量子力学から見る恋心
『第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品です。
キーワードは『量子力学』です。
千文字制限の上、文系によるにわか話ですので、広い心でお楽しみください。
「ねー、ガリ勉」
「その呼び方はやめろと……。で、何の用だ」
「シュレディンガーの猫って何?」
「は?」
「ドラマで見たんだけど、ググっても意味わかんなくて。ガリ勉ならわかるかなって」
「……いや、だいぶ説明が難しいんだが……」
「だからわかりやすくしてー」
「……あー、まずシュレディンガーの猫は量子力学での例え話なんだが、量子というのは物を構成する原子や分子、更に電子とか光子など極小の存在で」
「どゆ事?」
「えっと、量子は超ものすごく小さい」
「わかった。そうゆう説明がいい」
「その量子はただ小さいってだけじゃなく、何というか、お化けみたいな性質がある」
「どゆ事?」
「それは『二重スリット実験』というものでわかった現象なんだが」
「スリットってチャイナドレスとかの?」
「ち、違う! 切れ込みという意味ではそうだが……」
「何赤くなってんのー?」
「せ、説明を続ける! 板に二つの細い切れ込みを入れて、そこに量子の一つである電子を飛ばす。それを感知する板で測定し、電子がどんな性質を持っているかを」
「わかんない。それが猫とどういう関係があるの?」
「……だいぶ端折るぞ? その実験で電子は分身したり、観測される事で特性を変えたりしていると考えられる結果が出た」
「ポ◯モン?」
「そうじゃない。その観測で特性を変えるという理論を馬鹿馬鹿しいと思ったのが、シュレディンガー博士だ」
「あたしも思う」
「で、猫の話だが、博士は中の見えない箱に、猫と放射性物質と、放射線を感知したら毒ガスを出す装置を入れる実験を考案した」
「猫可哀想!」
「実際にはやってないから怒るな。そうすると、中で放射線が出たら猫は死ぬ。出なかったら死なない。この状態だと箱の中で猫の生と死は重なり合っている」
「そんな訳なくない?」
「それが博士の言いたかった事だ。だが皮肉にも、その無茶な考えの方が不可解な量子を説明するのに都合が良かったから有名になった」
「ふーん……」
「……これ以上の説明は教授にでも」
「つまり量子って見えない箱の中は、見たらわかるけど見ないとわからないって事?」
「……まぁ間違ってはいない」
「例えば、ガリ勉があたしを好きか苦手かはまだ決まってなくて、キスとかしたら確定するって事?」
「……!」
「実験、してみるー?」
「お、俺は帰る!」
「あ! 何で逃げるのー!」
「か、解釈は合ってる!」
「え……」
「じゃあな!」
「……解釈は合ってるって、どっちの意味よぉ……」
読了ありがとうございます。
はい、最後のがやりたかっただけです。
そのために圧縮された量子力学の説明と猫、ごめんなさい。
本気で勉強したらきっと面白い分野だと思います。
万が一ご興味が湧いた方は、「なんかよくわっかんねぇけど、オラワクワクしてきたぞ!」な私の解説を鵜呑みにせず、是非しっかりと学んでみてください。
次回のキーワードは『星座』で書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。