番外編・安心できる場所〜榎本白雪〜
大学からの帰りだった。
私たちはいつもの道をいつも通り並んで歩いていた。
ふと、春原くんが立ち止まる。
私はやや遅れてそれに気付き、立ち止まった。
「どうかした?」
私は1歩後ろで立ち止まった春原くんにそう聞いた。
「俺ってTHE・優男って感じじゃん?」
春原くんはお前知らなかっただろ?と言ったようなどや顔でコチラをみてくる。
唐突に何を言うのだろうか?この男は
私は心の中でそう思った。
「いや、言われなくても知ってるよ?」
だから、私は思ったままを返した。
春原くんの顔が少し不満げになった。
「で、それがどうかしたの?」
このままじゃ話が進まないので私は次を促した。
「今日友達に言われたんだ。お前、よく榎本さんゲットしたなって」
要するに嬉しかったということだろうか?
「良かったね」
「いや、ぶっちゃっけあの時はホンット緊張した。一生分の勇気を使いきったかもしれない」
春原くんはアハハと笑う。
いや、一生分って……と私は思う。
長く付き合っていると見えてくる未来。
想像してしまう未来。
彼は時期が来たら、キチンと言ってくれるだろうか?
今一生分の勇気を使ってしまって……
私は逆プロポーズは、したくない派だ。
やっぱりそこは乙女の憧れというか……
私は黙ったまま考え込んでしまった。
「白雪大丈夫?」
春原くんは顔を覗き込むようにしていった。
「ん、うん、大丈夫」
「てかさー白雪考え込みすぎ。季節外れの雪振ってるよ!」
「えぇ!?」
周りを見ると粉雪が舞っていた。無論、今はそんな時期ではない。春なのだ。
わーどうしよう!失敗しちゃった。
慌てた私は泣きたくなってしまう。
「白雪何かに集中するとすぐ雪降らしちゃうよね。コントロールしなきゃ」
春原くんは、真面目な口調でそういう。
そして、真面目な顔を崩してニヤリと笑う。
「まっ偉そうなこと言ってるけど、俺雪の降らし方なんて知らないし〜」
その悪巧みしてるような顔に、私はつい気が緩んでフフッと笑ってしまう。
「まぁとりあえず、コントロール出来るように頑張れよ」
春原くんは、ポンポンと私の頭をなでる。
私はドキドキしながら、ぼんやりと思った。
優男ってなかなかいいな…と
普通の人間らしくほのぼのとした物語が書きたくて書いてみました。
ボチボチ書いていきますので、次回もお楽しみに




