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Do you love Alice?   作者: _(:D ゆあ 」∠)_
Ⅷ――characters 大好き、大好き
60/67

3 大嫌いなものを

これは、「それから」と「きっと、大丈夫」を視点を変えて改稿したものです

そのため、会話文は同じです


読み飛ばすのはあまりお勧めしませんが……

「何やってんの。部屋戻るよ」

「へっ……!? 嫌嫌嫌! じゃ、じゃあ私もう行くわ。ご迷惑をおかけしました探さないでくださいじゃあね!」


 アリスの上ずった声に気が付き、あっけなく見つける。彼女の片腕はなぜか覚醒時のオアに掴まれており、それがやけにアビの目に付く。直ぐに出てきてもよかったものの、紅い目をすっと細め、この光景を少し見て居ようと思い直した。

 ところが、その考えはすぐに変わる。いきなりびしっと意味もなく敬礼した彼女の背後にある窓に、ちらりと見覚えのあるピンクの何かが映った。その瞬間、何かを言ったアリスの横を通る様に、発砲していた。

 何故あいつがここに居るが分からないが、とにかく邪魔だ。

 ぎり、と歯切りをしながら銃を構え直す。驚愕を浮かべたアリスの後ろに、アビの姿を見たのかシニカルな笑みを浮かべるエシルがちらりと見える。

 今にでも窓を突き破ってあいつの上に飛び降りたかったが、今のターゲットはアリス。ち、と舌打ちをしてオアの方に向き直る。


「え、白ウサギ……?」


 アビが現われたことが意外なのか、驚愕の表情をしてオアが拳銃を下ろす。その隙を逃さず、アビは慎重に引き金を引いた。


「糞っ」


 確実に頭に当たると思っていた一発を間一髪で避けたオアは、ぎらり、とアビを一瞥してからアリスに目配せをした。「逃げて」と口の動きで伝えているのが分かる。ありがとう、とアリスが呟いたのを、アビの無駄に長い耳はキャッチをする。そそくさと退散しようとするアリス。

 ああ、やっぱ彼女は無知で馬鹿だ。


「出来ると思いましたか馬鹿ですね」


 ため息交じりにそう呟き、彼女に向けて拳銃を向ける。その勢いのまま引き金を引き、黒い線が引かれた様に銃弾が飛び出ていく。

確実にあたる、と思っていたその行き先は、オアの「危ないっ、」と言う怒鳴り声で予定が狂う。抱き着くようにアリスに体当たりをしたオアは、小さいながらも懸命に彼女を突き飛ばす。


「っ……、大丈夫か……?」

「痛っいけど……大丈夫……ありがとう…………」


 手を前に突き出した格好のオアが、肩で息をしながら訊いた。二人の頭上で窓ガラスを壊し、銃弾は外に行ったらしい。そのままあいつに当たってしまえ、とアビは心の中で悪態をつく。

 事態の深刻さに気が付いたのか、少し青い顔をしたアリスがオアにお礼を言う。


「お、オア君本当にありがとうぅぅ……」

「何? 何だかよく分からないけど早く行ってくれない? ここは俺が引き受けるから」


 しっし、と手を追い払うように動かすオア。

 今にも拝みだしそうなアリスにもう一発を出そうと思っていた時、彼女の目がエシルを捕えた。

 その瞬間、安心したようにニコリと笑った彼女は、呆然としているオアに声をかけた。


「……じゃあね、オア君」


 ありがとう、と最後に言い残し、ためらいもなくガラスが割れた窓に近寄り、

 たんっ。


「え? あ、アリスっ!?」


 スカートをひるがえし、窓から飛びおりた彼女は、まっさかさまに目当ての人物に向かっていく。

 まさか窓から飛び降りてくるとは思っていなかったのか、目を見開き落ちてくる少女を呆然と見守るエシル。


「っぶなぁぁぁぁぁいっ!」


 間一髪で腕を開き、アリスを抱き留める。よほど危険だと思ったのか、ふう、と息を吐いて唾を飛ばす勢いの大声を耳元で叫んだ。


「ったく、貴女ねぇ! どんだけ危ないと思ったか! 三階でしょ。馬鹿なの? 貴女馬鹿なの!?」


 アビにまで届く大声で怒鳴り散らすエシル。しかし、アリスはすぐに飽きたのか、オアに向かってピースをしている。そのオアは敵がいると言うのに背中を向けて、拳銃はおろか手に何も持っていない状態だ。

 ……今なら。


「アリス、まさか飛び降りるとは――」


 勇気あるなぁ、と呟いたオアの背後に、アビはルビーの瞳がきらりと光らせる。


「っ! オアく、」


 叫び声のすぐ後に。

 ぱあん。よく響く乾いた銃声が、辺りにびりびりと響き渡った。ぷしゅう、と右腕から噴水のように血を噴出させる彼の小さな身体。

 ゆっくりと地面に倒れ込む彼は、未だ意識があるのだろう。腕を押さえて「う……」と唸っている。一拍おいて、細い、枝の様なオアの腕から鮮血が流れ出る。どくどくと脈打ってカーペットに染み込むそれ。

 大嫌いだ。

 虚ろに血を視界にとどめるアビは、ずしりと手の中で重量をました拳銃を振った。自分の手の中のこれは、夢じゃない。

 ぽた、と頬に伝う雫を裾で拭い、誰にも聞こえない様に小さく「ごめんなさい」と呟いた。



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