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9 絶望的な光景

 ウィンデルが目を覚ますと、彼は草原の上に横たわっていることに気づいた。慌てて体を起こし、周囲を見回すと、自分がヴィーゲルの東南側にある小さな丘の上にいることに気づき、クリストは少し離れた場所で下方の村を見下ろして立っていた。


 ウィンデルは彼女の傍に歩み寄り、視線の先をたどると、村の出口がすでに兵士たちに囲まれていることにすぐ気づいた。現場には凄まじい殺気が漂っていた。


「血なまぐさい光景が嫌なら、見ない方がいいわ。」


 クリストの助言に、ウィンデルは何も返さなかった。南風がざわめく中、突然、広大な草原に号角の響きが鳴り渡った。それを合図に、村の南側に待機していた大勢の弓兵が同時に矢に火をつけた。油を塗られた矢はたちまち激しく燃え上がる。


 次の瞬間、何百もの弦が一斉に放たれ、火矢の雨が無慈悲に風に乗って村へ降り注いだ。その光景は流星群のように壮麗だったが、落ちる星々は災厄の前触れでしかない。


 矢は村中のあちこちに火をつけ、強い南風が一気に火勢を煽り、村人たちは消火するか逃げるかの選択に翻弄され、たちまち極度の混乱に陥った。正にその時、再び号角が鳴る。


 村の三つの出口には、それぞれ二つの小隊が突入し、進む先々で死体の山を残していた。ウィンデルの目に、多くの逃げ惑う人々が騎兵に追いつかれ、無情に斬り倒され踏みつけられる姿が映る。混乱の中、女性村民が無理やり角へ引きずり込まれる光景もあり、その運命がどれほど悲惨なものか、想像に難くなかった。


 見覚えのある顔々、父親さえもその中にいるかもしれないことを思い、ウィンデルは思わず目を閉じた。これ以上見続けることはできない。無辜の命が失われることを考え、吐き気さえも覚えた。


 ゆっくりと、彼が身をかがめ、耳を押さえて必死に村からの悲鳴や助けを求める声を聞かなかったふりをしようとした。このすべてが悪夢で、すぐに目覚めれば、見た光景はなかったことになるのだと願って。しかし、クリストはすぐにその幻想を打ち破った。


「行くわ。そろそろ終わりよ。」

「……うん。」


 力なく応え、ウィンデルはゆっくりと目を開けた。

 ああ、この炎の勢いと天を突き刺す煙は、まるで盛大で荘厳な火葬のようだ。


 野営地に戻ると、兵士がクリストをブレットのもとへ呼びに来た。もちろんウィンデルも一緒に同行した。二人が天幕に足を踏み入れると、中には多くの人々がいたが、すべての視線は天幕中央に集まっていた。そこには、服はボロボロで全身が煤と打撲で覆われた男が、黒衣の兵士二人に強制的に跪かされていた。


 その男が父であることに気づいた時、ウィンデルは胸が高鳴り、反射的に駆け寄ろうとした。しかし、第一歩を踏み出した瞬間、全身を覆う重い圧力を感じ、まったく動けず、声すら出せなかった。まるで無数の見えない糸で縛られたかのように。


 ウィンデルは当然、これは誰の仕業か知っていたが、今できることは目玉を動かすことだけだった。彼の懇願の視線と向き合い、クリストは唇だけで一言囁いた。


「これはあなたのためよ。」


 ウィンデルは苛立ちを爆発させたくも、何もできず、ただ呆然とブレットが命じるまま、父の両手を机の上に押さえつけるのを見守るしかなかった。


「ザグフィ、まだ頑固を続けるつもりか?なら指を一本ずつ折ってやる。従順にすれば命は助けてやるがな。」


 ザグフィは軽蔑の眼差しを向け、かすれた声で言った。


「自分が愚かだからって、他人を馬鹿にするな。」


 ブレットの額に血管が浮き、兵士に合図を送ると、「カッ」という音と共に、ザグフィの右手親指が無理やり折られた。突然の痛みに、ザグフィは苦悶の叫びを上げ、ウィンデルは目に血の気が引く思いをした。


「もう一度聞く、お前の仲間はどこだ?」

「……くたばれ。」

 カッ。


 今回は右手人差し指だが、心構えのあるザグフィは声も出さなかった。


「仲間もここら辺に隠れているのか?」

「哀れなガキよ、お前みたいな無能は親父頼み……」

 カッ。


「過去十年近く、一体何を企んでいた?」

「……お前には関係ねえ。」

 カッ。


「ホーンの裏切り者への復讐か?」

「……」

 カッ。


 痛みに耐えるため、ザグフィは反論すらできなくなっていた。あまりの残虐さに、多くの者が目をそらしたが、クリストはただ眉をひそめた。


「ブレット、いくら問い詰めても、答えないよ。」


 クリストの声を聞いたザグフィは、突然頭を上げ、目線はウィンデルに止まった。なぜかここにいる息子を驚きの眼差しで見つめ、懇願の視線をクリストに向ける。クリストは軽く頷くだけで、無言の承諾を与えた。


「ふふふ……」


 突然、かすれた笑い声がザグフィの口から漏れ、周囲の者たちは驚愕した。絶望的状況でさえ、彼は笑うことができたのだ。ブレットの顔は極めて険しくなる。


「何が面白い?」

「ガキ、可哀想だから教えてやる。当時ホーンはなぜ降伏したと思う?」

「言うまでもない、王国の精鋭に勝てないと悟ったから……」


 ブレットの言葉をザグフィは軽蔑して遮った。


「お前、本当に愚かだな。お前は親父がホーンに勝てると思ってるのか?ホーンが抵抗をやめたのは、無実の市民が戦場で死ぬのを忍びなかっただけだ!合衆国を見渡しても、戦場で敵う者はいない!来い、殺すなら殺せ、テレニィを筆頭に、ディーゼル一族なんて救いようのないクズどもだ!」


 ザグフィが父と王室を侮辱するのを聞き、ブレットは激怒した。


「父上と陛下を侮辱するとは……もう我慢ならん!衛兵、そいつをここで処刑しろ!」


 ザグフィの言葉を聞いたその瞬間、ウィンデルは事態が非常にまずいことを悟った。この時点で取り返しがつかないと確信した。心臓が喉から飛び出そうな思いで目をクリストに向けたが、焦り、怒り、懇願の眼差しに、クリストは冷たく無視する。その時、ザグフィはウィンデルの硬直した姿を見て、何かを理解したかのように微笑んだ。


「ありがとう、リス。」


 これがザグフィ・フェイトの最期の言葉だった。彼は同時にクリストに首を振り、「お前のせいじゃない」と言うように示した。


 二人の衛兵が前に進み、槍を構え、一人は腹、一人は胸に突き刺した。ウィンデルは叫ぼうとしたが、声が出なかった。次の瞬間、銀色の槍先がザグフィの体に突き刺さり、彼は口を大きく開け、真紅の血を吐き出した。


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