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Do you love Alice?   作者: _(:D ゆあ 」∠)_
Ⅵ――White Rabbit 君は彼女の元にいたと彼らが語り
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11 いとしいひとへ


 緑が広がる鮮やかな風景の中に、ぴょこぴょこと揺れる、原色のピンクの猫耳が垣間見える。その下にはやわらかそうな、耳と同じ色の猫っ毛が広がる。時折混じった紫の房がやけに目に付く。


「……エシル?」


 溜息混じりに奴の名前を呟くと、耳がぴん、と釣り上がる。それと同時に「あははぁー……」と言う申し訳なさそうな声も聞こえる。消えたと思っていたけど、ずっといたのだろうか。

 訊こうと口を開けたとき、私の隣から、いつもより一オクターブは低いアビの声が聞こえた。


「……いつから聞いていたんですか……?」

「何かもう、最初っから。俺もさ、夫人が殺されたときの状況を知りたかったし。……やっぱ、俺のせいなんだね」


 堪忍したのか、両手を小さく挙げてホールドアップの格好のまま立ち上がり、困ったように眉を顰めるエシル。


「……吹っ切れたと思ってたんだけど、やっぱ無理みたい。俺は結局不幸を呼ぶ黒猫で、俺がいたら皆幸せになんかなれないんだよね。……そうなんだよ」


 そのセリフを呟いて、腰についたナイフを右手に握り締めた。丁寧で細かい装飾がされたそれは、太陽の光を反射して金色にきらりと光った。攻撃されると思ったのか、アビがすっと身構える。それを横目で見て、エシルはナイフをくるりと一回転させて、刃を自分の喉に向けた。茶色い首輪のついたそこは、彼の力で突き立てると即死だろう。

 何をするのか直感的に察した私は、短く悲鳴混じりに彼の名前を叫んで、駆け寄る。距離が長く、しかも足元は木の根っこでごつごつしている。かつんと音がなるタイルに苛立ちながら、スローモーションで喉元に上がっていく彼の右手に手を伸ばす。


「駄目っ……!」


 あと数センチのとき、私の横で風が横切った。ふわりと揺れる白いウサ耳を視界に捉えて、それがアビだと確認できた。


「死ぬなんて馬鹿がやる事ですよ。ふざけないでくださいっ!」


 軽く息を荒げながらエシルの手首をつかみ、ぐいっと捻る。痛みに顔を歪めてかつんとナイフを落としたエシルは、珍しく表情から笑みを消していた。足元のナイフを眺めて、それから目の前の紅い瞳を睨む。


「っ、なら何、ほら殺してよ、早く俺を殺して。早く、早く早く早くっ!」


 再びナイフを取り出し、今度は無理やりアビの手の中に収めさせる。そのまま自分でその手をつかみ、喉元に誘導した。強くつかまれているらしく、抵抗しているアビの顔は少し歪んでいる。


「……離してください。離してくださいっ!」

「アビだって思ってるでしょ。俺がいなきゃあの人は死ななかったって! いつもどおり、普通にシナリオを進んでいくだけだったって! いいんだよ、俺が死んだって何も変わらない。新しい『チェシャ猫』とゲームを進めておけば良いじゃん! 俺は要らないんだよ、……いや、最初からいない。(エシル)と言う存在自体、いなかったんだ、」


 ぱあん。

 気がついたら頬を打っていた。ぽかんと赤い頬をしたエシルが衝撃で真横を向いている。少し遅れてじんじんと手が痛み始めて、視界が揺れる。


「……いるじゃないの」


 涙混じりに呟いた私は、堰を切ったように涙と言葉が零れ落ちた。

 目の前にいるのはエシルではない気がしてならない。それが過去の記憶の中の誰かだと言うことは、察しがついた。

 決められた言葉を言うように、聞いたことのあるようなフレーズが口からとめどなく出てくる。ここで泣くのはエシルかアビのはずなのに、……いったい何故私が泣いている。


「……()めて。きえちゃいや。消えないでよ。ここにいて。貴方は一人、私も一人。貴方が消えたら誰もいないの。……何が……? 何でいないの……? いや、嫌だ姉さん。何でそんな事言うの」

「アリス……? まさか、記憶が……?」


 暖炉。目の前には暖かく揺れる炎と茶色いレンガで作られた暖炉が見える。私はその前の椅子に座って、飼い猫のダイナを撫でている。スノードロップとキティは姉さんのひざの上。腰まである金色の鮮やかな髪と、清楚な服装の姉さん。その背中に向かって、私は今日の出来事を報告する。「隣のクラスの男子にいじめられた」「母さんにテストを見せたら怒られた」「今日もまた、姉さんと、」……。


 全部全部、貴女のせいだと思いながら。


「――っ!」

「アリス!?」


 頭を抑えてよろけた私を支えて、エシルがアビから手を離す。表情を伺うと、いつもの彼だ。

 ほっとして笑顔を浮かべたとき、脳裏に浮かんだ記憶がぷつりと、テレビを消すように消えて、私の意識も同時に暗くなった。


 駄目だ。……まだアビとエシルは喧嘩中だ。私がダウンしてどうする。ああでも、もう良いかな。後は二人でがんばってくれると思うから。


「アリス……どうしたの、アリス。……貴女まで消えたら――、俺は、俺は」


 止めてよね、そういうの。あんたの大切な人は公爵夫人じゃない。私じゃない。私に向ける視線は、いつも別の人に向けられているもの。




 その視線は、いとしいひとへ向けて。


塾から帰ってきて速攻書き出したのに、何故書き終わったのが深夜なんだ馬鹿やろう

はい、作者です。兎に角皆壊れちゃえと思って書きました←

面白かったら良いんだよね、良いですよね!?


さて、話を書き始めてようやくつかんできた皆のポジションと言うか……担当ですね

それをまとめてみました↓


アリス→ツッコミ担当

エシル→お色気(?)担当

アビ→もふもふ担当

アット→天然担当

ウェーン様→S担当

アルク→馬鹿担当

オア→ほのぼの担当(日中のみ、寝起きは除外)

イグ→ギャグ担当

ダム→無邪気担当

ディー→黒担当


……ちなみに前回アリスさんはお色気、悪役担当

公爵夫人はほわほわ担当です


私の落書きの場合、いつも立場がかわいそうな人はエシルですが何か


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