15 それから。
「……何寝てるの」
上から声がかかり、うっすらと目を開けると、なぜか覚醒時のオア君が立っていた。可愛らしく(本人はきっと無自覚)首をこてりと傾げ、私の目にかかった前髪をそっと払う。思ったより近くに可愛らしいお顔があってびっくりした。
「こんな所で寝てたら風邪ひくよ」
はあ、と迷惑そうに溜息をつくオア君から、鼻をツンと刺す硝煙と血のにおいがする。きっと仕事でもしてきたのだろう。……何の仕事かは知らないが。
未だ立つ気配のない私の腕を強く引っ張るオア君。
「何やってんの。部屋戻るよ」
「へっ……!? 嫌嫌嫌! じゃ、じゃあ私もう行くわ。ご迷惑をおかけしました探さないでくださいじゃあね!」
息継ぎもせずに怒鳴り散らし、敬礼をびしっと決めてから掴まれていた手を振りほどく。ぽかんと私の顔を見ていたオア君は相当呆気にとられていたらしく、あっさりと手が離れたので安堵。
「心配してくれてありがとうー!」
その瞬間、私の頬すれすれに何かが掠り、向かい側にある窓を突き破り飛んでいく。ぱりいん、とガラスの割れる大きな音に肩がすくむ。
「っ、何だ」
銃弾に反応したのか、オア君が懐から小さめの銃を取り出す。使いやすそうな自動式拳銃の登場にもかかわらず、安心してしまった私が怖い。ああ戻ってきて私の常識。
そんなことをひっそりと思っていると、階段の向こうから銃弾と共にアビの姿が見える。いらいらしているように一直線に閉じられた唇は、どういう訳か私の方を向いているようだ。……何で。
ち、と荒く舌打ちをしたアビは、私から視線を外し、オア君の方に向く。
「え、白ウサギ……?」
意外な人物(ウサギ?)が現われたことに驚いたのか、オア君が一瞬銃を下ろす。その瞬間を狙ってか、アビが一回、引き金を引く。
「糞っ」
確実に頭を狙って飛んできた銃弾をしゃがんで避ける。間一髪で避けたオア君は、アビから流れ出るオーラを察したのか、私に目配せをした。「逃げて」と口の動きで伝えてくる。ありがとうと私も返し、こそこそと退散。
「出来ると思いましたか馬鹿ですね」
あ、やっぱ?
声と共に飛んできたそれは、私を狙っていたようです。「危ないっ、」と言う怒鳴り声が耳元で聞こえて、次の瞬間には視界いっぱいに床が広がる。どす、と言う音がしたと同時に、全身に衝撃が走る。
「っ……、大丈夫か……?」
「痛っいけど……大丈夫……ありがとう…………」
反射的に私を突き飛ばしてくれたのか、手を前に突き出した格好のオア君が、肩で息をしながら訊いてくる。頭上で粉々に崩れている窓ガラスを見る所、そのまま突っ立っていたら私の頭に穴が開いていただろう。
「お、オア君本当にありがとうぅぅ……」
「何? 何だかよく分からないけど早く行ってくれない? ここは俺が引き受けるから」
しっし、と手を追い払うように動かすオア君。
ほぁぁ、女神さまやぁ……。にしても、逃げると言っても何処から逃げれば……。
とりあえず一階に行こう、と思い立ち上がると、窓の外にピンク色の何かがちらりと見えた。
「……じゃあね、オア君」
ありがとう、と最後に言い残し、ためらいもなくガラスが割れた窓に近寄り、
たんっ。
テスト終わりましたあははははは
↑壊れてます
短いですすみません……




