2 あなたとわたし
街に着くと空は青と赤が交じった紫色になっていた。この世界は日が沈むのが遅い。シャッターを閉めているお店がほとんどだったが、ぎりぎりで一つのレストランに駆け込んだ。
外見など確認していなかったので内装が汚い所だったらどうしようかと心配になったが、中々洒落た店だった。英国風の店内に可愛らしい柄の皿が飾られている。大きな観葉植物がたくさん飾られていて、アリスは「何の葉っぱかしら」と首をひねっている。
装飾の少なめなシンプルなエプロンを着た店員を呼び、オーダー。料理など食べる気がないので、適当にアイスティーを頼む。彼女が頼んだのはチーズケーキにローズヒップティー。
夕ご飯にも遅すぎる時間帯なのに、軽いものを頼んだアリスに質問をすると「……こういうのは聞かないで頂戴」とそっぽを向かれた。
「……まあいいけどね」
飲み物が来るまで、アリスのオンステージが始まった。ここにきてどんなに不安だったか。女王様にどんな話をさせられたか。――アビにどうやって出会ったか。
彼女から放たれる言葉は空気のように耳を通り抜ける。じっと、時々「ふうん」と返事をしながら笑顔で観察。喋るごとにくるくると変わる表情はまさに作り物の様だった。それも、人形のように無機質なものではなく、見定め、獲物を狙う獣のような。
「だからね、私はいろんな人に聞いたの。『本当に私はこの世界で愛されるのか』って。そしたら、みいんな首を縦に振ったわ。恋人に向けるみたいな笑顔を浮かべて、私を愛するって言うの」
でもね、と声を低くして続きを紡ぎ出したアリスを止めるように、俺と彼女の間に頼んだ飲み物とケーキが来た。
「あ、来たみたいね」
「そうだね……、アリス、ミルク取ってくれない?」
この女といると気分が悪くなる。いつもはアットを見習いストレートティーを好むのだが、今日はミルクたっぷりの甘めが飲みたい。
眉間に手を当て、目を瞑る。そっと触れてみた頬は冷たい。本格的にアリスの拒否反応が出ているようだ。
「大丈夫? はい、ミルク。ああ、入れてあげるわ」
その声の後、ちょろ、とミルクを入れる音がした。
「どうぞ。冷たいものでも飲んで気分をよくしましょう」
虚ろな目を小さく開けると、ニコリと笑顔を浮かべたアリスが目に入った。差し出された飲み物はアルクの耳の色をしている。
「……ありがとう」
ありがたく受け取り、一口飲む。こくりと音を立てて喉を通過する冷たい液体が心地よい。だが……、その中に、甘さが広がる口の中に、苦みが刺さった。
獣耳を持ったキャラクターは嗅覚、視覚、味覚など、さまざまなことに鋭い。そしてこれは、感じたことのある味。
「何を……」
先ほどとは違う瞼の重みを感じ、俺はゆっくりと目を閉じた。最後の視界に、さっきの続きの話をするアリスが確認できた。
「……でもね、チェシャ猫さん、貴方は私を愛していないみたいなの」
ゆっくり、ゆっくりと手から離れていく意識。ぼうっと膜が張ったような頭の中に、彼女の言葉が入ってくる。
「だからね、これはいけないな、と思ったのよ」
何がだ。なぜ俺は貴女を愛さなくてはいけない。
その問いかけの答えは、すぐに返ってきた。聞いてもいないのに。
「私は『アリス』よ。『チェシャ猫』の貴方なら分かるでしょう。……ああ、もう意識がないみたいね。大丈夫、これから貴方は私を愛するのだから。勿論、私も貴方を愛するわ」
すでに無くなった意識の中、この一言を聞くことができなかった。
今日部活で「お姫様抱っこ」が流行っていた星野です
え? 私はやる側ですって
身長163㎝の女、誰が持ち上げられると言うんですか←
……最高ですか? 156㎝の子を軽く持ち上げちゃいましたよ;;
まあ、それは置いておいて←
アリスさぁぁぁぁぁん!!!!
本編では分かりにくいかと思いますが、アリスさんが入れたのは睡眠薬です、毒ではありません
それにしても次話……大人の雰囲気←
止めろ自分、自重しろ自分←
鬼がきたのでそれではです




