変態アワー 僕と幼馴染と時々怪物
作者は失楽○派です。
それは何てことの無いありふれた日常で、
カラスは死にそうに羽ばたき、路上のビッチは男を誘い、
俺と幼馴染はいつものように一緒に帰り道を歩いていた時のことだった。
「私、遂にドスケベ度を計ることが出来るようになったのよ。」
「そういうのは快○天かノクターンノベルでやれ。」
前方を歩く小柄な女は黒い髪を翻しながら
幼馴染の能登 和花は宝石を宿したように
キラキラと目を輝かせながらこちらを見つめて言ってきた。
いやまずドスケベ度って何だよ。
バッサリと一刀両断した俺の言葉に、和花は不満げに頬を膨らませた。
「何だよ。ハムスターかお前は。」
「違うわ! 今の私はスカ○ターでもなく、スカウパーよ!」
「何その中国製のパチモンみたいな。
インディーメーカーのクソAVに使われてそうだなその名前。」
「うっさい! いいからこれで藍吾のドスケベ力測って上げるから。
私に感謝しなさい。」
そりゃありがた迷惑だ。と断る前に和花は行動に移っていた。
低い姿勢でまるで舐めまわすかのように俺の下半身を見回していた。
このド阿呆に今すぐクリ○ンよろしく太陽拳食らわしたい。
「もういいだろ。俺のドスケベ度はいくつなんだ?」
「モチ。藍吾のドスケベ度は5よ!」
片手でパーのハンドサインを出しながらこちらを上目遣いで見上げてきた。
「低っ。ドラゴン○ールならラディッ○に殺されたオッサンと
同じじゃねぇか。」
「いや5段階の内の5だから。」
「通信簿みたいな付け方してんじゃねぇよ!」
ドラゴ○ボール引っ張るなら最後まで引っ張れや。
「流石私が見込んだだけあるわね。
因みに男子高校生の平均は3、中年は2、70以降のご年配は1よ。」
「どんだけ性欲ありあまってんだ!」
主食マムシかスッポンかよ。
そんなことを思って前を向くと、俺の視界がやばい者を捉えてしまった。
全身真っ白いタイツで顔は見えない。
腰からバレリーナのようなヒラヒラした物体を無数付け
スカートのようにさせ股間からは雁のオブジェが伸びていた。
なんだあのジャパニーズいかれアートは。ピカソも逃げるぞ。
「あれはいくつなんだ?」
「あれはドスケベ度5ね。」
「股間から雁生やしたのと同じだと思われてるのかよ。」
バレリーナの格好なら白鳥だろ。
雁なんてこのご時世国語の教科書でしかみたことねぇぞ。
誰か大造じいさん呼んできてくれ。
取りあえず視線を合わせないように歩いた。
すれ違ってふっと一息をついた瞬間背中を叩かれた。
ド変態が急接近してきたのだ。
今程デューク○郷になりたいと思ったことはない。
「君、今セクシャルマイノリティーをバカにしたねぇ!!??」
「お前の性癖が一ミリもわかんねぇよ!!
歩くサブカル公然わいせつが!!」
何で急接近してくんだ。
心と身体の距離をもっと保て!
「ドスケベ度の高いものは互いに惹かれあう」
「スタン○使いが惹かれあうみたいな言い方やめろ!」
満足げに和花が頷いていると、変態は徐に少女を肩に担いだ。
いや待て、なにしてんだこら。
「じゃあねドスケベ。彼女は頂いてく。」
「おい、誘拐は悪党のやることだぞ!」
捨て台詞と共に二本指でじゃあねとジェスチャー。
そのまま走り出した。
スタイリッシュ過ぎるだろ!
「待てこら!」
俺はその全身タイツの背中を追いかける。
JKを担ぐ変態とそれを追う男子高校生。
すれ違う人々の痛い視線が心を突き刺した。
今日は厄日かおい。
心で大号泣しながら全力でおいかけていくと
奇跡的になんとか袋小路に追いこんだ。
「もうお終いだぞおい。
「ふっふっふ。何を仰るドスケベ太郎。
僕はね、追い込まれるのが大好きなんだ、
むしろ縛りあげてぶってくれ!!」
「これ以上キャラを盛るんじゃねぇ!!」
おまえは一体いくつ性癖があるんだよ。
「まぁそう急かさないで。
僕は尾奈朗。トランスレンジャーズの一員だ。」
「トランスレンジャーズ?」
「フリーメイソンみたいなものさ。秘密結社。
余りにも濃いドスケベ度に飲み込まれて怪物になった
僕みたいな奴らが集まった素敵なものさ。」
最低の秘密結社じゃねぇか。
「私をどうするつもりよ。このド変態!」
肩から和花が罵声を浴びせると光悦した表情を浮かべる。
それは逆効果だバカ。
「我々はドスケベ度を計ることの出来る
ドスケベの塊、伝説のドスケベの尊を探しているのさ。」
「なるほど、つまり私がドスケベの尊ということね。」
「ザッッツライトゥゥゥゥ!!」
変態は指を高らかに鳴らし、和花はラ○ウ張りに天を指差す。
二人のノリに頭痛がしてきた。
「で、そこのドアホをどうするつもりだ。」
「おいこら、もっと羨みなさいよ。」
ヤマトタケルの尊みたいな感じで言ってるけど
全然羨めねぇよ。
「我々トランスレンジャーはドスケベの尊とセッ……一心同体に
なることで、世界制服が出来る程の力を手にすることが出来るのさ。」
「お前いまセックスって言いそうになったよな!?」
変態は目を逸らすと、下手糞な口笛を吹いた。
誤魔化そうとしてんじゃねぇ。
「もうやめて! 私のために争わないで!!」
お前はそれ言いたいだけだろ。
「というわけだ。君も僕の野望の果てに散るがいい。」
何か来る、そう思った瞬間には既に身体が中を舞っていた。
シンプルなラリアット。お前はその濃いキャラクターを
生かした攻撃しねぇのかよ。
「ちょ、藍吾!? しっかりしなさい!
ほら私のおりもの食べさせてあげるから!!
藍吾にとってはベホマでしょ?」
お前、それ傷口にべギラマだよ。
全力でツッコミを入れたいが喉からはカスカスした言葉しか出てこない。
何なら排卵だけに四肢に力が入らん。
「どうやらジエンドというわけですね。」
「ちょ、藍吾! 藍吾ぉぉぉぉ!!」
声がやけに遠くに聞こえた。
視界は暗転。スイミーより真っ黒。おいおいまさか死んだのか。
変態にラリアットされたのが死因とか葬式でお袋にどんな顔で
合えばいいんだよ。まぁ死に顔以外に合わす顔ないんだけども。
「えーんえんえんえんえん。」
そんな謎めいた状況の中で幼い女の子の泣き声が聞こえてきた。
決して援助交際を求めている声ではない。
俺はこの声を知っている。そう思ったとき
急に視界の先に幼き日の和花が現れた。
ネコを抱きかかえながら泣きじゃくっている。
「クマ次郎がキン○マ捥ぎ取られちゃったー!」
飼いネコになんて名前付けてんだよ。
俺この名前の所為で毎回和花の家で不憫な顔をしてしまうのだ。
しかし今思うとおもしれーな。
去勢の意味が小さすぎてわからなかった俺達は
訳も分からないまま二人で泣いたんだっけ。
「なんであの時君は泣いたんだい?」
背中から声が飛んできた。
振り返らなくても分かった。幼き日の俺である。
いや訳も分からずって言ってるだろ。
「嘘だね。」
嘘じゃねえよ。
「僕の心にはべったり染み付いてるよ。
でも君はこれが普通じゃないから心の奥底にしまい込んだ。」
だったらいいだろ、そんなもん。
だが幼き日の俺は俺を逃がさない。
「いいや駄目だ。それじゃ和花をあの変体から守れない。
己を偽るな! 曝け出せよ!」
俺が曝け出せば勝てるのかよ。
「あぁ。僕も変態だからね。」
あの時俺は……!
「和花の初めての涙をネコの去勢に取られて泣いたんだよ!
悔しかったんだ。ネコに初涙奪われて。
和花の涙もキスもセッ○スも全部全部俺のもんだ!
俺は、初物好きの処女厨だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
視界が急に晴れた。
全身に力が溢れかえる。
「な、なにぃ!? ま、まさか
君も変態に溺れたトランスレンジャーだったとは。」
「あ、藍吾!?」
二人は呆気に取られた表情でこっちを見つめていた。
そりゃそうだろう。今の俺はマカとスッポンエキスを
がぶ飲みしたレベルで上も下も元気ピンピンだからな。
「頭から幼女のパンティーとは。
中々のドスケベだね。」
「しかも処女厨って書いてあるし。
ヤバイわよアイツ。」
やかましい。
「姿形は問題じゃねぇ!」
「問題なのはおちんち○よ!」
「お前は口を慎め。」
あと股間を指さすんじゃねぇ。
「ふふふ。いいでしょう。さっさと倒して
性行為の続きといきましょう。」
お前は隠す気もねぇな。
「喰らえ!」
今度はしっかり見える。奴の攻撃は一辺倒だった。
「あめぇよ。」
起きて破りの逆ラリアット。
軽々と変態をぶっ飛ばした。
身体能力はこっちも上がってんだよ。
「その変態性を全くイかせないフェイクなお前に
本物とはなにか思い知らせてやるよ。」
己の股間に全エネルギーを集中させる。
和花のファーストセックスも
ファースト制服プレイも
ファースト結婚式も
ファースト葬式も……。
「和花の初めては全部俺のもんだ!!」
黄色く光ると同時に股間からエネルギー波が飛び出した。
汚ぇ花火だ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
奴は跡形もなく……消し飛ばなかった。
来ていた衣服が全て消え去り、全裸の状態でぶっ倒れていた。
「あんだけ大層に出しといて全裸にする程度って。」
「どんだけショボイんだ俺の本気。」
全身に迸っていた力は綺麗さっぱりなくなっていた。
胸中言えないようなことを絶叫して出したわりに
おっさんを全裸にする程度ってコスパ悪すぎるだろ。
「く、こ、これで処女厨
買ったと処女厨思うなよ処女厨。」
「言語が処女厨になってるわ。」
ニッコリと満面の笑みでこちらを見るな。
今後の人生に確実に狂わせる付随効果だ。
「処女厨!」
オッサンは全裸で夕日に向かってかけていった。
太陽に吼えろみたいな去り際だが、完全に不審者だ。
通報待ったなし。
汚いけつが見えなくなるまで、俺達は呆然と眺めてしまった。
「で、これからどーするの?」
「守ってくしかないだろ。」
「そうよね。なにせヴァージン好きだもんね。」
俺が思わず吹き出すと、和花は口笛を吹きながら足取り軽く歩き出した。
「ちょ、待て。それについては話し合おうか。」
それからしばらく俺のあだ名は処女厨太郎になった。
感想、誤字、脱字、自身の特異すぎる変態エピソードがあれば
是非よろしくお願いします。