017 くびきの爪
大粒の雨と雨とがぶつかり、いくつにも分裂した飛沫が大気を落ちていく。こんな大雨の中、鉄屑しかない集積場にいるのは訳ありの人間だけだ。
小さな人影――ミアトリスは全身が濡れ細っているにも関わらず、傘を差すこともなく、雨音に溶けこむように静かに佇んでいた。
異様なのは、その握りしめた右手の指の隙間から、うっすらとした白煙が立ち昇っていることである。か細い紫電が手元から発すると同時に、絶滅に瀕するチドリの鳴き声のような音が辺りに響いた。
一瞬、漏れた青光りが、左目に湛えた深淵のようなロリエに差し込んだ。ぷくり、と頬を膨らませてから、肺に溜めこんだ空気を一挙に吐き出したミアトリスは、ゆっくりと右手を開いた。
握りしめていたものは携帯端末だった。
蒸気が立ちこめ、表面に無数の気泡が浮かんだそれは、もはや黒焦げ状のプラスチックの塊だった。焼け焦げた樹脂の臭いが雨風にさらわれていく。
異常な光景に違いないのだが、当の本人はさも当然のような振る舞いで、燃えカスを投げ捨てると、今度は自分の携帯をトレンチコートの内側から取り出した。
携帯を耳に当てたミアトリスは澄んだ声で、
「あ、私ですどうもぉ。ええ、実はお願いがありまして」
その声音はどこまでも軽やかで、凛としていて、聞く者を清涼にするものだ。相手先の言葉にうんうんと相槌を打ちながら、雨煙る鉄の墓場で言葉を紡ぐ。
「……はいー、そうです。ロシアの〝円卓〟に在籍しているどなたかで、EU市場を開拓しよう、もしくは、している貿易関係の方を紹介してほしいのですが。……あ、いますかぁ。イエイエ、とんでもない。助かります」
重苦しい曇天もどこ吹く風。
「スルガノフって、確かユーロの経済ガバナンスに圧力かけてた人ですよね。ええ、うってつけですーハイ。……えぇでは、FSBの調査員の情報を対価に。……はいー、失礼します」
吹きすさぶ風に金糸の髪が巻き上げられる。
それでも、朗らかな笑顔で湿気た空気を跳ね返す様は、レダに惚れ、彼女を誘惑しようと、ゼウスが化けた白鳥のようにひたすら優雅だった。
◇
食事を早々に切り上げたグウェン、フィンチの二人は二階のミルトンの自室にいた。パソコンの前には、満足いく食事量を取れず小声でぶうたれる部屋の主、ミルトンが普段より心持ち強めにキーボードを叩いている。
「女の声に心当たりは?」と、フィンチ。
「ないわ。少なくとも、こっちの訛りじゃなかった。たぶん、アメリカ系。いけすかない感じの声だった」
「そいつはこっちの事情を把握している風だったんだろう?」
「そう。おそらく、局長が言ってた、周囲をうろつく不穏な輩とやらでしょうね」
「そっちも気になるが、いまはテッドだ。仮にその女の言葉が正しかった場合、テッドの身がやばい」
ミルトンの背後では、グウェンとフィンチが現状を分析していた。
仲間の身を案じる思いもあるが、それ以上に目に見えない影の存在によって、状況が後手に回っていることを危惧していた。
ケーキハウスでのロシア人の急襲。
オッドフィッシュと法の薔薇の対立を知る謎の女。
グウェンたちは裏の世界を生きるプロフェッショナルだ。
偶然は信じない。二度続いたこちらに不利なアクションには、何者かの意図が絡んでいると当然考える。事態は見知らぬ場所で確実に推移していた。
「ミルトン、場所の探知はできたか?」
「駄目だって。向こうの携帯を壊されちゃあ特定も何もないよ」
お手上げのバンザイをするミルトンに、グウェンが訊いた。
「エリアの特定は出来るでしょ?」
「そりゃ、履歴からアンテナ基地局を探すことは可能だけど、意味ないでしょ。だって、拉致った相手が近くに留まる訳ないし、今頃別の場所に移動してるよ」
そう言って安楽椅子に埋没した体を揺すった。
「……止むを得んだろうな。本社に連絡する」
「ちょっと!」
判断を下したリーダーにグウェンが抗議の声を上げた。
ミルトンはそれを不思議そうに見た。
「いまは時間が惜しい。これ以上、後手に回る訳にはいかねぇよ。うざったい連中を出し抜くにはこれが最善だ」
「なに? なんのこと?」
きょとんとした顔で訊ねるミルトンを無視し、グウェンは自身の頭をがしがしと掻いた。それから、意を決したのか、手の平で払うような仕草で電話をしろと促す。渋々だが、彼女も逼迫した現状をよく理解していた。
フィンチが言う本社とは、彼らが仮宿にしている民間の調査機関のことだ。グウェンの同意を得て、フィンチが壁にかかった室内電話を手に取り、素早く番号をプッシュした。ミルトンが改造した傍受不可の特製情報端末だ。電波暗室のこの部屋でも使える唯一の電話でもある。
ダイヤルした相手は三度の発信音の後に出た。
『こちらはスカイロード社資料管理部です。資料の請求はダイヤルの1を。それ以外の御用向きの方は3を押してください』
人工的な女性オペレーターの音声案内には従わず、緊急時の運用規定に従って、機密暗証XXXXXXのダイヤルキーを続けて押す。
『セキュア・チャンネルに接続します』
ピピッ、と電子音が鳴り、続いてコール音が静かに尾を引いた。やがて、転送された番号が目当ての相手に繋がり、今度は生きた人間の応答があった。
『カンパニーラジオです。用件をどうぞ』
声の主は、今朝方もディスプレイ越しに会話したロレッタだった。
学歴の高そうなハイミス特有の喋りで、抑揚を感じさせない声だ。
「認識コードの確認は?」
『声紋パターンが一致しているので必要ありません』
「そうかい。ちょいとお前さんに聞きたいことがあってな。テッドと連絡が通じないんだよ。そっちで位置情報を調べられるか?」
『時間がかかります。そのままで』
保留音が流れる。
三拍子のウィーン風ワルツだった。
オッドフィッシュは人間の限界値を見極めるための実験部隊だ。データ収集に際し、戦闘状況における識閾値の変化指数を始め、脳磁場の反応時間、生体バイオリズムなどをリアルタイムで計測するのは特脳者のうなじ部分――頭蓋骨を支える第一頸椎のリング内部に埋め込まれた、大きさ一センチにも満たない〝くびきの爪〟だ。
〝くびきの爪〟は計測したデータを、ポートダウンにある機構の研究所へ送信する機能を持っている。送受信はこちらからの一方通行だが、機構は集積した情報から施術者の位置を追尾することが可能だ。
携帯端末からの追跡が不可能になった現在、テッドに埋め込まれた〝くびきの爪〟による追尾情報が頼りだった。
ワルツが尻切れた。
『残念ながら、チップの送信機能にトラブルが生じたようです。機能回復まで位置情報の取得は不可能です』
感情を覗かせない声で告げられ、思わずフィンチは苦渋の表情を浮かべた。
「回復までの時間は?」
『不明です』
落胆の色も隠さず、歯軋りをしてしまう。
『それよりも。なぜ、テッドの位置情報を?』
「大したことじゃない。通信が回復したら連絡をくれ」
ロレッタの追及をかわし通話を終えると、グウェンは憮然な面持ちで、
「あの阿婆擦れ、肝心な時に使えない」
「あのー、ナンバーの特定が済んだんですけど」
不穏な空気の中、ミルトンがタイヤマンのように膨らんだ腕を恐る恐る上げた。
――KB07RUS
テッドの携帯に出た女が口にした車のナンバー。
他に情報がない中、ミルトンに車種の特定を急がせていたが成果が出たようだ。しかし、普段の威勢はどこへやらだ。神妙な顔つきで、ミルトンが画面を指差した。
ディスプレイが表示するのは、各主要都心部を上空から描いた簡易化マップだ。灰色の建物の隙間を、オレンジ色で描写された道路が縦横無尽に走っていて、そのオレンジの線上に赤い光点がぽつぽつと点在していた。リアルタイムで受像データを更新しているらしく、三秒ごとに赤い光点の位置が動いている。
マップを見たふたりは、「得心がいった」という顔つきになった。
「〝秩序が狂った〟云々はこいつを指すようだ」
苦虫を潰した顔でフィンチが言った。
それは警察の車輌位置情報を示すデータベースだった。緊急配備センターにいるオペレーターが、管轄区画内の警察車輌を事件・事故現場へとナビゲートする際に確認するもので、ブラウザ上で何十と点滅する赤い光点が、各車輌の現在位置を表していることはグウェンにもすぐにわかった。
その魔法のデータベースがいま、ミルトンお手製の違法ソフトウェアにより、三人の眼前で星々の瞬きのようにひらめいている。
警察のデータベースは、ジョージ・オーウェルの『1984年』ばりの監視システムが設けられているというのに、セキュアサーバを掻い潜り、あまつさえそれをCGIゲームの如く、ブラウザ上に再現する技術を持つミルトンはまさしく天才と言えよう。
全員の視線が一点に集まる。
赤い光点に重ねられたカーソルが小さなポップを開き、そこに表示されていた車輌ナンバーこそが、電話の女が最後に残したことばだったからだ。
秩序とは社会の安寧を担う警察を指す言葉で、狂ったとは職務を放棄し、裏切りの行為を指しているのだろう。
『不思議の国のアリス』に登場する、女王を言葉で翻弄するチェシャ猫――なぜだか知らないが、グウェンの脳裏に口元を三日月に歪める笑い猫が浮かんだ。
「だから、僕は官憲ってやつが嫌いなんだ」
「呆れた。警察がテッドをロシア人に売ったっての?」
「ない話じゃないだろう。どこの組織でも腐ったミカンは出てくるもんだ」
次々に発せられる言葉の節々に棘があった。
「ミルトン。この車輌の午後からのGPS履歴を出せるか?」
「午後からね」
テッドの身柄を押さえた悪徳警官は、そのままロシア人へと引き渡すだろう。
問題は引き渡しの場所だ。
人目につかず、なおかつ警邏区画内において不自然に映らない場所――ホルスタイン・ファーム、リサイクル鉄工所、チャヴがたむろするカウンシル・ハウス(公営住宅)、公園――拡大されたマップ上で、KB07RUSの巡回ルートが青い線で強調される。タイムチャートで判別すれば、ビンゴをひくのはあっという間だった。区画内から僅かに外れた廃車集積場に十二分間も停車している。周辺には幹線が一本しか通ってなく、周辺の建物群も少ないため、おそらくここがテッドを拉致した現場のはず。
その後、KB07RUSは規定の巡回ルートを大きく逸れて、街の北郊へと進み、幹線沿いのモーテルの駐車場に入っていった。
「モーテル付近の監視カメラの映像をジャックできるか?」
「デジタルならね。ビデオとかのアナログなら、直接手に入れないと無理だけど」ボード上に指を滑らせながら、ミルトンはおっ、と声をあげた。「ツイてるぜ。データ蓄積型の自動録画だ。コンソールを乗っ取れば映像を見れるっと」
たたん、と素早くタイピング。
同時にモーテルの管理コンピューターから抜き出した映像フォルダが、年月順にざぁっと表示された。
最新の映像データをカーソルが叩く。
再生された映像を早送りで進める。データベースのログに記録された時間と照合、該当ナンバーの警察車輌が駐車場へとゆっくり入っていく。そのまま奥へと進み、監視カメラの死角へ移動する。
連中も馬鹿じゃない。わざわざ、目のある所でテッドの身柄受け渡しなどしないだろう。
早送り。
雨の影響で利用客はいない。
さらに早送り。
映像が飛びとびで、ぐるぐる進む。
「ストップ!」グウェンが叫んだ。
通常再生に戻った画面内に、青のワゴン車が映る。ワゴン車は警察車輌のある裏手へと進んでいく。
そして、カメラの視界から消えた。
それから数分後、次に映った黒のピックアップがゆっくりと裏手へと消えていく。
ほどなくして、白いバンが裏手から勢い良く飛び出してきた。おそらく、カメラに映らない別の道から裏手を通ったのだろう。
青のワゴン車が再び姿を見せたのは五分後。
窓ガラスにはスモークが貼られていて、内部を見通すことはできない。それから、少し経って警察車輌が何事もなかったかのように、モーテルを後にした。
この時点で、警察車輌と接触したと思われるのは三台。
青のワゴン車、黒のピックアップ、白のバンだ。
「ミルトン、ワゴンから順にトリミングしろ」
映像が逆戻る。被写体にファインダーを合わせるように、ノイズが混じった映像を抽出、拡大し、デジタル加工していく。ミルトンの魔法により、乱雑だった映像はたちまち鮮明なものに生まれ変わった。
「もう少し下、よしナンバーが見えたな」
すべての作業が終われば、車体の艶も確認できるほどに輪郭をくっきりとさせた画像の誕生だ。この作業をあと2回、繰り返し、計3台を順位付けする。
「これは賭けだ。こいつがホンボシだといいんだが」
「ミルトン、電子世界の革命戦士の出番よ」
「完全に巻き込まれちゃってんじゃん、僕。やるけどさぁ」
アルファベットと数字のコード。人類史においてA‐Z、0‐9の二つの羅列は、社会的価値を創出するための進歩の鍵だ。それも、あらゆる分野に共通する万能鍵として。
備え付けのスピーカーから、けたたましいレイブ音楽が、がんがん鳴り響き、エレクトロニカの重低音に合わせてミルトンの胴体が波を打つ。
「一般には知られてないことだけど」
とととととん、とウジのフルバーストにも負けないタイピング技術で、文字キーと数字キーの計七十五の配列間を残像になった両指が跳ねまわる。
「車両番号読取装置があるのはロンドンだけじゃないんだ」
ぱっ、ぱっ、ぱっ、といくつもの乱数表がディスプレイに浮かんでは消え、また浮かんでは消えてを繰り返す。
「いまの政権になってから実施されている社会実験の一環で、各都市の主要道路の傍らには、ぱっと見で判らないようにカモコーティングをかけた撮像カメラが至る所に仕込んであるんだ」
鼓膜を痛めそうなほどの騒音の中で、手持ち無沙汰のグウェンとフィンチは禁煙のルールも、もはや眼中になしとばかりに、もくもくと紫煙を口から燻らせている。後ろで眉間にしわを寄せた二人にとりあわず、ミルトンは言葉を重ねていく。
「つまり、交通局は通過した車の情報が蓄積された宝庫ってわけ。ストロボを搭載してないから、出るとこ出たら結構な額をふんだくれるに違いない! っと、キタキタ! 入れましたよっと」
ターン、と効果音を上げて笑顔で振り返ったミルトンに、グウェンは思いきり煙を吹きかけた。
「んっほ、げっほ、げほぉっ! な、なんだよ!」
「ゴメンゴメン。ね、音量下げて?」
言葉は柔らかいが、彼女の眼光には日本刀が持つ波紋にも似た、怜悧な冷たさがあった。ぶるり、と肩を震わせ、文句もそこそこにミルトンは大人しく音楽のボリュームを下げた。
「そんで、首尾はどうだ」
「僕を誰だと思ってるんだ。僕がその気になれば、コーラを片手にロンドン中の交通網を麻痺させることだってできるんだぜ?」
「はいはい、それで?」
適当なグウェンの相槌にふくれっ面になりながらも、電脳戦士は渋々と口を開いた。
「……ワゴン車の持ち主はウクライナ国籍の女。軽窃盗の罪で服役中。SUVは二ヶ月前に盗難届けがでてる。白のバンはイギリス国籍の青年で前歴はナシ」
「追跡は出来てるの?」
「僕ひとりじゃきついよ。せいぜい2台追うのが限度かな」
肩をすぼめて返すミルトンに、フィンチが思案顔で告げた。
「港だ」
「なんだって?」
「内地じゃなく、沿岸部に向かってる車に当たりをつける」
「確証はあるの?」
と、グウェンが睨むので、
「ないさ。こんなもん、雲を掴むようなもんだ。だがな、この国はロシア人にとってホームじゃない。だったら少しでも縁がある場所へと向かうはずだ」
淡々とした、感情を乗せない声でフィンチが答えた。
「一台だけ、高速62号線を走りながらマージーサイドに向かってるよ。現地の街頭システムは、まだ乗っ取ってないから詳しい行き先は不明だけど」
「十分だ。いい仕事をしたな、ミルトン」
「フィン、私たちは先に現地に向かおう」
「ああ。ミルトン、引き続きこいつの足跡を追ってくれ。それとな、ロシア人がオーナーの物件も洗え。倉庫街を中心に半径一〇キロだ」
「うい」
手掛かりは得た。煙草を濡れた舌先に押し付けて消すと、グウェンは獰猛な笑みを滾らせながら、
「連中皆殺しだ」
ぞっとするような声音で、小さく呟いた。
エンジンオイルの滲みたガレージ。
年季の入った車庫の中央に鎮座するのは、ブラックとゴールド、ツートーンで仕上げられたシェルビー・マスタングGT500だ。横には汚れた作業着に腕を通すウィルがいた。二人を迎えるや、彼は豪快な笑みを浮かべ、自慢の息子を紹介するノリで詳細の説明を始めた。
「1969年モデルだ。フォード・マッハ1をベースに俺の手を加えてある。428コブラジェットに六点式ロールバー、特注のショックアブソーバ、トラクションロックをミックスした最高峰のマッスルカーだ。デチューンの真逆を突っ走る、最高出力八〇〇馬力を超す怪物を作ってしまってな」
鷹のような鋭い視線で二人を見つめ、
「足がいるんだろう? これを使え。癖が強すぎるのが難点だが、うまく乗りこなせば何よりも速いぞ」
自信たっぷりに、そう付け加えた。
「面倒はごめんじゃないのか?」
苦笑しながら、フィンチは言った。すると、ウィルは好々爺の笑みを見せ、皮肉気に返す。
「起こってしまったもんは、しょうがないだろうよ。どの道、エドワードを見殺しにするのは寝覚めが悪い」
「そうかい。そんじゃ、有難く使わせてもらうぜ」
「フィン、私が運転する」
そう言って、止める間もなくグウェンはマスタングの運転席へと乗り込んだ。手早く機器を確認し、エンジンを回す。黒豹の体がやにわに振動し、猛獣の咆哮を上げた。車体の横に走った金色のラインが、唸りに合わせ、獣王の眼差しと化して、まるで周囲を威嚇するようだ。震えるスプリング。蠕動するチューブ。美しい排気音がマフラーから吹きだす。
「エキゾーストノートの感想はいかがかね」
「子宮に響くね」グウェンは唇を歪ませ、「悪いことはやめて中古車ディーラーに戻れば?」
「もう年だ。ちまちま、機械弄ってるのが性に合ってるよ。リアボックスは外してある。詰めれば人一人くらい乗せられるだろう」
車は持ち主の個性を表すコートのようなものだ。
その点、このマスタングは、鬱屈した夜を走るのにベストマッチな特別仕様車だった。
足の確保は出来た。あとは道具だけだ。強力で、タフで、最新鋭の武器にありったけの弾薬。マフィア組織を相手取れるだけの銃が必要だった。




