3 記憶の欠片
短めですすみません><
いや、その前にこの章短いですね……
次の章は長いはずです、……はず
重そうな鎌を軽々しく抱え、絶対零度の目線をこちらに向ける。
……何でこんなに言われてるの、私。
「兎に角。この世界の、そして『アリス』のルールは分かっただろうか」
「はい……!」
あえて強く言った私に、女王様は手でアビに合図をし、彼がナイフを仕舞う。ほっとして首元の傷をなぞるが、傷は浅く、もう瘡蓋になっていた。
残るは女王様の鎌だけど……。外す気はないのだろうか。
「あの、女王様……」
「女王か……僕は一応男なんでね。出来れば他の呼び方にしてほしいんだが」
「じゃあ……、ウェーン様……とか?」
その瞬間、ただでさえ大きい綺麗な瞳が大きく見開かれた。
何か変な事でも言ったかと冷や汗を垂らしていると、ウェーン様はくすくすと優雅に笑い始めた。首元に凶器が当てられているので、笑う時の振動で揺れないでほしいです。
「ウェーン様……か。君は本当に前回までのアリスと違う。何が起きているんだろうな」
す、と静かに首元から鎌が離れた。
今度は本当に解放され、ほっと体の芯から息を吐いた。
「……さあ、アリスよ逃げろ。白ウサギに捕まらない様に、遠く遠く。あるいは残酷な手段も使って。今回のゲームの勝者はハートの女王か、それともアリスか……。くく、楽しみにしているよ? アリス」
とん、と出口に向かって背中を押される。次に会った時はこの人たちは敵になるんだろう。
「まずは帽子屋敷を目指して下さい。この国のもう一つの権力者、『帽子屋』が住んでいる屋敷を」
ドアノブに手をかけた時、耳元で声が聞こえた。
びっくりして振り向くと、機械仕掛けの玩具のような表情のアビが眉間にしわを寄せ立っていた。
「……くれぐれも、欲情した変態の猫には合わない様に……」
一オクターブ下げて囁いたその言葉の意味を訊こうとしたとき、どん、と乱暴に背中を押されて部屋を出る。
慌ててドアの方を振り向くも、ドアは閉まってしまう。
「……変態の猫……?」
アビの他にも獣耳をはやした人(?)がいるのかと思うと気分が下がった。
……とりあえず、帽子屋敷に向かおう。
これからの事は、私はまだ何も知らない。
私を出口まで案内するためにさっきの部屋から出てきたメイドさんについて行きながら、重い空気を吹き飛ばすためにそう開き直ることにした。
とにかくほかの事に集中するために目の前のメイドさんを穴のあくほど凝視していると、彼女の暗めの金髪が窓からの風でふわりと揺れた。
「……っ、」
ちくり、と頭の中で何かが刺さる。
「……これは――……」
目の前の人物がハート柄の真っ赤なメイド服を着たメイドさんから、白い綺麗なブラウスとふっくらしたフレアスカートの女性の姿に変わった。
彼女はニコリとこちらを見て微笑んでいる。長めの、綺麗な金髪の髪に隠れて顔は良く見えない。
「待って、見えないの――」
慌てて手を伸ばすも、その手は宙を切っただけだ。そのとき。
何で。何で何で何で。
突然込み上げてきたどす黒い感情に、自分自身が驚く。
「何で、貴女がいるのよ……っ」
「アリスさん!?」
肩を叩かれて気が付くと、心配そうに眉を顰めているメイドさんの姿。先ほどの金髪の女性は幻のように消えている。
……もしかして、もしかしなくても……あれが私の記憶……?
案内された出口を潜り、綺麗に整理された道にへたりと座り込んで、頭を抱えた。
拝啓、敬愛なる神様へ。
……どうして私をこんな世界に連れてきたんですかっ!