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読んでくださり有難うございます。

 サイラスが近づいて来てくれたことでローザリアは勇気が出た。

「サイラスは私といるのは飽きたの?それで好きな人がいるの?」


「待って、どうしてローゼリアといることに飽きるの?君という人がいるのに恋人なんてありえない。君が好きだよ、ローザリア。愛しているのは君だけだ」


大きく目を見開いて固まったローザリアは真っ赤になった。


「それは、いつか廊下で友達と話してたでしょう?

いつも一緒で飽きない?って聞かれていたわ。サイラスはまあなと答えていたじゃない。私はそうだったんだと思って辛かったわ。それに好きだなんて初めて言われたもの」


「それはごめん、ローザリアの素敵なところを教えたくないから適当に答えただけだ。言葉に出来ないくらい好きで愛しているのは本当だ」


「今までそんなこと言われたことがないし、手を繫いでもらったくらいだし、私には何も感じていないのかと」


「小さな頃から好きなのはローザリアだけだ、初恋なんだ。だから余計に何も出来なかった。自覚したのは学院に入ったころかな。綺麗になっていくリアから目が離せなくなった」


「街で女性と一緒のところを二度も見たわ。あの人が恋人なのかと思っていたわ」


「何故そうなるの?」


「だって、二度目に見たのは怪しい宿がある通りだったし腕に縋りつかれていたから、そういう関係の人なんだと」


「あれは前に偶然助けたことがある花屋だ。いきなり腕に縋り付いてきたんだ。直ぐに振り払ったよ。誰かに見られてローゼリアに誤解をされたら困るから咄嗟に通りに入っただけで何もしていないし、するわけもない。ビルに聞いてもらえば分かる」



ローザリアは安心して涙がポロポロ溢れた。恋人ではなかったのだ。良かった。

ずっと鉛を飲み込んだように苦しかったのだから。



学院で何故かマウントを取りに来たり、囲まれて婚約を解消するように言われたりした事は何回もあった。特進クラスの中ではなくサイラスのいないトイレや淑女教育で一人になった時を狙われた。


サイラスは婿に丁度よい優良物件らしいとその時知った。

これが社交界だと思っていたので平気で乗り越えたが、今回の相手は平民だ。



サイラスの想いがそこにあったら自分が身を引こうと思っていたのだ。


涙は止まらずサイラスがハンカチで拭いてくれてもどうにも出来なかった。


「こんなに不安にしてごめん。鈍すぎるよな、リアに見られていた事にも気がついていなかったなんて駄目すぎる。もっと大人になれるよう努力するから機嫌を直して」

そう言って額にキスをした。


ローザリアはこくんと頷くのがやっとだった。

サイラスは可愛さにもっと手を出してしまいそうになるのをぐっと我慢をした。

急展開はリアには無理だろうと判断したのだ。今まで手が出せなかったのに、このままでいくと暴走しそうで怖かった。




漸く誤解が解け伯爵家に送って行ったサイラスは、夫人にこってりと絞られることになった。ローザリアを泣かせた罪は自覚していたので甘んじて受けようと思った。



夫人は拗らせからの誤解だろうと思っていたので、そこまで怒ってはいなかったがもっと安心させてやって欲しいと諭した。


自分の未熟さを痛感したサイラスはローザリアに少しずつ愛の言葉を囁くようにした。



卒業後は司法の王宮文官になり働くことになった。ローザリアの両親も若く、タウンハウスの主な執務はローザリアが行っていた。サイラスは補助的に支えて行く事になった。



サイラスは自分の家の執務を手伝っていたので苦もなかった。

兄上は王宮に勤めながらタウンハウスでの執務もされているのだと尊敬の念を抱いたものだ。



卒業式の半年後サイラスは領主教育の補佐の勉強の為ダグラス家に引越す事になった。キースが側近兼護衛として付いて来た。



朝からローザリアの顔が見られる。部屋に迎えに行くとデイドレスに着替えた愛しい人が笑顔でドアを開けてくれた。エスコートして食堂に行った。

勿論夫人も一緒で先に座って待っていた。三人で食事を食べる時間は賑やかで楽しかった。




 二人のデビュタントの日になった。十六歳になり成人として認められ結婚も出来るようになり、特に女性は普段近づくことのない王子様と踊れる晴れの日だ。

婚約者がいればパートナーを探さなくてもいいが、相手のいない令嬢や令息は必死だろう。



ローザリアは白のシルクにサイラスの瞳の色の金色の薔薇の刺繍をスカートの裾に施したプリンセスラインのドレスで、ダイヤモンドのネックレスとピアスを着けている。髪はハーフアップで淑やかさが半端なく溢れていた。


サイラスは髪を後ろに流し美麗な顔がはっきりわかるイケメンぶりだった。白のシルクでローザリアの髪の色の金色の刺繍を肩とパンツの縦のラインに蔦を施したスーツにダイヤのピアスを着けている。


「ローザリアとても綺麗だよ、隣に立てて幸せだ」


「サイラスも素敵よ、今日はずっと側にいてね」


「勿論だよ、離れない、取られないか心配だからね」

二人は微笑み合い馬車に乗った。



 この国の第一王子様はお妃様が隣国の王女様でお子様もいらっしゃる。第二王子殿下がマーガレット様の婚約者になられる方だ。


マーガレット様も控え室にいらっしゃるのだろう。お会い出来たら嬉しいのだけどとローザリアは思った。



宮殿に着いた。伯爵家は中間どころなので呼び出されるまでサイラスの腕に掴まって待っていた。何処かの令嬢が


「そんなに必死で掴まっていないと逃げられると心配なのかしら。私なら自由にさせてあげられますのに」

とピントの外れた嫌味を言って来た。


「名乗りもしない方に答えるほど親切ではございませんわ。それに貴方、格上の人間かどうかの判断も出来ませんの?まあお相手もいない方に何を言われようと痛くも痒くもございませんけど。サイラス向こうへ行きましょう」


「ああ、行こうか、僕の可愛い女神」


勝手に話しかけてきた令嬢はサイラス狙いなのだろうか、馬鹿な事。周りの貴族も冷たい目で見ている。


「あれはミサカ子爵家の令嬢だわ。我が家から正式な抗議をするわ。礼儀知らずな上にサイラスを狙うなんて思い知らせてあげる」


「格好良いよ、惚れ直してしまう。ハウエル家からも抗議をしよう、リアを侮辱するなど許さない」


「ありがとう、学院では日常だったからなんて事は無いわ」


「そうなのか?守れなくて済まなかった」


「大丈夫よ、女の戦いは慣れているから。さあ陛下のご挨拶が始まるわ」



サイラスはこれ程気の強いローゼリアが自分のことで泣いていたかと思うと情けなさで一杯になり、もっと頑張らなくてはと決意を新たにした。


それから陛下と王妃様のダンスが始まり王太子と妃殿下、第二王子殿下とマーガレット様が踊られた。三組とも息の合った素晴らしいダンスだった。


令嬢たちはこれから王太子殿下と第二王子殿下に踊っていただくことになる。

先程の令嬢は姿が見えなかった。



会場は華やかな熱気に包まれていった。

いつも誤字報告を有難うございます。助かります。訂正しました。

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