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主要国家解説編3 エストーラ

エストーラ

首都……革命の最中ワルツを踊る都、ノースタット

エストーラは常に西方の最前線に立つ城塞国家である。守護神オリエタスを崇拝し、異教徒との戦いに挑み、また備える為に、優れた軍隊と人々を魅了する快楽の都として発展した。

肥沃な土壌に恵まれたカペルが食文化によって繁栄したのに対し、エストーラでは音楽とワルツと絵画が大いに研鑽された。

魔術不能はプロアニアに次いで多いものの、この国の軍事力を支えるのは二つの先進技術、コボルト騎兵と星の秘跡である。


国家の特徴

ワルツと病巣の都、ノースタット……

ノースタットの発展は異教徒と疫病によって阻まれてきた。城塞として作られた首都ノースタットは軍需産業においてあらゆる先進技術の展覧会の様相を呈している。城壁の法陣術、魔法による視野狭窄の技術、破城槌とカタパルト、軍事パレードは毎年大盛況で、外国からの観光客も多い。

しかし、それ故に新たにもたらされる技術と疫病は、常に甚大な被害を齎してきた。

人々はノースタットに病巣を持ち寄り、その手と手を合わせてワルツを踊り、互いに病を持ち帰り合う。疫病の大流行に対して、ノースタットは原因と思われる罪人の処分のために、軍備を強化することしかできない。何故なら、彼らにとってワルツは生活の一部であり、同じように異教徒との戦いも生活の一部だからだ。


ノースタット・バロック……

ノースタット文化の黎明は、ブリュージュの進んだ文化を獲得した、四カ国戦争時代に遡る。より正確に言えば、それ以前からブリュージュの姫を通して最先端の文化を知ることによって、エストーラは文化的な優位を獲得した。

カペルが長らく独占していたカペル・バロックの豊かな感情表現に、宗教的神秘と荘厳な重低音が加えられた、エストーラ独自の音楽文化が興る事となった。

エストーラ・バロックは軍歌としても非常に優れたもので、多種多様な行進曲へと枝分かれしていく事となる。それは、常に戦争と隣り合わせのエストーラにおいて独自に進化を遂げた、新たな大衆文化となった。


魔法の受け入れと星の秘跡……

プロアニアと異なり、エストーラは外部からの技術者受け入れの代わりに、優れた魔術師を受け入れる事で、自国の国力を高めようとした。魔術不能の多い点ではプロアニアと同様であったが、宮廷貴族が優れた魔術師との間に不義の子を産み、その子を跡取りとは別に育てた結果、魔術を使うことの出来る貴族が生まれるようになった。この魔術師兼貴族の存在が、エストーラの軍事力を支える二本柱の一つとなった。

そして、この魔術師兼貴族は、意外な形で新たな魔法体系を開拓する事となる。

オリヴィエスの西方世界において、唯一絶対の基準となるものが、聖典である。神聖文字で記されたこの聖典には世界の真理の全てが記されていると、長らく信じられてきた。

しかし、神の福音に他ならない聖典を、人間が理解し尽くせるはずがない、そう考える者が少なからずいた。敬虔な彼らは聖典に「記されていない」神の言葉に適う真理、「秘跡」をたどることに思い至る。それは、史実に確かに存在した石の巨人や、知恵ある弱者を求める道、安価な金属から金を作る為の道、そして、星の成り立ちを発見する為の道である。

エストーラ皇帝エルブレヒト・フォン・エストーラは、この星の秘跡と呼ぶべきものを研究し、占星術と組み合わせる事で、新たな魔術体系-星の目を借りる魔術-を作り出した。

臆病な吝嗇家であり、陰険で偏屈な彼を名君と讃えるものは誰も居ないが、ただ一点、天文学の世界において、彼は非常に大きな功績を残したと言える。


※現実の秘跡とは、サクラメント=通過儀礼の事を指す。混同されないよう注意されたい。


コボルト騎兵……

全世界で最も重要な奴隷が、コボルト奴隷である。彼らは真面目でよく働く、犬顔の獣人であって、多くの国では人権を与えられない過酷な労働の代わりに衣食住について最低限保証するという形で、様々な事業を支えてきた。

エストーラでも勿論、コボルト奴隷は存在する。然し、エストーラのコボルト奴隷は、世界のどの国よりも-恐らく他の異世界に類を見ないほど-自由かつ人として尊重されている。

彼らの事は誰も奴隷などと呼ばれず、コボルト騎兵と呼ぶ。何故ならば、彼らは奴隷でありながら領主を務め、奴隷でありながら紛争の解決のために出征し、奴隷でありながら罪人の処刑を執行する。彼らは奴隷であるが自由も保障され、優れた者には勲章とともに、騎士爵を賜ることが許されている。自由市民となる道も許されており、通常の市民と比べても破格の厚遇を受けることができる。

それは、コボルト騎兵達がエストーラの東方世界の防衛を担う重要な存在であることに由来する。小柄ながら器用で俊敏な彼らは騎乗技術も優れ、狼や驢馬、駱駝、象、果てはライオンまで乗りこなす。彼らは統率の取れた軍隊としてエストーラで重宝され、敵国の亜人部隊や傭兵部隊よりも遥かに優れた戦果を上げている。エストーラの支配者がハングリアのコボルト騎兵達を支配下に置く限り、エストーラ大公の皇帝位は揺るぎないものとなるだろう。


皇帝の膝下、エストーラ……

エストーラ一族は代々帝国の皇帝位を受け継ぐ由緒ある血統を持つ。これは古くからの習わしであり、プロアニアも帝国内では彼らの「家臣」ということになる。

尤も、皇帝位は名ばかりのものとなり、皇帝選挙で選出されたエストーラ一族の当主は貨幣の鋳造と帝国内部の領地の管理を行うことが出来るに限られている。彼らは領主のある領地に許可なく踏み込むことも許されない。帝国は帝国でもなければ神聖でもなく、その締め付けは必ずしも強いものではない。


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