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47.インターミッション-そこにあるもの

  「リポートはこれで終わりですか?」

  京一は、怪訝そうな顔をして、慎一へそう声をかけた。

  慎一の書いたリポートが京一の手の中にあり、残りのページ数は、僅か一枚になっていた。

  「ああ、俺が実際に村で見聞きした報告はこれで終わりだよ。」

  慎一は、他人行儀な他所行き言葉をやめ、普段使いの言葉になっていた。

  京一がリポートを読んでいる心情を鑑み、より近く寄添おうという心情の現れだった。

  「それにしては、ずいぶん中途半端な所で終わってますね。」

  京一はなるべく不満げな様子を抑えながら、穏やかな態度を崩すまいとしつつ、慎一に訊ねた。

「すまないな。不満な気持ちは分かるよ。実はこれには理由があってな。」

  そう言いながら、棚からもう一部の、報告書をまとめたリポートを取り出し、京一の前に置いた。

  「これは俺自身も忘れないようにと思ってまとめたリポートなんだが…俺の妄想と思われないか心配でな、正直。

  とりあえず、君の出身が加賀美村であることはほぼ確定出来たことだし、ここで終わっても構わんぞ。

  俺もここに書いたことが、事実かどうか、君に迫られたりしたら、事実だと言い切れる自信はない。

  しかし、俺には村が見せた、当時起こった村の記憶としか思えないもんでね。

  事実に即さない内容は読むに値しないと思えば、ここでやめてもいい。」

  京一は、慎一の顔をじっと見つめた。

  何もかもを射通すような、そう思わせるような視線だった。

  「会長からは、既に調査費を十分貰ってるんですよね?そんな状態で、わざわざ妄想話かもしれないと前置きしたところで、デメリットしか無いじゃないですか。

  そこら辺のことも、リポートに出てきた清吉というお爺さんが話したことにして、それらしくまとめれば、それで済む話ですし。」

  京一はそう言って、フッと笑った。

  それは決して慎一を馬鹿にしたり愚弄したりしてる訳では無く、今更信じる信じないの話でも無いだろうというニュアンスを込めた笑いだった。

  「読ませてもらいますよ。貴方がそう言う以上、この記録は村が見せた記憶というやつなんでしょうから。」

  そう言いながら、京一はリポートを綴じた束に手を伸ばした。

  「分かったよ。信頼してくれてありがとうな。

  しかし、読む前に言っておく。

  ここから先の内容は、お前さんにとって、かなり辛い内容になるぞ。

  それを覚悟しておいてくれ。

  俺は見せられたままを書いただけだから。」

  慎一はそう言って京一へ、警告と覚悟を促した。

  「分かってますよ。僕だって、それなりの覚悟を持ってこの事務所へやってきたんですから。」

  そう言って、京一は新たに渡されたリポートのページをめくり始めた。

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