1 涙の朝
さぁぁぁ……。
遠くで、雨の音がする。その音に導かれ、私は意識を取り戻した。体がだるい。起き上がりたくない。
目を閉じたまま周りの音に耳を澄ませる。聞こえるのは、雨音と、葉っぱが擦れあう音。きい、と椅子の軋む音がしたので、近くに誰かがいるのだろう。……それにしてもだるい。しかも痛みも少しながら感じる。
「うぅ……ん……」
「アリスっ!?」
思わず不満げにうめき声を上げると、思ったよりも近くから大声が上がった。耳を伝って入り込んでくる刺激に、ぱちりと目を開けた。
「アリスっ!」
目を開けたとともに貫いてくる太陽の光に、目を細める。そしてどぎつい原色のピンクと紫が広がり、ふわふわで柔らかそうな髪が頬を撫でた。
「……エシル」
「はあ、もう心配させないでよ! 貴女、丸々五日間も寝てたんだよ!? めちゃめちゃ心配した」
名前を呼んだ瞬間にぴん、と立った耳を今度はへなへなと萎ませて、私のいるベッドの掛け布団に顔をうずめた。
そういえば、ここどこなんだろう。疑問に思って周りを見回す。青で統一された家具と、動くとぎし、と鳴るベッドの毛布の柄。帽子屋敷の自分の部屋だ。誰かが運んでくれたんだろう。
誰が運んでくれたのか訊こうと口を開けたとき、エシルが毛布から顔を上げて、窓を開けた。もう光に慣れた目が、「あーあ、雨だ」と残念そうに呟くエシルの後姿を映す。ぽたぽたととめどなく落ちる透明な雨水が、木の窓枠を濡らし、染みを作っていく。
「……ぱっとしない朝だね」
白いスーツの裾が濡れる。それもかまわずに窓の外へ手を伸ばすエシル。それをぼうっと見ながら、私は記憶の糸を手繰ってみた。大丈夫、記憶は正常。あの、私の過去の記憶も鮮明に思い出せる。
「……ねえエシル、私どのくらい寝てた?」
「うーん」
伸ばした手を引っ込め、振って水を落とす。金色の瞳をこちらに向けたエシルは、顎に手を当てる。
「五日間、かな」
「五日間!?」
信じられない。そんな長い間寝てたんだ。そういえば、エシルのスーツは皺が広がっていて、いつものぱりっと感がない。
「まさか、その間つきっきりで看てくれた……とか」
「……ぷ。そんな時間、いくら俺でもないって」
そういいながら、さり気なくスーツの皺を伸ばした。……ああ、何でそんな嘘つくの。
小さく笑いながら「ほんとに?」と訊くと、「あ、お腹、お腹空いてるよね! と言うか俺が空いてる!」と言いながらドアを開けて、出て行った。
「……なんだあいつ……正直に言えば良いのに」
ほんのり熱くなってきた顔を手で挟み、冷やすために窓に向かって歩く。久しぶりに踏んだ地面は硬く、よろけてしまった。
それでも何とかたどり着き、エシルが閉めた窓を全開する。風が強い為、直に嬉々として雨がはいってきた。冷たい雨と強い風が心地よい。足元から顔に上がった熱が引いていく。
「……冷たい」
駄目、と心の中で叫ぶ。さっき感じたこの気持ちに、自分が気づいてしまったら。あるのは死のみだ。あいつもそのことを望んでいないかもしれない。
それに――。あの視線は、きっと私になんか向いていない。私の背後にある誰かを求めている。
「……駄目」
誘惑に負けたら、駄目。
「よし!」
服にかかった雨を撫でて、頬をたたく。大丈夫。きっと大丈夫だ、と呟き、窓を閉める。再び雨が窓ガラスを叩く音が広がり、それにまじって、がちゃりとドアが開く音がした。
「アリス? ご飯だよ」
「はあい」
はい、星野です
まずは報告があります
パソコン使えなくなったぁぁー!!
現在、普段使っているパソコンが壊れてしまい、古いパソコンを使っているのですが……
古すぎてそれも壊れましたV(^-^)V
なので更新無理です
携帯更新? 私に死ねと言っているんですか←
……これを機に、しゅくだぃ進めます;;




