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転生したら処刑される姫だったので、運命から逃げようと思います

作者: 豆大福

「ヤバい、処刑される!!!!!」


私、アリス=レスト=トランバーグは叫んだ。と、同時に頭がズキズキと痛む。


「姫様、気が付かれたのですね!今皆様にお知らせして参ります。」


私の声が聞こえたのか部屋の戸が開き、声を掛けられた。

今のは侍女のユーリだったわね。


すぐにお父様、お母様、その他にも何にもの人たちがぞろぞろと私の部屋に入ってきた。


「私が誰だかわかるかい?お父様だよ。」

「私のことわかるかしら?お母様よ。」


声が重なっている。


「えぇ、もちろんわかるわ。ご心配をおかけして申し訳ありません。

ですが、何があったのか覚えていなくて。

なんだか頭が痛むのですが。」


「姫様は階段から足を踏み外して落ちてしまわれたようです。

幸いお怪我はしていないようですが、吐き気やどこか痛みはございませんか?」


言われてみれば確か食事をして部屋に戻る途中だった。

いつも通る廊下を見ながら、なんて豪華な所なんだろうと思ったのだ。

見慣れた風景なのに、何故そんな風に思ったのだろうと思った時、私は思い出してしまったのだ。






トランバーグ国の国王一家は国民のことを顧みず、己たちの欲望のままに私利私欲を尽くした。

自分たちの為に税金を搾り取り、飢餓に苦しむ国民に助けの手を差し伸べることは無かった。

次第に国民たちの不満は膨れ上がっていく。そして立ち上がったものがいる。


その者の名はリク。

貧民の彼に字はない。


貧民街で生まれ底辺の生活をしていく中で、国王始め貴族たちの腐りきった面を見ていた。

食べられずに失われていく命。

日に日に増えていく貧民街の住人。

貧民だからと差別され、時には暴力を振るわれる日々。

何故こんなに、こんなにも不平等なのだろう。


彼の母は貴族の屋敷にメイドとして雇われていた。

美しい母は主人に目を付けられ、襲われリクを身ごもってしまった。

そんなメイドは他にいて、身ごもったメイドたちは母子共々殺されているのを知っていた。

だからこそ身ごもったことに気が付いた時には、仕事を辞め貧民街に逃げた。

そこで生まれたのがリクだ。

しかし母は慣れない環境に体調を崩し、そのまま無くなってしまった。


そんなリクは子供にも関わらず死んだように生きていた。

世話を焼いてくれる人がいたおかげで生きてくることができたが、貧民街にはいつも死の影が潜んでいる。

その影は彼が唯一大切に思っていたその人の命をも刈り取って行った。


国を憎んだ。

同じように不満を持つ者たちを集めまとめ上げ、彼はクーデターを起こした。国が滅ぶのは一瞬だった。

何故なら、騎士の中にも不満を持つ者たちが多くいたからだ。

王城で働く者の中にも不満を持つ者たちが多くいたからだ。


王の一族は処刑された。


リクは王となり国民のことを考えた賢王となった。




過去、いや、前世で大好きで何度も読んだ物語だ。


トランバーグ国ってここだわ。


国王の家族についての詳細な記述はほとんどなかったが、国王ジャスティン=レスト=トランバーグの名前は何度も出てきた。

間違いない、私のお父様だわ。


お父様…優しそうな顔をして最低だ。

まだ10歳で国のことに関してはあまり詳しくない。

いや、そんなのは言い訳だ。

私だって民の税金で暮らしているのだ。知らなかったで済むことではない。


しかし、私はもうすぐ処刑されてしまう。

確か11歳の誕生日を前に処刑されてしまうのだったわ。


新月の夜にという記述があった。

ということは私が処刑されるのは、あと1か月程度。

その前にリクたちはクーデターを起こすのだ。


必死でどうにか逃れる手を考えた。

しかし今更なのだ。


お父様もお母様も大好きだけど、悪政をひいたのは本人たち。

仕方ないと割り切れないが、死ぬのは嫌だ。


私はサラサラと書置きを残して、こっそりと城を抜け出そうとした。

だが、城を警備している騎士たちに悉く見つかってしまう。


おかしいわね。騎士たちが警備の仕事をしっかりしているとは思っていなかったのに大誤算である。


翌日街に行きたいとわがままを言った。

上手くいったけれど、護衛をしこたまつけられた。


何とか彼らの目を盗んで逃げだそうとしたのに、逃げる隙など全くない。


ふと目に着いた店に入った。


「あなたたちは店の外で待機よ。」


「はっ。かしこまりました。」


私はマダムに必死に頼み込んだ。


「お願いです。

私には身分の差があって会うことすら叶わない、しかし愛してやまないお方がいるのです。

彼の姿を見たら戻ります。ですから、裏口から逃してもらえませんか?」


一度外に出てしまえば何とかなる。いや、なんとかしたい。

マダムは考え込んでいたが、やがて了承してくれた。

嘘をついてごめんなさい。


私はそっと裏口から外に出た。

「マダム、このご恩は忘れません。ありがとうございます。」

「姫様が愛してやまないお方にお会いできることをお祈りしております。お気をつけて。」

頷くと一目散に走りだした。


しかしすぐにマダムは護衛達の元へと足を運び話を伝えたので、アリスの視界に入らないよう注意しながら護衛達は付いて行くのだった。


そんなこととは知らずに抜けたせたことを喜んでいたが、早くも問題にぶつかった。


「……疲れた」


この世界で女性は走ることははしたないことと幼い頃から言われ運動という運動をしてきていない。

前世は子供の頃から体を動かすのが好きで、中学高校と陸上部だったのにこんなにも走れないなんて。


そして、服や靴も明らかに目立っている。

護衛達が私を探しに来たらすぐにバレてしまう。そう思って近くにあった恐らく平民用の衣類を売っている店に入った。

地味なワンピースに動きやすい靴を購入した。ついでに着替えもさせてもらい、もう着ないであろうドレスとヒールの靴はお礼にと店主に渡して店を出た。


すぐに護衛の1人が店に入り話を聞きに来た。

ついでにドレスと靴は護衛に引き渡された。


護衛達は姫様が何をしているのか、さっぱり理解できずにいた。


その頃、王城ではアリスが残した書置きを侍女が見つけていた。


『私はやらなければならないことがあります。

探さないでください。

新月の夜には戻ります。』


その書置きはすぐさま王の元へと渡った。


「これは!?一体どういることなのだ!!

アリスをすぐに探せ!今すぐにだ!!

あの子の身に何かあったら…私は…」


王はそのまま言葉を失い、王妃は意識を手放してしまった。


音もなく現れた黒い装束を身にまとった者はこう言う。

「ご安心ください。護衛騎士も影も姫様に付いております。

ドレスを作るふりをして、店の裏口から出たようです。

姫様の意思を尊重し、今は隠れながら全員で守っております。」


「何故、このようなことになったのか理由は?」


「愛してやまない方がいると話をしたようです。」


「………」


王は言葉を失った。

かわいい娘の心をいつの間にか奪った男がいる。…許せん


「私をアリスの元へ連れていけ。今すぐだ。」


「御意」






リクは貧民街にいる。


彼らの様子を探るためにここに来た。


貧民街に買ったばかりのきれいな服で来てしまったことに今更気が付いた。

これでは完全に浮いてしまう。

本当は我慢して貧民街に隠れてクーデターについての情報を集めながら過ごそうと思っていた。


本当は毎日お風呂の入りたい。

ベッドで眠りたい。

着替えだって毎日したい。

美味しいごはんだって、おやつだって食べたい。


でも少しの我慢だ。処刑されるよりマシ。


そう思ってここまで来たが、まだ平民街にも関わらずはっきり言って浮いている。


キラキラと輝く美しい髪。

本人は平民用のワンピースと思っているが、決して安物ではない服。

真っ白く、シミ一つない美しい肌。


どこからどう見ても高貴なお嬢様にしか見えない。

近くにいる住民は、その異質な存在にコソコソと内緒話をしている。が、本人は全く気が付いていない。

そう、アリスは恐ろしいほどに鈍感なのである。


アリスはこれからのことを考えるために近くのベンチに腰掛けた。


貧民街で過ごそうかと思ったけれど難しいかもしれないわ。

そうだわ!貧民街に近いところに宿を取って情報を集めましょう!

そうすればお風呂にも入れて、ベッドで眠れて、着替えも出来て、ご飯だって食べられるわ!


近くにいた子供を連れた女性に近くに宿がないか伝えた。

そう遠くないところに宿はあったが、来た道を引き返さなければならない。

あいにく貧民街に近いところには宿はないようだった。


まぁ、そんなところに宿を作ってもお客が入らなければ宿は潰れてしまうのだから仕方のないことだわ。


教えてもらった宿で部屋を取った。

ついでに

「近いうちにクーデターが起きると聞いたのだけれど、あなた何か知っているかしら?」


しかし

「えっっ!?クーデターですって!!!」

店主は大きな声を出すので焦った。


口に人差し指を当てながら「静かにして!!!」と大きい声を出した。

幸い近くにお客はいなかったので良かった。


「あなた貧民街のリクと言う男を知らない?」


店主は知らないと首を横に振った。

アリスには店主が本当のことを言っているのか、嘘をついているのか判断できなかった。


まぁいいわ。このまま何日もこの宿に泊まるのですもの。

そろそろ美味しいランチが食べたいわ。お腹の主が不満の声を響かせていた。



その頃、外では騎士たちがクーデターの話を聞いて顔を見合わせていた。

「クーデターだと?何故そんなことが」

「姫様は何故そのような重要な案件を知っているのだろう。」

「王はこのことはご存知なのだろうか?」


王家の影でさえ知らない重要なことを口にした姫に護衛している者たちは騒然としている。


ある者は騎士団長の元へ。

ある者は王の元へ。

ある者は宰相の元へ。

ある者は貧民街へ。


1人、また1人と慌てたようにこの場を去っていくのだ。


まばらに残った護衛達も事の重大さに相談をしており姫が宿を出たことに気が付かないでいた。


アリスは店主に聞いた美味しいお店へとルンルン気分で向かっていた。

なんとも能天気なものである。


今日のランチは鶏肉を揚げて甘辛く味付けしたもので、庶民の味ではあるがこれがまた格別であった。

噛むと肉汁がじゅわっと染み出し、うま味が口の中にいっぱいにひろがる。

その割に皮はパリッとして、あまりの美味しさにご飯のお替りまでしてしまった。

そう言えば昔はこの鶏皮が苦手で取らないと食べられなかったな。


ニコニコしながら頬張るアリスを、店主も客達もニコニコしながら見ていた。

幸せそうに食べる姿は思わず餌付けしたくなってしまう。


「お嬢ちゃん、美味そうにくうな!ほら、これも美味いから食ってみろ!」

「この店は、これがおすすめだ!これも食べてみな!」


アリスは周りのおじさん達にこれもこれもと分け与えられお腹が張り裂けそうにパンパンだった。

素晴らしいわ、何を食べても美味しい!

王城の食事も美味しいけれど、ここも格別だ。


両手を合わせて『ご馳走様でした』と小さく呟いた。

前世を思い出してからというもの、無意識で行うようになった。


「嬢ちゃん、悪いが金貨はダメだ。釣りが出せねえよ。」

アリスは金貨しか用意していなかった。


「おじさん、私これしか持っていなくて。それならこれは前払いってことでいいかしら?

明日も明後日もその次もまたおじさんのご飯を食べさせてくださらない?」


店主はそれならばと了承した。


「ならこの金貨分、毎日食べに来てくれよ!」


貴族の子供なのだろうが、こんな平民用の店に来て笑顔で食べ、更にはおかわりまでしてくれた。

この金貨分というと数か月は支払いなく食べられるだろう。


何故貴族の娘が一人で食べに来ているのか疑問ではあるが、この可愛らしい少女がまた店に来て欲しいと思ったのだ。


「ところで皆様は近いうちにクーデターが起きるという話は知ってるかしら?」


店にいた皆はそんな話は知らないと口々に言った。


「では貧民街のリクという男を知らないかしら?」


「悪いがそれも知らねえな。」


誰もが口を揃えて知らないと言う。

もしかすると子供の私には教えられないのだろうか?

「そんなほら話誰から聞いたのか知らないが、クーデターなんて起こらないと思うぞ。安心しな!」


うーん、確かに事前に情報が漏れるのはマズいものね。

クーデターに関しては箝口令が敷かれているのだろう。


笑顔で「ありがとう、明日も来るわね!」と言って店を出た。


やはり実際に貧民街に行くしかないのだろう。

詳細を調べて、クーデターを止められるなら止めよう。

どうにもできない場合はお父様に連絡しよう。

悪いのはお父様だけど、命まではなんとか助かるよう手を考えるのよ。


最初は自分だけでも逃げて助かろうかと考えていた。

でも優しかったお父様もお母様も死なせたくはない。


前世を思い出して、しかもここが前世で読んだ物語の世界だと話したところで、急に頭がおかしくなったと思われるだろう。

それならば、自分自身が動こうと考えたのだ。


考え事をしながら人通りの少ない細い道を歩いていたのが悪かった。

後ろから口を押えられ、私はそのまま意識を手放したのだった。






影からの報告を聞き、すぐさま国王自ら宿へ向かった。


「私の娘が、アリス姫がここにいるはずだ。どこにいるかすぐに教えてくれ!」


いきなりの国王の訪問に宿にいた人々は驚きを隠せないでいた。


「いらっしゃいませ、国王様。このような場所へどのようなご用件でしょうか?」

宿の外にいた店主が走って店内に入ってきた。


「アリスはどこだ?アリスは?アリスは?」


国王は動揺しており、説明が出来ないでいた。


近くにいた騎士が、

「アリス姫はこちらに宿を取ったようでしたので、こうして直接出向きました。

突然で驚かせてしまい、申し訳ありません。

アリス姫は10歳の少女で」


手で制したのは店主の方だった。


「アリス様というお客様が本日確かにこちらにいらして、お部屋を取りました。

まだお子様でしたので保護者についてお聞きしましたが、教えてくださいませんでしたので今ほど警備に連絡をしてきたところです。

容姿を伝えましたので、ご両親にご連絡をしてもらうよう頼んできたのですが、姫様とは存ぜず申し訳ございませんでした。

因みに確認させていただきたいのですが、アリス姫の髪の色は何色でしょうか?」


「あの子はそれはそれは美しい銀髪だよ!」


「それならば間違いございません。

おすすめのランチが食べられる店を教えて欲しいと言うので、リュージュ通りに面したところにある『リッカの巣穴』という店を教えました。

しかしながら、そのあとどこに行かれるかまでは決めていないとのことでした。」


それならばと騎士を半分『リッカの巣穴』へ向かわせ、もう半分は国王と共に宿で待つことにした。


アリスよりも先に1人戻ってきた騎士は、もう店にはおらず周囲を捜索していることを告げたのだった。






アリスは気が付くと頭に痛みが走った。

目を開けると薄暗く埃っぽい場所に寝かされていた。


恐らく私がクーデターのこと、リクのことを嗅ぎまわっているのがバレて捕まったのかもしれない。

どうしてバレてしまったのかしら?上手くやっていたはずなのにさすがね。


私が姫だとバレたら、きっといいように使われるか殺されるかのどちらかだわ。

これからどうしましょう?


逃げようと思っても手と足を縄で縛られ動けないでいる。


隙を見て逃げ出すことが出来るかしら?


これが物語なら、そろそろ私を襲った奴らが来るはず。

そう思っていたのにいつまで経っても私を襲った奴らはくる気配がない。


1人完全に待ちぼうけである。


私はもしかして話を変えてしまったのかもしれないわ。

話の内容を知っていて、結末を変えようとしているのだもの当然よね。


そのせいでクーデター前に…私、命を狙われている…?

えっ、やばっ…!?


どうしよう

どうしよう

どうしよう

どうしよう


ギィィィ


!?変な音がした!!

ようやく私を連れ去った奴らが来たのね


私は意識を失っているふりをした。

油断させてなんとかここから逃げ出そう。


ガチャリ


「アリスー!!!!!」


んっ?

お父様?


戸の方を見ると間違いなく私のお父様がそこに立っている。


あれ?

「どうしてお父様がこんなところに?

私をこんなところに連れて来たのはまさかお父様だったのですか?」


「そんなはずないであろう!!

私の可愛いアリスが誘拐されたと聞いて居ても立っても居られず、こうして助けに来たのだよ。」


お父様は手早く縄を切って自由にしてくれた。


「アリスを連れ去った者たちはすでに捕まえたから安心しなさい。

さあ、危ないから帰るよ。」


私をさっとお姫様抱っこしてお父様は歩き出した。

えっ?恥ずかしい


「降ろしてください。」


私の言葉は華麗にスルーされ王城に連れていかれてしまったのだった。


馬車の中のお父様は私が何故騎士たちから逃げるようにして居なくなったのか、その理由を聞こうとせず静かであった。

さて聞かれたらどのように答えようかしら。小さくため息を1つだけついた。



王城に戻り、その日はゆっくり休むようにと言われ私は自室で過ごした。


翌日、朝食の後にお父様の執務室に来るよう言われた。

私は全て話す覚悟をしていた。


もしかすると今ならお父様も一緒に、クーデターを止める為の案を一緒に考えてくれるかもしれないと考えたのだ。

だが、前世の記憶があり、しかもここは前世で読んだ物語の中だと言って信じてもらえるかしら?


不安でいっぱいだった。


「さて昨日アリスを誘拐した奴らだが、ただのごろつきだったよ。

どちらかというと貧民街に近い場所で明らかに高そうな服を着た少女が警戒心もなく歩いているのを見て金を強請り取ろうとしたらしい。」


そうだったのか。

確かに普段着そうなワンピースと思ったけれど、平民が着るようなものではなかったのかもしれない。

お金がなくて食べる物にも着る物にも困っているはずだから、新品の服ではダメだったのね…考えが足りなかったわ。


「正直に教えて欲しいのだが、昨日アリスは騎士たちから隠れて逃げようとしたね。」


ついに来た!?

私は全て正直に打ち明けるつもりだ。

お父様は私のことを大切にしてくれている。だから私が説明したら信じてくれるかもしれない。


しかし私よりも先に口を開いたのはお父様だった。

しかもお父様の口から出た言葉は私の想像の斜め上を行くのだった。


「もしかしてだが、アリスは日本を知っているかい?」


私は上手く理解できずに首を傾げたのだった。


お父様も「あれっ?」といいながら首を傾げた。


「何故お父様が日本を知っているのですか?」


素直に疑問を口にした。


「私も知っているのだよ。では『英雄と呼ばれた男』のことも知っているのだろう?」


そう、リクがクーデターを起こしたあの話は『英雄と呼ばれた男』だ。


「私は物心付いた時には前世を思い出していたのだよ。

だからこそ、あのクーデターが起きないよう国民を思う善き王となるため努力をし続けてきた。

家族を処刑したくなんてないからね。」


お父様…


「王妃も別人なんだが、気が付かなかったかい?」


王妃の名前?


私のお母様はエリザベート=レスト=トランバーグ。

物語のお母様の名前は…

…なんだっけ?


「クリステル=ラフィア=トランバーグが物語の中の私の妻だ。

でも性格の悪い彼女を王妃になどしたくなかったからね。

もちろんエリザベートのことも愛しているしね。」


全然気が付かなかった…


「大丈夫。リクはクーデターを起こしはしないよ。

確かに貧しい者たちもいる。しかし私たちは国民が幸せに暮らせるよう政治を行ってきた。」


でも…


ガチャリと音がして男が一人入ってきた。


「彼がリクだ。リクは近衛隊で私の安全を守ってくれている大切な存在だ。」


リクと呼ばれた男は

「陛下は私の命に変えてもお守りいたしますので、どうかご安心ください。」

と伝えた。


私が混乱しているのを見てお父様は笑っている。

リクも優しい笑顔を浮かべている。


あー、私一人で焦ってなにしてたんだろ…

どうやら私が心配していたことは、すでに解決していまして、私は処刑されずに済みそうです。


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