番外編・逆の出会い
プロローグ・出会いでは、榎本さんから声をかけるのですが
草食系男子・春原優から声をかけたらどうなるのかを書いてみました。
「ほら、ジャンケン負けただろ。行ってこいよ。」
「ムッ…ムリだよ!」
昼時の学生食堂は大変賑やかだ。
私は、そんな喧騒を気にすることなくメニューを見ながら今日何を食べるかを悩んでいた。
「あ…あの。」
後ろから声がかかった。
そちらに首を向けると優しそうないかにも優男といった男子学生が立っていた。
「私に何か用ですか?」
首をかしげながら問うと男子学生は一瞬怯んだような表情になる。
「あっ…あの。俺と昼御飯食べませんか。あっ…別に怪しいやつとかじゃないですよ。春原優っていって、榎本さんと…同じクラスです。」
私はふーんと思う。クラスメイトを邪険に扱うわけにもいかないし…と考え込んでいると春原くんは、シュンとした表情で言った。
「ムリですよね。こんな…いきなり…」
その顔が捨てられた子犬のようで私の母性本能をくすぐる。
「春原優くんだっけ?いいよ。昼御飯一緒に食べよ。」
「いいんですか?ありがとうございます。」
春原くんの顔がパァァと輝いた。
「まぁーず!」
私は春原くんの鼻先に人差し指を突きつけた。
「敬語やめようか?同い年なんだし?」
「すっ…すみません。」
私は拗ねたような表情をしてみせる。
春原くんはアワワワと慌てたように口を開く。
「とっ…とりあえず、ご飯食べま…食べようか!」
私はコクりと頷く。
「まぁ20点かな。今のごまかしかた。」
私たちはカウンター席に並んで座った。
「なんで、俺女慣れしてませんって顔してナンパしてるの?」
私はランチのパスタを口に運びながら一番気になったことを尋ねた。
「いや、榎本さんに失礼な話なんだけど…俺が女慣れしてないのを友人が心配してジャンケンに負けた方が気に入った女の子に声をかけて仲良くなってこいと言う課題が出されて…」
「見事負けたのね」「そういうこと…」
「私を気に入ったから声かけてくれたのよね?」
「うん。だって、榎本さんは俺のはつこ…なんでもない!あっ講義間に合わなくなるよ!」
俺は壁にかかった時計を何気なく確認して声をあげた。
「あ~本当だ。やばい」
「食器早く片付けよ。俺運んどくね。」
「ありがとう。」
俺らはバタバタと講義に間に合わせるための準備を始めた。




