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優秀なのに不憫なオズモンドが幸せになっていくエピソードを書いてみました。

読んでいただけると嬉しいです。

 オズモンドは両親から婚約者を決めるよう何度も言われていたが、従来の女性嫌いから縁談を遠ざけていた。

初恋の女性は弟の妻になった。嫡男である以上立場をわきまえて恋心には蓋をした。弟には甥と姪が生まれている。姪を養女にして家を継いでもらいたいというのが希望だった。



弟夫婦は娘を遠くに嫁にやるより隣の領の兄の養女にして婿を取らせる事を納得していた。まだまだ先の事なので、そういう事でも良いかくらいの軽い気持ちだった。



甥は五歳になり姪はまだ一歳にもなっていない。気の早い話だった。


ダニエルは物覚えが早く絵本は卒業して物語を読むようになっていた。冒険物語が好きなようで、お土産に買って行くと大喜びをしてくれる。小さな頃から好きなお菓子も持っていくので相変わらず飛び付いて来てオズモンドを幸せな気持ちにさせてくれる。



姪のリリアは、はいはいが出来るようになり目が離せなくなっていた。

金色の髪に緑の瞳がローザリアによく似ているので家族全員から溺愛されていた。

ダニエルが膝に乗せて絵本を読んでやると大人しく聞いているので、メイド達は可愛さに悶えていた。




オズモンドが一人で夜会に行った時のことである。普段は顔を出さないのだが商売上の用があり出かける必要があった。



交渉相手の貴族と話を済ませ帰ろうとした時廊下の方で男女の揉める声がした。

痴話喧嘩かと思ったが、女性の嫌がっている声がした。

酔った既婚の男爵が女性を無理やり部屋に連れ込もうとしていた。女好きと評判の男だった。


「何をしている、彼女が嫌がっているではないか。その手を離せ」


「ただの痴話喧嘩だ、放っておいてくれ」


「助けてください、さっきから手を掴まれて困っているのです」


「大丈夫だ。主催者の名を汚す行為だ、騎士を呼ぼう、それに格上の令嬢にその様な事をしてただで済むと思わない方が良い」


「この女に傷がつくぞ、良いのか」


「何もなかったのは私が証明する。家が潰されないことを心配した方が良いのではないか」



そう言っている内に騎士がやって来て男を引っ張って行った。


「危ない所を助けていただきありがとうございました。わたくしはサンダース侯爵家のアンと申します」


「ハウエル伯爵家のオズモンドと申します。何もなくて幸いでした。どうしてお一人になられたのですか」


「父と参加したのですが、商談があると言いましたので壁の花になって待っていたのです。給仕が知り合いが呼んでいると言いましたのでそこへ行ったのですがおられず、広くて迷っている内にあの男に腕を掴まれてれてしまったのです」


「そうでしたか、大変でしたね。落ち着かれたらお父上の所へ行きましょう」

年若い令嬢はカタカタと震えていたが触れることなど出来ない。上着を掛けるだけにした。


サンダース侯爵は娘の姿がいつの間にか見えなくなっていたので侍従に探させていた。そこへオズモンドが令嬢を伴ってやって来たのだ。捕まれた跡は手袋で見えない。

不思議そうな侯爵にオズモンドは場所を変え個室で先程の事を話した。



侯爵は事実を重く見て調査をすると約束し、オズモンドに深く感謝した。

「偶然ハウエル伯爵令息が通りかからなければ今頃娘は壊れていた。ありがとう、ありがとう。いくらお礼を言っても足りない。この恩は一生忘れないよ。必ず返させて貰おう」


「当たり前の事をしただけです。お嬢様がご無事で良かったです。お疲れになったでしょう、では失礼します」


アンは先ほどの恐怖が蘇り混乱していた。侯爵は娘の手首の跡を痛々しそうに見ながら医者に診せ屋敷に連れて帰った。


屋敷に帰ったアンはメイドに大層驚かれ、お風呂に入れられると気持ちの落ち着くハーブティーを淹れてもらいベッドに入れられた。


シスコンの兄が部屋にやってきてアンを抱きしめてくれ漸く涙が溢れてきた。

「お兄様、怖かった」

「アンに酷いことをした奴は消してしまおう。どんな方法が良いか考えるよ」


怖いことを言ってるなと思ったがあんなクズはいなくなったほうが良い。

今夜ばかりはシスコンの兄が有り難かった。泣き止むまで側にいてくれ眠くなるまで手を握っていてくれた。

同時刻両親は男爵家を潰す相談をしていた。


アンを呼び出したという令嬢は夜会には来ておらず、誰かが名前を騙って誘き出したと思われた。侯爵は徹底的に敵を調べる事にした。



二日後牢に入れられていた男が具合を悪くし死んだ。死因は酒の飲み過ぎによる中毒だった。

主を失った男爵家は借金だらけだった。酒癖と女癖の悪い夫に悩まされていた妻はさっさと家を出て行ったという。家具を売り払い家を売り貴族籍を返してやっと返済が出来たそうだ。




案外早く片付いたとサンダース侯爵家は黒い笑みを浮かべた。しかも死んだ男が吐いた敵の名前を掴んでいた。政敵の侯爵家だった。



サンダース家の嫡男は二十歳で公爵家の次女と幼い頃から婚約が決まっていた。来年結婚の予定だ。政略だがいい関係を育てていた。

結婚の妨げになるような敵は排除するつもりだ。諜報員を増やす事にした。

悪事の証拠集めは着々と捗っていた。




アンは十七歳でまだ学生の身だ。勉強のため夜会に連れて行ったらあの様な目に遭わせてしまった。男性恐怖症になったのではないかと心配だった。

親の贔屓目無しでも美少女だと自慢ができる。


何処にもやりたくなくて婚約者を決めていなかったが、ハウエル伯爵令息はどうだろうか。

八歳年上の二十五歳で頭が切れ身辺が綺麗なのも高得点だった。女性嫌いで氷の貴公子と呼ばれているらしい。あまりに結婚の噂が出ないので男色かなどと言われているとか。



この間会った感じは好青年だった。アンを助けてくれたのだから。

侯爵は調査を始めた。


なかなかオズモンドが幸せになるまでにたどり着けませんでした。すみません、もう少し続きます。

沢山のブックマークや良いねをいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

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