・・・期待してもいいですか?
この想いはいつ届くのかな・・・?
*** *** ***
秋は嫌だ。なんとなく人肌が恋しくなるから。
寂しいけど「寂しい」って言える人がいないんだよね・・・。
帰り道。いつもは部活の子と一緒に帰るけど、今日は彼氏と帰ってしまって私はひとりぼっちなのさ。
余計に寂しさが増すばかり。今日は私の誕生日っていうのに神様は不公平だね。
「ボーっと歩いてると事故るぞ」
「・・・荒木?」
「おう」
なんで話しかけてくるねん。
荒木はとなりのクラスの男子で、私の初恋の人。
ちょうど一年前に私から告白したけど振られた。それ以来しゃべったことないのに・・・。
「いいじゃん。私だって考え事するもんね」
「ふーん」
なんだし。用事がないなら即刻立ち去れ!!余計に寂しさが増すから。
「あのさ、一緒に帰ってもいいか?」
「え?」
「いやなら別にいいが」
「全然いやじゃないから!!帰ろっ」
顔が赤くなっているのがばれませんよーにと思いながら私たちは一緒に校門を出た。
あたりが暗くなっているからはっきりとは見えなかったけど、荒木の顔が少し赤かったような…。
私はまだ荒木のことが好きだ。はっきりいえる。
振られたのに馬鹿じゃないって自分でも思うけどやっぱり好きなんだからしょうがない。
それから駅に着くまで私たちは他愛の無い話をした。部活のこと、クラスのこと、趣味のことなどなど・・・。
いつもは長く感じられる道が、今日は短かくなってしまったようで不思議だった。
今日だけ道を長くしてください、神様。
信号待ちをしているときにいきなり話題が変わった。
「俺さ、意味のない出会いってないと思うんだよね」
「なんで?」
つかいきなり深そうな話してこないでよ。
「お前さ、世界の人口がどれくらいだか知っているか?」
「60億ぐらい?」
「まぁ正解だな。68億人いるんだって」
「そんなに!?」
信号が青に変わったので歩き出した。
「そんなかから特定の人に出会うんだから、何か意味があるんじゃないかと思うんだ」
「・・・んじゃあ私たちの出会いも何か意味があるのかなぁ?」
「かもな」
そうして荒木は黙り込んでしまった。
何か気を利かせたことでも言ってあげたほうがいいのかもしれないけど、私にはできなかった。
途中でいろんな人にすれ違ったけどジロジロ見られた感じがした。
お願いだから、勘違いしないでほしい。
駅の階段を上り始めるとちょっぴり寂しくなってきた。最初は恥ずかしくてたまらなかったけど、
時間がたつにつれて嬉しく感じられたから。
あぁ時間が止まっちゃえばいいのに。
神様、時間を止めてください。
「荒木ってくだりだっけ?」
「うん。お前のぼりだろ?」
「そうだよ。電車くるまでここで待っていようっか」
近くのベンチにある程度の間隔を空けて腰掛けた。
ぱっと見た感じではカップルに見えるような・・・。
「そういえばお前今日、誕生日だろ?」
「へ?覚えてたの?」
「うん。だからこれやるよ。」
学ランのポケットからごそごそと何かを取り出した。普通学ランのポケットから出すか!?
「たいしたもんじゃないけど。やる」
渡されたのはクローバーのネックレス。
「ありがとう。」
突然のことにただただ私は驚いてばかり。
「せっかくだし、つけてやるよ。」
「助かるわ~。こういうのあんまりしないから付けなれてないんだよね~。」
そういって背中を荒木の背中に向けた。
「ほらよ。やっぱり似合ってる。よかった。」
「本当にありがとう。」
嬉しいけど、つらい。「似合ってる」なんて卑怯だ。残酷だ。ヘタレ!!
「たいしたものじゃないから。そんな感謝される理由もないし」
「でもなんでくれたの?いきなりすぎるでしょ」
ちょっぴり期待を込めて言ってみた。
「えっと・・・。」
「何?」
「…っ」
と口を開きかけた瞬間
『まもなく一番線に・・・』
上手い具合に電車が来るアナウンスが流れてきた。
「あっそろそろ電車くるから。んじゃ。」
戸惑う私から、荒木は逃げるように去っていった。
「なんでくれたんだし。」
ネックレスにそっと触れてぼそっとつぶやく。
嬉しい反面、荒木の気持ちがわからなくて不安になった。
一体荒木は私のことをどう思っているの?
期待してもいいですか、私?