12 冷たい彼女
人はふと振り返るとき、
初めから定められていたすべてが、
気づかぬうちに運命の手によって
ひっそりと紡がれていたことに気づく
偶然のような出会いも
予想外のような必然も
実はどれもひそかに
その存在が取り合わせたもの
麦畑での出会いも、城壁の下の独り言も
川面の生死も、病床での戸惑いも
なぜ人は迷宮の果てに辿り着いて初めて知るのだろう
人という存在は
運命の掌で
最も傲慢な操り人形に過ぎないことを
『フェイト・ワインダ、第二曲』
―― グレイヴ・ミスリ
「それで、私たちの目的地はどこ?」
「私の故郷です。」
「どうして、あなたの故郷へ行くんだ?」
フレイヤはウィンデルの方をちらりと見やり、冷たく短く答えた。
「全てを知りたいと言っていたじゃないですか。」
「そうだけど……」
「じゃあ、それで十分でしょう。」
その言葉で話題はそこで途切れ、ウィンデルは疑問を抱えたまま黙るしかなかった。出発して八日、二人の会話はほとんどいつもこの調子だった。「そろそろ食事を」、「休憩です」、「出発します」のような最低限のやり取り以外は、雑談もなく、ウィンデルが質問すればフレイヤは短く、あまり乗り気でない答えを返すだけだった。
幸い、ウィンデルは元からおしゃべり好きではなく、静かな時間に居心地の悪さを感じるタイプでもなかった。フレイヤが話さないなら、彼は彼で景色を楽しむことにしていた。いや、正確には楽しんでいるわけではないが、村を出て初めて目にする景色は、少なくとも悲しい記憶を一時忘れさせてくれた。
ハサードを出たあと、二人はまず南へ五日間、そして西へ折れた。ふもとの平野に沿って進む間、右手を向けば遠くに並行する白い雪の山脈が見え、その山並みは小さくなっていくのが分かった。
冬ではあるが、ハサードに比べればだいぶ暖かい。季節が終わりに近いことも関係しているだろう。しかし、同じ地形と似た気候が続くため、景色は徐々に単調に感じられた。退屈したウィンデルは、つい口を開いた。
「だいたいあと何日くらいで着くんだ?」
「わかりません。」
いつも通り短く冷たい答えだが、今回はウィンデルも諦めなかった。
「大体でいいんだ。」
フレイヤはため息をついた。
「言ったでしょう、わかりません。今の速度だと、あなたの村から風域までおよそ一か月、そこから私の村までは……予測できません。」
「風域って何ですか?」
「私たちの村の周辺を指す通称です。」
「じゃあ、どうして風域から君の村までがどれくらいか分からないって?」
「お前が一緒だからです。」
「……」
その言葉にウィンデルは少し落ち込み、風域が何なのかはまだ分からないが、自分がフレイヤにとって面倒な存在でしかないことを痛感した。だからこそ、彼女の返答はいつも早く話題を終わらせようとするものだったのだ。そう考えている時、フレイヤが珍しく質問してきた。
「風の術は、どの程度使えますか?」
「風の術?」
「ええ、風を操る技です。」
「風を操る技……って、それは何だ?」
フレイヤはため息をつく。
「……もう、あなたは何も分かっていませんね。」
簡単に否定されたことに、ウィンデルはより落ち込む。普段なら笑い飛ばすところだが、この少女に軽んじられるのはなぜか悔しかった。
「誰も教えてくれなかったんだ。」
「そういう、他人に教えてもらわないとできないタイプなんですね。」
「……あなた、ほんとに人をむかつかせるのが上手だな。」
「お互いさまです。」
これ以上話すと気分が悪くなると悟り、ウィンデルは黙って周囲の景色を眺めた。荒れた草原から、徐々に小麦畑やジャガイモ畑、散在する農家が見えるようになった。
「君の村に着く前に、どこか町や領地を通るのか?」
「独立した町はないですが、明日はヒューズ伯爵の領地を通ります。その次の領地は四日後に少し迂回して到達します。なぜ?」
「二、三日で手持ちの食料がなくなるんだ。町を通れば補充できる。領主の城の周りに市場とかあるんじゃないか?」
「ありますが……」
フレイヤは少し躊躇い、突然言った。
「近くの農家から買ったほうがいいです。」
「明日領地を通るんじゃないの?そっちの方が選択肢も多くて安いんじゃ?」
フレイヤは眉をひそめ、ちらりとウィンデルを見た。
「旅行が初めてですか?」
ウィンデルは頭をかき、素直に答えるしかなかった。
「……そうだけど、何?」
フレイヤは再びため息をつき、遠くの低い農家を指差す。
「後で説明します。まず、あそこへ行って食料を買ってください。」
「一緒に行かないの?」
聞き終える前に、彼女の無言の視線が「またバカなこと言って」と伝えてきた。
クソ、またどこで間違えたんだ……




