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よろしくお願いします

 夕方ミリーに起こされたローザリアは

「お嬢様、目を冷やしましょう。それからドレスが皺だらけでございますよ。

マーガレット様とのお茶会だと伺っておりましたのにどうしたことでございますか?やはり付いて行くべきでした」


ミリーはたまたまの休日だった。

「ミリーまた見てしまったの、サイラス様とあの女性が一緒のところを。怪しげな宿がある横道に入っていったの、腕に縋り付かれていたわ」


「後ろから刺してやりましょうか」


「ミリーが罰を受けるようなことは駄目よ。せっかくマーガレット様に義兄様に相談してはどうかとアドバイスを頂いたのに。このまま婚約破棄になるのかしら」


「そんなに不安そうな顔をなさらないでください。奥様にご相談されるのが一番かと思われます。さあ夕食に参りましょう」




☆☆☆☆☆



「お母様、お話がございますの」

ローザリアはこれまでのサイラスの行動の全てを話した。


「サイラス君のことが好きなのね。それじゃあ早まったことをしない方が良いわ。こちらでも調べてみるけど、マーガレット様の言う通りオズモンド君に相談してみるのも良いかもしれないわね。駄目だと判断したら切ることにするわ」



辛いけれど諦めないといけないならきっぱりと別れよう、ローザリアは決意を固めた。


まずはオズモンド義兄様に相談するのは決定した。先触れを出さなくては。




☆☆☆☆☆



ハウエル伯爵邸にお邪魔した。


「よく来たね、久しぶりだね、もうすぐ本当の義妹になるかと思うと嬉しいよ」


「お義兄様そのことでご相談があって参りました」


そこでサイラスとのことを相談した。


「それは済まないことしたね、事実なら申し訳ない。サイラスには聞いたのかい?」


「事実だったらと思うと怖くて聞けていないのです」


「そうか、僕達が親しくしているのを見せるのはどうかな?嫉妬をするか平気な顔をするか見てやろうじゃないか」


「願ってもないことですが良いのですか?お義兄様にご迷惑はかかりませんか?」


「恋人も婚約者もいないよ、女性には辟易としていてね」


「モテすぎて大変そうだとお聞きしましたわ」


「そんなことはないよ、君たちが羨ましかった。馬鹿だったら殴ってやるよ」


「殴らなくて良いです。どうしてでしょう、私の周りって物理的にやろうとする人が多いです」


「何だそれ、相変わらず面白いな、ローザリアは」


「ふふっ、お話を聞いてくださってありがとうございます。気持ちが少し楽になりましたわ」


「話くらいいつでも聞くよ。僕からもサイラスに尋ねてみようか?」


「正直に言うでしょうか。私の事を恋愛的に見ているとは思えませんわ」


「見ているだろう、こんなに綺麗になったのに」


「幼馴染から抜けきれていないと思います」


寂しそうに言うローザリアは儚げで消えてしまいそうだった。




 オズモンドは可愛いローザリアをこんなに悩ませているサイラスに苦々しい思いを持った。自分だったらローザリアにあんな顔をさせないという思いがあった。お互い嫡子だったからオズモンドは想いに蓋をしたのだ。

泣かせたら本気で殴るつもりだった。



オズモンドはキースを呼び出した。今日のサイラスの護衛はビルの筈だ。

「お呼びですか」


「ああ、サイラスのことで聞きたいことがある。サイラスには恋人がいるのか?」


「何を理由のわからない事を言ってらっしゃるんですか。ローザリア様一筋ですよ」


「そのローザリアが不安がっているのだ。女性と一緒のところを見たらしい。幼馴染のまま進展がないらしいじゃないか」


「ああ、花屋の娘を助けたことはありましたが相手のことなんて眼中に入っていませんよ。お嬢様には甘い言葉さえ囁いていないかもしれませんね。奥手すぎるんです。手を繋ぐのがやっとです」


「そうか、情けないが浮気じゃなければ良い。もうすぐ結婚するというのに困ったものだ。ローザリアの為に一肌脱ぐか」


「どうされるんですか?」


「少し突くだけだ」


「楽しみですね」


「悪い顔だな」


「まどろっこしいんですよね、ローザリア様がお可哀想です。告白もされず手も出されないので不安がっていらっしゃるのが分かるんです」


「そうか、もう下がって良い」




オズモンドはサイラスがいない休日にローザリアをお茶に招くことにした。偶然すれ違わせて妬かせる作戦だ。ローザリアの好きなお茶やスイーツを用意した。テーブルにはピンクの薔薇を生けさせた。




彼女は相談があって来たことにすると言っていた。つかの間の癒しを貰っても良いだろう。本気度が分かって可哀想な気がした。弟は何をしているのだろうか。朴念仁にも程がある。



当日薄ピンク色の可愛いドレスで訪れたローザリアは妖精のようだった。侍女と護衛を連れていた。


赤いガーベラの可愛らしいこんもりとした花束とチーズケーキをおみやげに持って来てくれた。チーズケーキはオズモンドの好物だ。

「今日は花の妖精のようだね、綺麗だよ。お土産もありがとう。チーズケーキが好きな事を覚えていてくれたんだね」


「勿論ですわ、三人でよく食べましたもの」


「特産品のチーズは美味しかったから今でも取り寄せているんだ」


「いつでも仰ってくださればお送りしましたのに、水臭いです」


「ありがとう、三人で遊んでいた頃は楽しかったね。もうすぐ帰って来るからすれ違いで帰ることにするかい?妬かせてやろうね」


「嫉妬なんてするでしょうか?そういえば今度のテストの過去の問題を教えてください。勉強に身が入りませんの」


「するに違いないよ。テスト対策はお安い御用だよ、過去の問題集を探しておく。後で届けさせるよ」


「ありがとうございます。頼りにしていますね。では失礼しますわ。ミリー帰りましょうか」



頂度サイラスの馬車が門を入って来た。見送りに付いて来たダグラスと顔を合わせ驚いていた。

「リア、今日来る予定だったの?屋敷にいればよかったな」


「お義兄様にご相談があってお邪魔しましたの。お土産のチーズケーキがあるので良かったら召し上がってくださいませ」


「相談って僕には言えないの?送っていくよ」


「帰られたばかりではありませんか。護衛もおりますし馬車も待っているのでこのまま帰りますね。ではお義兄様失礼致します」


「楽しかったよ、またおいで」



サイラスは御者に後で迎えに来るように言うと強引に馬車に乗ってきた。しかも隣だ。近い。

「兄上に話せて僕に言えないことがあるの?」


「サイラスの事で相談に乗っていただいたの。心当たりはないのかしら」


「僕のことで?それなら僕に聞けばいいのに」


「わからないならもう良いわ」


サイラスの本能がこのままでは駄目だと告げていたが、何をどうすれば正解に行き着くのか分からず、髪をひと掬いし口付けた。

するとローザリアが赤くなり俯いてしまった。


可愛すぎる、抱きしめたい。漸く一歩を踏み出せた気がしたサイラスだった。


「ねえ、抱きしめて良い?」


頷いてくれたのでふんわりと抱きしめた。薔薇の香りがして柔らかな身体は折れそうなくらいだった。


読んでいただきありがとうございます!  誤字報告ありがとうございました。訂正しました。

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