ラプリシアの説明口調
話が進まないこと大亀のごとく
向こう側を向いたセントゥルは図鑑で見たのと全然違う。
セントゥルは茶色の馬の下半身に人のような上半身だ。
でも体毛は人間の部分にも生えていてほんとに人型ってだけ。
人間の腕も生えてるから6本、足に相当するものがある。
耳は尖ってて顔の横についてる。たてがみが生えてて頭と顔が覆われてる。
角は生えてる。後ろ向きにまっすぐ伸びた短めの角。
図鑑によればだが、知能は高く、生まれながらに膨大な知識を継承する。
その知識と人間の手をもって精度の高い狩りをするらしい。
ところが今目の前にいるのは白色にうす紫の縞模様
図鑑で見たのと形は変わらないように思う。
耳も同じ。黒色のたてがみ?が顎と頭を覆ってるし。
角も生えてる。でも後ろから前に向かって生えててちょっと違うような。
でも、でもでも他に特徴に合うのはいないし。
可能性的にはありえないこともないし。
もしかしたら凶悪種かもしれない。
特徴は体毛色や鱗が白くなって紫の縞模様が浮き出ることだ。
その原種のランクよりワンランク上がり+がつけられる。
+はランク上よりも厄介であることを表す。
AよりもB+のほうが面倒くさかったりする。
パワーや俊敏性、頑丈さは原種をはるかに上回り、幼少期からその特性を発揮する。
性格はどれも残忍で凶暴と言われている。
代償として寿命が短かったりすると書いてあったけど定かではない。
凶悪種見つけ次第緊急性の高い依頼としてギルド直々に出し、報酬は高騰する。
しかし受けれる人間は一握り。それだけシビアな相手ということだ。
どこかの王様の軍隊とか、伝説の戦闘狂一行が死体を出しつつもって話が多くて。
つまりかなりやばいやつだ。Aランでも少数で遭遇すれば
死力を尽くして逃げなければ、無事では済まないだろう。
ただ原種のモンスターによってはそこまで脅威にならず討伐されることもあるらしい。
たしか牙兎とかは体毛の下の皮膚が恐ろしく硬くて苦労した程度だったと。
そんなことが書いてあったはずだ。
セントゥルは人間の手と知識で武器を扱う。
それは最初に買えるようなちゃちい値段の武器でなく
Aランクまたはその上をいくような規格外で。
遠距離では大弓を
近距離なら剣やら槍を振り回すらしい。
逃げる背後から撃ち抜かれるのだ。
と図鑑を読んだ時は震え上がったものだ。
でも基本セントゥルは温厚で人の言葉を解し、話すこともできる。
なので棲地に踏み込むものに毒草や薬草、
気をつけるべき云々を教えてくれるものもいるそうだ。
その個体数は少なくあくまで伝承だが。
ただプライドは高いので失礼な態度をとると即座に殺される。
しょせんはモンスターということだな。
うーうー。脳内独白を終えてもあれがやばいってことしか進展ないし
何も状況は変わっていない。えっなんであそこから動かないの。
お気に入りの場所だったり?
見つかったら死。見つかったら死。
少しずつ後ずさりをする。できるだけ音を立てないように…
同格すら単独で狩れない私に格上S+なんて
心臓の音がうるさい。背中を汗が伝う。走っても気づかれれば弓で…
開けたところから森に入れば弓も当たらないだろう。
膝が笑って動けない… 気合入れようにも叩けば音が鳴ってしまう。
目が離せない。ほっぺを引っ張ってつねる。
痛いけど足は動く。下がれ。ゆっくりと。
パキッ
(ひああああああ)声にならない叫びは体を駆け巡る。
イビル・セントゥルは大弓に手を掛け、ゆっくりとこちらへ向く。
アァ…オワッタ…
ん?でもきょろきょろ見回してるあたりまだ見つけてない?
もしかしたら絶妙に木で隠れて見えないのかな。
しゃああ神様ナイス。今までずっと恨んでたけどこれからきっちり祈ります。
ここから帰れたらな!
体をそっと伏せ、歩伏前進をする。申し訳程度にクイックをかけ、森の中へ急ぐ。
あと少しで逃げ切れる…開けたとこの真ん中あたりにいたからあと10mもない。
すっ…と影が差し見上げると赤いお目々が私を睨んでいた。
アァ…オワッタ…今度こそ終わった… つい目を閉じる。
殺すなら早く…一息に…




