6 さようなら
羽月紫苑さんが描いていただいたイラストです!↓
http://6768.mitemin.net/i55597/
私はエシアリをあまり描かないので嬉しいです><
しかも私より絵、うまいじゃないですか!
二人の表情が可愛らしいです
紫苑、ありがとうございましたー!
他にも、絵は何時でも大歓迎です、待ってます、と言うかお願いしまS((
目の前の男性はいかにもと言うようにこくりと頷き、手に取った薔薇を私に差し出した。……敵の癖にやけに優しいな。どういう風の吹き回しだろう……? あ、まさか色仕掛けとか……? 私、一応そういうのには引っかからないと思うけど、男性バージョンのウェーン様は違う意味で危ない。
とはいえ受け取らないと処刑されそうなので、警戒しながらも薔薇を受け取る。ウェーン様の瞳の色の様な淡い赤色の薔薇。棘に注意しながら匂いを嗅ぐと、ふわりと少し甘い香りがした。
「……ところで、何で私を呼んだんですか?」
薔薇から目を離しおずおずと尋ねる。
「現状把握、かな。聞くところによると、君は少しばかり記憶を取り戻したようじゃないか。その結果寝込んだようだが……今迄のアリスたちは皆Bad Endだったからね。初めてのHappy End候補だよ、君は」
ふわりと笑ったウェーン様は、視線を私からアビに移した。予想していなかったのか、紅い瞳に捕えられた彼は驚いた表情を浮かべる。
「さて、アビも頑張ってくれたまえ。最初から備え付けられた嘘の愛情に執着していないで、アリスを殺すことだな」
「……嘘の、愛情……」
眉間にしわを寄せ、荒々しくつぶやいたアビ。一方私は、何アビのやる気スイッチ押してくれてるんだこの野郎と言う感情を視線に乗せ、ウェーン様を睨む。
「一応君は『白ウサギ』だ。純情なのかなんなのか分からないが、毎回毎回アリスを殺すのに抵抗を持たないでくれ。退屈で仕方がない」
どうやらアビが中々『アリス』を殺そうとしないのは、今に始まったことではないようだ。
無機質な人形のような表情に変わったアビは、ぜんまいをまいたような動きで頷いた。
「……分かりました。アリス、次に会った時はお互い敵同士と言う事で」
嫌、宣言されても結構困るんですけど。命掛かってるから「ああそうですね、よろしくお願いします」で済まないことだし。
そうツッコむかツッコまないか迷っていると、ウェーン様がどんよりとした曇り空を眺めた。
「そろそろ夕方だな。アリス、君はもう帽子屋敷に帰った方が良いだろう。夜になると危険が増す」
「あ、ご心配ありがとうございます」
「モブキャラに殺されてはつまらないからな。襲われても死ぬ気で逃げろ」
逆に逃げない奴なんているんですか。
「……では…………」
気を付けて帰ります、と言い残し、其の場を後にしようとしたところ、がしっ、と腕を掴まれた。強い力で掴まれたので不機嫌そうに振り向くと、長い睫を伏せたアビが下を向いていた。
「…………さようなら、です」
「……ええ、さようなら」
門の所にきっとイグがいるんで、彼と帰ってくださいと言い残し、アビは私の横をすり抜け、出て行った。
「……アビ?」
首を傾げ、胸のもやもやを押さえながら私もドアを開けた。廊下に出てドアを閉めると、先ほどまでの薔薇の香りはドアに憚れ、消える。廊下が暗いせいか、手にした薔薇は淡い赤をふ、と曇らせた。
「……アビ」
最後にすれ違った時、彼の顔は良く見えなかった。今もどこかの部屋に入ったのか、彼の灰色のフードはどこにも見当たらなかった。




