先客は・・・
結局昨日は全然眠れなかった。嬉しすぎて目がぱっちりというのもあるけど、荒木がヘタレすぎて悩まされたからだ。その気がないなら優しくしないでよ。恋しくなっちゃうでしょ、バカタレ。
「おはよー美香ちゃん。」
「おはよ。珠洲。」
珠洲は私の幼馴染で小学校から高校までずっと同じところに通っている。幼馴染というより姉妹に近いかもしれない、それぐらい大切な人。いつも私たちは珠洲の家の前で待ち合わせをして学校にいっていて、それは変わることの無いいつもの習慣だ。
「美香ちゃん、クマすごいけど大丈夫?」
心配そうに聞いてくる。
「だっ・・・大丈夫だから。パソコン夜までいじっていたらこんなことになっちゃってさ。あははは。」
とっさに嘘をつく。だってこの悩みごと、人に言える分けないじゃん、恥ずかしくて。
「あやしーい。なんか隠してない?」
・・・さすが珠洲。
「・・・ごめん、今はそれについて話したくないの。」
「そっか~。まぁそういうこともあるよね。いつでも相談に乗るから大丈夫だよ。」
「ありがとー。珠洲大好き!!」
「私もだよ。美香ちゃん大好き。」
ふたりで笑いあった。
*** *** ***
授業の終わりを告げるベルが響き渡る。すぐに私はかばんに必要最低限の教科書を詰め込むと教室を出て生徒会室に向かった。実は私、生徒会長をやっている。だからちょくちょく生徒会室に行って仕事をしているのだ。
生徒会室は部室棟の最上階の一番奥という最悪な立地条件の場所にある。教室から一番遠い場所にあるんだよ畜生。校舎と部室棟を結ぶ渡り廊下を渡り、むだに段数がある階段を駆け上り、ガラガラと開けづらいドアを開けると生徒会室に到着だ。
生徒会は各学年4人ずつで構成されている。まぁ三年は夏前には引退してしまうけど。ということで今は8人で運営している。
8人で運営している割には生徒会室の面積が広すぎると思う。だってHRの教室と同じ広さなんだよ。しかもなぜか湯沸しポットや包丁、まな板もあるしね。
「・・・誰だよパソコンのスイッチ入れっぱなしにしたの。」
横長の机にある2台のパソコンのうちの片方がつけっぱなしだった。
ついでにこの生徒会室にはめったに人がこない、というのも役員みんないそがしいからだ。それなのにパソコンの電源が入っているのは不自然だ。
「誰か先に来てたのかな?」
あたりを見渡すと机の下に誰かのバックが置いてあった。見覚えがある。
「誰のだっけ?」
バックの中身を見るのは気が引けたので電車の定期の名前を見てみると・・・。
「荒木淳」
その瞬間ドアが開いて荒木が入ってきた。