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プロローグ

基本的に週1、2更新になると思います。

遅筆で申し訳ありません。気長に楽しんで頂ければ幸いです。

「え? 黄金の血ですか?」


 俺の素っ頓狂な声に、目の前の年齢不詳な女医さんは深く頷いた。


「です〜。黒野さんの血液は黄金の血なんですよ〜」


 気紛れに近所でやっていた献血に来てみて、なんだか衝撃の事実が発覚してしまったらしい。はぁ、黄金の血ねぇ。


「なんか魔法使いとかに重宝されそうな血ですね」


「ふふふ〜お医者さんだって重宝しちゃいますよ〜? 輸血医学的見地から見ればまさに万能のれーやく〜と言って差し支えない物です〜」


 それから、女医さんは黄金の血とやらについて語り始めた。


 正直話の内容は聞き慣れない専門用語のオンパレードだった事に加え、その語尾が妙に伸びたイタい喋り方の所為でかなり理解に苦しむ物であった。


 まぁ辛うじて大まかな概要くらいは理解出来たけど。


 1.黄金の血とは通称で、正式にはRh(アールエイチ) null(ナル)という名称の血液型である。


 2.これは非常に珍しい血液型で、日本には数名、世界でも40名程度にしか確認されていない。


 3.血液に本来含まれている筈のRh抗原という、他の血液と拒絶反応を起こしてしまう原因となる物質が一切含まれていない。


 4.よってあらゆる他者に、血液型を無視して輸血する事が出来る。ただし逆は不可。


「よく分かんないけど〜なんか便利な〜血なんですね〜」


「真似しないで下さい〜。それと他人からすれば〜とか思ってそうなお顔ですね〜」


 ばれてーら。

 しかし大層な物が俺の全身に流れていたもんだ。この21年間まるで実感なかったな。


「というか俺の両親は変哲なくAB型なんですけど」


 両親は年に2回健康ドックを受けているのでこれは間違いない筈だ。


 まさか俺って他所の家の子なのだろうか。


「基本的にはRh nullも〜家系の中で遺伝していく血液型とされていますが〜、突然変異で確認された例もあったりします〜。だから貴方の場合も〜恐らくそういう事だと思いますよ〜?」


 マジかよ。

 両親が普通のAB型だから自分もそうだとばかり思っていたが、突然変異って。


ミュータントじゃん俺。化物っぽいなおい。


「でもAB型のRh nullですか〜。ほんと奇跡みたいな希少性ですね〜」


 女医さんは手元のカルテをまとめながら、呆れた様に笑ってこちらを見つめた。


「事故や病気には重々ご注意して下さいね〜? 血液バンクに確認してみないと分かりませんが〜恐らく黒野さんに輸血出来る血液とか日本にありませんから〜」


◇◆◇


 というのがついさっきの話。

 なるほど、これが俗に言う走馬灯という奴らしい。

 しかしもっと遡った追憶を見せてくれて良いと思うのだけど、ねぇ走馬灯さんよ。


「……ごほっ」


 そんな文句の代わりに口から溢れ出る赤黒い液体が、地面と顔の間でゴポリと泡立つ。


 地面が妙に温かいと思ったら、一面血の海だ。


 あちゃー、これ全部俺の血かよ。


 これは死んだな。


 交通事故か。


 早速だよ、女医さんごめんなさい。


 なんか信号待ちしてたとこから記憶が曖昧だけど、全身のひしゃげ具合と出血量からして、どうやら随分デカい車に突っ込まれたみたいだ。


 というか野次馬うっせーな。これから人が死のうって時に、はしゃがないで。


 おいこら写真撮らないで。


 こらこら動画もダメだ。


 遠くから救急車のサイレンの音。意識がそろそろ霞み出す、申し訳ないが到着まで持ちそうもない。


 仮に持ちこたえたとこで輸血出来ないらしいしね。


 家族の顔とか、バイト先のハゲ店長や仲間の顔とか、高校生の頃片思いしてた後輩の女の子の顔とか。


 なんか色々思い浮かべてしまう。


 思い浮かべて、そこまでだった。


 俺は意識を手放した。

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