3 常識を思い出してほしい
……まあ、残念ながら今はそんなもの持っていない。それに今はキレかけている。男の子たちの方が心配だ。
誰か止めてくれる人はいないのかと辺りを見渡す。……この際「人」じゃなくてもいいや!
「誰か、誰かいないのかな……」
その時、大きめの紙袋を両手で抱えているフードの「ウサギ」と、さらに重そうな箱を何重にも積んでいる白い「人」が目に入った。周りの人がエシルを指さし不安げに話し合っているのを尻目に、ちらりとも見ようとしないウサギはアビ。目の前の箱が邪魔で前が確認できない人はイグ。
仕事の買い出しだろうか。それにしても量が多い。声をかけるのを躊躇われる多さだ。
暫く声をかけずに観察していると、何気なくこちらを見たアビの赤い瞳と目があった。
「……あ」
「……アリス?」
明らかに怪訝そうな顔をしているアビ。その不機嫌そうな声で私の存在に気が付いたのか、イグが「アリス? どこにいるんですか?」と顔を動かす。
「イグ、動いたら即貴方を敵とみなします」
殺気を押し殺した声で低く囁くアビ。驚いたのか恐怖が芽生えたのか、イグは目に見えて分かる様にびくんと大きく肩を揺らした。スカイブルーの目には透明な涙がうっすら浮かんでいる。そして、その反動で大きく揺れた色とりどりの箱――。
「……あっぶな!」
「ったく、本当に殺しますよ」
何とか体制を整えようとふらふら歩くイグ(頬に大粒の涙)を一睨みして、紙袋をそっと地面に置き、揺れている箱を何個か持つ。……無事におさまったようだ。私はほっと胸をなでおろす。
「……よかった……」
「それではイグ、早く城に戻りましょう。斬首刑と銃殺刑、どちらがお好みですか?」
「ど、どちらも嫌です僕を生かせてくださいぃっ!」
ぶんぶんと首を振り、助けを求めるように私を見る。……え、私ぃ?
「ちょっ、私は今御取込み中なのよ。ほら見て! エシルが人を殺そうとしてるのよ!」
びし、と効果音を背負ってエシルがいる所を指さす。彼は早くも女の子のこめかみに拳銃を当てており、今にも発砲しそうだ。
明らかに修羅場なその光景を仰いで、二人は呑気な声を出す。
「あー……猫さんって拳銃使いましたっけ」
「ナイフだけじゃ分が悪いって昨日買ったらしいです。ウェーン様が教えてくださいました」
「なるほどです……。それじゃあ、あの子供たちは何でしょうか。あんな小さな子、暗殺されるまでもないでしょうのに」
「こんな大勢の前で暗殺ですか? 見てみたいものですね」
「あ、たくさんの人に見られちゃいますね。僕より彼を斬首刑の方がいいんじゃ……」
「残念ながら、この世界では人を殺しただけでは死刑になんかなりません」
「って言うか助けてよあの子たちーっ!」
私の存在を堂々とシカトしてあの光景を実況している二人の間に入り、会話を止める。やめろ、今すぐこの会話をやめろーっ!
「……はぁ、めんどくさいですがやってあげましょうか……。運が良ければあいつ殺せそうですしね」
おい待て今一瞬本音が……。
小さく突っ込むと、満面の笑みで「何か言いましたか?」と返される。花を背負っているんだけど、その花の色は残念ながら黒に見えるぞ。
「荷物を持っていてください」
そう言われて彼がたくさん持っていた箱を渡される。意外と軽い。
「では、殺しますか」
目的が違う。根本的にこいつは目的が違う。
ちゃきっ、と懐から銀塗の綺麗な回転式拳銃(これも昨日アルクに教えてもらった)を取り出し、焦点をエシルの頭に合わせる。
……何エシルの頭吹っ飛ばそうとしてるんだーっ!
結構やり方が違う。私が頭の中で思い描いていた止め方と百八十度違うっ!
「死んでくださいね」
にやりと黒い笑みを浮かべたアビは、何の躊躇もなく引き金を引いた。
すみません、パソコンが壊れたのでこれから更新不可能です;;
いつから更新出来るのかは不明です><
すみません、鬼のせいです……




