5 Red night
グロ注意です><
苦手な方はバックお願いします
平仮名の発音で嬉しそうに言ったのを確認する暇もなく、腕に激痛が走った。ごりっと音がして骨が折れる感覚。その先には、反動で一部が欠けてしまった硝子の置物を持ったアリスの姿。
「ほら、私を愛さない悪い猫さんには罰を与えなくては」
にっこりと笑った彼女は、『アリス』の瞳を。
「わたしをみてくれないなら、いっしょにしのうね」
無邪気に言った彼女の瞳は、少女を。
「だから」
どっちの声かもわからない音色。否、二つが重なった、無邪気な嫉妬。
もう一度ぶん、と振り下ろされる置物を間一髪のところでかわし、自分もナイフを取り出す。
勢いに任せて繰り出しているだけで、体制を整え冷静になればなんてことはない。これならアットが丸腰で向かって言っても勝てるだろう。
とりあえず腕を狙ってナイフを突き出す。置物を落とさせて落ち着かせれば何とかなるはずだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」
腕にきらりと赤く光るナイフを生やした彼女は、喉の奥から濁点ばかりの悲鳴を絞り出した。腕から垂れる真っ赤な血の水溜りがカーペットにしみこみ、その上に透明なガラスの置物が落下した。がしゃん、と音を立てて落ちた置物は自らをバラバラにさせて、背後の紅を映させた。
「痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃっ!」
狂ったように叫びだした彼女は、それでも俺に向かってガラスの破片を投げつける。何度も何度も投げ続けるため、掌からも血がしたたり落ちていく。
「……っ、落ち着いて、アリス落ち着いて!」
びくん。『アリス』と言う単語を拾ったのか、彼女の体が大きく揺れ、そして瞳に光が戻ってきた。いつもの、惑わすような胡桃のように大きな黒目をとろんと下げて、俺の方に歩いてくる。痛みなど微塵も感じていないその動作に、思わず吐き気がして口を押えた。キャラクター名はそんなにも大事なのか、と――。
「……そうよね。続きをしましょう」
ぱん、と嬉しそうに手を叩き、赤い手を拭こうとしないまま俺のスーツの裾を握った。べたり、と白いスーツに赤い彼女の血液が付着する。鉄のにおいに混じって、例の香水の匂いもかすかに感じる。
「さあ猫さん。可哀そうな、誰からも愛されない飼い猫さん。私が慰めてあげるわ。労わり、労い、褒めて、愛してあげる。最もそれは一夜限りの幻想に限りないけど……、白ウサギさんより、」
突然出てきたアビを指す言葉に、俺の耳はびくんと動いた。それに気が付かないまま、アリスはナイフが刺さったまま俺の首に手を回す。首筋に冷たいナイフの刃の部分が一瞬触れた。
「白ウサギさんよりよかったら貴方の位置付けを変えてあげましょう。せいぜい私を悦ばせることね」
とろり、と彼女の息が耳にかかり、背筋が冷たくなる。ナイフに向かう腕を理性で押し止める。駄目だ、駄目だと言い聞かせながら。
「でもね、白ウサギさんつまらなかったから、今がチャンスかしらね。そうそう、あのつまらなそうな純情乙女……『侯爵夫人』もあなたには釣り合わないわね。そもそも貴方と彼女のつながりって飼い猫と飼い主、」
ニコリと笑った、いかにも楽しそうな彼女の声がぴたりとやみ、またあの叫び声をあげた。大声を出されて理性が戻った俺は、目の前の真っ赤な自分の手と、腰についているナイフが一本足りないのに首を傾げた。何故、こんなことが起こっているのだろう。訳も分からず一歩引くと、ずるり、と彼女の体が落下した。
胸には大きめなナイフ。暫くどうしたんだろうと観察していると、一拍おいて真っ赤な血が円を書くように広がって行った。まだ生きているだろう、口の端から隙間風の様な呼吸の音がする。
「……あ…………、俺…………」
自分でも驚くような弱弱しい声が出た。息が荒い。呼吸の仕方が分からない。頭がぼうっとし、体中の体温が爪先を渡って床に落ちていく。カラカラに乾燥した喉に唾を送り込み、何とか助けようと手を伸ばす。
きゃぁぁぁっ、アリスさぁぁぁーん!
PCの前でガタガタ震えながら書いた作者です←
呪われそう、夢の中でアリスさんに呪われそう……ガクブル
……まあ、ここは落ち着いて一句
「塾なのに 更新しました 偉くない?」
…………何故にタメ←
さて、鬼がPCを取る心配がないので長めにあとがきを書こうと思います(止めれ
タイトルの「Red night」は直訳すると「赤い夜」、赤とはあれです←
次のタイトルは今日の英語の時間に考えていたものにしようと思いますw
うーん、英語のタイトルって素敵←
今回はグロ注意でしたが……皆さんお疲れ様でした><
また明日、鬼がPCを使っていなかったら会いましょう!




