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無事にアンリがお手洗いから戻ってきたところで、組み分けの確認をすることにした。
ギルド中央の掲示板に名前と番号が書き出されている。同じ番号の人で組み、番号ごとで討伐対象の魔物が違うようだった。
討伐対象はゴブリン、レッドスライム、マッドボアの中からランダムで指定される、とのこと。
ゴブリンは数が多く、レッドスライムは物理攻撃が効きづらく、マッドボアは麻痺毒がある。どれが選ばれても多少は骨が折れそうなターゲットだ。
ヴァンの時はブルースライムだったと言っていたし、ゲームでやったときもそうだった。難易度がちょっと上がっている気がする。
「あ、あたし17班だって。クロノは?」
「僕も17班だね」
「よかったー!やっぱり知っている人と一緒の方がいいもの。この人数の受験者の中で同じチームになるなんて、ほんと奇跡的ね」
三人一組での試験だから、あと一人、知らない受験者と一緒になる。多分きっとおそらくその一人は――
「残り一人は、テオ・ヴァイスって人みたいよ」
うーん主人公のデフォネームですね。やはりアンリと同じ班か。
「オレの名前が聞こえた気がしたけど、君たちがチームメイト?」
二人の会話が耳に入ったのか、金髪の少年が声をかけてきた。
「テオさんですか?」
「おう!テオ・ヴァイスだ。テオって呼んでくれ」
ニカッ、と笑って歯を見せる。元気2000%。まぶしい。
「あたしはアンリ。アンリ・ウォークラフトよ。アンリって呼んでちょうだい」
「僕はクロノ・アークライトと言います」
「アンリとクロノか、よろしくな!」
ぐっ、と左手の拳を突き出してきた。アンリとクロノもそれに倣い、こつん、と突き合わせる。
テオの左手首には革製の腕輪が巻かれ、そこから中指の指輪に向けて布が伸びていた。
「不思議な形のグローブね」
アンリが興味深そうにテオの左手を見ている。
「ああ、これね!オレの左手の魔石がね、実は無属性なんだけどさ」
そういうとおもむろに腰のポーチから赤い属性液の細い小瓶を取り出し、腕輪の溝に嵌めた。嵌めた部分の金具をテオが一度叩くと、布部分に赤い液体が染みた。
布の下で魔石が光り、テオはそのまま手のひらを上に向けると、そこに林檎ほどの大きさの火球を浮かべた。
「ちょっと!こんなところで火をだしたら騒ぎになるわよ!」
慌てたアンリが諫めると、テオはすっとその火球を消した。布にしみていた赤も、いつの間にか消えて白い布に戻っている。
「ごめんごめん、実際見せた方が早いと思ってさ。プレセアにもらったこれを使うと、無属性の魔力に属性を付けられるんだ。属性液を変えれば水も雷も使えるよ」
「すごいですね。……って、プレセアって、テオさんって神子様のお知り合いなんですか!?」
「そうだよ。プレセアが旅に出るっていうんで、オレも護衛としてついていくために、今日の試験を受けに来たんだ。プレセアもここに付いてきちゃったのはちょっと驚いたけどな」
≪あいつ、無属性とか言ったか≫
「!?」
頭に直接ジークの声が響いた。
≪驚いてんじゃねぇよ、お前がなんとかならないか、って言うからなんとかしたんじゃないか≫
≪だからって本当に話してくるとは思わんじゃん≫
≪これでも元1級魔導士なんでな、舐めてもらったら困る≫
絶対これ得意げに笑ってるわ。
≪無属性、の件だけど。彼は右手に風の魔石を持ったうえで、左に無属性を持ってる。ジークみたいに無属性単一じゃないよ≫
≪そうか。じゃあどうでもいい、忘れてくれ≫
≪いや覚えといてくれ。彼が前に話した神子の旅の中心人物だよ。あいつが村に来るのを避けないといけない≫
神子一行は、今見せたあの腕輪の改良版を求めて、名工だったマーヴィンの工房があるルーノ村を訪れようとするのだから。
マーヴィン爺さんは既に亡くなっているけれど。
属性変化グローブは、主人公専用装備だった。
リストバンド部分に属性液を装填できるスロットがあり、それを消費して魔法に属性を付与する。他のキャラクターのように漂白を挟まずに属性変化ができるから、溜めの時間や威力減衰が主人公に限り無いのだ。
ファーリーに漂白鏡を見せてもらったときに思ったが、戦闘に耐えうる速度で属性変化を使うには、元々無属性かつこのグローブが無いと無理だろう。
ちなみに主人公のもう片方の属性はキャラメイク時に炎・水・風・土・氷・雷の中から好きなものを一つ選べた。テオは風のようだ。
「で、あたしたちって何を倒せばいいんだっけ、クロノ君」
「えっ、ああ、ちょっと待ってね。確認するよ」
チーム分けが張り出された掲示板の左隣が、対象の魔物の番号掲示だ。
「17は……レッドスライムだね。レッドスライムの核をひとりあたり5個ずつ提出らしい」
物理が効きづらく、炎魔法は無効または個体の強さによっては吸収される。
「物理が通りづらい敵なんだよね。えっと、みんな戦うときって武器を使う?魔法を使う?僕は片手剣なんだけど」
「あたしは大剣ね。土魔法も使えはするけど防御よりの魔法ばかりよ」
「オレも片手剣!魔法は習ったばっかだから、使えはするけど得意かって言われると微妙だな」
三人で顔を見合わせる。
「……効きづらいだけで効かないわけじゃないから、手数でどうにかして頑張ろうか」
「そうだね」
「それしかねぇかもな」
「そうなると時間もかかるだろうし、すぐ出よう。足りないものがあるなら購買に寄っていこう」
ギルドの売店でテオは青い属性液、クロノとアンリは体力回復用のポーションを少し買い足すと、門の方向に急ぐのだった。
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王都の門をくぐって少し歩いた位置に、危険度の低い魔物がよく集まる洞窟があった。
言ってしまえば初心者用チュートリアルエリアである。今回の試験に指定されているゴブリン、レッドスライム、マッドボアは全てその洞窟で見かけることができるものだ。他の組も続々と集まっているようで、洞窟に入ってすぐのひらけた大きな空間に、小さなレッドスライムめがけて水の玉を投げては外し投げては外ししている魔法使いや、ゴブリンに追いかけられて逃げ回ってる人がいる。あ、別の人がゴブリンを射貫いた。
人があまりにも多すぎる。おそらく魔物よりも多いだろう。これでは規定数倒すのは無理だ。
「これじゃあここで対象数を狩るのは無理そうね」
「そうだな、もっと奥にいってみようぜ」
アンリとテオも同じ考えだったらしく、三人は洞窟のより深い階層へと進んだ。
洞窟といってもギルドが整備しているので、壁面に等間隔で魔素式ランタンが埋められている。洞窟内の魔素を取り込んで発光しているそれを頼りに、なだらかな坂を下っていく。
「なかなか居ないわね、レッドスライム」
「レッドスライムどころか、魔物が全然いないな」
周囲の気配を探りながら進むが、同じような考えで進んできたであろう数名の受験者の気配しか無い。
「もうすぐ少し開けた空間に出るはずだから、そこなら沸くかもしれない」
この洞窟は三階層構造になっていて、一番上がチュートリアルゾーン。二層目は出現する魔物は変わらないが、少し強い個体がでる。三階層目は……同じようにより強い個体が出る階層になるが、おそらく今の状態で行くと死にかねないレベルのものが出る。そもそも入口がギルドによって閉ざされているはずだ。ゲームではそうだった。
「お、いたぞ!レッドスライムだ!」
二階層到着手前ほどの場所で、テオがレッドスライムを見つけた。幸運なことに3匹ほどが群れになって沸いている。下の階層に来たからか、上層で見た個体よりも二回り以上大きく、腰あたりまでの高さがある。
「先手必勝!」
テオが左手を触ると、あらかじめ仕込んでいた青い属性液が布に染み込む。手の中に小さな水の弾を無数に生み出すと、3匹のレッドスライム目掛けて風に乗せて掃射した。弾が当たったレッドスライムに無数の穴が開いている。苦手な水に触れたからか、スライムの体に空いた穴は塞がらない。そんないきなり水球の応用みたいなの出せるなら、魔法の扱い慣れてんじゃん。
奇襲を喰らったスライムたちは逃げようとしているが、開いた風穴が痛むのか動きが緩慢だ。
「逃がさないわよ!」
アンリの手が地面に触れると、地を這うようにスライム目掛けて地面がぼこぼことうねる。それがスライムたちのところに到達すると、三方向を塞ぐように岩が隆起した。
逃げ場を失ったスライムたちに、テオが片手剣で斬りかかる。穴の部分からスライムの核が見えていたので、ここだ!という箇所を切り裂いたのだが、切った断面がすぐにくっついてしまい、核を外すことができなかった。
「うわぁ……物理は物理でも切断系相性悪すぎ」
スライムきしょいなぁ、と思いながらその戦闘を眺めていると、アンリがこちらを振り向いた。
「ちょっと!クロノ君も見てないで手伝いなさいよ!」
「はいはい」
ジークを手にレッドスライムに歩み寄ったクロノは、剣を逆手に持ち、のそのそとうごくスライムの、見えているコアのやや上側にためらいなく差し込んだ。そのまま手早く、ぐっと剣を起こし、レッドスライムの核を勢いのままに抉りだす。
生きたまま核を抜かれたレッドスライムは、痙攣するようにびたんびたんと暫く跳ねたあと、地面に溶け浸みて消えた。
クロノはそのまま手際よく残りの2匹も核を抜いていく。岩で囲まれた地面が赤い染みで満ちていた。
「これで3つだね。あと12個は気が遠くなるなぁ」
抜いた核をひょいひょいと麻袋に拾い入れるクロノを、アンリとテオは呆然と見ていた。
「あんた、手際よすぎじゃない?レッドスライムってこんなあっさり死ぬものだったっけ?」
「ん?ああ、スライムは核がなくなると死ぬからね。二人が動きを止めてくれたおかげだよ」
「物理が効きづらいから時間がかかる、って言ってなかったか?」
「実際テオ君は斬れなかったじゃないか」
「いやまぁそうだけどもさ!なんか違うじゃん!なんか!」
やいのやいの言いながら、三人はレッドスライムを見つけては核をくり抜いていった。
テオが水球で鈍化させ、アンリが退路を塞ぎ、クロノが核を抉り取る。
手際よく進んではいるが、これゲームのチュートリアルとしては終わってないか?
武器での戦闘と基本的な魔法の操作と、あと魔法の複合をやるはずのチュートリアルであるこのダンジョンでやっていることは、戦闘どころか流れ作業である。まぁスライムの核を抉るのが武器での戦闘と呼べるかは怪しいが、一応アンリは土の基礎魔法で動きを止めてくれているし、テオが水と風の複合をしているから、それらの項目を使ってはいるけれども。
楽勝とはいえ、3人分の15個にはだいぶ遠い。最初こそ群れで出てきたものの、その後はぽつぽつと単体と出くわすのみである。
「ねぇそろそろ引き返さない?帰り道にいるかもだし」
「そうすっか、ようやくあと1つにはなったけど、スライムがめっきり出てこなくなっちまった」
少しずつ奥に進みながらレッドスライムを狩っていたが、やはり魔物が少なく感じる。
また、最初入った時に感じていた他の受験者とも出くわさない。皆引き返したのだろうか?
上層だけじゃノルマに足る数は絶対狩れないから、皆そのうち下層へ降りてくると思っていたのだが。
「あ、ここから先はいけないみたいだぜ」
少し開けた空間に出たが、下に向かう穴全てに鎖が掛けられている。テオが『侵入禁止』と札が下げられていた看板を見つけて指さした。
「そうですね。三層目はかなり危険な魔物が棲みついているらしいし、引き返しながら最後の1体を探しましょう」
この先に行っても無駄、もとい無理だと知っているクロノは、引き返す案に同意した。
この洞窟の鎖が解かれるのは、三章のイベントを終えた後だ。よくある、ゲーム進行後に最初の村に戻ってきたらちょっと行けるとこ増えてました系である。
第三層はゲーム中盤程度の戦力がないと歯が立たない。最奥にいるボス……食人鬼だったか。大の男5人分ほどの巨躯の大鬼がいるはずだ。確か……鉤爪系のHPドレインが付いた武器を落とした。それ欲しさに何度か周回した覚えがある。心なしか1箇所の穴の鎖がほころんでいる気がするのだが、きっと気のせいだろう。そう、きっと気のせい。チュートリアルでそんなイベントが起きた覚えなんてない。
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「キャーーーーーーーーーー!」
すっかり慣れた手順で、帰路で無事最後の1体のレッドスライムを狩ることに成功したクロノたちだったが、その直後、甲高い悲鳴が響き渡った。
「近いみたいだ、行こうぜ」
テオが音の方向を特定し、走り出す。帰り道の方向ではあるが、一つ横道に逸れるようだ。
フラグ回収が爆速すぎて乾いた笑いが出た。これもう絶対食人鬼が上がってきてるじゃん。
声の主の元に三人が駆け付けると、案の定そこにはおぞましい怪物が居た。
人間が丸ごと飲み込めそうなほどに広く裂けた口には無数の鋭い牙が生え、酸のような液体が滴っている。腐肉と血と酸の匂いが混ざり合い、凄まじい異臭を放っていた。両の手の先は鋭い刃のような指が蠢き、付いたばかりであろう血が滴っている。腕から肩にかけて黒い鉱石のような鱗で覆われ、表面の粘液がランタンの明かりを怪しく返す。
「大丈夫か!?」
一瞬あっけに取られて動きが止まっていたが、テオはすぐ声の主に駆け寄った。アンリは目の前の光景に絶句し、酷い臭いに耐え切れず手で口を覆っている。
ある程度状況を予測していたクロノだけが平然としていた。
「あっ……あ……あ…」
おそらくこの女の子も受験者だろう、顔面蒼白で化け物から目が離せなくなってしまっている。服が割け、肌が少しあらわになってしまっているが、気にする余裕がないほどに怯え切っている。
化け物の足元には、……おそらくこの子と一緒に試験を受けていたであろう塊が散らばっている。見開かれたまま動かない眼が、転がっている頭部に付いている。腹部が食い千切られ、上下に分かれた身体から白い骨が覗いている。彼ら彼女らの獲物であっただろうゴブリンたちの死骸も大量に転がっている。
え?精霊石物語ってZ指定ゲームだったっけ?
ここまでグロテスクな場面は全く覚えがない。食人鬼のビジュアルだってそうだ。ここまで凶悪そうな見た目してなかったって。もうちょっと可愛げあったって。
「逃げよう」
テオは放心している女の子を担ぎ上げた。
「迷ってたら死ぬ!急げ!」
その声で気を取り直したアンリも続いて来た道へ走る。クロノもそれに続いた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア」
化物が咆哮し、洞窟内の空気が揺れた。奴が爪を地面に突き立てると、黒雷が走り、地面が隆起する。
わぁ、この攻撃、俺知ってるぅ。
「光った地面は避けろ!串刺しになるぞ!」
テオに向けて叫んだ。瞬間、人ひとり担いで上り坂を駆けていたテオの足元が光る。すんでのところで跳躍したが、テオが1秒前まで居た位置に、黒く鋭い棘が突き上がっている。
「な、なんだよこれ、無茶苦茶だろ!」
本当に無茶苦茶だと思う。この技、ストーリー後半で喰らった覚えがある。地面からの攻撃がだるすぎて空中からスパムして倒した気がする。
「――っつ!!!」
どんな敵だったっけなと呑気に思い出そうとしたところで、頭に激痛が走った。
足を止めてしまったその瞬間、クロノとアンリの間の横壁が光り、側面から複数の黒い棘が現れる。
「クロノ君!」
行く手を黒い棘に阻まれてしまった。闇を煮詰めた塊のようなそれは、吐きそうになるような濃さの魔素を放っている。
「すぐ壊すわ!――っつ」
触れようとしたアンリだったが、濃すぎる魔素で噎せ、近づくことすらできない。
「触っちゃだめだ、凄まじい密度の魔素でできてるから手が焼かれるぞ」
先を走っていたテオも、足を止めて振り返っている。
「立ち止まるな!俺は放っといて先に行け!」
声を張り上げる。大声を出したせいで意図せず魔素を深く吸い込んでしまい、少し眩暈がした。
「二人は先に逃げろ、後で追いつく」
我ながらフラグにもほどがある台詞である。
「わかった。必ず来いよ」
テオは女の子を抱え直し、走り去った。
「でも、一人置いてなんて……!」
うろたえているアンリに、棘の隙間からスライムの核が入った麻袋を投げつけた。
「ほらこれ持って早く逃げて!……俺なら大丈夫だから」
「もう!……急いで助けを呼んでくるから、必ず生きてなさいね」
アンリはちらと一度振り返ったが、テオの後を追いかけて行った。
アンリが見えなくなるかというころ、のそのそと化け物が追いついてきた。一人餌を捕まえたからか、余裕の構えだ。
さて。
「姉さんの死亡フラグより先に俺のフラグが立つとは思わんじゃん?」
ジークを抜き、両手で構えて深く深く呼吸をする。黒い棘から染み出している濃密な魔素を身体いっぱいに取り込み、全身に奔らせる。
「加速、重撃、硬化」
身体強化をまずは三つ。
「今回ばかりはジークも手伝ってくれよな」
「勿論」
更に深く呼吸をし、右の指先に刃を掠め、血のついた指でジークの宝玉横を触る。そのまま右手に魔力を集中させると、チリっとした痛みがした。だがいつもより魔力を練りやすいと感じる。
練り上げた魔力をそのまま宝玉に流し込み、実体化分の魔力を充填する。紫の光と共にジークの身体が姿を現した。
一気に大量の魔素獲得と放出を繰り返したせいで、胃液がこみ上げるような不快感が襲う。
「これ、この魔石で魔力練れてるな?」
チリチリと痛む右手だが、ほんのりと冷気が流れている気がする。ライセンスの魔力検査をごまかすために、削って手の甲にくっつけていた冰狼の魔石が、右手のグローブを貫通するほど輝いている。
「氷か、ならワンチャンどころじゃなく勝てるかもしれない」
クロノが口角を上げると、ジークがそれに気づいた。
「妙案が浮かんだみたいだが油断はするなよ、アレからは普通の魔物とは違う匂いがする」
「もちろん。姉さんを守らなきゃいけないってのに、こんなところで死ぬわけにはいかない」
見ればジークも心なしか笑んでいる、こんなに気持ちの悪い化物を前にして、だ。
「ジークだって、こんな事態だってのに若干楽しそうじゃん」
「俺も身体が鈍ってしかたねぇんだよ、こういう機会でもないと」
「身体ないだろが」
「例えだ例え。実践でしか鍛えられん部分があるんだ、野暮なこと言うな」
『じゃあ、久しぶりに暴れさせてもらうか』
二人は化物を見据えると、ぴったり重なった台詞と同時に、跳んだ。