【こたえ】なーんだ、そういうこと!
「火災報知器!?」
蒼汰は目をぱちくりさせ、鸚鵡返しに僕のせりふを叫んだ。
律さんと別れた僕は、さっそく蒼汰を訪ねていた。家に上げてもらい、二階にある蒼汰の部屋を目指して蒼汰と一緒に階段を上りながら、単刀直入に律さんの導いた結論を述べたのだ。
音を出すもの。かつその印象が薄いもの。そして水と関連がありそうなもの。
蒼汰の部屋の怪音の正体、それは――……。
「たぶん、火災報知器じゃないかって」
僕は、ふう、と、息をついた。
「でもそんなの、オレの部屋にあったっけ?」
蒼汰が不思議そうに首をかしげるのに、苦笑する。
「あるはずなんだって。法律で決まってるみたいだよ」
律さんが言うには、新築の家では二〇〇六年から、既存の住宅でも二〇一一年以降、寝室や階段に火災報知器を設置することが義務づけられたらしい。
「新しい家なら最初からついているけど、そうじゃなければ、後から電池式のものを付けたりしただろうって」
さっき律さんから聴いた話をそのまま説明する。それに、ふうん、と、うなずきつつ、蒼汰が自分の部屋のドアを開けた。
僕たちは、ほぼ同時に天井を見上げる。
「……あった」
そしてすぐに、それを見つけた。
部屋の中央からやや入り口寄りの天井に張り付いている、直径七~八センチくらいの、薄い円筒状の物体。それをじっと見詰めながら耳を澄ませると、ぴちょん、ぴちょん、と、かすかな水音が聞こえてくる。
音はまさしくその小さな円い機械からのそれだった。逆に、よく今まで気付かなかったものだ。お化けだって思ってしまっていたからかな。律さんの言う通り、先入観、大敵。
「でもさ……これいったい、何の音なんだ? 別に火事じゃないし」
蒼汰はまだ不思議そうだ。
「椅子、貸りていい?」
僕は蒼汰の勉強机から椅子を引っ張り出して、よいしょ、と、その上に乗る。天井に手を伸ばして、すこし力を込めてひねると、火災報知機のふたは簡単に取れた。それの側面にはシールが張ってあり、針の先みたいな小さな文字が並んでいた。曰く――……。
「三秒間隔で水滴音が鳴った場合、すみやかに電池を交換してください……だってさ」
そう。律さんは言っていたのだ。後付けの火災報知器なら、設置から十年で、そろそろ電池切れの時期だろう、と。さすが律さん、と、僕は思わず笑いながら、蒼汰にふたを手渡した。
「なんだよ、単なる電池切れかよ……人騒がせな知らせ方すんなよな!」
怒り心頭の友に、ごもっとも、と、僕は思った。火事といえば水、と、連想は働くにせよ、電池切れの通知になにもこんな不気味な水滴音をわざわざ選ばなくても良かっただろうに、と、苦笑する。
そして、まだまだ絶賛水滴音を発し続け、エネルギー切れを訴える火災報知器をなだめるため、僕たちは早々に律さんの助言に従うことにした。つまり、電池を買いにホームセンターへゴー、だ。