mission、真実と難問
そして、朝がきた。
俺は朝に弱い。毎日のようにノロノロとベットから起き出す。
「いいかげん、準備しなくちゃだよなぁ……」
独り言を言いながら、フワーと大きなアクビをひとつする。
朝日の入らない部屋は薄暗かった。
カーテンをシャーと開け、朝日を浴びながら、んーと伸びをしていると
「また明日ね。」
ふっと榎本さんの笑顔が浮かんだ。
「明日って約束したから、ちゃんと行かなきゃだな」
今日は、昨日よりちょっとだけ洋服を悩みながら朝の準備が始まった。
いつもの変わらない時間に乗るバス
そのバス停に今日は、榎本さんがいた。
「おっ……おはよ、榎本さ…ん……」
昨日のことを思い出して少し歯切れが悪い俺に榎本さんは、満面の笑みで答えた。
「おはよう。春原くん。昨日は、ありがとう。」
「いや、こちらこそ…ありがとう。」
「やっぱり、……は最高だったよね!面白かったなぁ~」
「……今日も…雪……なんだね。」
俺は何となく言っていいものかと悩んでしまう。
しかし彼女は、あっけらかんと返す。
「うん、春原くん好きかなぁって〜」
「えっ……」
俺は固まってしまった。……俺が好き?
「なんか、勘違いしてなーい?春原くん
が雪、好きかなぁって思ったんだよ」
「あ……」
俺の頬が火照っているのを感じた。
「まっそんな勘違いしちゃう春原くんが好きなんだけどさ」
「へっ!?」
また驚き固まる俺をみて、ふふっと榎本さんが笑う。
「ホント春原くんからかいがいがあるね!」
なんだ。冗談か。
「分かりにくい冗談だなぁ……」
独り言のような声量で俺はボソッと呟いた。
「冗談かどうかは分からないよ?」
榎本さんはニコッと笑って首を傾げた。
「えっ!?……」
また熱くなってしまった頬は、しばらくは戻りそうになかった。
バスを降り、大学まで向かう道。
俺の隣を歩きながら何気なく榎本さんが話始めた。
「世の中には私みたいに魔法が使える人がたくさんいるらしいよ。でも、それぞれ人間として生きてるから、気づかれないみたい。春原くんも最初気づかなかったよね?」
「……うん。」
「私なんかよりもっと優れた魔女も人間として生きてるんだって。皆気づかないから驚くのであって、普通のことなんだよ。」
「……」
それは、どうかな?って俺は思う。
俺は俺の基準でしか物が言えないが少なくとも榎本さんのような存在が普通とは思えない。俺らが、俺が普通なのだと思う。しかし、そんなこと言えるわけがなかった。
「じゃあさ、榎本さんも何万年って生きているの?」
「んー人間の進化は一通りこの目で見たよ。ついこの間起きたような感じがするけど……人間ってスゴいよね!」
俺は何と答えたら正解なのか分からなくなってしまった。黙っていると
「私なんてまだまだヒヨッコだけどね」
と笑いだす。
「……」
「そうだ!春原くん。」
榎本さんは隣を歩く俺の顔を覗き込むようにして話しかけてきた。
「私の秘密誰にも話さないでね」
榎本さんが唇に人差し指を当ててシーというポーズをとった。
あぁ何でこんなに可愛いかなぁ~
俺は一生口に出せそうにない言葉を心の中でこっそり思った。
「春原くん!大丈夫?顔赤いよ?熱あるんじゃない?」
榎本さんは、俺の額に手をあて検温を始めた。




