番外編・彼女への想い
俺らがまだ付き合う前。
友達宣言をして少したったある日。
俺は榎本さんに呼ばれて放課後の教室へとむかっていた。
誰もいないはずの教室は、外から中がみられないようにカーテンが閉められている。
その薄暗い部屋の真ん中に一人の少女が佇んでいた。榎本白雪だ。
暗い部屋の中、彼女の背中にある真っ白な羽が浮かび上がる。背中の羽がゆっくりと開いたり閉じたりを繰り返す。
その羽は、とても大きかった。
俺はその様子を信じられない想いでそれを見つめていた。
「これが私の本当の姿」
榎本白雪は、ゆっくりと振り返ってそういった。
「そう…か」
俺はなんと言って言いか分からず、無難な納得の言葉に逃げた。
「これ見ても友達でいたい?春原くんが思うような普通の人ではないよ?」
彼女は卑屈になっていた。俺が知らない何年も前に色々と嫌なことを言われていたのかもしれない。
「あの…今このタイミングで…こんなこと言っていいか分からないんだけど……」俺はもごもごと喋る。
「羽、キレイだね。似合ってる」
彼女は、ハッとした顔で俺を見る。
その顔がみるみるうちに笑顔に変わる。
「そうかな…ありがとう。」
彼女は、秘密があることをコンプレックスに思っていることは間違いないだろう。
だから、俺は伝えなくちゃと思ったんだ。
君に俺の想いを
「何度でも俺は言うよ。俺は榎本さんの本当の姿がどうであったって構わないんだ。だって、俺榎本さんのこと好きだもん。これだけは、どんなことがあっても変わらないよ。」
榎本さんは、少し泣きそうな顔でコチラを見てきた。
その頬を俺は掌で包む。
「だからさ、俺の彼女に…なってくれませんか?」
榎本さんは、嬉しそうに笑った。
「はい、喜んで。」
12月30日。
外は凍えるように寒く、雪もちらついています。
でも、俺の心は温かです。
なぜかといいますと、今日は俺が生まれて初めて女の子に告白をし、成功した榎本白雪さんとの交際記念日となったからです。
俺も本気を出せば、男になれることが分かりました。
告白後家にたどり着いて、今彼女に伝えた言葉を思いだし、真っ赤になっていたことは彼女にも言えない秘密となりました。
春原くん、草食系やめちゃいましたか?




