主要国家解説編2 プロアニア
プロアニア
首都……霧と煤煙の都、ゲンテンブルク
プロアニアは、流入する技術者と魔術不能者の先進国家である。首都ゲンテンブルクは立ち昇る煤煙と薄い膜のような霧に視界を阻まれる。プロアニアは莫大な技術をどの国にも伝えようとせずに、国際的には表舞台に立つことのない国家であった。しかし、その秘匿された技術は確かに魔術不能ばかりの国民全てを賢者たらしめるに至った。
国家の特徴
技術者受け入れと魔女狩り……
プロアニアの歴史は大開拓に始まる。エストーラの帝国支配下にあったこの地は、元は寒さの厳しい不毛な土地であった。プロアニアは、新天地を求めた棄民達の開拓によって小さな集落や、村を成立させた。その後、北方十字軍への貢献によってゲンテンブルクを賜った事により、ブランドブラグ辺境伯領と呼ばれるようになる。そして、この辺境伯領がさらに開拓され、いくつかの都市を形成した。これら開拓された未開の地を含めたいくつかの都市がプロアニアと呼ばれる国家として成立した。
その後、プロアニアは技術的な大躍進を遂げ、ついにエストーラ帝国支配下の一部を支配するに至った。
しかし、魔術不能がほとんどを占める現地住民を国家防衛に利用するためには、他国に先んじた技術が必要だった。
そこで、カペルやエストーラから宗教的問題を抱えて国を追われた技術者を取り入れ、テクノロジー開発に力を注いだ。
そして、魔術不能がほとんどを占めるこの国では、魔法を使える存在そのものが、畏怖の対象とされる事になる。その結果生み出されたのが、技術崇拝と魔女狩りだった。
魔術への不理解が生み出す苛烈な迫害は、時代の歪みのあらゆる時代に現れる事になる。
工場と資本家……
この国家において、貴族の役割はいかに秩序を作り、いかに技術を秘匿するかにある。一方、巨大な閉鎖経済を回すのは、資本家と工場である。
資源の乏しいプロアニアでは、輸入製品の加工という、二次産業の効率化が発展した。商いの為に必要不可欠な資源の輸出入を担うための資金は、資本家によって賄われ、国家の中枢にまで力を持つに至った。
彼らの投資によって作られた工場は効率化の極致となり、労働資源も徹底的な効率化がなされるようになる。
彼らの意向により高くつくとして奴隷制度がそれほど発達しなかったプロアニアの労働力は、女と、子供と、田畑を無くした農民だった。
プロアニアと「城壁」……
プロアニアにおける城壁には、防衛と徴税以外にも、重要な役割がある。それは、技術の秘匿である。
大都市、産業都市、工業地帯などに入るには、厳格な国家の審査が必要となり、仮に技術の国外への輸出を目論めば、いかなる事情があろうと死刑は免れない。技術者を崇拝するプロアニアにとっては、技術は人の命よりもはるかに重く、その為ならば防衛機能としては無意味な城壁であっても、迷う事なく建造されるのだ。
魔法使いの代替としての法陣術……
プロアニア人は、古くから技術の伝達と発展のために、手先が器用になり、識字率も極端に高くなった。その結果、魔法の中で唯一発展したのが、法陣術である。
複雑な組み立てを必要とする法陣術は、技術の秘匿との両輪で発達し、法陣術の発動に必要な部分と、ダミーの法陣という二つの法陣術学が大いに発展した。他国の賢者にはとても理解できないような法陣であっても、プロアニアでは厩番の少年でも解読できるのだ。
産業化の歪み……
プロアニアでは巨大な工場によって、産業が大いに発展した。馬車と車の交通を分ける高架に作られた高速道路、道に侵入する動物を阻む為の垣根、分断と支配による自然環境の改変……彼らは自らの思うままに自然と大地を支配する力を持つに至った。
しかし、度重なる喘息の被害、時折起こる謎の流行病、畑で続けざまに起こる獣害、それらの問題を解決する手段を、彼らは模索するすべを持たないままでいる。
なぜなら、自然の支配と、技術の革新は、彼らにとって絶対に絶やしてはならないものなのだから。
四カ国戦争とプロアニア……
プロアニアは当時、全世界でも類を見ない技術の発展期に入っていた。窒素固定法の開発、ガソリン車の開発、ステープラーの開発……全ての発明がこれまでの進んだ文明化の中でも突出した偉大な発明だった。
それは当時の王フリックが異世界への扉を開いた事に起因していた。当時、大国はムスコール大公国が召喚したという未知の生物、異界の悪魔を召喚する事に躍起になっていた。魔法を毛嫌いするプロアニアはそれを忌避していたものの、懸命なフリック王は、この召喚がもう一つの意味、異世界からの技術者の誘致に役立つと考えていた。
そこで、フリック王は悪魔の召喚を秘密裏に進めていた。
その結果現れたのは、ミツ首の竜だった。自らをアジ・ダハーカと名乗る竜は、フリック王の望みに従い、二人の賢者を復活させる。そして、その代償として、フリック王の精神を少しずつ蝕んでいった。
この毒竜の目的はこの世界での神代の復活、すなわち自分自身が偉大な創造主と成り代わろうというものであった。
毒竜は手始めに丁度手紙を寄越したムスコール大公に対して非難声明を出す。天才科学者フリッツ・ハーバーの復活の成果を試す為に。そして、二人の賢者を殺して、三つの首を、自身のものとして取り込み、完全な肉体を手にする為に。




