私のご主人様!
お慕い申し上げます!のアイナ視点。
「君がそこまでとは思ってなかったよ」
暖かく逞しい腕で私を抱き上げくださった大好きな方。
何を仰っているのでしょう?貴方が望んだから私はこうなったのですよ?
「私の愛情を舐めすぎですよ、ご主人様?」
ここパンドラ王国の王都、エスペラントが奇跡の多い都だと知ったのは私が既に私の願いを叶えることが出来た後だった。
奇跡が起きる前、私はおばあさんのところで過ごす毎日が大好きだった。
しわしわの手で優しく撫でてくれる。美味しいご飯をお腹いっぱい食べさせてくれる。暖かいお家の中で一緒にお昼寝してくれる。
優しい声で目を細めながら昔話をしてくれるおばあさんが大好き。
いつの間にか私より大きな子どもがおばあさんのお家に住むようになった。おばあさんは優しいから子ども達がいっぱい遊びに来るけど、お家で住んでたのは私とおばあさんだけだったのに。
ちょっと面白くなくて大きな子どもが近付いてくるのを無視したりした。大きな子どもは泣きそうになったけど、おばあさんが怒ることはなかったから私は悪くない。別にちょっと可哀想かな、なんて思ってない!
私の近くによりすぎない場所でぽつりぽつりと話しかけてくる大きな子どもはやっぱり面白くなかったけど嫌いじゃない。たまに目があうと嬉しそうに笑うから私の方が恥ずかしくなってしまう。
そんな様子をとても幸せそうに眺めているおばあさんに気付くと恥ずかしいのに私も幸せ。
大きな子どもと一緒に遊び始めると、おばあさんとはできない追いかけっこやかくれんぼなんかがとても楽しかった。私はすぐあの子を見つけることができるのに、あの子は私を見つけられない。何度も何度も名前を呼ばれて、それでも見つけられないと泣きそうになるあの子。後ろからそーっと驚かしてあげるとびっくりしたあとに嬉しそうに笑うの。しかたないから家族として認めてあげたわ。
おばあさんもにこにこ笑って、本当に幸せだった。
おやつを用意していたおばあさんが床に寝ちゃって動かないの。あの子をおばあさんのところへ連れて行って様子を見せる。あの子はわんわん泣いた。どうして泣くの?おばあさんはなんで起きてくれないの?おばあさんは死んでしまって、もう会えないんだって。撫でてもらえないし、一緒にご飯も食べられない、ぽかぽかのお昼寝もできないし、にこにこ笑ってくれない。私も悲しくなって、でもあの子が泣くから私は励まさなくちゃいけないの。
よく知らない人がおばあさんをお空に帰してくれたみたい。よく知らない人にあの子と私は引き取られた。あの子のおとうさんらしい。今まで会ったことないけど?変なの。
よく知らないあの子のおとうさんは私やあの子を撫でてくれない。ご飯はよく分からないパック?に入ったのをあの子が温めてくれる。でもおばあさんのお家で食べてたご飯の方が美味しい。よく知らないあの子のおとうさんは私とあの子と一緒にお昼寝してくれないから、私とあの子だけでお昼寝する。よく知らないあの子のおとうさんはいつも怖い顔をしている。私とあの子はあの子のおとうさんがいないときにいっぱい遊んでいっぱい笑うの。
あの子が大好き。いつの間にかおばあさんと同じくらい大好きになっていた。あの子も私が大好きだって!おばあさんみたいにいなくならないから、ずーっとずーっと一緒にいようね!って言ってくれた。すごく嬉しかったよ。
私はあの子の元を離れた。
苦しかった、悲しかった、でも離れなくちゃいけなかったの。
ごめんね、ごめんなさい。ずーっとずーっと一緒にいれないみたい。あの子は泣いちゃうかな、私を忘れちゃうかな。でも、私は幸せだったよ。大好き、大好きだよ。いっぱいいっぱいありがとう。
そうして眠った後、私に奇跡が起きていた。
もうだめだと思っていたのに、お願い事がかなったの。
私はいっぱいいっぱい頑張ったよ。貴方の隣でずーっと一緒にいれるように、いっぱい勉強して、いっぱい運動して、胸を張って大好きだと言えるように。
貴方は私を忘れちゃったかな?でもいいよ。
今度は私がいっぱい大好きを伝えるから。
貴方が私にくれた大好きを同じだけ、それ以上に伝えるから。
寂しくないよ、私がいるよ。
ずーっとずーっと一緒だよ。
絶対ひとりにしないよ。
貴方に釣り合う素敵な女性になりました。
失う事を恐れるようなか弱い女性じゃないです。
貴方と共に戦場にだって立ってみせます。
貴方が望むなら何にでもなれるんです。
奇跡の祝福を授かったのですから。
おばあさんが亡くなった夜に泣きながら私に言いましたよね?
「君が人間だったらいいのにな」
お待たせしました。
叶えましょう、私のご主人様。
貴方と共に生きる為、私は生まれ変わったのですから。
分かりづらいかもしれない、カイのことを思うアイナのお話。
次話で解説予定。