表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

アラタナルアサ

「お兄!お兄!ハロハロー☆クルミだよっ!もうっ、相変わらずお寝坊さんのお兄だなっ!……ふむふむ。よし、起きないとクルミがイタズラしちゃ―」

……今の萌色ボイスは目覚ましアラームだ。こんな音声をアラームに設定しているのは俺が妹好きだから、というわけではない。原因は俺が朝に極端に弱くて普通のアラームでは起床に至らないことにある。そこで俺は毎日、家族で一番の早起きであった妹が起きる時刻の10分前にこのアラームを設定している。クルm…二次元の妹キャラの萌ボイスを実の妹に聞かれるわけにはいかないので嫌でも起きる、という算段だ。

今朝も守り抜いた兄としてのプライドを胸に抱き、カーテンを開け、制服のシャツに袖を通す。こんな日が、これからもしばらく続くのだろう。




「私立逆川(さがわ)高校」、自主自律の精神をモットーとする自由な校風を伝統としたこの学校は、いかなる時代にもバラエティーに満ち溢れた生徒達が切磋琢磨しあっている。 (学校HPより)

私立逆川高校、俺が去年から通っている学校である。学校HPに書かれているような「自主自律」「自由な校風」に魅せられて入学に至った。しかし、一つだけ大事なことを見落としていた。

そのことに気付いたのは入学式、桜並木に囲まれた逆川高校の体育館には新入生とそれらを歓迎する音色を奏でる吹奏楽部の先輩方、そして教師陣がいた。そして教師陣を除くその場にいた全員、つまり生徒全員が…男子だった。

つまり、俺は男子校に入学した。

あれから一年、別に女子達とイチャイチャしたかったというわけではないが、まるで華がない毎日にはうんざりするものがある。あと二年間もこんな日々が続くのかと思うと何かを諦めたような気持ちになるが、まぁ住めば都と言うようにこの一年はそれなりに楽しくもあった。

今年度はどんな一年になるか、若干の期待を抱きつつ自分のクラスである「2-1」の教室に足を踏み入れる。



「はい…皆さんおはようございます、担任の灰木(はいき)です。えー…皆さんは本校で既に一年間を過ごしたのですから顔見知りではあると思いますが、やはりー…自己紹介はすべきですなぁ。では…一番の相川君から、よろしく。」

「はいっ!自分は相川 楓(あいかわ かえで)って言います!趣味はー」

教壇に立つ担任「灰木」はヨボヨボの老人だった。水でもかけたら溶けるんじゃないか…?灰なだけに。

……。周りのクラスメイトは知らない顔がほとんどだ。先ほどクラス名簿を確認したら仲が良い奴が二人いて片方はたった今まで自己紹介していた相川だ。あいつはとにかく人が良く、その上整った容姿をしている。男子校に通っているのに関わらず、前のバレンタインデーに女子高生から通学路でチョコをもらい全校生徒の殺意を買ったのは記憶に新しい。

もう一人はまだ来ていないようだが…そろそろだろう。

「すいませーん、遅れやしたー。」

ビンゴ。なぜ遅れたのかは察しがついている。

「君はー……殿村 裕也(とのむら ゆうや)君だね。遅刻の理由を…述べなさい。」

「『ミラクル乙女クルミたんフィギュアver団地妻』の発売が丁度今朝で、しかも数量限定っすよ!?モチ、並んできましたっ!」

やっぱりそうだったか。彼、「殿村 裕也」はオタクの多いうちの学校でも一歩先を行くオタクであり、皆から『殿』と呼ばれ親しまれている。ちなみに目覚ましアラームの音声は殿提供だ。

「そういうことより学校を優先しなさい…、次からはご家族に買いに行ってもらうなりしなさい。」

「先生!そんなことあってはいけないんです!!彼女は団地妻ですよ!?家で俺の帰りを待ちながら家事に(いそ)しんでくれる彼女を迎え入れるのに夫である俺が行かなくて誰が行くんです!?」

相変わらずの熱意だ。その熱意は常に数多くの生徒達のオタク心に火を灯してきた。

「……先生は、(ばあ)さんに買いに行ってもらいました。」

……は?

「先生も購入者だったんすか!!俺もさっき開封したんですけど昭和の気品を(たずさ)えたクルミたんは一味ちがー」

「あ…あのぅ、僕の自己紹介は…」

「……君はー、田中君か。少し、黙っていなさい。」

…どうやら今年のクラスは担任も含め、あまり期待しない方がよさそうだ。


こんにちは!マカです。まだまだ拙い文章ですのでお見苦しい節もあるかと思いますが、そんなところも含めコメントを頂けたらこの上なく嬉しいです!

次話も読んで頂けるように努力して参りますので是非、これからもよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ