主要国家解説編1 ムスコール大公国
・主要国家解説
ムスコール大公国
首都……常冬の都、サンクト・ムスコールブルク
大福祉国家の誉れ高き、凍てつく広大な大地を有する国家。自らを大公と自称するムスコール大公によって建国し、以後、嵐のようなクーデターと暴動によって、血塗られた王城を持つ国家として発展した。激動の時代の後を牽引したのが、皇帝宰相、女傑ロットバルトであった。彼女の治世のもとで大繁栄を築いたムスコール大公国は、技術と毛皮、地下資源の交易によって強大な財力を持つに至っている。
国家の特徴
不凍港と毛皮を求めて……
ムスコール大公国には不凍港が殆どない。西方世界の進んだ技術を求めて建てられた首都サンクト・ムスコールブルクは、二つの川と海に面した三角州で、数少ない交易の中心地として発達した。東方の秘境には良質な毛皮を持つウルヴァリンや貂が生息し、原住民との取引を通じてこれを首都へ運ぶ。しかし、彼らが本当に求めているのは、もっと温暖で、もっと流氷の少ない交易港なのである。
大福祉国家……
厳しい気候の地域がほとんどを占めるムスコール大公国では古くから浮浪者の凍死や餓死が蔓延した。厳しい環境を生き抜くために彼らが見出したのは、国家全体での福祉の充実だった。彼らは路に死体の絨毯が敷かれることのないように道路を整備し、国と教会の二つの権威を総動員して、教育・就労補助・衛生管理・低所得者の救済を比較的早い段階で完成させた。国家共栄の精神に基づく助け合いの思考は現在まで続き、啓蒙専制君主たる大公の地位を確たるものとする。
奴隷認可制度……
奴隷制度はどの国にも遍在するものであり、特別なものとは言えない。しかし、ムスコール大公国の奴隷制度は、認可制によって調整されている。奴隷認可制度とは、奴隷への人権は認めないが、奴隷を販売する商会・業者は全て、正式に認可を得ており、奴隷個人の情報を登録し、これを取引相手に提示しなければならないというものである。
奴隷の出自やその証明を、特定の管理体制が整った業者が行う事で、奴隷に過度な負担をかけない事を目的とする制度である。これによって、貧者の身売りのような悲惨な事例を未然に予防し、公国基本法の主旨を満たす事に貢献している。
公国横断鉄道……
女傑ロットバルトの大偉業、それはムスコール大公国が唯一、プロアニアと完全自由な国交を開いた事にあった。元々、彼女はプロアニアの技術に強い関心を示していた。それは何よりも、プロアニアの技術が才能よりも平均化によって国力を増強するものだったからだ。
魔術不能の少ないムスコール大公国は、元々プロアニアほど技術に依存する必要はなかった。しかし、彼女が目をつけたのは、未だ馬と犬橇によって非効率的に運ばれる資材を大量に、そして迅速に運ぶための技術だった。かくして彼女は、プロアニアとの共同研究に乗り出す。資源の少ないプロアニアを資金と資材の面でサポートし、完成させたのが、東西を結ぶ長大な黒い鉄の馬、公国横断鉄道だった。
氷雪厳しいこの大地に、百年の歳月をかけて蒸気の産声を上げた鉄道は、ムスコールブルクの新たな時代、-産業革命の時代-の凱歌となった。
四カ国戦争とムスコール大公国……
ムスコール大公国は、この戦争の引き金を引いた国家であり、同時に最大の被害者でもあった。ムスコール大公国宰相ロットバルトは、教会の完全な独立に肝を冷やしていた。これから西方世界の技術全てを拒むことになれば、この国は間違いなく後進国となる。しかし、起こってしまった以上、教会の大改革-俗語聖典の編纂作業は止められない。
そこで彼女は、プロアニア・エストーラ・カペルとそれぞれ取引を持ちかける。プロアニア・エストーラとは緩衝地帯の分割統治を申し込み、代わりに教会独立の追認と正常な国交の維持を確約するもの、カペルにはブリュージュの相続権についてカペル側を支持する代わりに、交易と国交の維持を求めた。
ところが、プロアニアがこの申し出に対して突然宣戦布告を始めたのだ。エストーラはムスコール大公国を支持、カペルは状況を精査しつつも後にムスコール大公国側を支持、ここに四つの大国を巻き込んだ、四カ国戦争が開始した。
機関銃、毒瓦斯、高射砲……。プロアニアの未知の兵器に苦戦を強いられる三カ国だったが、辛くも勝利を勝ち取り、プロアニアとの和平交渉に入った。
この時、欲しいままに要求を求めるエストーラ、カペルに対し、唯一プロアニアに手を差し伸べたのが、ムスコール大公国だった。
プロアニアも決してその真意を知らないわけではない。しかし、その手を取らない理由もまた無かった。




