すれ違い
「あ・・・」
荒木がつぶやいた。そりゃあびっくりするよね。しかも昨日の今日だしね。
「よっ。」
この気まずい雰囲気をどうにかするためにとりあえず、きさくにあいさつをしてみた。
「よお、びびらせんなよ」
そういってドアを閉めて、近くの椅子を寄せて私のそばに座った。
ってか荒木君、ドア閉めたら後で誤解されるかもよ?わざとか、それとも天然なのか?
それをあえて口にしない私もどうかしてるかもね。
「こっちこそびびらせないでよ~。そういえば何しにきたの?」
「生徒総会でさ、会計報告するじゃん。だからそれを作りにきた」
ついでに荒木も生徒会に所属していて、会計を担当している。
「もうそんな季節か・・・」
「今からいろいろ考えておかないと、新聞部に叩かれるぞ~」
「やばっ!去年の会長、めちゃくちゃ叩かれてたよね」
毎年のように生徒総会では新聞部と生徒会による激しいバトルが展開されるのがお約束になっている。
「俺のクラスに新聞部の部長いるけど、めちゃくちゃ性格悪いって評判だぞ」
「世の中にはめんどくさいのがいるのねー」
「つか、俺忙しいから話しかけるな。お前も仕事しなっ」
そしてパソコンに向かった。私は荒木から離れた机で仕事をし始めた。
昨日の今日の割にはいつもどおりしゃべれたので少し安心した。
でも、やはり昨日の言いかけた言葉が気になって仕方が無い。
本当にヘタレだなぁ~。もどかしいヤツだって知ってるし、こんなヤツに惚れたって無駄ってことも分かっているけど、やっぱり好きなんだよね。・・・馬鹿だな私。
*** *** *** *** *** ***
仕事が終わって時計をみると5時だった。外はもう薄暗くなっている。
「もう帰らなくちゃ~」
ふと荒木を見ると寝ていた、キーボードが顔をめり込ませて。痛くないのか?
一瞬、起こそうかな?と思ったけど、私の理性がそれを止めた。なぜなら、
荒木を起こす
↓
時間的に一緒に帰ることになる
↓
昨日の二の舞になりそう
「よし、帰るか」
こうして私はバックに荷物を即効ぶち込み、とっととこの部屋から出ようとしたが
「ちょっとくらい、いいよね?」
と荒木の髪の毛をそっと撫でてみた。思いのほかやわらかかった。ついでに寝顔も見てみたけど、かわいかったね。無防備すぎる。
「やっぱり、あんたのこと好きだわ」
そしてできるだけ足音を立てずに、部屋から出て行った。
*** *** *** *** *** ***
一人の少女が部屋を出て行ったとき
一人の少年が目を覚ました。
「何を今更言ってんだし。俺だってお前のこと、好きだ」