2 まさかの帰城
「何で私をここに連れてきたの?」
「あ……、それは……」
渋るように目線を下に向けるイグ。それを見て私は首を傾げた。何か言いたそうな顔をしている。
「どうしたの……? そんなに言い渋る事なんて」
「それがあるんだよね、ディー」
「そうなんだよね、ダム」
彼の顔を覗いたとき、手を離してディーとダムが明るい口調で私の声に言葉を重ねた。
「イグが教えようとしていることはねー」
「僕達もよく知らない、白ウサギとチェシャ猫の事なんだよねー」
確認するようにダムがイグの頭をペしぺしと叩く。その隣で、ニコニコと笑い私の服の裾をディーが引っ張る。
白ウサギとチェシャ猫……。アビとエシルの事か。
「それに加えて、前回の『アリス』と『侯爵夫人』もだよねー」
「何かあったみたいなんだけど、僕達あんまりあの二人にかかわらないキャラクターだから、よくは知らないんだよねー」
「……あの二人に何かあったの? 仲が悪いの? それともいいの?」
私が二人に質問すると、うーんと二人して顎に手を当ててから、「多分、両方ー」と言うアバウトな返事が返ってきた。
よく分からないのでとりあえず苦笑して、再び質問。
「両方ってどういう意味、」
「貴女は知らなくて良い事です。アリス」
ざ、と言う足音と、凛とした綺麗な聞き覚えのある声が聞こえてそちらを振り向く。
「アビ……」
私が見た方向には、黒塗りの重たそうな拳銃をこちらに向けて、ぎろりとイグ達の方を睨んでいるアビが立っていた。
……って、今日はウェーン様もアビも帰ってこないんじゃないの?
不審そうに眉を顰めている私に気が付いたのか、拳銃を持ち直しながら説明をしてくれる。
「仕事が早く終わったので帰ってきたんです。ウェーン様はいまだに仕事漬けですが」
じゃあウェーン様手伝いなよ、と呟いた声が聞こえたのか、彼が大きく溜息を吐いた。……なんか変な事言った?
「まったく……。仮にもこの国を動かす女王様の手伝いがこの僕にできるともお思いですか? 見た目と同じく、中身もおめでたいことになっているんでしょうかね」
「こ、この服は好きで着てるんじゃないわよ!」
思わず背中を向いたとき、私の顔をすれすれに銃弾が飛んできた。背後で「敵に背中を向ける馬鹿な人でしたか」と呆れた声がする。
訳が分からず目の前を呆然と見て観察していると、イグが腰につけた長剣を抜いた音がした。
「白ウサギさん……、『白の騎士』が貴方に剣を向ける時がどんな場合かわかっていますよね」
「もちろんですよ。『自分のせいでアリスが白ウサギに殺されそうになった時』。……まさに今がその時ですね」
私はイグに誘拐されてここにきて、思ったよりも仕事が早く片付いたアビに襲われた。この場合、イグのせいで私がピンチになっていると言う事になるのだろう。
震える手で長身を構えている彼に、私は声をかける。
「イグ、いいから……! 逃げるから、私」
ぎゅ、と彼の白いコートをつかむもあっさりとふり払われる。自分の意思がなくてもルールのせいで私を守らなくちゃいけないんだ……。
もう一度名前を呼ぼうとしたとき、左右の腕に誰かが抱き着く。びっくりしてそちらを見ると、左にダム、右にディーがいた。
「アリス、逃げた方がいいよ」
「こう見えてもイグって強いから」
「だからさ、ほら俺らと一緒に逃げよう?」
「僕らもアリスの護衛ぐらいならできるから」
ぐいぐいと意外と強い力で草むらの方に引っ張られる。せめてもの抵抗で腕をぶんぶんと振るも宙をつかむだけだ。
「待って、ヤダ私を狙ってよアビ!」
「五月蠅いですね、僕は貴女より目の前の敵に焦点を向けているんです。気が散るのでさっさと消え失せてください」
「そうです。早く逃げてください!」
イグの大声がぱあんと言う大きな破裂音――所謂銃声――によってかき消された。反射で顔の前に剣を向けて跳ね返したはいいものの、動く前にお腹に向けて銃弾が一直線に進んでくる。
もう駄目だ……っ!
目を瞑った時、私の隣を誰かが薔薇の香りとともに通過した。
「貴女は目を瞑っていて?」
短くて済みません……><
もうすぐテストですので、あと少しで更新がストップします
さて、アリスを助けに来た一見かっこよさそうに見える人(?)とは……?
まあ分かり切ってますよね(おい
良い所だけ持っていく泥棒○←あえての伏字
ちなみにイグの一人称を「僕」か「ボク」か結構迷ったと言う裏話があるとかないとか←
アビに一言言いたいです。
アビさんもうちょっと優しくして……;;
アビ+エシルがちょうどいいと思います
ちなみに私はアルクが使いやすくて好きです←




