3 帽子屋とウサギパートツー
昨日一日中PCが使えなかったので今日は二回更新です><
毎日更新って難しいなぁ……(遠い目
キャラクターが増えるとゲームの仲間が増えたみたいで楽しいです←
え、エシル……? 誰そr((
「黙れ」
黒い、喪服のようなスーツに、純白の白手をはめている。一見執事のような服装だけど、漆黒の彼の頭には、まるで緊張感のないド派手な帽子が乗っかっていた。
……一体何故その趣味の悪い帽子を被っている……?
「ほらアット、アリスがきょとんとしちゃってるよ、貴方のその帽子のせいでさ」
「黙れ」
「ねえ登場してから『黙れ』しか言っていないけど大丈夫?」
それにそろそろステッキ仕舞ってよ、と続けたエシルを一睨みしてから、渋々と言った感じでステッキを下ろす。
それから私の方に向き直し、優雅な動作で帽子を外す。
「Good tea timeアリス。私は『帽子屋』のアット。今回の屋敷は少々過激なところに立っているが、よく来てくれた」
「ええよろしく。……アットでいいかしら。それと、少々過激って……?」
「気が付かないのか?」
す、と彼の視線が右下に流れた。何があるのかと思わず体を強張らせた時、からん、と足元の小石が落ちた。
……ん? 落ちた?
「君は足を動かさない方がいい。落ちるぞ」
「せっかく俺が無事に届けたって言うのにさー、落ちるって可哀そうだよねー」
私の爪先の地面がない。
恐る恐る足元を見ると、下にはごうごうと音を立てて流れる――いや、暴れる川。落ちたら生きて帰れないと思う。
そう、ここは、
「崖の上――――っ!?」
あり得ない、あり得なってこれ!
こんな所に屋敷が立つはずがないと思い周りを見回すと、黒い、大きな建物が目に入った。
黒いレンガで作られたその屋敷は、私の周りの木も慄くような威圧感を発している。カーテンは所々開いていて、廃墟という訳でもなさそうだ。大きめのドアには『帽子屋敷 入ったら殺す by三月ウサギ』と書かれたプレートが掛けられていた。
「……三月ウサギ……?」
「私の部下だ。まあ、会っても良いことはな、」
ぱあん。
アットのセリフをかき消すような破裂音がして、私の横に立っていた木に黒い鉛がめり込んだ。
「………………っ?」
音のした方を見てみると、黒い拳銃を構えている、まだ幼さが残る男の人が立っていた。私と同じくらいの歳か、あるいは少し上か。
「お前、敵か?」
「て、敵じゃないって……って言うかそれより……」
私の目線が彼の頭に行ったのを見て、思わず頭のモノを手で隠した。
「み、耳を見るなぁ!」
「あら、イイと思うわよ。白ウサギと違って立ったウサギ耳も可愛らしいじゃない。それに、色も可愛いし」
そう、彼の頭の上にはふかふかの、カフェオレ色のピンと立ったウサ耳が付いていたのだ。少し癖毛の暗い金髪によく似合う耳が。
手に持った物は彼の容姿にミスマッチだが、なんだかそう、
「可愛い……」
「えーアリス、俺の耳はぁー?」
「アルク、オアはどうした」
「ちょっとアット、俺の存在スルーしないでほしいなぁー」
「見えない」
エシルの方向を見ずにさらりと冷たく言い放つ。それから私を安全なところまで誘導し、可愛らしいウサギの人――アルクと言うらしい――に銃を下ろすように言った。
「……遂に存在をスルーされるところまで来ちゃったのね……」
「何のことだ。私はいたって健康体、視力だっていい」
「……まあいいけど…………」
苦笑いを浮かべてエシルの方を見るも、彼は気にしていない模様。「あ、紅茶なら俺も飲むー」と言いながら私たちの後をついてくる。
「お前に飲ませる紅茶はない」
「アットがそういうならオレが猫退治しようか?」
にやり、と嗤い私に向けられていた黒い銃の口をエシルの方に向ける。ちらりとアットの方を見ていることから、彼のゴーサインを待っていると言う事が分かった。
この人……いや、このウサギ本気だ……。
気が付くとアルクから嘲笑うような笑みは抜け、しっかりとエシルに狙いを定めている真剣な表情が浮かんでいた。それに比べてエシルはいつものシニカルな笑みを浮かべている。逃げ出そうとする気配も、対抗をしようとする気配も感じられない。
「ちょっ、止めないのアット!」
冷や汗を浮かべながら助けを求めると、彼は溜息を吐き空を仰いだ。
「……いい天気だ…………」