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キャバリア・スラップスティック  作者: シベリウスP
摂理の黄昏編
168/170

Tournament168 Universe hunting:3(世界を狩ろう!その3:VSエピメイア決着)

エピメイアはマロンの究極魔法で奥義を封じられるも、マロンとアルケーを倒し、時空魔法でマーリンやシェリーの命まで奪った。

しかし、『深淵の魔力』が覚醒したジンによって、その命を絶たれる。エピメイアの死は、そのまま摂理の崩壊を呼び込む可能性がある中、ジンが『摂理の破壊者』となる可能性が高まった。

【前回のあらすじ】


エピメイアはジンとマロンを各個撃破する作戦に出る。エピメイアの『箱庭』に閉じ込められたジンたち『騎士団』は、賢者スナイプの犠牲によって脱出、遂にエピメイアVSジン、アルケー、マロンによる決戦が本格化した。


   ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★


 マロン様は、微笑むとアルケーにつぶやいた。


「……本当のアルケー・クロウになって、わたくしを迎えに来て……お願い」

「分かった。マロン、約束する」


 アルケーの言葉を聞いて、マロン様は満足したように微笑むと、僕に視線を移し、


「ジン様……アルケー・クロウ……だったこと……思い……だし、て……」


 そう言って、アルケーの胸の中で息を引き取った。


 僕は、マロン様の言っている意味が解らなかった。だって、言葉どおりに受け取れば、僕はアルケー・クロウだってことになる。だったら、今まさにマロン様を胸に抱いている彼は何者なんだろう?


 それに、アルケー・クロウは『魔族の祖』と言われるとおり、7千年も前の人物で、そして僕の素材を使って『運命の背反者(エピメイア)』が錬成した人工生命体ホムンクルスだ。


 一方で僕は、父バーボン・クロウと母エレノア・ライムの間にアルクニー公国ドッカーノ村で生まれた。魔族の血は引いてはいるが、れっきとした人間だ。生まれた時代も経緯も違う僕とアルケーが、同一人物であるはずがない。


 それに……これが、僕がアルケー・クロウであることを認めたくない一番の理由だが……僕がアルケーなら、5千年前の時代でカッツェガルテンを滅ぼし、ウェカを死に追いやったのは僕だということになる。そんなはずはなかった。


「……ジン・クロウ、エピメイアに引導を渡すぞ」


 いつの間にか僕の側に来ていたアルケー・クロウが、そう声をかけながら、ぼうっとしていた僕の肩を叩く。

 それで僕は我に返った。そうだ、まだエピメイアとの決着はついていない。マロン様の言うことは気になるが、今はエピメイアを倒すことだけを考えねばならない。


「ジン・クロウ、マロンが言っていた言葉、気になるようだな?」


 肩を並べて歩くアルケーが、エピメイアを睨みつけながら訊いて来る。僕は肯定しながらも首を振った。


「ああ、気になるな。だが、先にあいつを『虚空ヌル』のもとに還さないとな」


 僕が言うと、アルケーは少し黙っていたが、不意に、


「……悪かったな。お前がそうだと知っていたら、『乙女』を攻撃したりはしなかった。

 『乙女』の運命はあそこで終わりではなかった。だから俺はあの攻撃で『乙女』が死ぬとは思っていなかった。お前の救援が間に合うと思っていたんだ」


 そう、詫びとも言い訳ともつかぬことを言った。


 僕には今ここでそんな話を聞くつもりはサラサラなかった。彼がどう言いつくろうと、ウェカは5千年前に彼によって命を落とした。それは紛れもない事実だ。


 そして、マロン様がどうして僕に『アルケー・クロウだったことを思い出して』と言ったのかは、まだ謎だ。思い当たる節もなく、想像すらできない。


 だから僕は、冷たく言い放った。


「……僕の感情を乱さないでくれないか? 話はあとでゆっくりと聞く。今はお互い、大事なもののために戦う時間だ」


「お前がそう言うのも解る。だが、これだけは言っておきたい。俺はお前だが、同一人物って訳ではない……より正確に言えば、俺の『深淵の魔力』はお前が基になっている。だから俺が使う術式はお前も使うことができる」


 それだけ言うと、アルケー・クロウはいきなり駆けだした。前を見ると、エピメイアがマロン様の『四つの季節(カトル・セゾン)』の檻から、なんとか抜け出してきたところだった。


 しかし、その姿は以前のような愛らしい12・3歳の少女ではなく、20歳ほどの女性となっており、疲れ切った表情をしている。身を包んでいた薄い布もあちこちが破れていた。


 そして、近寄って行くアルケーに向けたラピスラズリのような瞳はそのままだったが、そこには焦りと怒りの色が浮かんでいた。


「……マロンは私たち並みの魔法術式を、いつ、誰から許されていた?」


 悔しそうに唇を噛んでエピメイアが言うと、アルケーは薄い唇の片方だけを歪めて笑い、


「そんなこと、俺の知ったことかよ? マロンはこの世界で目覚めてからずっと、ジン・クロウと共にいたんだぞ?

 ああ、そう言えばキャロット様の『伝承の儀』を二人で受けたって言ってたな。その時じゃないか?『最後の手段』としての術式を伝授されたのは」


 そう言うと、ピラミッド型の法器を右手に載せて言った。


「……とにかく、あんたはマロンを手にかけた。俺に喧嘩を売ったって訳だ。今までマロンの手前、我慢してお前と仲良くしていたんだが、これからは正真正銘の敵だぜ。

 俺が死んでもジン・クロウがいるしな。()()()()()()()()()()()ジン・クロウがな」


 そう言うと同時に、その姿を消した。



 僕はアルケーが消えた瞬間、魔剣パラグラムを握りしめて突進を始めた。心の中で、


(僕はアルケーだが、同一人物ではない、とはどういうことだ? だからマロン様は、僕とアルケーに手を握ってほしかったのか? それが『摂理の黄昏』に関係があるのか?)


 そんな疑問を問いかけ続けていた。


新月つきはきえる

 ズバンッ!

「ぐわっ!?」


 アルケーの攻撃が始まった。初撃の斬撃がエピメイアの左肩を斬り裂く。


「やっ!」

 ブンッ!


 エピメイアは槍で横薙ぎにするが、アルケーはそれを屈んでかわし、伸び上がりざまに、

暁星よるにひかる

 ドムッ!

「ぐっ!」


 エピメイアは、胸に打撃を受けて後ろにすっ飛ぶ。


「逃がすか。新月つきはきえる

 バスンッ!

「がっ!?」


 2度目の斬撃が、エピメイアの右太ももを傷つけた。


(エピメイアの動きが明らかにおかしい。これもマロン様の術式の効果なのか?)


「『大地の守護(ホルストケッセル)』」


 僕は念のため、精霊覇王エレクラ様から許された最高硬度のシールドを張ってエピメイアに肉薄する。そして、


「やあっ!」

 ドズバンッ!

「がおっ!?」


 エピメイアの背中を斬り裂く。初めて、エピメイアにダメージらしいダメージを入れることができた。


「うぬぬ……ふざけるんじゃないわよ!」


 エピメイアは髪を振り乱して叫び、


偽神アルコーンの術式なんて……『箱庭の風景(ロスト・ホライズン)』っ!」


 と、異世界の創出術式を展開し、僕とアルケーを自分の『箱庭』に閉じ込めた。


諒闇やみはいだく


 アルケーが自身の周りを青紫の煙の筋で覆う。あれはシールドの術式なのかもしれない。


「あはははは! 私の『箱庭』に入ったらこっちのものよ!『禁じられた遊び(ロスト・ワード)』っ!」


 と、魔法術式を強制停止させる術式を展開してきた。途端に僕のシールドが消える。


「四神の魔法を使えない『伝説の英雄』なんて、もはや英雄でも何でもないわ!」


 エピメイアは勝ち誇ったように言い、僕に槍を付けてくる。

 だが、僕は慌てなかった。エレーナ姉さまの


『仮にエピメイアの空間規定魔法に囚われてしまった場合は、ジンくんの持つ『深淵の魔力』が脱出のためのカギになると思うわ、忘れないでね?』


 その言葉を思い出したからだ。


(『深淵の魔力』……どんなものなのか判らないが、魔法には魔法だ!)


 僕は魔族としての魔力を全開にする。考えてみれば、自分の意志で魔族の魔力をここまで引き上げるのは初めてだった。


 バウンッ!

「えっ!?」

「おっ!?」


 エピメイアとアルケーが、同時に声を上げる。どちらも、僕の方を向いていた。


「き……貴様……そうか……」


 エピメイアは眼を裂けそうなほど見開いている。初めて見せる『驚愕の表情』だった。


 そしてアルケーも、一瞬固まったが、


「……ふっ、そういうことだったのか。だからマロンは、ジン・クロウにあんなにご執心だったってことなんだな」


 そうつぶやくと、


「エピメイア、ジンに見とれている暇はないぞ? 新月つきはきえる!」

「くっ!」

 シュンッ!


 エピメイアは、アルケーの斬撃をかわして、


「調子に乗らないことね!」

 バヒュッ!

「おっと!」


 アルケーに槍で突き掛かる。だが、それまでと違い、その穂先に魔力がこもっていなかった。


(……やはり、マロン様の最後の術式は、エピメイアに何らかの制約を与えたんだ。それが永続的なものか、時限的なものかは分からないが、これはチャンスだ!)


 僕は二人の様子を見てそう感じ、再びエピメイアに肉薄していった。



 一方で、エピメイアにとって『四つの季節』は想定外だった。


(くそっ! まさかマロンがキャロットから『四つの季節』を伝授されていたなんて……あれはキャロットしか使えない術式のはずなのに……)


 木々の究極魔法『四つの季節』。それは木々の精霊王だったキャロットが、『発生、成長、成熟、衰退』の循環を基に編み上げた魔法で、摂理に基づく効果を劇的に増やす、いわば最強のバフをかける魔法である。


 この魔法の編み上げには、外ならぬエピメイア自身も、『運命の供与者』としての職責上関わっていた。摂理の効果を高める魔法が暴走した場合、『過ぎたるは猶及ばざるが如し』で、思わぬ悪影響が出ることもある。それを止める必要があるからだ。


 しかし、マロンは『四つの季節』を『逆回し(リバース)』でエピメイアに作用させ、そして散って行った。つまりエピメイアは、地上で最強のデバフがかけられた状態になっていた。


 そして何より、エピメイアは逆回しの『四つの季節』を解除する方法を知らなかったのだ。デバフ魔法はかけた術者ではなく、かけられた術者の魔力に依存する。つまり、エピメイアは、このデバフから逃れる手段を持たなかったと言える。


 そのため、相手の運命を強制的に剝奪する……この世界に存在するための『錨』を断ち切ると言い換えてもいい……エピメイアの『禁断の情景(デッド・エンド)』は、摂理に直接作用するため、使えない状態になっていた。


(マロンも厄介な宿題を残してくれたわね。この状態じゃ、プロノイアどころか、ジンにすら勝てないかもしれないじゃない!)


 エピメイアの脳裏に、一瞬『離脱して、まずはマロンの術式の影響を解くべきだ』との考えが浮かぶ。しかしすぐにその考えを捨て、アルケーの執拗な攻撃をいなしながらジンと渡り合う。ジンの攻撃は鋭さを増して来ていた。


(魔王形態……ジン・クロウは『魔族の貴公子』であり、『伝説の英雄』であり、そして何より『摂理の破壊者』……彼を倒さずに離脱すれば、必ず四神やプロノイアが出てくる。

 そして、最悪の場合、この世界はリセットされてしまう。私の影響も消えてしまう。それだけは避けたい)


 必死になるエピメイアに、ある考えが浮かんだ。


(ジンを倒す隙を見つけながら、先にアルケーを倒せばいい。ジンとアルケー、二人いて『摂理の破壊者』になりえる。ならば先に、油断して調子に乗っているアルケーを倒せば、少なくともジンは『魔王』としての力しか出せないはず……)


 エピメイアは、アルケーの動きに注意を払い始めた。アルケーはもちろん、ジンにも気付かれないようにしながら……。


   ★ ★ ★ ★ ★


「あーんもう! どこにいるのか判らないって、ほんっとムカつく~!」


 エピメイアから相手にされず、『置いてけぼり』を喰らったシェリーは、ラムを介抱するチャチャに不満を爆発させていた。


「……仕方ない。エピメイアにとっての目標は、最初からジン様たちだけだったみたいだからな。ここは地道に、エピメイアの空間がどこに創られているのかを探すしかない」


 チャチャの手当てを受けて傷の痛みが和らいだラムは、緋色の瞳を忙しなく動かし、空間のちょっとした歪みを探しながらシェリーを慰めるように言う。


「そうですよシェリーお姉さま。そもそも、見つけてもどうやって団長さんがいる空間に入るんですか? それに、アイリスさんをこのまま放っておくんですか?」


 チャチャが、目の前に寝そべっている緋色のメイド服を着た少女を見て訊く。


 この少女は正式型番PTD10、コードネームは『彼女』といい、最初『ドール』を、今は『アイリス・ララ』を名乗っている。もともとジンの命を狙っていた『テモフモフの遺産』と呼ばれる自律的魔人形エランドール一味の一人だった。


 エランドールとは、『クオリアス理論』を深く研究した魔法博士、アイザック・テモフモフが造り上げた人型汎用ヒューマノイドで、機械であるにもかかわらず感情を持ち、何事も自己決定ができる。限りなく人間に近い見た目を持ち、何ならよく見ても機械だと気付かない。


 アイリスは、ずっとジンの騎士団にいた姉妹機であるPTD12『妹ちゃん』であるウォーラ、PTD11『お姉様』であるガイアと同様、戦闘や索敵に特化した性能を与えられていた。

 魔力探知機や生体反応探知機、感情バースト機能の搭載など、その戦闘力は高く、アイリス一人を倒すには、並みの魔戦士や魔導士なら1個大隊5百人を集めねば勝負にすらならず、それでも勝てるとは限らないだろう。


 その彼女は、エピメイアの攻撃を受けて機能を停止していた。

 故障なのか破損なのか、あるいは強制的に動力源であるマナを発散させられたのかは、シェリーたちには判断が付かなかった。

 仮に判断がついても、故障や破損を修理する知識も、部品もなかったので、手を拱いているしかなかったのである。


 その時、空間がぐにゃりと曲がり、次元の裂け目から亜麻色の髪と碧眼を持つ青年が姿を現した。その青年は、シェリーたちを見て浮かない顔で近付いて来る。


「やあ、幼馴染さんたち。ジン・ライムとエレーナはどうしているんだい?」


 その若者の声に、シェリーたちは驚き、そして希望を見出したように叫んだ。



「賢者マーリン様! どうしてここへ?」


 シェリーがそう言いながら、飛びつくようにマーリンの許へ駆けて来ると、マーリンは難しい顔で訊いてきた。


「エピメイアとの決着はついていないようだね? エレーナもついて行っているのかな?」


 途端に、シェリーは顔を曇らせて答える。


「賢者スナイプ様は、エピメイアの空間規定魔法を破るために犠牲になりました。エピメイアはジンやアルケー、マロンさんとどこかで戦っています」


 それを聞いて、マーリンは悲しそうに首を振って言う。


「やはり……エレーナの魔力が消えたから、もしかしたらと思って戻って来たんだ。しかし、彼女がいなくなったのなら、ジン・ライムが『摂理の破壊者』になるのを止められる者は、もう幼馴染さんしかいない。そしてその幼馴染さんとジン・ライムは別々の次元にいる。困ったな……」


 マーリンのつぶやきを聞き、シェリーは恐る恐る尋ねる。


「あの、『摂理の破壊者』って? ジンって『繋ぐ者』になるんじゃないんですか?」

「ああ、それはね……」


 マーリンは、シェリーの問いに答えようとして、地面に転がったアイリスに気付く。


「アイリスまでやられたのかい? やはりエピメイアは容易ならぬ敵だな」

「あ、いえ。物理的な攻撃は一切受けていません。ただ、急に倒れ込んだんです。調べてみていただけますか?」


 ラムが言うと、マーリンはうなずいてしゃがみ込み、即座に言った。


「マナ切れだね。エピメイアでも回路をショートさせることは難しかったようだ。魔力を込めれば元どおりになるが、誰の魔力で再起動するかい?」


「そりゃあ、ジン様の魔力が一番でしょうが、今ここにはいらっしゃらないし……」


 ラムが言うと、マーリンは笑って言う。


「ああ、それは心配しなくてもいい。エランドールはマナを与えた者に絶対的な忠誠を誓うが、アイリスには少し細工をしていてね? 誰のマナであろうと、最初に設定した人物にしか忠誠を誓わない。彼女の場合は、ジン・ライムがずっとご主人になるわけだ」


 そして、シェリー、ラム、チャチャの三人を見て言う。


「君たちは三人とも『火』の属性のようだね? 幼馴染さんは『風』属性も混じっているようだが……。でも、団員の属性はバリエーションがあった方がいいと思う。

 僕は『土』属性でジン・ライムと同じだから……」


 そう言いながら、マーリンは肩から掛けていたザックを引っ搔き回し、


「うん、これを使おう」


 そう言いながら、青く淡い光を放つ石を取り出した。


「それは、魔法石ですね?」


 ラムが訊くと、マーリンは片方の眉だけを上げて答えた。


「うん、水の魔力がこもっている。これでアイリスを再起動しようか」



 再起動したアイリスからも状況を聞き取ったマーリンは、難しい顔をして考え込んだ。


(エピメイア対ジン・ライム、元精霊王のマロン・デヴァステータ、そして『魔族の祖』アルケー・クロウ。ジンたちは恐らくエピメイアに勝つだろうが、問題は『どんな勝ち方をするか』だ。勝ち方によっては、ジン・ライムは『摂理の破壊者』になる可能性が高い。エレクラはそれを心配していた……)


「マーリン様、団長たちは勝つでしょうか?」


 ラムが真剣な顔で訊いて来る。悲壮といってもいい表情だが、顔色の悪さといい、額に滲む脂汗といい、マーリンはむしろラムの体調の方が気になった。


「……ラム君、君はずいぶんと調子が悪いようだ。君には酷な言い方だが、これから先ははっきり言って、幼馴染さん以外はジン・ライムの力にはなれない。

 調子が悪いのなら、『ドラゴン・シン』の物資集積所に下がるべきだと思うよ」


 思わず唇を噛むラムに、シェリーが花のような笑みを咲かせて勧める。


「うん、アタシもラムには下がってほしい。

 もちろん、怪我をしていなければ、一緒に戦ってほしいって頼むわ。でも、ジンだってこれ以上仲間がいなくなるのは耐えきれないと思うの。

 だからラム、下がって養生して。そして怪我が治ったら助けに来て? アタシだけがジンにいい顔したいわけじゃないんだから」


 ラムはシェリーの顔をじっと眺めていたが、折れた長剣に目をやると、


「……それは副団長としての命令ですか?」


 静かにそう訊く。シェリーは曖昧に笑って答えた。


「うん、半分はそう。半分はねぎらいかな?

 だってラムはもう、十分ジンの役に立ってくれたと思うもん。

 ジンなら、ラムにはここで少し休んでもらって、すべてが終わった後また力を貸してもらえたら嬉しいって言うだろうなって思うし」


 シェリーの言葉を聞いて、ラムはため息をつき、


「……分かりました。『ドラゴン・シン』の集積所まで下がります。ある程度身体を動かせるようになったら、急いで再度進出します。

 だからシェリー、死に急ぐんじゃないぞ。せっかくマーリン様やスナイプ様から助けてもらった命なんだからな?」


 シェリーはそれにうなずくと、笑顔のままチャチャにも命令を下した。


「チャチャちゃん、アイリス。あなたたちはラムの付き添いとして『ドラゴン・シン』の集積所まで同行して。そこでラムの怪我の治療を見守って、ラムと共に進出してちょうだい。よろしく頼んだわよ?」


 笑顔で優しい声だったが、断固として反対は許さないという気持ちがあふれていた。敏感にそれを感じ取ったチャチャは、泣きそうな顔でシェリーに答えた。


「……分かりました、副団長」


 マーリンは、ラムがシェリーに後退を同意する言葉を発している時、転移魔法陣を描いていた。そして、チャチャたちがシェリーの後退命令に同意すると、


「……ではラム殿、チャチャさん、アイリスさん。この転移魔法陣を使うといい。物資集積所のすぐ前に出口を繋いでおいた。あんまり亜空間酔いは出ないと思うから、安心してほしい」


 そう言って、三人を転移魔法陣へ誘った。


「マーリン様、マーリン様もお下がりください。ここでジンを待つのなら、アタシだけでも十分だと思いますから」


 シェリーが言うと、マーリンは碧眼に真剣な光を宿して答えた。


「いや、僕自身ジン・ライムがどうなるのか興味があるし、エレクラからの頼まれごともある。それにアントンやドーラ、そしてブルーノとの約束もあるから、僕はここに残らせてもらうよ」



「……マーリン様、教えてもらってもいいでしょうか?」


 ラムたち三人が転移魔法陣に消えた後、シェリーはそう、マーリンに切り出した。その視線は何もない空間……ジンたちが消えた空間を彷徨っている。


「……何を知りたいんだろう? 言ってみるといい」


 マーリンもまた、シェリーと同じ方向に視線を投げたまま、そう訊き返した。


「……ジン、どうなるんでしょう? アタシ、ジンが『伝説の英雄』だって信じていましたが、いつか言われたことを思い出したんです。ジンが暗闇に落ちそうなときは支えてあげろって、でないとジンは『伝説の英雄』じゃなくなるって。


 ジンと旅をするのは楽しかったんです。いろいろの仲間に出会って、いろいろな出来事が起こって……そりゃあ、いいことばかりじゃありませんでしたが、楽しかった。


 でも、ジンが5千年前の世界に行っちゃってから、ジンの周りには辛いことが多くなってきて……はっきり言ってジンはもう限界だと思うし、アタシはそんなジンが闇に飲まれたら、支える自信がないんです……」


 シェリーは、ぽつり、ぽつりと話す。マーリンは、哀しみの混じった表情で、シェリーの言葉を聞いていた。


「……本来『伝説の英雄』は、『摂理の黄昏』が起こった際に、この世界に生きるものたちの居場所を確保する者のことを言うんだ。そもそも『魔王の降臨』という事象は、アルケー・クロウが魔族を創り出した後から起こったものだからね。


 だから厳密に言えば、『伝説の英雄』とは『魔王の降臨』の際に魔族を平定し、人間たちを救う存在のことではないんだ」


 マーリンが静かに言う。シェリーはびっくりしてマーリンを見た。


「……それじゃ、魔王と戦ったバーボンおじさまやエレノアおばさま、賢者スリング様は、無駄なことをされたというんでしょうか?」


 マーリンの言葉を素直に受け止めれば、『伝説の英雄』の本来の任務は、『摂理の調律者(プロノイア)』を助け、摂理を維持すること。その際に世界に生きるものたちの居場所を守ることになる。

 『魔王の降臨』を一生懸命止めようとして20年以上も魔王を封印していたスリングやエレノア、その二人との約束を守って20年ぶりに魔王に戦いを挑んだバーボン、彼女ら・彼のその思いは全く無駄だったというのだろうか……そうは思いたくないシェリーだった。


 マーリンは、そんなシェリーの考えを見透かしたように、首を横に振る。


「いや、『摂理の黄昏』はいつ起こるかは分からないが、『魔王の降臨』を引き金にして起こることは分かっていた。魔族の誕生以降の『魔王の降臨』は、『摂理の黄昏』を伴っている。しかし、『摂理の黄昏』を必ずしも伴うものでもないんだ。


 現に、5千年前以降に起こった『魔王の降臨』は、『摂理の黄昏』を起こさなかった。今回を除いてはね?

 だから、必ず『魔王の降臨』で魔王を封じる必要はあるんだ。魔王が何者かの手によって『摂理の黄昏』を加速させないようにね」


「……そうですか。バーボンおじさまたちの犠牲が意味あるものなら、ジンが魔王バーボンを倒したことも、ただ辛い思いをしただけじゃないんですね……よかった」


 肩を落として言うシェリーだったが、少しだけ安心した表情を浮かべていた。


「……シェリーさん、『伝説の英雄』がたどる道は二つある。それは『繋ぐ者』になるか『摂理の破壊者』になるかだ。


 どちらになったら摂理が、そして世界がどうなるのかは誰にも判らない。今まで『摂理の黄昏』でどんなことが起こったか、『伝説の英雄』が何をしたのかなんて、記録にはほとんど残っちゃいないからだ。プロノイア様だって知らないだろう。


 だが僕は、もしも『虚空ヌル』に意識があるのなら、今回の『摂理の黄昏』で、この世界を一度リセットしようとしているように思えてならない」


 マーリンの言葉を聞いて、シェリーは再度びっくりしたが、同時になぜか、


(そうかもしれないなぁ……もしも世界がリセットされたら、ジンやアタシはどんな関係になるんだろう? できれば、恋人同士になれる世界になればいいなぁ)


 『世界のリセット』に関して妙に納得してしまう自分がいた。


「……意外ではないみたいだね? 何か旅の中で、そんな予兆でもあったのかい?」


 マーリンが碧眼を細めて訊くと、シェリーは目をつぶり、微笑みながら答えた。


「あったかもしれませんが、アタシには分かりません。でも、何か期待してしまうアタシもいるんです、リセットされた後の世界に……」


   ★ ★ ★ ★ ★


 エピメイアは、『箱庭の風景(ロスト・ホライズン)』でジンたちを自分の世界に引き込み、『禁じられた遊び(ロスト・ワード)』でその魔力を封じた……そこまでは彼女の計画どおりだったろう。


 だが、その計画を狂わせたのが、マロンが命と引き換えに発動した木々の魔法の究極奥義『四つの季節(カトル・セゾン)』だった。


 すべての魔力に最強のバフを与えるこの魔法を、マロンはわざと『逆回し(リバース)』にしてエピメイアに発動させた。そのため、エピメイアは彼女の『決まり手』というべき術式、『禁断の情景(デッド・エンド)』を失った。詰み筋を封じられたのだ。


 その一方で、ジンたちもエピメイアの『禁じられた遊び』で四神に通じる魔法、エレメントによる魔法をすべて使えなくなっている。だから本来なら、『決まり手』を欠いたエピメイアだが、まだ有利に勝負を運ぶこともできたはずだ、本来なら……。


 違っていたのは、ジンやアルケーは、まだ『魔族の魔法』が使えたことだ。魔族の魔法は四神に由来しない。その成立が摂理に合致するかは疑問だが、魔法としての体系は摂理から逸脱してはいなかった。だから『虚空』も、魔族の魔力、そして魔族も世界から排除しなかったのだろう。


(……そこに、『深淵の魔力』の由来と、『魔族は摂理の最後の1ピース』という『掟』の中の一文の意味へのヒントがあるはずだ

 俺は人間たちへの失望と警告のために魔族を創り上げた。それが見逃されてきた理由も、摂理が一見矛盾し、不完全に見える理由もな……)


 右手に乗せた法器を見つめて、アルケーは微笑む。


新月つきはきえる

 バシュンッ!


 そしてアルケーは、エピメイアに魔力の刃を飛ばした。



「やっ!」

「おうっ!」

 ヂィィィンッ!


 魔剣パラグラムでエピメイアの槍を弾きながらジンは考える。


(エピメイアの『禁じられた遊び』でも封じられないとすれば、魔族の魔力は四神由来ではない……つまり摂理に由来するものではないということになる。

 それなのに、なぜ『虚空』は魔族の魔力や魔族そのものを排除しないのだろう?)


「はっ!!」

「むっ!?」

 ジャランッ!


 エピメイアは、ジンの斬撃を辛うじて石突で跳ね飛ばした。


(ジンを倒す隙を見つけながら、先にアルケーを倒せばいい。ジンとアルケー、二人いて『摂理の破壊者』になりえる。ならば先に、油断して調子に乗っているアルケーを倒せば、少なくともジンは『魔王』としての力しか出せないはず……)


 エピメイアは、アルケーの動きに注意を払い始めた。アルケーはもちろん、ジンにも気付かれないようにしながら……。


 気取られないためには、両者を同じように遇すればいい……エピメイアはジンやアルケーからぐっと間合いを開けた。


 ジンとアルケーが、エピメイアの突然の退避に眉をひそめた次の瞬間、


「はっ!?」

「ジン、後ろだっ!」

 シャリランッ!


 いきなり後ろに現れたエピメイアの斬撃を、ジンは後ろ手に阻止する。


「残念、振り向く挙動が入る分、私の方が速いと思ったのですが」


 元の位置に戻ったエピメイアが、剣を鞘に収めながら言う。そして、地面に突き立てていた槍を抜き取ると、


「アルケー、来るぞっ!」

漆黒ひかりはかくれる

 ボスッ!


 一瞬でアルケーの眼前まで間合いを詰めたエピメイアの槍は、アルケーのシールドに阻まれる。


「アルケー、あなたはジンの異体……というよりアルケー・クロウの異体ですね?」


 シールドの向こうで槍を構え、ニヤリと笑ってエピメイアがそう言う。アルケーは緋色の瞳を光らせて、


「……ああ、そのとおりだ。だがな、俺はただの異体じゃない、止まらない存在だ。覚悟しておくんだな」


 そう答えると、


暁星よるにひかる

 ガスッ!

「ちっ!?」


 打撃が来ることを察したエピメイアは、サッとアルケーから離れ、ジンを一瞥する。


「やあっ!」

「ほっ?」

 ジャキンッ!


 ジンの斬撃はエピメイアの槍を真ん中で切断したが、エピメイアは穂先側、石突側それぞれを両手に持ち替えて反撃する。


「いい腕ですね。やっ!」

「くっ!」

 ガインッ!


「はっ!」

「ちっ!」

 ガシッ!


 ジンは、左手で突いてきた石突をつかむと、


「アルケー、攻撃だ!」


 エピメイアの斜め後ろに占位していたアルケーに叫んだ。


「……そうはいきませんね」


新月つきはきえる

 バシュンッ! ジャリンッ!


 エピメイアはアルケーの攻撃を察してジンの前から姿を消した。そしてアルケーの魔力の刃は、エピメイアが再び現れる場所を寸分の違いもなく攻撃した。


「ふむ、私の動きを読むとは。隅に置けませんね、『魔族の祖』の異体」


 エピメイアは、潰れてしまった穂先と石突を見てそう言うと、槍を捨てて剣を抜いた。


「あなた方の戦い方はよく解りました。ここからが本番です、覚悟なさい」


 エピメイアはそう言うと、透き通った水色の魔力を最大限まで開放した。



(そうだ、俺は異体だ。そのことに気付いたのは、マロンと再会し、彼女をエピメイアから守るため俺の異界に連れ去った時だった……)


 水色の魔力を最大限にまで引き上げたエピメイアを眺めながら、アルケー・クロウはその時のことを思い出す。


『……でも、エピメイアが来るのなら、なおさらわたくしがこの陣地にいないと。ダイたちを犬死させてしまうことになります』


 ……判っていたことだが、エピメイアが狙っていることを知らせても、マロンは一時避退に同意しなかった。その時マロンは『勇士の軍団』遊撃部隊を預かっている身だ、そう答える以外に選択肢はなかったのだろう。


 だが、だからこそ俺は、彼女をあんな所に置いておくわけにはいかなかった。彼女は俺の目指す未来で笑っていてほしかった。死なせるわけにはいかなかったのだ。


『……分かった。君があくまでそのつもりなら、俺だって自身の目的達成にために必要な君が消えるのを黙って見過ごしたりはしない』


 結局俺は、彼女の意に反してでも、彼女を守ることに決めた。


 もちろん、彼女が目覚めた時、おれはそのことで彼女からひどく非難された。だが、その時はもう『勇士の軍団』は本隊も、遊撃部隊も壊滅していた。そのことを知った彼女は、がっくりと肩を落とした。


 ただ、俺は戦局がこう動くとは全く予想していなかった。エピメイアの動きも含めて、何やら俺なんかじゃ抗いようのない『運命』ってやつが、俺の行動を妨害し、誰しもが考えもしなかった方向へと俺たちを流している……そんな後悔や恐れがあった。


 俺のそんな表情を見て取ったか、マロンは困ったような優しい微笑を俺に向けて言った。


『……何か、手違いがあったみたいね? あなたの考えは判らないけれど、事態があなたの意図せぬ方向に進んでいることだけは分かるわ。

 お願いアルケー、そろそろ本当のことを教えて? あなたとは一緒に世界の真理を探し、エピメイアを封印した仲間じゃない。

 あなたがそんな眼をするときは、物事が自分の予期せぬ悪い方向に転がって行っている時だわ。話してもらえたら、わたくしだってできる限りの協力をするのに』


 俺はそこで、俺が考えていたことが一瞬、頭をよぎった。そしてすぐにその考えを受け入れた……受け入れざるを得なかった。


『……俺は、『虚空ヌル』の存在を軽視していた……いや、正確には『統合意識がそれ自体の意思をもって世界に干渉できる』などとは想像もしていなかった……』


 そうつぶやくように言うと、マロンは黙ってうなずき、先を促した。


『俺は目覚めた時、違和感を覚えた。その違和感は5千年前の俺から目覚めさせられたために引き起こったものだと考えていたが、実際はそうではなかった。俺はある根本的な勘違いをしていたんだ』


 ……そう、『勘違い』だ。目覚めた時の違和感に対する勘違いだ。今になって、俺はその違和感こそ、俺とジン・クロウの『存在』を確定させるべきことを教えていたのだと悟った。


(『アルケー・クロウはすでに目覚めていた』ということなのだ。俺は自分自身に戦いを挑んでいた。そして『本来の俺』の未来を歪めてしまっていたんだ……)


 マロンはそれに気付いていた。


 恐らく、この時代で出会った最初から、『伝説の英雄』はアルケー・クロウの魂を持った若者でなければならないこと、その若者は『最後の1ピース』であることを知っていたのだ。


 そして、俺が目覚めたのは、『本来の俺』自身の魔力が覚醒しつつあったから……言い換えれば『摂理の黄昏』が近づいていたからだと。


「『魔族は摂理の最後の1ピース』……か。ふん、『虚空』は本気で、この世界を一度まっさらにしたいんだな」


 それが、俺のたどり着いた結論だった。人間に対して絶望しか感じていない俺にとっては、もう少しマシな世界になるのであれば、『虚空』がこの世界をどうしようが構わない……そこが、俺とエピメイアの違いといえば違いだったろう。


「やあっ!」


 エピメイアが斬り込んで来る。先ほどまでとは段違いの速さだった。


漆黒ひかりはかくれる

 バフンッ!

「くっ!? 抜けないだと!?」


 エピメイアは思わず口走る。アルケーのシールドにエピメイアの剣が食い込んでいた。弾くのではなく、剣はシールドに捕まえられたように動かなくなった。


新月つきはきえる

「はっ!!」

 ギャギャギャンッ!


 至近距離から放たれた魔力の刃を、エピメイアは左手を伸ばしてすべて破砕する。アルケーは意外そうな顔もせず、


「……まぁ、お前ならこの程度のことはやってのけるだろうな」


 余裕の笑みを浮かべる。


 エピメイアは、その笑い顔を見た途端、ぞっと総毛だった。


「はっ!」

「やああっ!」

 バンッ!


 ジンの魔剣パラグラムを、エピメイアはすんでのところで受け止める。彼女は冷や汗をかいていた。


(……速い。それに動きや気配を少しも感じなかった……)


 エピメイアは、ラピスラズリのような瞳を緑青色に染めてジンを睨みつける。


「……『伝説の英雄』、『繋ぐ者』への道を捨て、『摂理の破壊者』となるか!」


逃走不可能パープルプリズン


 ジンの答えは、術式の発動だった。エピメイアは紫紺の魔力に切り取られた立方体の中に閉じ込められる。


諒闇やみはいだく


 ジンの空間をアルケーが外側からがっちりと呪縛術式で締め付ける。


(閉じ込めた!)


 ジンはそう思い、止めの術式を展開しようとする。それをアルケーが止めた。


「待て、ジン・クロウ。ここは俺に任せろ、マロンの仇討だ」


 その言葉で、ジンは術式の展開を止める。


 そして、アルケーはニヤリと笑うと、ジンに


「エピメイアはこれくらいでくたばるタマじゃない。お前が真の『魔族の貴公子』としての力を発揮して、こいつの息の根を止めてやれ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そう言う。


「待て、アルケー。それはどういう意味……」

天命きめごと

 ズドゥムッ!


 ジンの問いを最後まで聞かずに、アルケーは術式を展開する。と同時に、ジンの『逃走不可能パープルプリズン』が、『諒闇やみはいだく』の魔力と共に炸裂した。


   ★ ★ ★ ★ ★


 エピメイアは、ジンとアルケーの『魔族の術式』に捕らえられた。


(……すぐに私を消滅させるため、攻撃魔法が来るはずだわ。さて……)


 そう考えているうちに、空間内に静電気のようなピリピリした力が満ちてくるのを感じたエピメイアは、その魔力の強大さに驚くとともに、少しの違和感を覚えた。


(……これは『深淵の魔力』とは少し違う……そうか、そういうことなのね!)


 何かに思い当たったのか、エピメイアは薄く笑うと、


「『対偶の真実(バイス・バーサ)』!」


 術式を発動する。その瞬間だった、アルケーの『天命きめごと』が展開されたのは。


 ズドゥムッ!


 『逃走不可能』の中の空間が急速に収縮し、鉄すら瞬間的に蒸発するほどの温度に達した時、エピメイアの魔力と接していた部分が次々と爆発を起こす。

 その爆発は『逃走不可能』の空間を区切っている魔力の壁をやすやすと叩き壊し、溜まりに溜まっていた空間のエネルギーともども、強烈な爆発となってジンとアルケーに襲い掛かった。


貪欲な濃霧(ドレインミスト)っ!」

漆黒ひかりはかくれる


 二人とも、とっさに防御のために術式を使ったが、ジンのそれはシールドではなかったため、


「うわっ!?」


 高温や衝撃波こそ緩和されたが、彼自身もエピメイアの『箱庭の風景(ロスト・ホライズン)』の壁に叩きつけられてしまう。


 一方でアルケーの方は、


暁星よるにひかる

 ドゴッ!

「ふふ、効かないわよ?」


 エピメイアが魔力の刺突をすり抜けさせたことで、


「爆発と同時に外へ!?」


 向かってくるエピメイアが『偽存在ドッペル』だと悟り、すぐさま左へと移動した……このたった1手が、エピメイアとアルケーの勝負を決めた。


 バシュンッ!

「むっ!?」


 アルケーは、ピラミッド型の法器を持った右手が、肘から切断されて宙を舞うのを見て、急いで左手を法器に伸ばす。しかし、その刹那、


 ジャンッ!


 金属音と何かが砕ける音、そして火花と共に、エピメイアの剣がアルケーの法器を叩き斬った。


「……マロン、君の言うとおりだった」


 左手を伸ばすアルケーの真正面で、剣を構えたエピメイアが笑っている。そして次の瞬間、エピメイアはアルケーの側にやって来ると、


 ズバンッ!


 エピメイアの剣が一閃し、アルケーの首は微笑を浮かべたまま宙を舞った。


「よし! これで相手は四神とプロノイア(お姉さま)だけ!」


 エピメイアは勝利を確信し、ジンの方に向き直る。20ヤードほど離れた所まで飛ばされたジンは、やっと魔剣パラグラムを杖にして立ち上がったところだった。


「ジン・クロウ、『摂理の黄昏』は止めさせないわ!」


 エピメイアは叫びながら一瞬でジンの前に現れ、剣を横殴りに振り抜こうとした。


 ジャンッ!

「むっ!?」


 エピメイアの斬撃を、ジンは無言で止めた。ゆらりと立つジンの身体には、紫紺の煙がまとわりついている。その色がだんだんと鮮烈になり、やがて群青色に変わった。


「……何が、ジンの中で何が起こっている?」


 エピメイアはそうつぶやくと、後ろに跳び下がった。その耳に、ジンの声がはっきりと聞こえた。


「……摂理に生きるものは、誰であれ俺の『掟』に従え……」


 その言葉を聞いた瞬間、エピメイアは『箱庭の風景』を解いた。狭い空間で戦うのは直感的に不利だと悟ったのだろう。だが、その決断は同時に、ジンが精霊覇王エレクラや筆頭精霊王ウェンディが許可した魔法を使えるようになることを意味した。


(ジンが四神の魔法が使えるようになっても仕方ない。それより私が時空魔法を使えるようになった方が有利だわ)


 エピメイアはそう言った読みでジンを自身の空間から解放し、


「『振動の終息(トキヨトマレ)』!」


 時間操作の魔法を発動した。


 エピメイアの魔法が発動した瞬間、すべての時が止まった。砂塵は空中で止まり、風の流れも止まる。


 しかし、エピメイアが驚いたことに、ジンはまだ動いていた。


「時空は今の俺に干渉しない。『時の錨鎖(クリティカルアンカー)』っ!」


 ジンの身体から伸びた光の鎖は、空間の中に溶け込む。だが、時空の歪みを生じさせた瞬間、ガツッ!という音を立てた。


「『右回りの拷問(ナガレテユケ)』っ!」


 エピメイアの身体から発する波動が早くなる。止まっていた時間は、堰を切った水のように流れ出し、周囲の木々を見る見るうちに枯らしてゆく。


 だが、ジンはいつもと変わらぬような態度で、そこに立っていた。


「私はすでに数億年も時を進めた。命あるものなら骨すら残らぬはずよ。なぜ、お前は摂理に従わないの!?」


 驚愕を通り越し、恐怖に近い表情でジンを見つめるエピメイアに、ジンは魔剣パラグラムを握り直して答えた。


「お前自身がすでに答えを見つけていただろう?『深淵の魔力』は摂理に由来しない。だから今、俺は摂理に従っていない。時空はそんな俺に干渉できない、それだけだ」

「くっ!」


 時空魔法でもジンの命に届かないと知ったエピメイアは、剣を執り直してジンを睨みつける。


「私は『摂理の二柱』の一人。その命を聞けぬものは世界の異端者よ!」


「自ら摂理に挑戦しておいて、今さらそれを言うか?『時の抱擁(オールホールド)』」

「なっ!?」


 エピメイアは、突然現れた鎖にあっという間に絡め捕られる。どこからか伸びて来たというわけではない。気が付いたら鎖が巻き付いていたのだ。


「この鎖……どこから……」


 エピメイアは、畢生の魔力を込めて鎖を断ち切ろうとするが、鎖はびくともしない。かえってエピメイアの身体をきつく締め上げ始める。


 ゴゴ、ジャランッ、ボリッ……

「ぐっ……」


 苦痛に顔を歪めるエピメイアは、最後の望みを祈りに賭けた。


「『虚空ヌル』、『虚空』、あなたのしもべが被造物たる魔族に命を絶たれようとしています。『摂理の二柱』の欠損は摂理の停止。助けたまえ……」


 だが、エピメイアの耳に届いたのは、信じられない言葉だった。


『摂理は変革を欲している、停止という変革を。汝エピメイアよ、己が夢見し摂理の破壊を、摂理に同化して感じるがよい』


「え?……」


 エピメイアは絶望のまなざしをジンに向ける。そこには黒い翼を生やし、頭にねじくれた2本の角を生やしたジンが、緋色の瞳を冷たく輝かせて笑っていた。


「……分かったか?『虚空』はお前も含めて、()()()()()()()()()()()()()()()そうだ。『魔族の貴公子』たる俺が、この世界に生まれたのも、そういう宿命だったんだろうな。

 あの時の約束どおり、『ここに墓を建ててやる』よ」


 ジンはそう言うと、群青に輝く魔力に包まれた魔剣パラグラムをエピメイアの胸に差し込み、冷たい声で言った。


「崩れ去れ、虚空の中に。『深淵の励起(エクスプロージョン)』!」



 アルケー・クロウの『天命きめごと』による大爆発は、こちらの世界まで影響を及ぼした。


 ズ・ズズーンッ!

「……今の音と揺れは何でしょう?」


 ジンたちの戦いが終わるのを待っているシェリーは、側にいて目を閉じている賢者マーリンに訊く。嫌な予感がしていた。


 マーリンも同様だったのだろう。目は閉じたままだが、組んでいた腕をほどいて、


「……他の次元空間で起こった爆発が、僕たちがいる次元空間に音や振動をもたらすことなど、まずありえない。

 にもかかわらず、これだけはっきりとした振動が伝わったということは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだろうね」


 そこに、


「おお、やはりこの辺りにエピメイアが現れたんですね?」


 そう言いながら、黒髪の執事が駆け寄ってきて言う。その後ろには、燃えるような赤い髪にタキシード姿の女性が、金髪に緋色の瞳を持つ女戦士を引き連れて続いている。


「今、ジン・ライムとアルケー・クロウが、エピメイアと戦っている。木々の精霊王だったマロン・デヴァステータの援護のもとにね。君は確か、火の精霊王アリス・ヴェルファイアのところの」


「はい、フェンリス・ヴェルファイアです。アリスお嬢様とセレーネは、すぐ到着いたします」


 フェンリスがそう言っているうちに、アリスたちもマーリンのもとに駆け寄って来た。


「あなたは、賢者マーリンね? ワタクシは並行宇宙の管理者、フェン・アリステス・アリスタティア・デ・ラ・マルシェレイ……本名はアリス・ヴェルファイアよ。

 精霊覇王エレクラ様の指示でジン様を追っていたんだけれど、彼は今どこに?」


 マーリンに訊くアリスに、フェンリスはマーリンに一礼して答える。


「木々の精霊王だったマロン様やアルケー・クロウと共に、現在エピメイアと戦闘中だそうです」


「ふむ……さっき感じた次元空間の揺れは、それなのですね。まぁ、ジン様にマロン様やアルケー・クロウが加勢しているのなら、そう心配は要りませんか」


 アリスが少し緊張を緩めた顔で言うと、耳ざとくマーリンが忠告してきた。


「アリス殿、先ほどの音か聞こえてから、すでに15分ほど経過しています。

 あの振動が何を意味するのかは分かりませんが、ジン・ライムはかなり精神的に不安定な状態で戦いに臨んだようです。エピメイアが勝つ、ジン・ライムが『摂理の破壊者』になるということも十分に考えられます。

 できれば、エレクラ様はじめ他の四神の皆さんも集まられた方がいいと思いますが?」


 それを聞いて、アリスは鋭い目でマーリンを一瞥し、彼から視線を外すとフェンリスに命令した。


「……確かに、何があるかは分からないわね。フェンリス、マーレやウェンディ、特にエレクラ様においでいただくよう伝えて来て」


「現在地は、『決戦の荒野』東出口から東へ半マイルほどの地点……そこまでしか分かりませんが?」


 フェンリスがそう訊くと、アリスは傍らに控えている女戦士に訊いた。


「セレーネ・マリア・フォン・ルーデンドルフ・インゲボルク・ヨハンナ・フォン・ヘルヴェティカ、現在地のベクトルは判るかしら?」


「現在地は大陸ベクトル488.28/1384.06の位置です。誤差は±5マイル」


 打てば響くようにセレーネが答える。彼女もまた、ドクター・テモフモフが製作した優秀な戦闘索敵用の自律的魔人形エランドールだった。


 フェンリスが正確な現在位置を書き留めて、エレクラのいる『神の宮殿(パンテオン)』に向かおうとした時、不意に空間が歪んで、そこからエピメイアとジンが飛び出してきた。


 マーリンは、エピメイアの顔が焦燥でひきつっているのを見て、


「いけない! シェリーさん、君はここから僕と一緒に離れよう!」


 そう叫んで、転移魔法陣を描き出す。


「え? なんでですか!? アタシはジンを助けたいんですが……」


 反対するシェリーにみなまで言わせず、マーリンは早口でまくし立てる。冷静で物静かないつもの彼とは思えない慌て方だった。


「いいかい、エピメイアは時空魔法を使う。時間を自在に操れるんだ。ここに居たら、僕や君はまともにその影響を受けてしまう。

 下手に何万年って時間を一気に進められてみろ、時間の激流の中で僕たちは骨すら残らずに消えてしまうだろう」


 それを聞いて、アリスもセレーネに、


「ワタクシやフェンリスは長い時間を生きる身ですから、エピメイアが時間を何億年進めても一向に構いませんが、アナタは影響を受けそうですね。

 マーリン様やジン様の幼馴染さんとともに、一旦ここを離れなさい」


 そう言い聞かせていた。


「よし、行くぞ。シェリーさん、セレーネさん、急いで!」


 マーリンがそう言ったまさにその瞬間だった。


「『振動の終息(トキヨトマレ)』!」

「しまったっ!」


 マーリンはそう無念の叫びを上げた。身体がまったく動かなくなる。それはそこに居る全員がそうだった。精霊王であるアリスすら、エピメイアがいる方角に振り返った姿勢のまま動きを止めていた。


(……頼む、これ以上時空魔法は使わないでくれ! ジン・ライムが『摂理の破壊者』になった場合、それを『繋ぐ者』へ戻せるのは、もう幼馴染さんしかいないんだ!)


 それは、その場にいた全員の願いだったろう。

 だが、運命はジンからすべてを奪わなければ満足しないようだった。


「『右回りの拷問(ナガレテユケ)』っ!」


 その声が聞こえた瞬間、マーリンはすべてを諦めた。


(……やはり、『虚空』はこの世界をいったんリセットしたいのだな……僕やシェリーさんが、こんな所で、こんなタイミングで最期を迎えるとは……)


 時間が加速度的に身体を老化させていくのが分かる。マーリンはホッカノ大陸を見つけた冒険者で錬金術師でもあったドン・ペリーが造ったホムンクルスだが、身体の組成は人間と全く違いはない。


 彼が数百年の時を、若者の姿のままで過ごしていられたのは、定期的にポーションを飲んでいたからであり、それが手に入れられずに時間だけが進むような状況では、ただの人間と変わりはなかった。


(……ふむ、世界の始まりも、生命の起源も、そして『クオリアス理論』も、この世界と共に『虚空』の許に還るか……次の世界では、誰がどんなふうにあの秘密に迫るのだろう)


 マーリンはそこまで考えて、意識が途切れた。



「……フェンリス……」

「……はい、お嬢様……」


 アリスとフェンリスは、真っ青な顔で目を見開いていた。彼女たちの前でシェリーはすぐに姿を消し、賢者マーリンは、あっという間に歳を取り、そして息絶え、身体は分解されて土に還って行った。


 エランドールのセレーネも、まったく同じように崩れ去り、そしてフレームや皮膚テクスチャすら時間にもみくちゃにされたようにひび割れ、朽ち果てていった。


 アリスとフェンリスが無事だったのは、彼女たちがとてつもなく寿命が長い精霊だったからに過ぎない。


「……『時の抱擁(オールホールド)』!」


 ジンの声が聞こえ、空間全体が揺らいだ。アリスは目の錯覚かと思ったが、その瞬間に時間停止が解除されて動けるようになった。


「……時空魔法の時間停止が、ジン様に効かなかった?……つまりジン様はもう、摂理の外にいる?」


 アリスは、青い顔でそう言うと、フェンリスを蹴っ飛ばすように急かせた。


「エレクラ様の所に! そしてジン様に時空魔法が効かなかったと伝えるのよ!」


   (世界を狩ろう!その4:VS水火の四神 に続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

『魔王決戦編』に入ってから、退場するキャラが続出している『キャバスラ』ですが、今回はアルケー・クロウと賢者マーリンがいなくなりました。

二人とも、物語の根幹に関わるエピソードで大事な役割を果たしてくれたのですが、いよいよクライマックスにかかるところでの退場……うーん、マジでこの作品、最後誰が生き残るのか分からなくなりました。エピメイアが斃れたことで四神も集まって来ていますし……。

では、次回もお楽しみに!

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

【主な登場人物紹介】

■ドッカーノ村騎士団

♤ジン・ライム 18歳 ドッカーノ村騎士団の団長。典型的『鈍感系思わせぶり主人公』だったが、旅が彼を成長させてきた。いろんな人から好かれる『伝説の英雄』。だが、ワインとスナイプの死によって、『繋ぐ者』ではなく『破壊者』として覚醒し始めており、マロンの死によって真の『魔族の祖』であることを自覚した。

♡シェリー・シュガー 18歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子で負けフラグをへし折った『幼馴染ヒロイン』。魔王との決戦で、魔王の罠に嵌り殺されたが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』で復活している。

♡ラム・レーズン 19歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』。『右鳳軍団』に先行し、ジンと合流を果たした。

♡チャチャ・フォーク 14歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。シェリーが大好きな『百合っ子ヒロイン』。

♡アイリス・ララ 『PTD10・ドール』を名乗り、ジンを瀕死に追い込むほど善戦した自律的魔人形エランドール。ジンの魔力マナで再起動し、新たに仲間となった。

■退場した仲間たち(退場順)

♡レイラ・コパック 博識で氷魔法の使い手。スナイプのスカウトでジンの騎士団に加入した。『PTD5・法律家』を倒すも『PTD3・道化』に止めを刺された。享年17歳。

♡ウォーラ・ララ ジンの魔力マナで再起動した自律的魔人形エランドール。彼の騎士団に所属して献身的に仕えたが、『PTD2・戦士』との戦いで相討ちとなった。

♡ガイア・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造ったエランドールでウォーラの姉。後にジンの騎士団に所属して『PTD1・学生』と対峙したが、相討ちとなって果てた。

♡マディラ・トゥデイ 騎士団『ドラゴン・シン』事務長。金髪碧眼で美男子のような女の子。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに叩き潰された。享年20歳。

♡ソルティ・ドッグ 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。調査・探索が得意。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに握り潰された。享年21歳。

♤ブルー・ハワイ 『ドラゴン・シン」の遊撃兼偵察隊長である槍使い。記憶力と変装に優れ、情報を分析する能力に長ける。魔王親衛隊クン・バハと対峙し善戦したが、隙を衝かれて敗死した。享年25歳。

♤ウォッカ・イエスタデイ 『ドラゴン・シン』の副官兼親衛隊長。オーガの戦士長、スピリタスの息子で無口・生真面目な性格。大陸武闘大会で3連覇を果たすほどの戦士だったが、魔王親衛隊クン・バハに止めを刺しつつも力尽きる。享年21歳。

♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、頭も切れ双剣の腕も確かだが女好き。ジンと永遠の友情で結ばれ、さまざまな場面でジンとドッカーノ村騎士団を助けて来た。最期は『約束の地』直前で襲来した魔王親衛隊隊長ファルカロスを倒したが力尽きた。享年21歳。

♡ジンジャー・エイル 本名キュラソー・マッケンロウ。ジンの命を狙ったが許されてドッカーノ村騎士団に所属し、『PTD4・幽霊』を倒す。魔王の眷属と化したエレノアに挑み勝利するが、同じく眷属になった賢者スリングに殺された。享年21歳。

♤テキーラ・トゥモロウ 『ドラゴン・シン』団員で本名テキーラ・マッケンロウ。父はバーボンの異母兄コニャックでジンジャーは実妹。魔王親衛隊オデッシアに止めを刺した後、ジンの許に急行し、魔王の眷属・賢者スリングと相討ちになって果てた。享年24歳。

♤ダイ・アクーニン ドッカーノ村騎士団所属。賢者ストックの息子で卓越した知力と魔法を誇る弓使い。仲間のコア・クトーやシロヴィン・ボルドーの仇を討つため魔王と戦い善戦するが力及ばず敗死した。作戦ミスで魔王を完全復活させてしまった。享年28歳。

♤ワイン・レッド ジンの幼馴染みでエルフ族。水の槍使いで博学多才、智謀に長ける。『PTD7・淑女』と共に『PTD6・ナルシスト』を倒した。実は11年前に事故死していたが、父母の依頼でエレノアが復活させていたという秘密がある。復活したスリングたちを摂理に戻すマロンの魔法で、彼も摂理に戻ってしまった。享年18歳

♡エレーナ・ライム(賢者スナイプ)『賢者会議』の一員だった才媛。ジンに自身が人工生命体ホムンクルスであることを明かし『風の宝玉の欠片』を譲る。『PTD3・道化』を倒すも、『道化』が残した瘴気に侵されてしまったが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』によって命は救われた。視力を失っていたが、ジンの魔力で取り戻した。エピメイアの『箱庭』を、自らの犠牲によって破壊し、ジンたちを救い出した。享年28歳。

♡メロン・ソーダ 年齢不詳 元は木々の精霊王マロン・デヴァステータ。エピメイアと行動を共にしたため、その地位を剥奪された。アルケー・クロウを追ってジンの騎士団に入り、『暗黒領域』ではダイと共にドッカーノ村騎士団別動隊を率いたが、後にアルケーと行動を共にする。エピメイアとの戦いで戦死したが、エピメイアの奥義を封印し、真の『魔族の祖』アルケー・クロウを覚醒させた。

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