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どうぞよろしくお願いします
ローザリアとサイラスは婚約者として改めて付き合いを始めた。幼馴染なので緩いものだったが。
お茶会はお互いの屋敷を行き来するようにし、誕生日にはプレゼントを欠かさなかった。
貴族学院に進学したオズモンドは優秀な成績を収めていた。紺色の瞳は宝石のように輝き白銀の髪は一つに結ばれていた。伯爵家の嫡子なのに婚約者がまだいなかったので、令嬢たちからの人気が凄かった。行く先々で囲まれるのだ。十三歳でこれだと先が思いやられる。オズモンドは表情が氷のようになってしまった。
領地で遊んだ頃が懐かしかった。三年の辛抱だ。男子学生とは横の繋がりを大切にするつもりだ。婚約者も決めなくてはいけないのだろうが、我先にと攻撃を仕掛けてくる令嬢達にうんざりとした気持ちにしかならなかった。
弟が羨ましかった。可愛いローザリアと婚約し故郷でのびのびとしているに違いないからだ。
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オズモンドが学院を卒業した後でローザリアとサイラスが入学した。タウンハウスでサイラスは兄と共に暮らすことになった。サイラスは紺色の髪と金色の瞳を持つイケメンに育っていた。
オズモンドは卒業後王宮の文官になった。父親がまだ若く領地の事は両親がやり、社交の季節だけタウンハウスに来ることになっていた。屋敷には古くからの使用人がいて、坊ちゃま達のお世話は任せてくださいと張り切っていた。
ローザリアは母親と住むことになった。学院の勉強だけではなくお茶会で付き合い方を教えてもらうことになっていた。社交界での女性の戦い方を覚えなさいというありがたい方針だ。
二人の仲は相変わらず順調だ。たまに喧嘩もするが悪いと思ったほうがすぐ謝る事にしている。十三歳になったローザリアは貴族らしさに磨きがかかったようになった。子供から大人になりかけの美しさが出てきた。ローザリアは艷やかな金色の髪とぱっちりとした瞳の可愛い令嬢だったが、凛とした美しさが加わった。
学院へ登下校する為にサイラスが馬車で送り迎えすることになった。
「おはよう、リア今日も可愛いね」
「おはよう、今日もありがとう。ランチは分厚いハムとチーズのサンドイッチとカツサンドイッチよ。こーんな厚いお肉だったわ。ブロッコリーと卵のサラダもあるわ」
「やった、お昼が楽しみだ。リアの所のシェフは腕がいいから」
「相変わらず食いしん坊ね、サイラスのお屋敷のシェフも腕が良いじゃないの」
賑やかに話をしているとあっという間に着いてしまった。サイラスがエスコートの為に手を差し出した。さっと手をのばすとローザリアはサイラスに微笑みかけた。貴族令息として当たり前の事がこの数年間でしっかり身に付いていた。
野原を駆け回っていた幼い姿はもうそこにはなかった。
二人は特進クラスだった。特別な者にしか立ち入ることが許されていないスペースで貴族的な繋がりを得たいと思うならそこに入るのが手っ取り早い。
ほとんどが高位貴族で、たまに特別な発明や発見をした優れた者だけが推薦されて入ることが出来る。オズモンドもこのクラスの出身だった。
ローザリアはこのクラスで知り合いを作り、女伯爵として生きていかなければいけなかった。だからサイラスも合格したと知ったときには大いに安心した。
領地から出てきたばかりの二人にはまだ友達がいなかったのだから。
クラスは二十人だった。多くもなく少なくもない、ちょうど良い人数だわとローザリアは思った。
毎週一回のお茶会は続いていた。
「毎日会っているし無理しなくていいのよ。お友達と遊びに行きたいでしょう」
と言うと
「無理はしてないさ、予定が入れば言うから気にしないで。それにリアって友達みたいなもんだろう。今は気取ってるけど昔は剣を振り回してたし」
「なっ、なんてことを言うのかしら。友達じゃないわ、婚約者よ。ベストパートナーとして期待してるのよ」
ローザリアはサイラスが自分のことを女性としてちっとも意識していないことにチクッと痛みを覚えた。(私はサイラスのことが好きなの?幼馴染だし婚約者としてやっていかなくてはいけないからではないのかしら)
「それは光栄です。兄上なんか婚約者が決まっていないから令嬢達から狙われまくって大変らしい、疲れたような顔して帰ってくるよ」
「仕事が忙しいのもあるんじゃないの?モテて大変なのもあるかもしれないけど」
「兄上の話はいいよ、それより今度街へ出かけないか?たまには街歩きも楽しそうだろう」
「自分から話したくせに勝手ね。街歩き良いわね、楽しみだわ」
「じゃあ次の休日に行こうか」
「学院の帰りにも行ってみたい。みんな帰りに楽しんでるみたいなの。公園に行ったりカフェに行ったりしてて羨ましいわ」
「早く言えばいいのに。仰せのままに、お姫様」
「もう、意地悪ね」
街歩きはカフェに行き新作のケーキを食べたり本屋に行ったりととても楽しかった。人混みが凄いので迷子にならないように手を繋がれドキッとしたことはローザリアの秘密だ。
サイラスの手はいつの間にか大きくなっていて、もう子供では無いことを告げていた。
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