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日は沈む  作者: 夏冬春秋
3/16

読み物

話の肝ですので、面倒くさいと思いますけど読み飛ばさないでね。

自分なりに結構頑張ったつもりなので。

「こんにちは」


「あ、うん。こんにちは」


 金曜日の放課後。ボクは中学校の図書室で、何か面白い本がないか、と小説コーナーをウロウロ彷徨っていた。そうすると、久井に声をかけられた。ボクは彼女の明るい調子に合わせて、返事をした。彼女は陽気に笑う。普段と変わらない自然な笑顔だった。


「今日は一人なの?」その質問にボクは冗談をほのめかして答えた。すると彼女はアハハと昂揚と笑い、「何していたの?」と小首を傾げて質問を重ねた。


「ちょっと暇だから本でも読もうかなって」


「本なんか読むんだ、以外だねぇ」


 ボクは「そうでもないよ」と言ってから、本探しに熱中する。本の題名を目で追いかけていく。ボクは題名で選ぶのが主だ(大抵みんなそうかもしれないけど)。ピンと来るものがあったらそれを手に取り、あらすじがあればそれを読み、それから数ページ読む。そして文体が自分に合うなと感じたら借りる。いつもそうやっている。しかし、今日はピンと来るものがない。


「ところでさ、あんたの誕生日っていつ?」


 久井はボクが本を探している途中だというのに、関係のない話を持ってきた。ボクは探すのを一時中断し、その話に乗っかった。


「いきなりベタな質問に入ったな。四月二日だよ」


「そうだったの? もう十四歳なんだ。四月二日だと一番に成長しちゃうね」ニシシと白い歯を見せて笑う。本当、彼女は陽気に笑う。


「私は来週だよ」


「へえ。近いね」


「そうだなぁ、もう誕生日がきているんだったら、何かプレゼントあげなきゃ」


「いやいいって」


 手をぶんぶんと横に振って全力で拒否する。ボクがそうしているのにもかかわらず、彼女は自分のバックからボクへの誕生日プレゼントを模索している。


「そうだ」彼女は閃いたように赤色の携帯を取り出す。ストラップがぶら下がっていた。彼女はその携帯に取り付けられているストラップの一つを取り外す。それは銀色のビーズで統一されていた。ビーズの集合体は綺麗に『K』の文字を表現していた。


「これをあげる」


「なんでよりによってこの文字なの?」首を傾げる。


「私のイニシャルがK・Kだから。私だと思って大事にしなよ」


 しばらくうーんとうねってから、『K』のストラップを受け取った。ボクはどうもと一応礼を言う。


「お返し期待しているからね」と、たくらんだ顔で言った。それが目的かと苦笑を漏らす。


「久井が勝手にあげただけだからね。ボクは何もあげないよ」


「えー。ケチだね。ケーキぐらい買ってくれたっていいじゃん」


「さりげなく要求しているね。残念ながらボクは妹たちに毎日のようにたかられ、消費税も払えないんだ」


 ボクは肩をすくめて笑った。彼女もつられてくすりと笑う。


「あいつらは本当に困った奴らだよ。脳筋だから、体力だけは一人前にあって、敵わないんだよね」


「へえ。じゃあ、春とは対照的だね。春は運動が苦手だもんね」


「うん。だから、本を読むんだけどね。インドア派の特技さ」


「ふふ。暇をつぶせるもんね。私も読むから、分かるよ。じゃあ、そんな春におススメの本を教えてあげるよ」


 久井は目線を本棚に持っていく。「うーん」とうねって、本を選んでいた。


「あ、これかな? これなんかいいと思うよ。最近読んだけど、面白かった!」


 久井は一冊の本を手にとり、ボクに突きつけた。ボクはそれを受け取り、題名を見た。『日は沈む』というタイトルのようだ。聞いたことがない。著者も見知らぬ人物だ。


「久井が本を読むなんて意外だな」


「でしょ? まあ、嗜む程度だけどね。それで。これはね、一応続きがあるそうなのだけど、これでもちゃんとお話はまとまっているよ。……読ませてあげたいけど、まだここに置いていないみたい。続きの題名は『月が昇る』だったかな」


「へえ」

ボクは相槌を打ちながら、それを受けとり、あらすじを読んだ。生きた人形を作りたいという人形師の父親の願望を叶える為に、ある女の子が謎の人物と契約して「人形」になる。父が喜ぶ「人形」となった少女はその生活に満足していた。しかし、ある男の子と出会ったことがきっかけで、少女は自分の生きる道を見つめなおし始める。といったものだった。


「とってもいいお話だった。心を打たれるとはまさにこのことね。最後は、良い感じに終わるの。親を喜ばせる為に生きようとしていた女の子だったけど、男の子に諭されて、自分の為に生きるべきだって気がつくの。誰かに縛られて送る人生は自分の人生じゃない。自由に自分がしたいことをするのが人生だって」


「自由に、ね。でも、自由に自分がしたいことってなんだろうね。考えても、それが何なのか思い浮かばないや」


「難しいよね。ほら、不自由の自由って言うし。人は不自由に生きるのを望むから。でも、この場合の少女は、誰かに操られるだけの人形であってはならないと気づくのね。つまり、何事も自分の意思を大事に持ち、行動しなきゃってことだね。そうじゃない人生は楽だけど、退屈で、楽しくないよ」久井は頬をふくらました。


「操る人は楽しいかもだけど」


「アハハ。そうかも」


 久井は笑いながら糸で人形を操るような仕草をした。


「でも、この少女には迷惑じゃなかったのかな? 少女はその生活に満足していたわけだろう? まあ結果的にいい方向に動いたけど」


「要するに、有難迷惑、ってなったかもしれないということね。まあ、確かに良かれと思った事が必ずしもいい方向へ転ぶとは限らないしね。でも、まあ、結果オーライっていう感じで良いんじゃないの?」


「適当だな」


「うん。アハハ」


 久井は手を叩いて笑う。ボクは目線を上にあげた。


「この少女は、この先、どうやって生きていくのかね」


「それは、もう一冊の方で描かれているわ。まさに、日が沈んだ後のお話。日が沈めば、月が昇るでしょ?」


「それっていったいどういう意味だ? ああ、そういえば、『日は沈んでも生きている。月が陽の恩恵を持って生きているのだから』という言葉が序盤で書かれていたが、それと繋がるわけか?」


「ちゃんと読んで、知ってほしいな」


 意地悪そうに言った。ボクはヤレヤレと肩をすくめた。


 久井は人差し指をつきだした。


「フフ。春は、『人は二度生まれる』って言葉は知ってる?」


 ウインクをする。


「ん? ああ、ルソーの教育論の「エミール」だね。たしか『人は二回この世に生まれる。一回目は存在する為。二回目は生きるため』生まれた時から一人前になっていくための過程の教育論だよね。こういう小難しい話題がなにか関係するのかい?」


「そう。この本にあった話よ。これがこの本の重要なテーマで、さっきの質問に繋がる。私は、読んでいてすごく興味を惹かれた。なるほどって、自分の見識が広がった思いだった。そして、今の自分にとってとてもタイムリーな話だった。私たちの頃に、人がまた新たに生まれるのよ」


「青年期……だから……まあそうだね。でも、新たに生まれるっていうのはよくわからないね。ボクたちはこの世に生を受けているのだから、これ以上生まれるものはない気がする」


「でも、よく生まれ変わった気がした、って言葉があるでしょ? たとえば、趣味を見つけたりしてそれに没頭するようになってから、自分の生き方が……生活の仕方がそれで大きく変化する。つまり、その変化というのが、生まれ変わりというものかもしれないわ」


「うーん……そうだね。何かに没頭することか。じゃあ、これは別だけど、もしまた生まれるのだとしたら、無意識のうちに生まれるのかも。一回目に生まれた時のことなんか憶えてないから、実感がない。いつの間にか誕生している。それはつまり、ひょっとすると、ボクたちはもう既に生まれているのかもしれないね。少し、無理があるか」


「まあ、そう……かな? でもね、これだけははっきり言えるけど、私達はまだ生まれてないよ。誕生する実感はたしかにないかもしれないけど、まだ私たちは、過去にとらわれているままで、前に進めていないの」


 久井は首を横に振った。


「たとえるなら、ある大きな扉があって、それは大人の世界への入り口になっているの。私たちはまだ子供の頃の世界に閉じ込められているまま。扉はまだ開いていない。そうね。強いて言うならその扉を開けようと懸命に押しつづけているのが今の私たちであり、現状なのかもしれないね」


「なるほどね。ボクたちはその扉をいつ開けられるんだろうね」ボクは肩をすくめた。


「私たちには、まだ扉を開ける力が無いから。私たちがその扉を開けるようになるには、その力が付いたときによ」


 久井はこめかみを指先で押さえてマッサージをしていた。疲れたのだろう。それを見るとボクも疲れたような気がして、肩をもんだ。


「まだ続きがあるわ」


 久井は嘆息しながら手にしていた本をパラパラとめくり始めた。ボクは吐息をついた。本は慌ただしく、ページを行ったり来たりを繰り返していた。久井は本のどこかに自分の考えに該当する箇所があり、それを探しているのだろうか。


「あった」と久井は小さく喜んだ。開いたページをボクに見せた。「ここらへんのお話」と久井は指先でトントンと、そこを叩いた。ボクは文字を目で追っていく。


 そこに書いてあったことは、久井が言った通りの事が長々と書かれていた。その中にあった一例がボクの興味を惹きつけた。




 要約すると、人は男も女も誰もが母になる。つまり青年期の子供たちは全員妊婦である。ということだ。人は自分という一人の人間を確立させるために新たな自分を産む。母体は他人によって作り上げられた自分。胎児は自分で作り出すこれからの自分。という話だ。


 そして胎児は夢を見るのだそうだ。人は起こった出来事を夢という形で復習をする。そうして記憶の整理を行う。それと同じように、胎児も眠りながら遺伝子に刻まれた人類の歴史を遡り夢という媒体を通じて学んでいく。復習と言うよりかは、予習と言った方がこれの場合は正しいのかもしれない。なぜなら長年眠り続け、ようやく夢から目覚めた胎児はその夢で得た知識をまず実践していくのだから。

さらに。


 前提的に、生まれ落ちた人はまず自分という存在を他人に作ってもらう。つまりルーツを与えてもらうのだ。そしてその人で生きる基礎を学ぶ。これはお腹の中にいる胎児が人類の歴史を夢という映像を通して振り返るのと同じことである。やがて基礎を学んだ人はそこから自分に見合った生き方を探す。そして他人の型にはまらない自分を作り出す。これは、胎児は成長して人の形を得ていき、人の形になった胎児が母体から飛び出すのと似ている。そこでようやく人は初めて自分を作りあげるのだ。


 つまり、人は母体から生まれ落ちた後に、もう一度子宮へ還るのだ(しかし、この時に子宮へ還るのは今までの自分ではなく、これからの自分である。今までの自分は母となり、お腹の中で眠る自分を育て上げるのだ)。そうして、また夢(一度生まれた時から今までの映像をさす)を見る。




「どう?」


「確かに。非常に興味深いことだね。うむ。ここで分かることは自分もまた他人であるという事だね」ボクは前髪をいじり始める。「人は他人の経験を学ぶ。親からや遺伝子から。そして自分が経験した事を、学び生かしていく」

ボクは目線を上にあげた。口を一の字にしてこの考えを頭の中で反芻させていた。これも、経験の一つなのだろうな。


「要するに、ボクたちにはまだその経験が足りていない。経験……それがさっきの扉の例で言うとこの扉を押しあけるための力。なんだろうね」


「そういうことでしょうね」


「だけど、日とか、月とか、それはどういうことなんだ?」


「まあ、つまり、さっき読んだところで、いわゆる母体――一人目の自分を太陽として、胎児――二人目を月に例えているの。人の一生を一日で表すとしたら、そういう振り分けになる、みたいな?」


「なるほど」


「普通の人は朝日が昇り夢から目を覚ます。その時が生まれた時。そして、人は日の下で陽の光を浴びて成長していく。だけど、やがてはその光も衰えていく。他人から貰ってきた光に頼らずに自力で輝かなければならない時が来る」


「それが……日が沈み、月が昇ること、か。日は沈む、つまり死んで、次の月へ生を託すわけか」


「ええ。でも、この言葉がある。『日は沈んでも生きている。月が陽の恩恵を持って生きているのだから』。春が言う言葉と、合わないでしょ?」


「そこで、コレが繋がるのか。うーん? まあ、確かに。月のあの輝きは陽の光によるものだけど……」


「まあ、すぐわかるわ。でも、ここで分かっても仕方ないわよ」


 久井はボクのおでこを人差し指で押した。ボクは「なんだよ」とつつかれた個所に触る。久井は陽気に笑う。


「まあ、ボクたちは羊水の中で静かに夢に現を抜かしているんだから、そこまで深く考えなくてもいいんだろうね」


 ボクは冗談っぽく言って笑った。


「フフ。そうね、たしかに、胎児も夢を見て、様々な気分に浸る。だけどその夢が必ずしも吉夢というわけではないのよね」


 久井は口元だけを緩ます。目は笑っていなかった。


「そう。凶夢もありえる。でしょ? 私はほとんどの胎児は幸せな夢など見れないと思っている。いうならば、うなされ続けている。私には、分かる。ね? 春」


「ボクに何を聞いているんだよ」


「だって、春の今見ている夢は凶夢なのだから」


「……なんでだい?」


 久井は途端に神妙な顔つきで話し始めた。雲行きが怪しくなっていった会話にボクは眉を潜めた。この場の空気がガラリと変わった。温かかったものが急に冷え込みだした。ボクは心臓を鷲掴みされたかのような締め付けられる痛みに悶えた。顔つきが険しくなる。ボクは混乱する。それを表に出してしまいそうだった。しかし、その動揺を久井に悟られたくないから、平常を装う。


「新年度に入ってから、春の違和感が凄いのよ。なんていったらいいか分からないけど、心をどこかに捨ててしまったような気がする。それでもがき苦しんでいる。そして、それを喪失したことを悟られないように必死に隠している。それがまた新たな別な痛みに変わっている。そんなような感じがする。ずっと見てきたからわかる。去年まではそんな雰囲気は一切なかった」


「…………」ボクは何も言わなかった。


「なんか、ごめんね。変な話をしてしまって。空気も壊して。でも、これだけは言っておきたかったんだ」


「ううん。いいよ。だけどさ、きっと君の気の所為だよ」


 ボクは無理して笑った。久井は悲しそうな顔をした。この表情で互いに互いの感情を読み切った。


「春は妊婦であり、胎児である。大きな腹を抱え、不安、痛み、焦燥に苦しみもがいているような気がする」

ボクはただ黙っていた。へその辺りから鈍痛がくるような錯覚に陥った。


「その時は誰しもが不安定になる。人はその痛みから、胎児を殺そうとしたりや堕ろしたりもするわ。十分に育ててあげられなくて、奇形児が生まれたりもするわ。……。胎児と母体は繋がっていて、心さえも共有している。胎児は母親の心が分かり、お腹の中で踊り狂う。そうして、陣痛と悪夢の二重の苦しみを得て、痛みに身を歪ませる」


 ボクは眩暈がした。早くこの場から逃げ出したくて堪らなかった。胃の中が逆流しそうだった。脂汗が頬をつたう。


「だけど、もう一つあるわ。それ以外にも、その二つの命と心を鎮静することができるわ。それはなにか。周囲の人、なのよ。誰かが優しくお腹を撫でたり、声をかけてあげたり。産婆さんのように産むのを助力したりや。それでようやく、出産が出来るの。それには激しい痛みを伴ったとしても、それを乗り越えた先で元気な赤ん坊が誕生するの。初めて羊水から飛び出し、初めて空気に触れて、産声をあげる」


 久井はうつむいた。そのままで喋り続ける。ボクはただ黙ってその話に耳を傾けていた。


「誕生した赤ん坊は、一人で母親の腕にぶら下がれるほどの強い腕力を持っているわ。だけど、そんな力を持っていても、一人で生きていけるとは限らない。誰かと共に生きねば、死んでしまう」


 久井はバッと顔をあげた。曇りの一切ない綺麗な瞳をボクに向けた。


「ねえ。本当に困っているのなら、相談して。一番不安定で大変な時期は、一人で抱え込まずに、身近な人に助けを求めなよ。誰だっていい。私も協力する。春が元気な子供を産ませてあげたい。産んだ後も、守ってあげたい。なんだってするわ。助けてあげたいの。だから、そんな哀しい顔を、作った顔なんか……しないで……ほしいの」


 ボクはゆっくりと目を閉じた。そして、ゆっくり息を吸う。そして、尾を長くして息を吐くのだ。乾いた唇を舐めた。下唇を噛みしめた。ボクは額に浮かんだ汗をぬぐいとる。久井の表情はまともに見ていられなかった。


「本当に、私でよければ相談にのるよ?」


 久井は下から覗き込んだ。影を落としたかのような表情で、ボクの事を本当に心配してくれていた。ボクは顔を背けた。心に濃い不安のようなものが込み上げてくる。


 ボクは、久井をただ心配させるだけだった。次に言った言葉は、まさにそれだったと思う。自分でも情けない話、逃げてしまった。


「ホラ、なんていうのかな。五月病ってやつだよ。まだ新しい環境に体が慣れていないだけだ」


「……」


 久井は唇を震わした。そして泣きそうな目でボクを見た。しばらくそのままのこう着状態がつづいた。やがて、久井は嘆息し、本棚にもたれかかった。本棚に収納されている本の背表紙を何度も撫でながら、尾の長いため息をついた。


「ま、いいよ。だけど、困ったことがあれば私が手を貸す。そこは……。……と……トモダチ…………として……信頼してほしいね」久井の笑顔に優しさが滲んでいた。それは鬱蒼と生い茂る樹木の枝葉の隙間を縫うように伸びる日の光のように暖かく、眩しかった。あまりにも眩しくて、立ち眩みをしてしまう。


「うん。まだ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」


 ボクは床に置いていた通学用の手提げバックを持ち上げ、肩に掛けた。


「帰るの?」と久井に尋ねられたので、「まあね」と答えた。


「ストラップ。大事にしてね。あ、あと、最近行きつけのケーキ屋さんがあってね。そこのチーズケーキが美味しいから、食べたいな。ね? 来週、一緒に食べに行こうよ」


「うん。わかった。その時まで妹たちからお金を防衛してみせるよ。久井はこれから?」


「ま、来週の下見にでも行ってくる」


「ただ食べたいだけだろう」


「さてね。一緒に行く?」


「いいや。来週の楽しみに取っておくよ」


「残念。ま、あそこの店員と仲がいいし、あの人に春の代わりをしてもらうよ」久井はクスリと笑う。そして「じゃ、また会おうね」と言った。

ボクは頷づいて、「じゃ、またね」と、手を振った。彼女は振りかえした。ボクは踵を返し、久井を置いて図書室を後にする。


 ボクはこれがボクと久井今日子との最後の会話になろうとは、この時思いもよらなかった。


 彼女の命の灯火は震えながら西に沈む赤い火の玉のように、その姿を消していった。



今回は、ちょっとアレでしたね。

なるべく、それっぽくなるように頑張りましたが、伝わりましたかな?

やっぱり、説明は下手くそだ。



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