3歳の少女である。真っ白い長髪、アンバーに光る瞳、そして純白の布を身体に巻き付け、腰には金の細いベルトを三重巻きにしている。


「エピメイアが倒されたか。摂理はまだ緩んではおらぬが、早晩何らかの影響が出ると覚悟しておかねばならぬだろうな……」


 静かにつぶやくエピメイアだったが、心の中は複雑だった。彼女はジンからエピメイアが封印されたら、彼女ともう一度摂理について話をしてみるつもりだったのだ。ジンがエピメイアを倒したというのは、彼女にとって大きな誤算だった。


 その誤算の中でもう一つ、プロノイアが大いに気になることがあった。それはジンがエピメイアを『封印した』のではなく『倒した』ということだ。原初の神であるエピメイアを倒せるのは、それ以上の存在であることを意味する。つまり……


(……あるいはジン・ライムは摂理を離れた存在ではないか? 摂理の外にいて何ものにも囚われない存在。つまり『摂理の破壊者』……だとすると、わらわはどうすべきか?)


 そう呻吟していた時、突然『それ』が告げられた。


『プロノイア、我が娘よ』


 プロノイアは、ハッと顔を上げる。『虚空ヌル』自身が直接彼女に語りかけてくるなどということは、この世界が始まって以来、初めてのことだった。


「『虚空ヌル』、いったい何のご用事で? ジン・ライムとエピメイアの件でしょうか?」


 震える声で訊くプロノイアに、声は語り始めた。


   ★ ★ ★ ★ ★


 ジンは黒い翼を広げながら言った。


「そうか。では、俺の行く手を阻むな。手を出さないのなら、俺からは四神には手を出さない。『自らの摂理に従え。摂理の外にあるものは、摂理を尊重せねばならぬ』……その『掟』を破るつもりはないからな」


 そう言いながら近寄って来るジンに、アリスは腕を組んで呼びかける。


「一つ確認させて? あなたが向かうのはプロノイア様のところで間違いない?」


「そのように頼まれたからな。その認識で間違いないぞ」


 軽くうなずくジンに、アリスは畳みかけるように


「そ。じゃああなたは、プロノイア様にさっきの『声』が言った言葉を伝えたら、この世界が終わってしまうってことも知っているのね?」


 そう訊くと、ジンは目をしばたたかせた。


「その様子を見ると、あなたはさっきの『声』があなたに頼んだことの意味を解っていないみたいね? 

 いい?『虚空ヌルは書き換えを希望する』というのは、摂理を止めて白紙にすること。つまりこの世界を終わらせることを意味しているの」


 アリスは腰に手を当てて、弟に言い聞かせるように言う。


「……この世界を、終わらせる?」


 ジンが、かすれた声で言う。


「そう。あなたはそんなことにならないように、今まで仲間たちと頑張って来たんじゃないの?『伝説の英雄』であるあなたは、魔王を倒して『魔王の降臨』を止めた。

 そのあなたが、魔王になっちゃってたら、仲間が頑張った意味が無くなっちゃうじゃない! ワタクシだって、あなたの今の姿を見るのは哀しいのよ?」


 アリスは必死だった。ジンは魔王を倒し、この世界が魔族で蹂躙されることを防いだ。

 エピメイアを『虚空』に還し、『摂理の黄昏』という大変革が起こることさえ止めた。

 このまま何も起こらなければ、ジン・ライムという名は『真の伝説の英雄』として、長く世界に語り継がれることになるだろう。


 けれど、今のジンは、魔王形態となって何者かの声に従い、プロノイアのもとに向かおうとしている。この摂理を止めるため、言い換えれば世界をまっさらにするために。


「俺の……仲間……」


 ジンは頭を抱え込んでうつむく。その脳裏には、今までの戦いで散って行ったみんなの顔が次々と浮かんで消えた。


『団長さん、最後まで助けてくれようとしていただき、ありがとうございました』


 黒い瞳を輝かせてそう笑ったレイラは、次の瞬間、首から上を失った胴体だけの姿となって転がっていた。


「……レイラさん……」


『ご主人様、私、ご主人様のお側に居られてとても幸せでした』

『団長、妹ともども大変世話になったな。あなたの恩義は忘れないぞ』


 大剣を構えたウォーラと、槍を構えたガイアがそう言うと、二人は物言わぬスクラップとして地面にへたり込んだ。


「ウォーラさん、ガイアさん……」


 ジンの眉間のしわが深くなる。


『団長さん、あなたのおかげで兄に会えて、父の敵を討てたわ。ありがとう』

『ジン・ライム、叔父に似て素晴らしい戦士になったな』


 ジンジャーとテキーラが、薄く笑ってそう言うと、二人は背を向け、手を携えて光の中に消えていった。


「ジンジャーさん、テキーラさん……」


『やあ、ジン。大きな秘密を黙っていて悪かったよ。でも、せっかく救ってもらった命だから、キミにとって少しでも役に立ちたかったんだ』


 ワインが、葡萄酒色の髪をかき上げ、いつものように片側の眉だけを器用に上げる。


「……そんな秘密、どうだってよかったんだ。ドッカーノ村に帰って、またみんなで暮らす約束だっただろう?」


 ジンの眼から、一筋涙がこぼれる。


『団長くん、悲しんでくれるのはありがたいが、君は騎士だろう?『大義親を滅す』と言う。まだ君には、やらねばならぬことがあるんじゃないかな?』


 ド・ヴァンが少し困ったような眼で笑っている。最期の瞬間の、安心したような笑顔を見せていた。


「ド・ヴァンさん……僕はまだ、あなたに何にも恩返しができていないのに……」


 ジンが唇をかむ。


『ジン団長、悪かったな。最後の最後で作戦をミスっちまってさ。でも、ぼく自身はやれるだけやったし、魔王をあれほど追い詰めたんだから本望さ』


 ダイは、照れたように鼻の頭を指でかきながらそう言うと踵を返し、待っていたコアとシロヴィン二人の肩を抱いて歩き去った。


「ダイ、君とは少ししか交流できなかったが、いい仲間だったと思っている。平和な時代なら、友達にすらなれなかった気がするけれど……」


『ジンくん。お姉さんさ、やっぱりジンくんのことスキなんだ。だから、いつか私に話してくれた、ジンくんの思う世界を切り開いて見せてよ? 応援しているからさ。身体はなくなっちゃったけど、心は繋がっているんだよ?』


 エレーナは、まるで少女のようにはにかんでそう言うと、飛び切りの笑顔で笑って消えていった。


「エレーナ姉さま……」


 ジンが両手をぐっと握りしめる。


『ジンさま、キャロット様のおっしゃるとおり、あなたが最後のカギを握る『摂理の最後の1ピース』でしたね? アルケー・クロウがあなたとして生まれて来たのは、そしてわたくしと出会ったのは、やはり偶然じゃなかったんですね』


 マロンは、翠の瞳を真っ直ぐジンに向けてそう言うと、


『だから、わたくしがあなたに惚れたのも、間違いじゃなかったってことですよね?』


 笑いながら消えていった。


「……最後の1ピース……そして僕がアルケー・クロウ……」


 ジンは茫然としてつぶやく。


「ジン、アタシさ、ジンといつまでも一緒に居たい……」


 シェリーがそう言ってジンに抱き着いて来る。その温かさと、ふわりと鼻腔をくすぐる香りに、ジンは顔を上げた。目の前に、シェリーの弾けるような笑顔があった。


「……どうしたのジン? 不思議そうな顔をして?」


 シェリーが首をかしげて訊く。ジンは何度も目をこすって、恐る恐るシェリーの頬に手を伸ばした。温かく、柔らかい感触が伝わって来る。


「……シェリー、君はエピメイアの魔法でやられたんじゃなかったのか?」


 ジンが訊くと、シェリーは頬を染めて答える。


「あ、うん……確かにアタシは、すんごい時間の流れの中で死んじゃったと思ったんだけどね? えっと、そのぅ……ジンと、その、()()()()()からさ、ジンの魔力のおかげで時間操作魔法が効かなかったんだよね。


 それに、誰かがあの流れから引き揚げてくれたような気がするんだ……そう、灰色のマントを着た、たぶん女の人……」


 ジンは、そう話すシェリーをじっと見つめていたが、不意に彼女を抱きしめる。


「わっ、ジン! 急にどうしたの!? 恥ずかしいよぅ」


「シェリーが生きていてくれてよかった。ワインも、みんなもいなくなって、この世界を救った意味が分からなくなりそうだったんだ」


「ジン……もう大丈夫だよ? アタシはジンから絶対に離れない。だからさ、アタシと一緒に新たな世界を迎えに行こう?


 あの人がそう言ってくれたんだ。『破壊する者は孤独となるが、新たな世界を迎える者となる。乙女を選んで孤独の中で光を差し招く』って」


 シェリーはそう言いながら振り向き、灰色のマントを着た女性を指さす。その女性は右半分は漆黒の長髪、左半分は真っ白なセミロングという髪型で、アクアマリンとトパーズのようなオッドアイをしていた。



「幼馴染さんが生きていた!? 時間操作魔法を喰らったのに!? それにあれ、何者?」


 アリスは、突然現れたシェリーに戸惑っていたが、それよりも気になったのは、ジンとシェリーを見守っている人影だった。


 それは、一種異様な雰囲気をまとっていた。人間ではない。『暗黒領域』の奥深く、こんな所に人間など存在しえない。


 かと言って、魔族とも、精霊とも違う。そもそも『魔力』とは違うが、それ以上に圧迫感がある何かを、その女性は秘めていた。


 当然、四神やプロノイアとも、まとっている雰囲気も、持っている能力の属性もまったく違う。アリスは彼女を見て直感した。


(……これは、ワタクシたちが思うのとは違う運命の扉が開いたのでは?)


 アリスは精霊王、プロノイアの祝福を受けて精霊たちを御し、エレクラの指揮のもと摂理を見回り、摂理に反する事物を排除する役割を持っている。


 そんな彼女が、時間操作魔法が効かなかったジンやシェリー、そしてこの出来事の核心を知っているかもしれない謎の存在を目の当たりにして、黙っていることはできなかった。


「ジン様、幼馴染さんの生還、誠に喜ばしいことですわね?

 しかし、時空魔法という摂理の根本にかかわる魔法が通じなかったお二人に対し、ワタクシはプロノイア様の名のもとに発せられたエレクラ様からの命令に基づき、確認せねばならぬことがあります。

 おとなしく、ワタクシと共にエレクラ様のところに出頭していただけませんか?」


 アリスは、身体をパッと炎で包んでそう呼びかける。摂理を奉じる者なら誰も拒否できない、精霊王としての命令だった。


 しかし、それに答えたのはジンでもシェリーでもなく、謎の女性だった。


「ジン・ライム、いや、アルケー・クロウはすでに摂理の外にいる。摂理の外にいる存在は、精霊王の命令を聞く必要はない」


 柔らかな、包み込むような声だった。アリスは意外に思った。言っている内容は明確に摂理に挑戦しているものだったが、彼女が言えば当然と思えてしまう……それほど、気負いなく、静かで、だが断固とした響きを含んでいる声だったのだ。


「なっ!?……あなた、名前を聞いておきましょうか?

 ワタクシは、並行宇宙の管理者フェン・アリステス・アリスタティア・デ・ラ・マルシェレイこと、火の精霊王アリス・ヴェルファイア」


 アリスが強面でそう言うと、女性は薄い唇の口角を少しだけ上げ、


「名などない。アルケー・クロウとシェリー・クロウは、が導きにより生まれし者、吾が伝言を持たせておる者だ。がごとき偽神アルコーンが、その道を妨げてよいものではないぞ?」


 そう左手を上げながら言うと、アリスの周囲を覆っていた炎が消える。


「うぇっ!?」


 アリスは慌てて炎を展開しようとするが、なぜかうまくいかずに焦っている。


「無駄だ。摂理に従うものは摂理の繭に包まれねば何も出来ぬ。『魔力』や『精霊の存在』も、同様だ」


 女性はそう言うと、ジンに向かって微笑んで言った。


「さあ、吾が言葉をプロノイアに伝えてくるといい。途中、道を遮るものは、たとえ四神であろうと蹴散らして進め。四神は『今の摂理に従い、今の摂理を守るべき存在』だから、新たな摂理など彼・彼女らにとっては意味がないものだからな」


「……一つ訊いていいでしょうか?」


 ジンがそう言うと、女性は優しく微笑んでうなずく。


「吾が名と存在を訊かれても答えかねるな。そもそも吾は名も存在もない。それ以外だったら答えてやろう」


「さっきアリスは、『『虚空ヌルは書き換えを希望する』というのは、摂理を止めて白紙にすること。つまりこの世界を終わらせることを意味している』と言いました。それは本当でしょうか? そして、そうする理由は何でしょうか?」


 ジンが尋ねると、女性は優しい瞳をシェリーに当て、


「汝はアルケーと二世を契った身、アルケーと共に進む覚悟はあるか?」


 そう訊くと、シェリーは頬を染めながらも目を輝かせ、大きくうなずく。


「その道は茨の道と化すかもしれぬぞ? それでも後悔はせぬか?」


「はい。たとえ茨の道でも、道は道ですから」


 にっこりと笑うシェリーを見て、今度は女性が大きくうなずき、


「うむ、いい覚悟だ。ではアルケーの問いに答えよう。火の精霊王が言ったことは正しい。

 だがそれは、予言で言えば『乙女と一緒に新たな世界を迎える』ということ。希望を未来に託すことだ。


 決して吾も、すべてが終わったままでいいとは思わぬ。むしろ、始めるために終わらせることもある……それだけのことだ。


 この世界を終わらせねばならぬ理由はプロノイアに話しておく。どうしても知りたければ、プロノイアから聞くとよい」


 そう言うと、ジンは深くうなずいてアリスに向き直った。


「……ということだ。邪魔をしないでほしい。僕も君たち四神と争う気はない」


 そう言うと、シェリーの手を取って歩き出した。


   ★ ★ ★ ★ ★


「どういうことだ?」


 エレクラは、『パンテオン』で困惑のつぶやきを漏らした。現状をプロノイアに説明し、ジンの討伐許可とプロノイア自身の出馬を依頼しようとしたエレクラだったが、


「……プロノイア様の『異界』へのアクセスが外部の何者かによって遮断されている。こんなこと、今までになかったことだ……一体何が起こっている?」


 念のため、もう一度プロノイアの『異界』に飛ぼうとしたエレクラだったが、転移魔法陣はエレクラの入場を拒んだ。


(エピメイアの消滅の影響か? しかし、これではプロノイア様自身も『異界』から出ては来られぬが……)


「困ったものだ……」


 エレクラがそうつぶやいた時、


「まったくだよ。これで団長くんと敵対しなければならないことが確定しちゃったからね。

 じいさんもさ、腹をくくった方がいいと思うよ? 団長くんはすでに摂理の外にいるみたいだからね」


 そう言いながら、ウェンディが入って来た。いつもの彼女と違って軽口もなく、怒ったような顔をしていた。


「ウェンディ、ジン・ライムが摂理の外にいるというのは本当か? 情報源は?」


 エレクラが鋭い瞳を向けてウェンディに訊く。『摂理の外の存在』は、四神にとって何よりも優先して排除すべき存在だから、エレクラの態度も当然である。


 ウェンディはむっつりした顔でエレクラを見て、


「精霊からの注進さ。今、団長くんは『決戦の荒野』の東側でアリスと話をしている。アリスは団長くん……いや、これからは彼の正体であるアルケー・クロウと呼ぶね?……が、誰かからの伝言を届けるのを止めさせようとしているようだね」


 そう言うと、エレクラは愕然とした顔で訊いた。


「ウェンディ、いくつか確認だ。まず、ジン・ライムの正体がアルケー・クロウだと?

 アルケー・クロウはジン・ライムとは別に存在し、ジン・ライムも彼を敵視していたはずだが?」


「うん、どうやらボクたちが認識していたアルケー・クロウは、『異体』だったらしい。団長くんの中のアルケー・クロウが目覚める前に、アルケーの意識が分裂して、『敵意と絶望』だけが実存在となったようなんだ。


 だから、あくまでアルケー・クロウ本人じゃあるけれど、確定した存在じゃなかった。団長くんの魔族としての魔力が覚醒した時、本人を確定する必要があったけれど、それに気づいたマロンが、団長くんを『アルケー・クロウ本人』にするために動いたみたいだ」


 エレクラは目を閉じ、腕を組んで話を聞いている。そしてウェンディが話し終わった時、


「ジン・ライムに伝言を頼んだ『誰か』とは誰だ? 心当たりはあるか?」


 そう訊くと、ウェンディは神妙な顔をして答えた。


「アリスと団長くんの側にいるらしい。白黒ツートンカラーの髪をした女性だそうだ。ちなみに、アルケー・クロウが摂理の外にいるとは、その女が言った言葉だよ。


 じいさん、ボクはその女性は『虚空ヌル』が顕現した姿だと思う。アリスの魔力が止められたみたいだし……プロノイア様の『異界』を封鎖したのも彼女だと思う」


「む……ジン・ライムが頼まれた言葉は分かるか?」


「『虚空ヌルは書き換えを希望する』だそうだよ。これって絶対に『摂理を止めろ』って言ってるよね?」


 ウェンディの答えを聞いて、エレクラは目を開ける。絶望しつつも希望を探している、そんな目をしていた。


「……要望の形で出されている。ということはプロノイア様が発動を拒否される可能性も無きにしも非ずだな。マーレはどうしている?」


「そろそろ、アリスと合流する頃だね」


「分かった、私も急ごう。ウェンディ、お前も急行してくれ」


 エレクラはそう言うと、虚空から愛用の槍『クウィエス』を取り出し、さっと室内を見回す。地上の出来事を映す巨大な水晶を見て、ふっと笑い、エレクラはホッカノ大陸へと移動した。


 ウェンディは、水晶を見て哀しそうに微笑むと、


「……じいさんとの腐れ縁も、もうすぐ終わりかぁ」


 そう言って『風の翼』を広げた。



 ジンが再び歩き出した……それを見逃すのは『今の世界の消失』を意味する。

 アリスは事態をそう判断した。


 ジンからは、


『邪魔をしないでほしい。僕も君たち四神と争う気はない』


 そう言われていたが、エレクラまたはプロノイアからの明確な指示がない限り、アリスにはその言葉に唯々諾々と従う選択肢はなかった。


「待ちなさいジン・ライム! やっぱりエレクラ様のところに来ていただくわ!」


 アリスはそう言って、ジンたちの前に立ち塞がった。


「……邪魔はしないでほしいと言ったはずだけれど。どうしてもエレクラ様の所に連れて行きたいのであれば、ついて行かないこともないが、それで僕の行動が変わるとは思わない。黙ってそこを通してくれないか? 精霊王アリス・ヴェルファイア」


 ジンが立ち止まって言うが、アリスはジンたちの後方にいる女性に向かって、


「あなたがジン様を操っているんでしょ!? ジン様が『伝説の英雄』の心を忘れていないなら、ワタクシの話を聞いてなお、世界を終わらせるような言葉をプロノイア様に伝えようとするはずがないわ!」


 そう叫ぶように言う。


 だが、必死なアリスに、マントの女性は静かに言う。


「精霊王アリス、汝の魔力は封じている。『深淵の魔力』を持つジンには敵わぬ。そこを退くといい。エレクラも魔力が封じられていたと言えば、汝を責めたりはすまい」


 すると、アリスはくすくすと笑いだした。


「言ってくれますわね? ジン様の『深淵の魔力』は確かに手強い。でも、ワタクシにだって()()()はございますのよ?」


 そう言うと、アリスは左目にはめていたバラの形のアイパッチをむしり取る。途端に風が巻き起こり、吹き上がった前髪の向こうで見開かれた左目は、燃えるような緋色に輝いていた。


「さあ、ジン様。お話をとっくりと聞かせていただきますわよ。『煉獄の舞台(フレイムスタジアム)』の中で!」

 ボウンッ!


 アリスの左目から漏れ出した魔力は、すぐにジンとシェリーを包み込んで、燃え盛る灼熱の牢獄と化した。


「……『秘められた魔力(ヒドゥンタレント)』か。汝がその能力を持っていようとは想定外だ」


 マントの女性が言うと、アリスは苦しそうな顔で笑い、


「精霊王としては論外のやり方ですけれどね?

 でも、生涯にただ一度だけ使うと誓約をしておりましたから、摂理外の魔力ではありますがエレクラ様も許容してくださるでしょう」


 そう言うと、炎の牢獄に鋭い視線を向け、


「ワタクシは精霊王、摂理の外にいる存在なのであれば排除すべきです……相手がたとえジン様だとしても、敵わない相手だとしても……」


 そう言うと、自ら『煉獄の舞台』の中に入って行った。


 マントの女性は、腕を組むとため息を漏らす。


「……ふむ、吾が自身のことを語ってよいのであれば、アリスにもエレクラにも納得はさせられるのであろうが。やはりプロノイアは、まだ吾のことを四神に伝えておらなんだか」


 一方でジンの方は、突然周囲で燃え盛る炎を、静かにじっと見つめていた。


「ジン、アリスはアタシたちのことを邪魔する道を選んだけれど、どうするの?」


 シェリーが訊いて来る。


「……アリスは本気だったな。精霊王としての矜持と任務があるんだろう。そのつもりなら、彼女の好きにさせるさ」


 ジンがそう答えた時、アリスが炎に包まれて現れる。赤い髪は燃え上がり、緋色の瞳は決意を秘めて光っている。何よりも彼女の本気が伝わってくるのは、彼女が真っ赤な鎧に身を固めていたことだ。精霊王の戦闘装束というものなのだろう。


「……ジン・ライム。あなたを摂理への反逆者として処断いたします」


 静かな声だった。凛とした声だった。しかしその中に、そこはかとない悲しみを含んだ声だった。


 ジンはアリスの感情を正確に読み取った。それでもなお、いや、それだからこそジンは、何も言わずに魔剣パラグラムをゆっくりと抜き放った。群青色の魔力に包まれたパラグラムは、『魔剣』というには程遠い清浄な光を放っている。


 それを見た時、アリスは、


(あれほど清浄な光を放っているのなら、『深淵の魔力』とは邪悪なものではないのかもしれない……)


 そう思った。その時だった。


「『逃走不可能パープルプリズン』」

「えっ!?」


 アリスは、紫紺の魔力が充満した空間に閉じ込められる。そのことで、ジンも本気で自分に立ち向かってきていること、そして『今、矛を収めるなら殺す気はない』という最終警告を送ってきたことを悟った。


「『貪欲な濃霧(ドレインミスト)』」

「つっ!?」


 アリスは、続けざまに放たれたジンの魔法に声を失う。


(この術式は、ドレイン系ね。なるほど、ワタクシが矛を収めればここから出す。あくまで戦う気でも、この空間規定を解除しなければいずれは魔力切れ……ってことね)


 アリスは少し考えた。ジンが持つ『深淵の魔力』は、それ自体が邪悪なものではない。むしろ、包み込むような穏やかさがある。


(……とすると、ジン様は自分がプロノイア様にあの言葉を伝えた後、何が起こるかは承知のうえで、プロノイア様に会いに行こうとされているのかもしれない。だったら、ジン様の決意は固いと思わないといけないわね……)


「精霊王アリス、この術式を解いてくれないか? 僕の方で解いてもいいが、君に解いてもらいたいんだ」


 『脱出不可能』の外からジンが語りかけて来る。その呼びかけに、アリスは待っていたように答えた。


「ジン様、一つ訊いてもいいでしょうか?」

「……何なりと訊いてくれ」


 ジンが自分の願いを受け入れたため、アリスは少し明るい声で、先ほどの自分の考えを確認した。


「ジン様は、あの言葉をプロノイア様に伝えたら、何が起こるかを承知のうえで、なおプロノイア様に会いに行かれるとおっしゃいますか?」


「……『虚空ヌルは書き換えを希望する』というのは、摂理を止めて白紙にすること。つまりこの世界を終わらせることを意味している……君が言ったとおりのことが起こるんじゃないのか?

 どのような出来事が起こるのかは分からないが、摂理が止まったうえでの終末ならば、それは一瞬のことだと思う」


 アリスはそれを聞いて目を閉じる。最初に『書き換え』について話した時、ジンは明らかに動揺した。その時のジンは『書き換え』の意味も、それに続いて起こることも知らなかったのだから当然の反応であり、ジンが当然の反応を見せたことで、説得の期待も膨らんだアリスだった。


 だが今のジンは、『書き換え』で消えてしまう世界より、『書き換え』の後に来るであろう世界に目を向けている。『この世界』に生き、『この世界』を愛し、『この世界』を守ることを至上の任務としてきた精霊王にとって、それは理解しがたい感覚だった。


「……ジン様、はっきり言ってワタウシは今の『この世界』が好きです。けれどジン様の眼はすでに『書き換え後の世界』に向いているようですわね?

 ワタクシはそこに行くことは叶いませんが、どんな世界が待っているのでしょうね?」


 アリスの楽しそうな声が聞こえて来た。だがジンには、それがアリスからの別れの言葉に聞こえた。


「アリス、『あのひと』は言った。摂理の書き換えは、予言で言えば『乙女と一緒に新たな世界を迎える』ということ。希望を未来に託すことだ。始めるために終わらせることもある……とね。君も、未来への希望を『あのひと』に託さないか?」


 ジンはアリスに、新たな世界を共に迎えることを提案した。恐らくアリスは拒絶するだろうと思いながら。


 そして、果たしてアリスはにこやかにジンの誘いを拒否した。


「……そうできればいいんですけれどね? やはりワタクシはプロノイア様やエレクラ様の負託に忠実でありたいので……。『黒炎の魔障壁(フレイムウォール)』っ!」

 ボウンッ! バフンッ!


 アリスが術式を展開すると、彼女を捉えていた『脱出不可能』と『貪欲な濃霧』は弾け飛んだ。『貪欲な濃霧』というドレイン系魔法の中にいたものだとは思えないほどの魔力の噴出だった。


「……では、最初に会った時から持ち越している決着を付けましょうか、甚九郎くん?」


 アリスはそう言いながら、虚空から剣を取り出しニヤリと笑って構えた。その笑顔は、マーターギ村で会った『並行宇宙の管理者フェン・レイ』そのままだった。


   ★ ★ ★ ★ ★


 深い海の色をした髪と瞳を持つ、見た目15・6歳の美少女が、『暗黒領域』を『決戦の荒野』目指して急いでいた。


「……アリスはもうジン様と戦闘に入ったかしら? 早く行かないと、今のジン様相手だったら、わたしたちは各個撃破されてしまうかもしれないわ」


 水の精霊王マーレ・ノストラム……彼女は『組織ウニタルム』べったりだった先代のアクア・ラングと違い、精霊覇王エレクラも全幅の信頼を置くほどバランス感覚に富み、先見の明もある精霊王だった。


 水の精霊たちは未来を視る力がある。それは初代精霊王だったアクエリアス・レナウンが、『伝説の英雄』についての予言を残していることからもうなずける。


 同じく先を見る目を与えられていたマーレは、『ジンの魔王形態化』を聞いた瞬間、その先の展開を予見していた。


(『伝説の英雄』は、『繋ぐ者』あるいは『摂理の破壊者』いずれかになる。けれどアクエリアス様は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これはキャロット様の予言もそうだった。


 何よりも、わたしたちが知る限り、『摂理の黄昏』を止めた英雄がどちらかになったという事例も知らない。この事実が意味することは、今までの『伝説の英雄』たちは、『摂理の黄昏』を完全な意味で止めたわけではない……ということなのでしょうか?)


 あるいは……そう考えてマーレは首を横に振る。ふと思い浮かんだ衝撃的な考えを振り払うように。


(……『摂理の黄昏』を止めた『伝説の英雄』が『繋ぐ者』を選べば、世界は続くがその行き先にはいつか滅びが待っている。『摂理の破壊者』を選べば、今の世界は終わるが『虚影の空』に『真実の月』が現れ、新たな世界を迎えることになる……わたしにはキャロット様の予言はそう読める。


 とすると、今まで『摂理の黄昏』を止めて来た『伝説の英雄』は、みんな『繋ぐ者』を選んでいたけれど、ジン様は『摂理の破壊者』を選んだってことかしら?

 だとしたら、わたしたちがそれを止めるのは難しい。この先ジン様と戦うものは、すべて摂理に還ることを覚悟しておかないと)


 マーレは未来を視た。アリスも自分も、ジンの手によって虚空に還されるだろう。そしてその運命は、そのままエレクラやウェンディの運命でもある。


「……『虚空ヌル』それを望み給う……か。摂理の大本が望まれるのであれば、わたしたちでは如何ともし難いわね」


 そう口走ったマーレは、この時から『悲愴』だった。



「こちらも手加減いたしませんことよ!『炎鴉は告死天使(クロウ・オブ・デス)』!」


 アリスが術式を展開する。千に余る炎鴉フォイエルクロウたちが、あっという間に鳴き喚きながらジンに襲い掛かる。


完全な虚空(ヴァーニティ)


 ジンの緋色の眼が光る。空間規定をそれまでの立方体ではなく、ドーム型にシールドのように展開したのだ。規定空間に触れたフォイエルクロウたちは、爆発すら起こさず次々と拡散して姿を消していった。


「つっ!?『黒炎の魔障壁(フレイムウォール)』っ!」

 ジャンッ!


 あっという間に懐に飛び込んできたジンの斬撃を、アリスはシールドを展開して受け止める。彼女のシールドは『弾く』のではなく『受け止める』。そしてシールドを構成する高温の炎で、武器を熔かすものだった。


「やっ!」

漆黒ひかりはかくれる

 ボフンッ!


 剣を受け止められ、ジンの動きが止まった一瞬を衝いてアリスの剣が奔る。だが、その軌跡はジンのシールドで止まった。


「離れなさいな!『炎神の長き腕(フレイムクリンチ)』!」

暁星よるにひかる

 バウンッ! ガゴンッ!


 お互いに剣を止められて膠着状態になるのを嫌ったアリスが放つ魔法を、ジンも魔法で迎え撃つ。二つの魔法がぶつかり合った衝撃で、ジンとアリスの間合いは10ヤードほどまで広がった。


「さすがにすごい魔力ですわね。『炎神の鳳翼(フレイムフリューゲル)』っ!」

 ボワッ! ドシュンッ!


 アリスは、炎をまとった剣を思い切り振り抜く。炎は翼を広げ、まるで意志あるもののようにジンに襲い掛かった。


暁星よるにひかるっ!」

 バウウンッ!


 だが、その炎翼は、横合いからの魔力で吹き飛ばされる。アリスがその魔力が来た方向を見ると、シェリーが紫紺の魔力に包まれて立っていた。


「……そう言えば、幼馴染さんもいましたっけね? ジン様と同じ『深淵の魔力』をお持ちになったんですね?」


 アリスはそう言うと、ジンに視線を戻して笑った。


「仲が良くてよろしいですわね? 二人で新たな世界の神にでもなるおつもりかしら?」


「光を招来するという意味では神のようなものなのかもしれないが、あくまで世界を形作るのは『虚空ヌル』だ。僕はその前座のようなものさ」


 そう言うジンの身体が、見る見るうちに群青色の魔力に包まれていく。


 そこに、


「わたしも参戦いたします!『水龍の閃き(ヴェッセルフレイム)』!」

 バシュンッ!


 声と共に放たれた矢は、巨大な龍の姿となってジン目がけて飛んで行くが、


新月つきはきえるっ!」

 バガンッ!


 横合いから飛んできた矢が、ものすごい音を立てて矢を消滅させた。


「……さすがは『摂理の破壊者』の伴侶。魔力は素晴らしいですね?」


 アリスの隣に姿を現したのは、水の精霊王マーレだった。ただ、その口調とは裏腹に、表情は硬く、顔色は悪かった。


(『水龍の閃き』はそう簡単に弾かれるような術式じゃない。それを、飛んでいる矢を狙撃して消滅させるなんて……)


 マーレとしては、最初にある程度強力な攻撃を行って主導権を握るつもりだった。しかし、その攻撃が神業ともいえる方法で無効にされたのだ。神経戦で開始早々ダメージを受けたと言える。


(幼馴染さんは『風』のエレメントを持つ普通のシルフのはずなのに、どうして魔族の魔力を持っているのかしら?)


 マーレの脳裏にふとそんな疑問が浮かんだが、


(とにかく、わたし同様、幼馴染さんがジン様を援護する形での戦いになるみたいね。だったら、最初にその援護ができなくすればいい……)


 紫紺の魔力に包まれ弓を持っているシェリーを見て、マーレはそう考えた。先が見えるからこそ勝負を急ぎ、術式に自信があるからこそ突飛ともいえる行動に出られるマーレだったが、この時はそれがすべて裏目に出た。


「マーレ、勝負を急ぐんじゃないわ!!」


 アリスは、マーレの魔力が膨れ上がり、急速に動くのを感じてそう叫んだ。しかし、その時にはマーレの姿はシェリーの後ろにあった。


「だめ、マーレ! 下がって、罠よっ!」


 マーレは首尾よくシェリーの後ろを取れたので安心していた。後は必殺の矢をシェリーの後頭部に叩き込むだけ……刹那の後には勝負がついているはずだった。


「覚悟っ! ええっ!?」


 マーレが矢をつがえてシェリーに向けた時、すでにシェリーは両手に短剣カットラスを構えてマーレの右斜め前にいた。


 ヒュンッ! パンッ!


 短剣の軌跡が弓と交差し、軽い音を立てて弓弦が切れる。大きく目を見開くマーレの耳に、シェリーの冷たい声が届いた。


「ようこそ、アタシの罠に。『音速の烈風(スーサイド・アサシン)』!」

 ズバババババババッ!

「がああーっ!」


 シェリーの短剣がマーレの身体をなますのように斬り裂く。そして弓も矢も手放し、全身血とつづれとなったマーレは、ぼんやりとした瞳で虚空を見つめて、ゆらゆらと立っていた。


諒闇やみはいだくっ!」

「ぐっ!」


 シェリーの呪縛魔法で、マーレは一瞬目を見開いて呻き、身体を硬直させた。


「バイバイ。天命きめごとっ!」

「がっ!」

 ボフンッ!


 くぐもった音とともに、マーレの胸の辺りで爆発が起こり、背中まで貫通するほどの大穴が開く。マーレはゆらゆら立っていたが、やがて何も言わずにうつぶせに倒れた。

 胸に空いた穴からは多量の鮮血が流れ出してきたが、心臓が爆発していたため、血の噴出は起こらなかった。



 アリスは、マーレの亡骸の下にじわじわと広がる赤いシミを見ながら肩を震わせていたが、大きく深呼吸するとシェリーに向かって言い放った。


「仲間を目の前で殺された気持ち、あなたにも味わっていただきますわよ?『煉獄の舞台(フレイムスタジアム)』!」

 ボウンッ!

「うっ!?」


 アリスはシェリーを業火の牢獄に閉じ込めて、ブリザードのような声で言った。


「アナタの愛する甚九郎くん、ワタクシがたっぷりと可愛がって差し上げますので、そこで指をくわえて見ていなさい」


 そう言うアリスに、ジンが斬りかかった。


「ふんっ!」

 ビュワンッ!


「甘いですわよ?」

 ボボウンッ!


 アリスは『黒炎の魔障壁』を展開してジンの剣を阻む。

 そして一瞬動きが止まったジンに、アリスは、胸の前で組んだ両手にありったけの魔力を集めて解き放った。


「これはいかがかしら?『暁は終焉を嘆く(ラグナロク・ドーン)』っ!」

「むっ!?」

 ドゴオオォォンンッ!


 ジンは、アリスが放った火球の直撃を受けて、数十ヤードも吹き飛ばされる。全身が火焔に包まれていた。


 だが、アリスは知っていた。今の術式はジンをまともに捉えはしたが、まだ死命を制してはいないことを。


「……しぶといわね。さすがは『摂理の破壊者』ね。『炎神の長き腕(フレイムクリンチ)』っ!」


 今のアリスは、『暁は終焉を嘆く(ラグナロク・ドーン)』を続けざまに出せるほどの調子ではなかった。何しろ本来の魔力を封じられ、自身が持つ特別な術式で強引に魔法を使っているのである。本来であればとっくに戦闘を切り上げるべき状況だったのだ。


 そのため、アリスは最強の攻撃魔法ではなく、とりあえず常用の攻撃魔法でジンを追撃する。それがアリスの運命を決めた。


 ドズッ!

「むっ!?」


 『炎神の長き腕』はジンの左腕を貫通したが、


諒闇やみはいだく

「えっ、まさかっ!?」


 アリスは、自分を拘束するなら先ほどの『逃走不可能』のような空間規制魔法が来ると読んでいた。そのための迎撃魔法も準備していたのだが、ジンが使ったのはマーレを拘束したのと同じ呪縛魔法だった。


「急いで解除しなければ。解除してもう一度『暁は終焉を嘆く(ラグナロク・ドーン)』をっ!」


 急速に魔力を集めるアリスを見据えながら、ジンはゆっくりと止めの魔法を撃った。


「『終焉(オーバー)(・ザ・)輪廻(リッパー)』っ!」

「がはっ!?」


 アリスは、自身の身体の中で強大な魔力が噴き出し、身体中の細胞が限界まで膨らみ、次々と破裂していく感覚を覚えていた。


(これが、『深淵の魔力』……せめて、一矢報いて……)


 アリスは意識が途切れる寸前で、生涯最強で、ただ一度の攻撃魔法を撃った。


「『終末は光り輝く(ラストフィナーレ)』!」

 ズドドドォォォォーンッ!


 まばゆい光が走ったと同時に、アリスは巨大な光球となって散華した。



「遅かったか!」


 まだ爆風が地表を駆け抜けている中で、身長190センチほど、白い長髪を首の後ろでくくり、黒い詰襟服を着込んだ男性が、そうつぶやいて唇をかむ。


 その鋭いアンバーの瞳は、もうもうとした砂塵の中でも、誰かがゆっくりと近付いて来るのを捉えていた。


「……大地の守護(ホルストケッセル)……」


 エレクラは自身が持つ最強の、いや、精霊王が扱う中でも最強の防御魔法でシールドを張った。精霊覇王であるエレクラが、会敵前から防御術式を展開するのは初めてのことだ。


(……ジン・クロウはすでにマーレとアリスを倒している。名実ともに我ら四神の敵となってしまった。そして恐らく『摂理の外』の存在。一瞬も気は抜けないな)


 エレクラはアンバーの瞳を光らせて、舞い上がる砂塵を見つめる。そして、鋭く声をかけた。


「ジン・ライム! そこに居るんだな!? 私は精霊覇王のエレクラ・ラーディクスだ!」


 すると、砂塵の向こうからジンの声で返事があった。


「……エレクラ様ですか、お久しぶりです。エレクラ様も、僕がプロノイア様の所に行くのを邪魔されるのでしょうか?」


 その声は、それまでエレクラが聞いていたジンの声と変わりはなかった。だが、砂塵の帳を突き抜けてくる魔力は、明らかにこれまでとは違っていた。


(……本質から生まれ出た魔力だな、これは。恐らく『深淵の魔力』とは、『虚空』が持つ性質そのものなのだろう。これは私でも勝てはしないな……)


 エレクラはこの世界で最初に誕生した精霊である。それ以来、数億年という時間の中で様々な『時の移ろい』を見て来た。そして、摂理の中ではすべてが変わりゆき、摩耗し、やがて土に還ることを実感していた。


 そんなエレクラだからこそ、『変わらない本質』が体系化した『深淵の魔力』を一瞬で理解し、勝てないと判断できたのだろう。


 だが、プロノイアからは何も指示は来ていない……エレクラは自分の信じる道に殉ずる覚悟を決めた。


「……お前が付託を受けたことに対し、私がとやかく言う資格はない。ただ、付託内容について、摂理を見守る任務を帯びている我々四神としては見逃せないだけだ。

 アリスから報告は聞いている。伝言は『虚空は書き換えを希望する』だったな?」


 エレクラがそう言い返すと、ジンは


「……僕がそれをプロノイア様に伝えることで、何が起こるのかは、精霊王アリスから聞きました。

 しかし、摂理の書き換えは、予言で言えば『乙女と一緒に新たな世界を迎える』ということ。希望を未来に託すことでもあります。

 始めるために終わらせることもある……その時がまさに今、来てしまったんじゃないでしょうか?」


 静かに答えてくる。砂塵の吹き荒れる中で、エレクラにはその声が妙にはっきりと聞こえた。


「……ふむ、そうかもしれない。『虚空ヌル』が見切りをつけるほど、我々は何か取り返しのつかない失敗をやらかしていたのかもしれないな。


 しかし、アリスもマーレもそうだったように、我々四神は『今ある』摂理を守らねばならない。お前が預かっている伝言は、『希望する』と、要望の形で出されている。プロノイア様が実行を拒否される可能性もあるが、それでもお前は行くか?

 ここで私に従えば、お前は『繋ぐ者』として平穏な世界を手にすることもできるが?」


 エレクラの誘いに、ジンは微笑と共に……エレクラには見えなかったが、そう感じられた……答えた。


「……滅びの待つ平和ですか? 今までの『伝説の英雄』は、『現在』に希望を見て『繋ぐ者』となったのかもしれません。

 でも僕は『未来』を選ぶ、それだけのことです……それが茨の道へと続いているとしても……」


 エレクラは目を閉じ、腕を組んで聞いていた。そしてしばらくして目を開けた時、砂塵は晴れ、ジンとシェリーの姿が20ヤードほど先に見えた。


 エレクラは右手を上に差し伸ばす。虚空からがっしりとした長大な穂を持つ3メートルほどの槍……エレクラの愛槍『クウィエス』が現れる。


 エレクラは『クウィエス』を身体の右側面に立てて、ジンに笑いかけた。


「ジン・ライム、残念だがお互いの信念を賭けて戦わねばならぬようだ。これからはお前を真実の名で呼ばせてもらおう。()()()()()()()()とな」


   (世界を狩ろう!その5:VS精霊覇王エレクラ に続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

水の精霊王マーレ・ノストラム、火の精霊王アリス・ヴェルファイア。この二人はジンとの出会いの中で(特にアリスは)心を通わせた精霊王です。

アリスは、『フェン・レイ』と名乗って『組織』の中で動いていた当初は明確にジンの敵でした。精霊王位の継承時に起こった出来事により本心を異界に隠し、残留思念となっていたフェン・ヴェルファイアのコントロールを受けていたフェン・レイが、自分を取り戻しアリスに戻るまでの話は、本編101話からの『精霊王を狩ろう!』のエピソードをご覧ください。

そして次回は精霊覇王エレクラとの戦いになります。『四神最強』を謳われるエレクラと、どのような戦いを繰り広げるのか、お楽しみに!

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

【主な登場人物紹介】

■ドッカーノ村騎士団

♤ジン・ライム 18歳 ドッカーノ村騎士団の団長。典型的『鈍感系思わせぶり主人公』だったが、旅が彼を成長させてきた。いろんな人から好かれる『伝説の英雄』。だが、ワインとスナイプの死によって、『繋ぐ者』ではなく『破壊者』として覚醒し始めており、マロンの死によって真の『魔族の祖』であることを自覚した。

♡ラム・レーズン 19歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』。魔王との決戦で負傷し、チャチャと共に後送されている。

♡チャチャ・フォーク 14歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。シェリーが大好きな『百合っ子ヒロイン』。負傷したラムと共に後送されている。

♡アイリス・ララ 『PTD10・ドール』を名乗り、ジンを瀕死に追い込むほど善戦した自律的魔人形エランドール。ジンの魔力マナで再起動し、新たに仲間となった。

■退場した仲間たち(退場順)

♡レイラ・コパック 博識で氷魔法の使い手。スナイプのスカウトでジンの騎士団に加入した。『PTD5・法律家』を倒すも『PTD3・道化』に止めを刺された。享年17歳。

♡ウォーラ・ララ ジンの魔力マナで再起動した自律的魔人形エランドール。彼の騎士団に所属して献身的に仕えたが、『PTD2・戦士』との戦いで相討ちとなった。

♡ガイア・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造ったエランドールでウォーラの姉。後にジンの騎士団に所属して『PTD1・学生』と対峙したが、相討ちとなって果てた。

♡マディラ・トゥデイ 騎士団『ドラゴン・シン』事務長。金髪碧眼で美男子のような女の子。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに叩き潰された。享年20歳。

♡ソルティ・ドッグ 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。調査・探索が得意。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに握り潰された。享年21歳。

♤ブルー・ハワイ 『ドラゴン・シン」の遊撃兼偵察隊長である槍使い。記憶力と変装に優れ、情報を分析する能力に長ける。魔王親衛隊クン・バハと対峙し善戦したが、隙を衝かれて敗死した。享年25歳。

♤ウォッカ・イエスタデイ 『ドラゴン・シン』の副官兼親衛隊長。オーガの戦士長、スピリタスの息子で無口・生真面目な性格。大陸武闘大会で3連覇を果たすほどの戦士だったが、魔王親衛隊クン・バハに止めを刺しつつも力尽きる。享年21歳。

♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、頭も切れ双剣の腕も確かだが女好き。ジンと永遠の友情で結ばれ、さまざまな場面でジンとドッカーノ村騎士団を助けて来た。最期は『約束の地』直前で襲来した魔王親衛隊隊長ファルカロスを倒したが力尽きた。享年21歳。

♡ジンジャー・エイル 本名キュラソー・マッケンロウ。ジンの命を狙ったが許されてドッカーノ村騎士団に所属し、『PTD4・幽霊』を倒す。魔王の眷属と化したエレノアに挑み勝利するが、同じく眷属になった賢者スリングに殺された。享年21歳。

♤テキーラ・トゥモロウ 『ドラゴン・シン』団員で本名テキーラ・マッケンロウ。父はバーボンの異母兄コニャックでジンジャーは実妹。魔王親衛隊オデッシアに止めを刺した後、ジンの許に急行し、魔王の眷属・賢者スリングと相討ちになって果てた。享年24歳。

♤ダイ・アクーニン ドッカーノ村騎士団所属。賢者ストックの息子で卓越した知力と魔法を誇る弓使い。仲間のコア・クトーやシロヴィン・ボルドーの仇を討つため魔王と戦い善戦するが力及ばず敗死した。作戦ミスで魔王を完全復活させてしまった。享年28歳。

♤ワイン・レッド ジンの幼馴染みでエルフ族。水の槍使いで博学多才、智謀に長ける。『PTD7・淑女』と共に『PTD6・ナルシスト』を倒した。実は11年前に事故死していたが、父母の依頼でエレノアが復活させていたという秘密がある。復活したスリングたちを摂理に戻すマロンの魔法で、彼も摂理に戻ってしまった。享年18歳

♡エレーナ・ライム(賢者スナイプ)『賢者会議』の一員だった才媛。ジンに自身が人工生命体ホムンクルスであることを明かし『風の宝玉の欠片』を譲る。『PTD3・道化』を倒すも、『道化』が残した瘴気に侵されてしまったが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』によって命は救われた。視力を失っていたが、ジンの魔力で取り戻した。エピメイアの『箱庭』を、自らの犠牲によって破壊し、ジンたちを救い出した。享年28歳。

♡メロン・ソーダ 年齢不詳 元は木々の精霊王マロン・デヴァステータ。エピメイアと行動を共にしたため、その地位を剥奪された。アルケー・クロウを追ってジンの騎士団に入り、『暗黒領域』ではダイと共にドッカーノ村騎士団別動隊を率いたが、後にアルケーと行動を共にする。エピメイアとの戦いで戦死したが、エピメイアの奥義を封印し、真の『魔族の祖』アルケー・クロウを覚醒させた。

♡シェリー・シュガー 18歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子で負けフラグをへし折った『幼馴染ヒロイン』。魔王との決戦で魔王の罠に嵌り殺されたが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』で復活し、後にエピメイアの時空魔法で賢者マーリンと共に消滅した?

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