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Do you love Alice?   作者: _(:D ゆあ 」∠)_
Ⅵ――White Rabbit 君は彼女の元にいたと彼らが語り
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5 主人公の性

 喉の奥から搾り出したような、か弱い声。いつもの毒が混じった音色は含まれていなく、珍しく動揺さえしていた。呆然と私を見ているその瞳は、何故か私が映っている気配がしない。私の奥にいる、誰か(アリス)――。

 かつん、と音を立てて彼の手から拳銃が落ちた。相変わらず視線はこちらを向いている。


「……アリス。アリスアリスアリス、」


 ぱくりと小さく開けられた口から、ぽろぽろと名前が零れ落ちる。無意識なのか、言葉にちゃんとした音程はない。

 壊れたように呟くアビの視線から脱出し、助けを求めるようにエシルを見る。


「エシル、助けて……。アビがなんだか壊れた……」

「ごめん、無理。半分俺のほうだから、今彼が俺見たらきっと殺しにかかる」


 そういえば、この二人、過去に何かあったとイグから聞いたんだ。いまだに何があったかは知らないけど。

 何があったんだろうと考えていると、イグの悲鳴が聞こえた。エシルがイグを踏み台にしてこちらに降りてきたようだ。猫のようにしなやかなその動作は、踏み台などいらなかったんじゃないかと思う。


「さてと。アビはイグに任せて、俺らはデートの続きでもやるとしますか」


 ぎゅ、と私の腕をつかんで無理やり引っ張る。ちょっ、アビはスルーですか。ほら、上の男の子達も、イグでさえびっくりしてるよ。

 そう反論しようと口を開けると、むふ、と何かを突っ込まれた。吐き出そうとしたとき、口の中に広がる甘い味に気がつき、思わず咀嚼(そしゃく)


「……これ……、スコーン?」


 ジャムも何もついていない、ノーマルのスコーンだ。焼きすぎたのか、時々コゲのちりっとした苦味が刺さる。


「そ。……正しく言うとアリスの作ったスコーンね。ちょっとお借りした」


 い、いつの間に! あの時、持ってこれる時間はなかったはずなんだけど……。

 そう聞いてみると、怪しく微笑む。


「猫に出来ないことはないんだよ……」


 今このとき、私は自分の部屋の鍵を二重にすることを決めた。


「……それにしても、アビはどうするの?」

「え? さっき意識が戻って帰ってったけど? ほら、イグが困ってる。まあ、彼はイグに任せるほど馬鹿な(ウサギ)じゃなかったって事だねー」


 そういわれて、先ほどまでアビがいたところを振り向く。確かに、アビの姿は忽然と消えている。そして近くに、涙目でアビを探すイグ。

 あまりに人目を引くその光景に、頭が痛くなる。


「……というわけで行こうか。予定変更して、森に行きたいんだけど良い?」


 もう好きにしてください……。






 というわけで、今の光景に戻る。

 何故か無駄に引っ付いてくるエシルを殺すか殺すまいか、あるいは半殺しかと悩んでいます。


「……そういえば、あんたらの過去のこと、教えてよ。それか、(アリス)が狙われる理由」


 腰に手を回してくるやつの手をべりっと剥がし、上を見る。うっそうと茂る木々に、苔の張り付いた大きな幹。どんよりとした曇り空、歩くたびにこつんとなる地面のタイル。この世界に来てはじめてきた時にも見たその光景に、頭がくらくらする。

 今でも忘れられない。不安と、空気の悪さと、初めての誘拐。


「おーい、アリスー? 知りたくないのー?」

「……あ、ごめんごめん。良いよ、教えて頂戴」


 目の前で手を振られて、思考を現代に戻す。くよくよしてても何も始まらない。とにかく今は自分の置かれている現状を把握しておかないと。


「それで、貴女が狙われる理由だけど、他のキャラクターと同じように、『アリス』も代えが利くんだ。たとえば、貴女が殺されたとする。するとすぐに次の『アリス』がこの世界にやってくる」

「ええ、そこは感づいていたわ」

「うわあ、肝が据わってるんだか強いんだか……。まあ、それはおいておいて……で、さっき『基本的にキャラクターの重要度は『アリス』(しゅじんこう)との接触時間に寄る』って話したよね。ということはつまり、権力や富を求める人は、アリスに近づくって事。まあ、俺とかアットとか、『アリス』を守るようなキャラクターがいるからそれは困難なんだ。……その為、一番手っ取り場合のが『アリス』を殺すこと」


 細く長いきれいな人差し指をピンとまっすぐ伸ばし、私の胸元に当てる。とくん、と服の下で振動が心臓がはねる。


「だから貴女は狙われるんだ」




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